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6.魔物まっしぐら

「きゃぁああああ~アル様よぉおおお~」

「いつも素敵ぃぃ~こっち向いてぇええ~」

「レイ様レイ様麗しい!!」

「エリック様~抱いてぇええ~好きにしてぇええ~」



馬車から降りた瞬間、若い女性たちに囲まれた。

いつもの事だから然程驚きはしないが、何故俺たちがここに来ることがわかるのか?不思議に思う。



女性はこの世界では数が少なく家の奥で大事にされている存在だ。


何故かというと獣人の男女の出世率の違いのせいだ。

男児7:女児3の割合で生まれてくるから必然的に男性が多くなる。未婚の男性が世にあふれ女性を取り合い争いにまでなっていた。

昔はその争いを収めるため一妻多夫制をとっていたが、女性の体の負担が大きく、その制度は俺たちが幼い頃に廃止になった。


また魔力量が多い獣人の女性は竜人や妖精族、魔族などに輿入れされることが多いので、ますます獣人の女性の数は少なくなる。

だから誘惑や拐かしがないように家の奥で大事に保護されている。


その大事にされている未婚の若い女性たちが群がる様は、普通は嬉しいと思わなきゃいけない感情だと思うが、俺にとってはうっとおしいの一言だ。


俺だけじゃないアルやレイもそうだろう。

ふとレイを見ると珍妙な生き物を抱き上げた途端、ガラスが割れるんじゃないかと思うぐらいの悲鳴が響いた。


耳痛てー


「その子レイ様のなに!!」

「嫌ぁああああレイ様レイ様」

「離れなさいよ」

「汚い姿でレイ様に近寄るな!!」


ぎゃあぎゃあうるさい


「うふふふっ私は、エリック様一筋ですもの」

「レイ様ファンは見苦しいですわね。おほほほほほほっ」

「エリック様だったら何されてもかまわないですわぁ」


目の前の女たちもピーチクパーチクうるさい。アルの方を見ると


「アル様~お疲れ様でした。その疲れた体を今夜、私が癒しますわ~」

「なによ!!アル様をお慰めするのはわたしよ!!」

「いいえ、いいえあなた達では力不足ですわ。魔力量が多い私が癒しますわ」

「魔力量多いって言ったって、ほんの少し多いぐらいじゃない」

「そうよ。それぐらいの魔力量で偉そうにしないで!!」


あーあっちでもいざこざが・・・・・・


「お嬢さんたち、私ごときにこのようなお心遣い痛み入ります。気持ちは嬉しいですが、まだ仕事が残っていますので、またの機会があればよろしくお願いいたします。」


と言ってにっこりとアルが笑うと争っていた女たちは黙り込み、ウットリと蕩けた顔をしてアルを見つめてる。あいつはいい顔しすぎだって、内心は


『うるさい女たちだな!疲れてるってわかってるんなら騒がない近寄らないだろ?!お前らの機会なんて一生ないからな!ああウザイ』


だろうな。


「無表情のエリック様の凛々しさ・・・・・・」

「絵になる絵になるわ!!」


俺はアルみたいに八方美人になれないし、レイみたいに冷たい目で女性たちをひと睨みで黙らすことも出来ない。ただ嵐が過ぎるのを待つだけだ。

まぁ、めんどくさいだけだが。

ん?レイのところの様子がいつもと違う。


「レイ様と魔物ペット可愛い~」

魔物ペットを抱き上げるレイ様貴重ですわ!!」

「笑顔のレイ様レア!笑顔のレイ様レア!」


レイの奴、いつもは鉄仮面の顔が笑顔・・・・・・・あ!女たちが倒れだした。


「私、エリック様一筋でしたけど・・・レイ様の笑顔・・・」

「レイ様の笑顔、プライレス・・・・・・」


あ!俺の周りの女たちもレイの笑顔見て倒れだした。アルの方もだ。


「ぶひっ?ぶひぶひっ?」

「うふふふっ、びっくりしたね~驚いた顔も可愛い~」


レイはそう言いながら珍妙な生き物の頬に軽くキスをした。


「ちゅっ」

「はぁ~柔らかくって癒されるぅ~」


友人が珍妙な生き物の頬をスリスリしている様子は見ちゃいけないものを見た気分になったが、女たちの防壁がなくなり動ける今がチャンスだと思い、アルと食堂と居酒屋を兼ねている『竜のひげ』に入っていった。


「おやっさーん」

「おおお~アル達か、待ってたぞ」


奥に声をかけると、夜の仕込み中なのかエプロンを外しながらこの店のオヤジが出てきた。


「ぶひぃいいい?!」

「なんだ?なんだ?魔物か?」

「おやっさんそのことで・・・」


アルが今までの経緯を話すとオヤジは珍妙な生き物を観察し始めた。

俺は勝手知ってる感じで、棚からグラスと酒を手に取って椅子に座った。


「うーん?俺たちと同じ竜人なら耳たぶに属性の宝石が付いてるはずだが、これにはないな・・・」

「竜人じゃないと・・・じゃあ妖精族?魔族?」

「いや妖精族の容姿は皆、緑の髪に青い瞳だ。魔族は皆、赤い目をしている。黒い瞳は見たことがない・・・」

「魔物ですか?」

「魔物なら魔力があるはずだが・・・断定はできないが・・・魔力がないぞ・・・コイツ?一体何なんだ?魔眼の奴ならわかるかな?」

「王族のペットとかいう可能性は?」

「う~ん、それは兄貴に聞いてみるわ。2,3日待っててくれるか?」

「お願いします」

「じゃあ、お前たちご飯食べて魔力量を回復させろ。その生物には丁度、魔物の餌があるからそれを用意する」

「ありがとうございます。」


アルは大きなため息を吐いて、レイに珍妙な生き物を椅子に座らせるように指示した。レイは不服そうだったが・・・どんだけ気に入ってるんだよ・・・おまえ


オヤジが奥から皿をもって現れた。


あれは魔物が泣いて喜ぶ餌だ。物凄い異臭がするものだが、魔物はこれが好物で、狩るときのまき餌として大活躍なものだ。


「ぶひっ!!」


ああ、やっぱり大好きなんだな目をキラキラさせて喜んでいる。

皿が目の前に置かれると、珍妙な生き物は絶望的な顔をさせて頭を抱え込んだ。


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