第七章 ーパルナー
エル・フォレストを出発し、山を越え、ロウエナ達はパルナ高原に辿り着いた。既に日は落ちかけ、辺りは薄暗くなっていた。ロウエナ達が急ぎ足で歩いていると、何処からか「もちぃ!もちぃ!」という不思議な鳴き声が聞こえてきた。
ロウエナ「ねぇ……今何かの鳴き声が聞こえなかった?」
ペガシオーネ「うん……確かに聞こえた。聞いたことない鳴き声だ。」
ロウエナ「ちょっと寄り道だけど……行ってみよう。助けを呼ぶような鳴き声だった。」
ロウエナ達が鳴き声のした方へ向かうと、今にも魔物に襲われそうになっている小さな動物がうずくまって震えていた。
ロウエナ「……みんな、あれ!」
バチェラ「何か襲われてる!助けよう!」
ブルー「よし、任せろ。俺が奴を狙い撃つ。」
ブルーはそう言うと、ガンブレードを射撃モードに変型させ、魔力を込めると、動物を襲っていた魔物の頭部を撃ち抜いた。魔物は少し吹き飛ばされ、そのまま倒れると、やがて消滅した。ロウエナ達が動物の元に向かうと、その小さな動物はロウエナ達に駆け寄ってきた。
ロウエナ「良かったぁ……。大丈夫?ケガはない?」
動物「もち!もちぃ♪」
ペガシオーネ「も、もち……?変な鳴き声だな……。」
確かに聞いたことのない不思議な鳴き方だ。しかもその見た目も特徴的で、まるで団子の様な丸々とした体を、ふさふさの体毛が覆い、兎の耳のようなとても小さな耳が生えている。
パチュリー「かわいい……もふもふしてる♪」
ロウエナ「(あったかぁ……)」
ブルー「お、おいロウエナ……ちょっと嫌がってると思うぞ……?」
そのもふもふさにロウエナは我を忘れてその動物を強く抱き締めすぎていた。
動物「もち……。ふもっち!!」
ロウエナ「うわぁっ!?」
動物は苦しかったのか、ロウエナの腕からするりと飛び抜けると、ついてこい、というような仕草を見せて駆け出した。
ロウエナ「なんか、ついてこいって言ってるみたいね。ついてってみようか?」
ブルー「……恐らくあれはパルナで飼われている動物だらう。多分、村に案内したいのかもしれないね。行こう。」
一同は駆け出した動物についていった。
少し歩いていくと、奥に村の建物の明かりが見えてきた。
ロウエナ「あ、あれ!多分パルナじゃない?」
ブルー「そうみたいだ。ようやく辿り着けたな……。」
一行はずっと歩いていた為、ヘロヘロだった。……何故かパチュリーはそうではないみたいだが。
一行がパルナの入り口に辿り着くと、動物は立ち止まってロウエナ達の方を向き、ありがとう、と言う様に跳び跳ねた。
ロウエナ「うーん、何かを伝えたいんだろうけど、分からないわ……。」
ロウエナが困っていると、動物は今までより少し高く跳び上がり、その場でくるりと一回転した。すると、眩い光と共にロウエナ達の目の前に緑色の髪の少女が現れた。
緑色の髪の少女「いやぁ。旅人さん達ありがとのぉ!もう少しでもちは食べられてしまうところじゃった。。。」
あまりにも突然だった為、ロウエナ達は唖然としてしまっていた。するとその様子を見た少女が心配そうに問い掛けた。
緑色の髪の少女「あ。あれ。。。?どうかしたのかのぉ。。。?」
一同「えええええええええええぇぇぇぇぇぇ!?!?」
状況に整理がついてより一層混乱した一同は、思わず叫んでしまった。
緑色の髪の少女「うわぁっ!びっくりしたのぉ!」
ロウエナ「あ、あぁ……ごめん。突然目の前に居た動物が人間になったものだからつい……。」
緑色の髪の少女「ほぉぉぉ!もしかして。獣人族の変化魔法を見るのは始めてかのぉ?」
ロウエナ「へ、変化魔法……?」
緑色の髪の少女「うむ!もち達獣人族は変化魔法によって変身する事ができるのだ!」
そう、獣人族は変化魔法を使うことにより、遺伝子を掛け合わせる時に元となった動物に変化できるのだ。彼女が変化した姿が、先程魔物に襲われていた動物だった。
ロウエナ達が関心していると、少女はハッとした様な表情になると、自己紹介を始めた。
モッチー「おっとっと。自己紹介がまだだったのぉ!もちわ。モッチーと言うのだ♪もちもちしたものや。ふわふわしてるものが大好きなのだよ。」
ロウエナ「私はロウエナよ。こっちはブルー、ペガシオーネ、パチュリーね。」
モッチー「ほぉぉぉ!よろしくのぉ♪」
ロウエナ「早速だけどモッチー。何処か泊まれるところはないかな?」
モッチー「それなら。あそこに宿屋さんがあるから。そこに泊まるとよい!」
ロウエナ「ありがとう、助かるわ。ずっと歩いてきたからヘロヘロで……。」
モッチー「あらあら。ゆっくり休むのだぞ!あ。それと。明日もちの友達を紹介したいから。またここに来てほしい!」
ロウエナ「おー、楽しみにしてるね!それじゃあ、おやすみ、モッチー。」
モッチー「うむ。おやすみなのだ♪」
モッチーに宿屋の場所を教えてもらい、一行は今日一日を終えた。
──果たしてモッチーの友達とはどんな子達なのだろうか。期待に胸が弾む一行であった。