8.『竜のひげ』はテイクアウトOKです~
魔物の餌の前で頭を抱えていたぷにぷにちゃんだったが、周りをキョロキョロ見渡すといきなり椅子から立ち上がった。
「どうしたの?ぷにぷにちゃん」
僕の声掛けに聞こえてないのか、真っ直ぐカウンターに向かっている。
何かを探してる?
目当てのものが見つかったらしく、それを手に取ると自分の席に戻ってきた。
アルが感心したように言う。
「驚いたな・・・ナイフとフォークを使うのか?」
「本当に躾されてるようだな。」
「スゴイ!スゴイよぉ~さすが僕の娘だよぉ~」
「いや、まだレイのモノになるとは・・・・・・」
「魔物のくせにすげぇな~これ芸として見世物としていけるんじゃね?」
「僕の可愛い娘を見世物なんかさせません!!」
「いやだから・・・二人とも・・・コレが魔物とかペットとか・・・正体不明な謎な生き物だから・・・」
「おおおっ ちゃんとナイフとフォークを器用に使って」
「さすが僕の娘ちゃん!」
「魔物ならホント躾が行き届いているな・・・」
「外で女の人たちが倒れてる原因はやっぱりお前たちか!!毎度あり~♪」
「シャル・・・・」
シャルの大きな声に驚いて、動作が止まったぷにぷにちゃん。
僕の可愛い娘を怯えさせて許せんと僕はシャルを睨む。
『竜のひげ』の制服を着たリス科獣人の女の子風・・・見た目は可愛いが、こいつは非常に曲者で、常にお金になることを考えてる守銭奴だ。
今回も前回もというか、いつもいつも僕たちの情報を女性たちに売り、お金にしてる。
「いやぁ~なんかレイが笑顔で女性たちを悩殺したって?どうしたのさ?なんか悪いものでも食った?って・・・そこにいるのなに?なに?」
シャルがぷにぷにちゃんに気付き近づいてくる。
あんな心根が腐った金の亡者に愛らしいぷにぷにちゃんを近づけさせたくない。
そう思うと、シャルの頭をガシッと掴んだ。
「いたたたたたっ!!離してよレイ」
「うるさい女装癖の変態に近寄られると、僕の可愛いぷにぷにちゃんが汚れる」
そうなのだ。女の子の恰好をしてるが、こいつは男なのだ。
女性が少ないための国の対策みたいなものだが、まだ体が男として未成熟な魔力量が少ない少年たちを女装させて代わりを補っている。
なぜ魔力量が少ない少年たちにやらせているかというと、容姿と魔力は比例しているのだ。
魔力量が多いと見目麗しい容姿になる確率が高く、少ないと平凡な顔立ちになるのだ。美しい少年を女装させると惑わされる男性が多く出ると訳の分からない予想がされたので、魔力量が少ない少年たちが泣く泣くやっている現状だ。
嫌々やっている少年が多い中で、こいつは嬉々として女装してる変態だ。
「失礼な!好きで女装してる訳じゃないよ!この姿だとチップも多いし、お金になるし・・・それに僕ほど可愛くって似合う子いないじゃん。その辺の女よりイケてる!」
「うるさい!変態は変態だ!!それに僕たちの情報売るな!」
「え?シャルが俺たちの情報売ってたのか?」
エリック知らなかったのか・・・・おまえ・・・
「まぁまぁ、レイも抑えて。シャル今度ゆっくり俺たちの事について話しような?」
アルが止めに入る。いやコイツ話し合いで納まる奴じゃないよ?
そうしている間に、ぷにぷにちゃんがナイフとフォークを使って一口大に切った餌を食べていた。
シャルなんかほっといて、喜んで食べる姿を観察しよう。
・・・・・・・
・・・・・・・
なんか涙目になりながら食べている・・・僕はシャルに水を用意してぷにぷにちゃんに渡すように頼んだ。
ごくごくと水を飲みほして、ほっとした顔のぷにぷにちゃん
魔物大好きな餌が苦手なのかな?と思っているとおやっさんが、僕たちの料理を運んできた。
フレイムドラゴンの肉料理だ。
ぷにぷにちゃんの隣に座る。
じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
凄い見ているよ・・・料理を
じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ
食べたいのかな?あげてもいいのかな?
たしかオークは雑食だし、これはオークの肉料理じゃないから共食いにはならないはず
僕は一口大に切った肉をフォークに刺して、ぷにぷにちゃんの口元に持っていった。
一瞬戸惑った顔をしたが、顔を赤くして大きな口を開けて食べた。
僕から美味しそうにお肉をもらい頬張るぷにぷにちゃんを楽しそうに見てたら、いきなり奇声を出して椅子から転げ落ちた。
床に転がるぷにぷにちゃんにシャルとアルが駆け寄る。
シャルがぷにぷにちゃんの顔をみながら指をさす
「うわっ!コイツ、口から泡噴いてる?!」
僕は持っていたフォークを落とし、愕然としてしまう。
「おお~初めて見たわ。泡噴いているの」
いつの間にかエリックも近くにきて屈み込み様子を見てる。
ぷにぷにちゃんの体が痙攣しながら口から泡を噴いている。
「白目むいてる~きゃはははっ」
「おお~白目だな」
「え?え?」
「おいレイ、早く何かの治療魔法かけろ」
アルに言われて我に返る。
指を鳴らすと体の痙攣が治まり、白目だった目は閉じて規則正しい呼吸が聞こえる。
「オークにはフレイムドラゴンの肉は毒なのかも・・・・・・」
「いや・・・だからオークかどうかわからないって・・・」
とりあえず料理は持ち帰りにしてもらって、僕たちは屋敷へと帰った。