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第五章 ー獣人族の村へー

エル・フォレストにて、ケインズの協力により能力を強化することに成功したロウエナ。エル・フォレストでの目的を果たし、次なる目的地に向かおうとしていた。


ロウエナ「パチュリー、忘れ物とかない?」

バチェラ「うん、準備はバッチリだよー!」

ブルー「ロウエナ、次は何処へ行くんだ?」


ブルーがロウエナに問うと、ロウエナは持っていた地図を広げ、エル・フォレストの南方にある高原地帯を指差した。


ペガシオーネ「そこは……パルナだね。獣人族の村だろう?」

ロウエナ「うん。彼らの持つ技術はきっと旅に役立つはず。」

ブルー「確か、建築や道具の開発に長けているんだったな。きっとかなりの力になるだろうね。」


パルナはエル・フォレストの南方に位置する高原、[パルナ高原]に、獣人族によって作られた村である。獣人族とは、犬や猫、兎といった一般的な動物をはじめ、この世界にしか生息しない様々な動物の遺伝子と、人間の遺伝子とを掛け合わせた事によって誕生した種族だ。彼らは動物としての優れた環境適応力と、人間としての知能を兼ね備えている為、独自の文化と技術を造り上げた。特にものづくりに関してはずば抜けて技術が高く、環境に合った住居の建築技術や、ユニークな道具を開発する技術が栄えている。パルナからはこうした技術を広めるため、技術者を他の村や街へ送り出しているという話もある。


ロウエナ「パルナへ行くにはあの山を越えればいいはず。距離もそこまでないし一日で着くわね。みんな、いざ出発よ!」

一同「おー!!」


眩い朝日に照らされながら、一同はパルナへの道を歩き始めた。



それから数時間後。山を越え、日が頭上に昇り昼頃、一同は山の麓にあった湖の畔で一休みすることにした。


バチェラ「んんーー!気持ちいいなぁ♪」

ペガシオーネ「あぁー、お腹空いたぁー。みんな、そろそろお昼にしようか!せっかく湖があるんだし、魚でも釣って食べようぜ!」


ペガシオーネはそう言うと、腰に着けていたポーチからペンの様なものを取りだした。そして湖の方に思い切り振ると、ペンの様なものの長さが伸びていき、先端から糸と釣り針が垂れ下がって釣竿になった。


