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18.はじめての子守(後編)

評価&ブックマークありがとうございます~

自主訓練に使ってる場所は敷地内でも手入れされていない所で、鬱蒼と茂る雑木林の中だ。

真ん中あたりに草木が生えてない広場がある。


人も来ないので剣の訓練や魔法を使うのに打って付けだ。


ぷにぷにを丸太ベンチの上に座らせる。

このベンチはアルが訓練に疲れたら座る場所も必要かと用意してくれたものだ。


「俺はこれから剣の練習を始めるからな、大人しくしててくれよ」


ぷにぷにはうんうん頷く。


腰に差している剣も丸太ベンチの横に立てかけて置く。


俺はまず最初に体をほぐすつもりで、近くの木の太い枝に両足をかけて逆さになる。

そして腹筋をはじめた。


「ぶひぶひっ」


驚いた顔をしてぷにぷには見てる。


「ぶひっー」


なんか褒められてる気がする・・・まぁいいか。


「298・・・299・・・300よし!」


次は懸垂。


「296・・・297・・・298・・・299・・・300」

「ぶひっぶひひっ!」


ぷにぷにはパチパチと手を鳴らしてる。


俺の懸垂そんなに面白いか?最後は腕立て伏せ。

指を立て掌を浮かした「指立て伏せ」をする。


「ぶひひっ~ぶひぃいい」


その俺のその様子をみて、またパチパチと手を鳴らしてる。


コカトリスなんか見せないで、自主訓練見せた方が俺もコイツもよかったかな?


今度預かることになったらそうしよう。


楽だし・・・


まぁそうそう預かることもないだろうしね。


「99・・・100・・・ふぅ~体がいい感じで温まってきたな」


立てかけといた剣を手に取り、広場の中心に立つ。


「あーそうだ。剣を振り回したり魔法を使ったりして危ないからそこから動くなよ~」


俺はぷにぷにそう言うと、目を閉じ長い詠唱を唱え剣に魔法を掛ける。

そうするとスーッと青白い光が剣に掛かる。

それから手を土に当てて、また長い詠唱を唱える。

すると土が数か所盛り上がり人型の形になって土人形となり、手元には土で出来ていた剣が黒くなり黒曜石の剣となる。


俺の希望としては鍛冶で鍛えたような鋭利な剣で差し向かいたいのだが、どうも魔法が苦手でここまでしか出来ない。


これがレイなら土人形は魔物や人間そっくりに再現出来たり、剣も銅や鉄いや鋼の剣を作り出すことができる。


それも無詠唱で


レイが魔法を使うとき指を鳴らすのは、周りに魔法を使いますよとわざわざ教えてくれるために鳴らすのだ。


それだけレイは魔法に関しては天才といえるだろう。


魔力量が多い竜人たちでも無詠唱できるのはあまりいない。


俺やアルのように長い短いはあるが詠唱を唱えないと魔法を発動できないのだ。


十数体の土人形が黒曜石の剣を振り回しながら襲ってくる。

それをかわしながら切る。


切って壊したとしても魔法を破棄しないと土人形は自然に再生して襲ってくる。

俺の体力が続くまで無限に訓練できるのだ。


「今日は調子がいいな・・・あれもやってみるか・・・」


土人形を避け、左手を木に当てて長い詠唱を唱える、右手は迫ってくる土人形を切る。


詠唱を終ると木はフルフルと震えながら動き出した。


俺は木から距離をとる。


葉っぱが鋭い刃に変わり矢のように飛んでくるのを剣でかわす、そして屠った土人形から奪った黒曜石の剣を握り、二刀流となる。


葉っぱの矢を避けながら土人形を仕留めていく。


今日はホント調子がいい。まだまだいけそうだ。



興に乗った俺はまた魔法を使うが、これがいけなかった。


魔法が暴走し始めたのだ。


「やばい!!」


抑制力がとれなくなった魔法によって土人形と木がコントロールを失い四方八方に散ばろうとしてる。


「やばい!やばい!!」


急いで魔法を破棄しようと詠唱を唱える。


「ぷぎゃぁあああああ~」


悲鳴が聞こえた。


ぷにぷにだ。

土人形に襲われそうになっている。


「危ない!!」


といった同時に魔法が解けて、土人形だったものは泥となり、ぷにぷにの全身に降りかかった。


「あ・・・マジでやばい」


全身泥だらけのぷにぷに・・・どうすればいいんだ?コレ


アルとレイに怒られる・・・


取り合えず・・・証拠隠滅だ!!


