第八章 ー旅に役立つ道具を求めてー
翌日。起床したロウエナ達は昨日モッチーと会った場所に向かった。すると既に、モッチーが友達と一緒に集まっていた。
モッチー「ロウエナさん達。おはようなのだ!昨日はよく眠れたかのぉ?」
ロウエナ「おかげさまでぐっすりね。……この子達がモッチーのお友達?」
モッチーとロウエナが話していると、銀髪の猫耳の少女がモッチーに問い掛けた。
猫耳の少女「うにゃ!?この人は誰だにゃ!」
モッチー「セレにゃー。そんな警戒しなくてもよいぞ!この人が。ロウエナさんじゃ!」
モッチーが説明すると、猫耳の少女はハッとして、ロウエナに自己紹介をした。
セレン「うにゃ……失礼しましたにゃ!わたしはセレンっていうにゃ!よろしくにゃ!」
セレンが自己紹介すると、続いて横に居たピンク色の髪のうさ耳の少女が自己紹介した。
アピス「ロウエナさん、始めましてじゃの!わしはアピスじゃ!よろしくのぉ!」
モッチー「うむ。みんな元気がいいのぉ!ほら。ラミちゃんも自己紹介するのだ♪」
モッチーがそう促すと、白髪の狐耳の少女がかしこまった様子で挨拶をした。
ラミア「ロウエナさん、お初にお目にかかります。私はラミアといいます……よろしくお願いしますね!」
セレン「んもー、ラミちゃんったらいつも通り堅いんだから……。もっと肩の力抜くにゃ!」
セレンが突っ込むと、ガチガチに緊張していたラミアは深呼吸して全身に入ってしまっていた力を抜いて、気分を落ち着かせた。
セレンは猫と人間の遺伝子を掛け合わせて生まれたキャットタイプ、アピスは兎と人間の遺伝子を掛け合わせて生まれたラビットタイプ、ラミアは狐と人間の遺伝子を掛け合わせて生まれたフォックスタイプだ。モッチーはというと、"もち"ろんモッチーと人間の遺伝子を掛け合わせて生まれた[モチタイプ]である。
モッチー「まぁ。個性的な子達だけど。みんないい子だから。仲良くしてあげてほしいのぉ!」
ロウエナ「勿論!みんな、村に居るのは短い間だけどよろしくね!」
ロウエナはそう言うとみんなと握手していった。ブルー、ペガシオーネ、パチュリーもそれぞれ挨拶した。
ロウエナ「そうだ、モッチー。私達、パルナの技術でだけ作れる道具や移動式の住居が欲しくてここに来たんだけど、どこで手に入るかな?」
ロウエナが問い掛けると、モッチーは先ずセレンを指差して答えた。
モッチー「道具ならセレにゃが作れるのだ!ね。セレにゃ?」
セレン「うにゃ!任せるにゃ!ついてくるにゃ!」
セレンはそう言うと、ロウエナ達を自分の家に案内した。セレンの家の中には、様々な道具が棚に綺麗に並べられていた。ツルハシやスコップといった基本的な物から、錬金術に使うような大釜や崖を登るのに使うフック付きロープなど、幅広い道具が揃えられている。ロウエナはセレンに欲しい道具を伝えると、セレンは胸を張り、自信満々の顔で答えた。
セレン「ふむ、任せるにゃ!ちょちょいのちょいで作ってあげちゃうにゃ!」
セレンはそう言うと、奥の部屋へと消えていった。暫くすると木材を切る音や、釘を打つような音が聞こえてきた。しかも、音を聞く限り、かなりの速さで作業しているようだ。
アピス「さすがセレにゃーじゃ……。相変わらず作業するのが凄く速いのぉ……。」
モッチー「慣れってすごいのぉ。。。」
アピスとモッチーが感心していると、セレンがいくつかの道具を木箱に入れて持ってきた。
セレン「ロウエナさん、できたにゃ!」
ロウエナ「はやっ!?すごーい!」