一同「……。(わくわく)」

ペガシオーネ「!!来たぜ!」


ペガシオーネは魚が食い付いたのを察知すると一気に釣竿を引き上げた。


ペガシオーネ「うおぉっ!?」


釣竿を引き上げると、釣り針に食い付いた魚に別な魚が食い付き、それが繰り返されている凄まじい状態になっていた。


ロウエナ「うっはー!なんじゃこりゃー!!」

ブルー「すげーな!にしても多すぎないか……?」


二人が驚いている間に、バチェラがせっせと薪と木の枝を持ってきた。


バチェラ「ねぇねぇ、丸焼きにしようよ!ロウエナさん、点火よろしくね♪」

ロウエナ「オッケーイ!」


バチェラとロウエナが焚き火の準備をしている間に、ブルーが木の枝の先端を削って尖らせ串を作り、ペガシオーネがその串に釣れた魚を突き刺していった。


ペガシオーネ「よぅし、焼くぞー!」


ペガシオーネが魚を火にかけると、ジュワジュワという美味しそうな音と共に、食欲をそそる香りが辺りに漂い始めた。


ロウエナ「良い香り……。ますますお腹が減るわ……。」

バチェラ「ペガシオーネさん、早く食べたい!まだなのー?」

ペガシオーネ「まあまあ、もう少し待ってて。そろそろオイシイところだからさ……。よし、出来たぞー!」


ペガシオーネがこんがりと焼けた魚を皆に配ると、一同は一斉に焼き魚にかじりついた。


バチェラ「ウンマァイ!さいこー!」

ブルー「やっぱり天然のものはいつ食べてもうまいな。」


一同が談笑しながら食事していると、美味しそうな香りに誘われたのか、いつの間にかナナが現れ、ロウエナの肩に腰掛けて、一同の様子をニコニコしながら眺めていた。


ロウエナ「(あれ……?ナナ、いつの間にか出て来てたんだろ?……本当、不思議な子ね。)」


ロウエナが疑問に思っていると、虎の様な模様の入った魚を見たバチェラが話を始めた。


バチェラ「この魚、虎みたいな模様が入ってるや。あ、そうだ。虎で思い出したけど、みんな、ホワイトタイガーって知ってるー?」

ブルー「なんだそれは?強そうだな。」

バチェラ「白い虎だよ!あとブラックタイガーなんてのもいるんだってさ!」

ペガシオーネ「おお、さらに強そうだな!」


一同がそんな会話をしていると突然ナナが口を開いてこう言った。


ナナ「………ブラックタイガーは海老だよ?(ボソッ)」


一同はそのツッコミを受けて「あっ」と顔を見合わせると一斉に笑った。


バチェラ「あははー!そうだった!名前が似てるから間違えちゃったよー!あっははははっ!」

ペガシオーネ「虎じゃないのにタイガーだなんて、まぎわらしいよなー!あっははは!」

ロウエナ「(さっきの声、確かにナナの方から聴こえた……。まさか、ナナがツッコミを……!?)」


一同が笑い転げる最中、ロウエナがナナを見ると、ナナは首を傾げながらロウエナを見つめていた。


ロウエナ「(……?ま、いっか…。)」


ロウエナは疑問に思ったが、気にせず食事を続けた。



食事と休息を終え、再びパルナへ向かい始めた一行。道中、夕食をどうするか、という話になった。


ブルー「みんな、突然だが今日の夕飯は何にしようか?」

ロウエナ「そうだなぁ……。」

ペガシオーネ「せっかくだしカレーがいいな!いいだろ?」

ブルー「分かった、野菜炒めにしようか。」

ペガシオーネ「あ、あの……カレーは?」

ブルー「そうだな……材料は……あれとこれと……。」

ペガシオーネ「おーーい!!」


するとその様子を見ていたバチェラが咄嗟に思い付いたギャグを言い放った。


バチェラ「……カレー(華麗)にスルーとは、こう言うことだね!あはは!」

一同「…………えっ。」


一同は周囲の気温が著しく下がっているような気がした。


ロウエナ「…なんか冷えてきたわ。何でかしら。」

ペガシオーネ「なんか周りも凍ってるような気がするな……。」

ブルー「ペガシオーネ……。実際、周囲が凍っているんだが。」

ペガシオーネ「え?……本当だ。」


一同が辺りを見渡すと、それまで普通だった周囲の木や草花が、カチコチに凍っていた。


バチェラ「ぼ、ボクのギャグ、そんなに寒かった……?」

ロウエナ「いや、結構面白かったけど……ん?」


ロウエナは目の前にある少し太い木の側に、青っぽい人影を見たような気がした。


ブルー「どうしたロウエナ?」

ロウエナ「あの辺に人影が見えたような……。」


ロウエナは少し太い木を指差した。


ブルー「俺達には何も見えないが……?」

ロウエナ「うーん、気のせいか!何でこんなになったかは知らないけど気にしない!行こ行こ!」

ブルー「あぁ、そうだな。」


一同は怪奇現象を気にせず、先へ進むことにした。ロウエナはその場を離れる時、もう一度あの木の方を振り返った。すると、木の影から、水色の髪の少女がこちらの様子を伺っているようだった。


ロウエナ「(ん?何だろあの子……。)」


ロウエナが確認できる限り、体は小さく、9歳くらいの子供のようだった。背中には透き通った氷のような羽根が生えている。


ロウエナ「(小柄で水色の髪……氷のような羽根……何処かで聞いたような……?)」


ロウエナは少し記憶を辿ってみた。




エル・フォレストを出発する前。ケインズにパルナに向かうと告げると、ケインズはロウエナに山の麓の湖の近くに出没する妖精について話してくれたことを思い出した。


ケインズ「パルナか……パルナに向かうなら、山を越えた後、麓に湖があるんじゃが、そこを通るときはイタズラ好きな妖精がよく出没するから気を付けなさい。見た目は、水色の髪で、小柄で、氷のように透き通った羽根が生えておる。イタズラはほとんどが子供がするような軽いイタズラじゃが、奴は水と氷を操る妖精での。周囲の気温を下げたりするから風邪を引いたりしないようにのぅ。もしかしたら……かの妖精は人間の友達が欲しいのかも知れんのぅ。一人で寂しいから、人間にイタズラをして構ってもらおうとしておるのかもしれぬ。彼女に敵意がないようなら、話し掛けてみるのも良いかもしれんの。」




ロウエナ「そっか……あの子がその妖精なのかな……?」


ロウエナが水色の髪の妖精の少女に声を掛けようと再び振り向くと、少女は何処かへ消えてしまっていた。


ロウエナ「あれ?居なくなっちゃった……。うーん、また何処かで会えるかなぁ?」

ペガシオーネ「おーい!ロウエナー!何やってるんだーい?」

ロウエナ「あぁっ!ごめんごめん!!今行くよー!」


ペガシオーネに呼ばれてロウエナは駆け出す。



──その様子を水色の髪の妖精の少女は木の影からじっと見つめていた。彼女もまた、ロウエナ達ときっとまた何処かで会えると信じて。

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