俺はぷにぷにを抱きかかえ屋敷に戻る。そして使用人たちに見つからないように自室へ入った。


ぷにぷにと一緒にバスルームに入る。

するとぷにぷにが暴れだした。


「ぶひっ!!ぶひひひひひっ」

「おいこら暴れるな!お前を綺麗にしないとアルとレイに怒られるんだよ」


こんなとき眠る魔法がかけられたら楽なのだが、生憎その魔法は使えないのだ。


「ぶひひひひっ!!ぶひぶひ!」

「あーもうめんどくせぇ」


ドレスのままバスタブに入れ魔法を詠唱するこれは水をお湯に変える魔法だ。

シャワーをとりだしぷにぷにの頭からかけた。


「あーくそっ、この髪飾りじゃまだな」


ひとつひとつ取っていく。

白い小花が泥色に染まってる・・・うわぁ・・・マジでレイに怒られるな・・・マーサに頼めば何とかしてくれるかな?


髪をほぐし石鹸で洗う。


先ほどまで暴れてたぷにぷには大人しくなったが、おしゃべりがすごい。

ぶひひひっぶひっぶひひっぶひぶひと言ってるが、何を言ってるかわからない。


髪の毛はなんとかなった・・・次はドレスだが・・・これはもう駄目だろう・・・ふと自分の服をみる。

そういえば俺も泥だらけだ・・・面倒だし・・・一緒に入るか。



服を脱ぐとぷにぷには絶叫し、気を失った。


一体どうした?

でもこれで風呂に入れやすくなったと思い、俺はぷにぷにのドレスを破り捨てた。








「うぐっうげっうぐっうぐっ」


ぷにぷにを風呂に入れて着替えさせたが、気がついたぷにぷにはなぜか泣き出し止まらない・・・どうすればいいんだ?まったくめんどくさい・・・

魔物ペットのくせに何が気に入らないんだ?


「うぐっうぐっげっうぐっぐぅう」

「もう泣きやめ・・・何が気に入らない?ドレスを破ったことか?お気に入りだったのか?」

「うげっ・・・ぶひっぶひひひひっ・・・・うぐっ」


違う違うという感じで首を横に振る。

なんなんだよ・・・


「それとも着替えさせたドレスが気に入らないのか?」


女性のドレスは脱がせるのは得意だが、着せるのはどうも勝手がわからず比較的簡単に着せられそうなドレスを選んだ。


それにしてもコルセット着用じゃなくってよかった。

あれ脱がせるのもつけるのも大変なんだよ。


「うわぁああああ~ぶひひっぶひひひっぐひっぶひっ」


うわっ・・・魔物だけど女や子供が泣くのは苦手なんだよ・・・どうすれば・・・

ふと昔アルから聞かされたことを思い出す。


『いいか・・・あまり使いたくない手だが女性が泣き止まない場合、獣化すれば泣き止むことがある・・・そのあと・・・いや・・・とにかく獣化しろ』


獣化すればどうにかなるという言葉を思い出し、服を脱ぐ。


「ぐひっうぐっ・・・ぶひひっ!!」


全裸になったところで獣化しはじめる、全身が縮こまり毛穴が開く感覚なかなか慣れない。



「!!」



俺の獣化した姿をみて泣き止むぷにぷに。


お?泣き止んだアルの言った通りだ。

じゃあ人型に戻ろうかという時に、ぷにぷにが俺の背中の毛を撫でた。


「わふっ!!」


気持ちよさに声が出る。

え?え?と戸惑っているとぷにぷにはお腹をさすってくる。


「くぅううん」


俺の意思とは逆に体は仰向けになりもっと撫でてくれと鳴く。


「くぅうんくぅううん~わふっ」

「ぶひひひっ~ぶひっぶひっ~」


満面の笑みで俺の体を撫でまわすぷにぷに・・・泣き止んだのはいいけど撫でるのはやめてくれ~気持ち良すぎる・・・




こうして体を張った結果・・・結局のところ魔法が暴走したことがアルにばれて説教され、ぷにぷにを泥だらけにして風呂に入れたことをレイに怒られた。

もう・・・子守なんて散々だ!!



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