17.はじめての子守(前編)
レイを乗せた馬車を見送りながらぷにぷには叫んでる。
どれだけレイが好きなんだ?これだけ好かれればレイも嬉しいだろう。
別れの際涙も流すさ・・・っーかレイの涙初めて見た!!
面白いもんみたな~あとでアルに教えよう。
アルはレイよりも先に従者を連れて出かけてしまっている。
マーサもセバスチャンも忙しいみたいだな・・・引き受けたけど・・・どうしようコレ・・・
俺の腕の中で、あきらめたのか大人しくなっているぷにぷにを見る。
子供それも魔物の世話なんて初めてだし勝手がわからない。
アルなら幼い頃から俺たちの面倒を見てくれていたから子供の扱いなんかうまいけど、俺は子供なんて構ったことがないので、どうしていいかわからない。
昔の記憶を辿る。アルはどうやって俺たちの面倒見ていた?
そういえば養殖している魔物見せてくれたな~コイツにも見せてやるか。
俺は屋敷の裏庭で養殖しているコカトリスの小屋へ向かった。
「ぶひひっぶひっ」
「お?なんだどうした?」
今日はよくしゃべるなコイツ。
「ぶひひっぶひっ、ぶひひっぶひっ」
何かを訴えてるようだ。なんだなんだ?
指で自分を指してその指を地面に向ける。
降りたいのか?そんなような気がして腕から降ろした。
そうするとぷにぷには笑顔になった。
笑うと可愛いな・・・コイツ・・・
「面白いモノ見せてやるからついてこい」
俺がそう言うとうんうんと頷く。言っていることがわかるのか?
そういえば、レイが魔物になる魔物は6歳児ぐらいの知性があるといっていたな。
そう考えながら歩く。
ふと横を見る。
ぷにぷにがいない。
振り返るとはるか遠くでぽてぽてとドレスの裾をまくりながら歩くぷにぷにがいた。
俺とアイツとでは足の長さが違うしドレスも重たいからスピードに差が出るかと思い立ち止まって来るのを待つが、石につまずき転んでいる。
「大丈夫か?」
急いで傍に寄る。ドレスの前が土埃だらけになっていてそれを掃う。
アルもよく俺が転ぶとこうやってくれたな
「無理するな」
またぷにぷにを抱き上げる。今度は大人しく抱っこされてくれそうだ。
「くええええええっ~くえくえくえ~くええええええええっ~」
コカトリスの鳴き声が聞こえてきたら、鳴き声に驚いたのかぷにぷには震えてる。
「大丈夫だ。コカトリスは魔物の中でも大人しいし、同じ仲間だろう?」
「ぶひっぶひっぶぶぶっひっ」
顔を青くしながら首を横に振る。
貴族の魔物だったから他の魔物は怖い存在か・・・躾が行き届いている、お姫様のような生活をしてたような魔物だもんな
「俺がいるから安心しろ」
鳴き声はだんだんと近く大きく鳴っていく。
「くえくえ~くくえええええっ~くわっくえ~」
「くええええっ~くえええええっ~」
「ぐわっくえくえっ~」
ドスドスと裏庭の敷地を走り回るコカトリスたち
それを見たぷにぷにの顔が青くなっていた。
俺のシャツをぎゅっと握っている。
「大丈夫だ。こいつらお前を喰ったりしないから。」
赤・緑・青・黄色とカラフルな色合いに尾っぽが蛇で体長が2mほどあるコカトリスは小さいコイツからみたら怖いか・・・
「コカトリスは大ミミズ(ワーム)が主食だから心配するな」
丁度大ミミズ(ワーム)を咥えたコカトリスがいたので、指をさす。
「ぶひひっ!!ひっぶひひひひひっ」
ぷにぷには両手を使って自分の目を覆ってる。
そんなに怖いのか?俺なんて面白くってアルにせがんでよく見に来たものだったが・・・
こんなので怖がってたくらいだ、あの荒野で俺たちと偶然出会わなければ今頃コイツは別な魔物の腹の中だったな・・・よかったな拾われて。
「わかった。わかった怖がるな。今かわいいモノみせてやるから」
「ぶひっ?」
「ああ、可愛いぞ」
コカトリスの小屋の中に入る。
「ぴよぉぴよぴよ」
「ぴよぴよ」
小屋の中心部にコカトリスのひな鳥がいた。
黄色の羽毛にまとったひよこだ。
「どうだ、可愛いだろう」
この黄色い羽毛が成長するとなぜあんなにカラフルな色合いになるのか不思議だが、尾っぽが蛇のようになっているのはコカトリスの特徴を引き継いでる証拠だ。
俺はぷにぷにを腕から降ろし、ひよこに近づく。
「ぴよぉぴよぉ」
「ほら親鳥と違って可愛いだろう?」
ひよことぷにぷにをみる。
大きさもフォルムも似てる!!
それに今日に限って黄色のドレス!!
似てる!!すっげー似てる。
「ぷぷぷ・・・・・ぷっ・・・」
「ぶひっ!!」
「あっははははははははっ。あはははははっあははは」
「ぶひっぶひひひひっ!ぶぶひっぶぶぶぶっ」
「ひゃっははっははははっ~あっはははははははっ」
やべー笑いが止まらない。
ぷにぷには真っ赤な顔して怒ってる。
さっきまで青くなったりしてたのに忙しい奴。
目をそらしたのが悪かったのか、ひよこたちがぷにぷにの周りを取り囲む。
「ぴぎぃいいっ」
ひよこがくちばしを使ってぷにぷにを啄む。
「ぶひっぶひっぶひっ」
「わ、こらお前らやめろ」
慌ててぷにぷにを抱き上げる。
綺麗に結わえた髪がくちばしによってほどけてところどころ解れてる。
これは・・・レイに見られたら怒られそう・・・
涙目になっているぷにぷにの背中をさすりながら、俺はコカトリスの小屋を後にして、自主訓練に使っている場所へと向かった。