木箱には、ツルハシ、スコップ、ピッケル、釣竿などを始め、ロウエナが頼んだ、これを履いて水の上を歩くと回りの水が凍り、道が作れる[フローズンウォーカー]や、折り畳み式の階段、そして目眩ましをする[フラッシュボール]、緊急時に急速展開できるセレン特製の携帯防壁[フィロットウォール]などが詰められている。
ロウエナ「セレン、ありがとう!これで旅も楽しくなりそう……!」
セレン「うにゃ、力になれたなら嬉しいにゃ!あ、それと、そのリュックとポーチ一色はオマケにゃ!みんなとのお近づきのしるしにゃ!」
セレンは大きなリュックと、小道具の入るポーチをつけてくれていた。
ロウエナ「さて、次は移動式の住居ね……。」
ロウエナが呟くと、モッチーが今度はアピスを指差して答えた。
モッチー「移動式の住居……[パルナテント]だのぉ!それならアピちゃんが得意だぞ!」
アピス「よし、わしの出番じゃな!」
アピスはそう言うと、セレンと同じように自分の家に一行を案内する。
アピス「ロウエナさん、テントは一人用の小さいのと5人位入れるでっかいのがあるんじゃが、どうするかの?」
ロウエナ「うーん、じゃあ、大きい方をお願い!」
アピス「分かったじゃ!ちょっち待っととくれ!」
そう言うとアピスは、家の中から箱の様な物を運び出してきた。大きさは大体0.3㎡くらいだろうか。
ロウエナ「これがパルナテント?」
アピス「そうじゃ!只の箱のように見えるけども、ある事をするとこれが家に変身するんじゃ!」
ロウエナ「ある事?」
アピス「そのある事はラミちゃんに聞くんじゃ。これはラミちゃんの力あってこそ成り立ってるからの。」
アピスがラミアに[ある事]をロウエナに教えるように促すと、ラミアが箱の前に立った。
ラミア「皆さん、よく見ていてください。といってもそこまで難しくはないんですけど……。」
ラミアはそう言って箱に向かって手のひらを向けると、「展開!」と唱えた。すると箱が開き、一瞬のうちに我々の世界でいう[ゲル]の様なテントが現れた。
ロウエナ「す、すごい。一瞬のうちにテントが……。」
アピス「驚くのはまだ早いんじゃ!中に入ったら更に驚くじょ!」
アピスに促されテントの中に入ると、なんと、収納棚やベッド、テーブルや椅子はもちろん、更には調理台やかまどまで揃っていた。
アピス「どうかの?ただテントだけではなく家具まで一緒にコンパクトに持ち運べるんじゃ!」
ロウエナ「パルナの技術は本当にすごいなぁ……関心しちゃう!」
ラミア「あ、それと、収納するときは[格納]と唱えれば勝手に元の箱の状態になってくれますよ。」
ラミアが「格納」と唱えると、テントは元の状態に戻った。
ラミア「このテントの展開と格納は魔法が使えれば基本的に誰でも可能です。また、展開と格納は持ち主か私しか出来ないので第三者に勝手に弄られる事は無いでしょう。中に人が居れば格納はしないようになっていますし。」
ロウエナ「セキュリティもバッチリとは……。とにかく、みんな、助かったよ!パルナに来た甲斐があった!」
モッチー「うむうむ。もち達も。嬉しいぞ♪何かあれば。ガンガン頼っていいからのぉ!」
モッチー達は、自分達の力が役に立ったようで嬉しそうだった。ロウエナ達も、旅がより安全かつ効率的に進められるようになると、彼らに心から感謝している。
──一行がパルナで収穫を得て喜ぶ一方、スカーレットレイク・タウンに魔の手が忍び寄っていた。ロウエナはそんな事が起こっているとは知らず、パルナでの一時を過ごしていた。果たしてこの後何が起こるのだろうか。その答えは、夜空に浮かぶ月だけが知っているのか。