第四章 ーステップアップー
フィロット氏から「本文と台詞の部分がくっついててごっちゃになっちゃうにゃ!あとカッコの種類を増やすといいにゃ!」との指摘があり、改めて読み返したらメチャメチャ読みづらかったので本文と台詞の区切りにスペースを入れ、名称などに使っていた「」は[]に置き換えてみました!フィロット氏の指摘に感謝です♪他の章も修正しておきます!
エル・フォレストにて自身の能力強化に繋がるものを探すロウエナ。街を散策していると、中心部で図書館を発見する。中に入ると、これでもかという数の本棚が並び、様々な書物や資料がその棚にぎっしり納められていた。ロウエナが足を止め、図書館の中を見渡していると、奥からいかにも魔法使いというような格好をした老人が現れ、ロウエナに声をかけた。
老人「ほっほ。いらっしゃい、旅のお方。何かお探しですかな?」
ロウエナ「あ、お邪魔します。あなたがこの図書館の……?」
ケインズ「ワシはケインズじゃ。この街で400年間程この図書館を営んでおる。」
ロウエナ「400年も……!すごい…。あ、私はロウエナっていいます。スカーレットレイク・タウンから来ました。」
ケインズ「ほほーう。スカーレットレイクのお方でしたか。……ふむ、お主からは良い魔力を感じるのぅ。お主、魔法使いじゃろう?」
ロウエナ「魔法使いと言えるのかは分かりませんが……魔法を使って戦うことはできます。」
ケインズ「ふむ?そう言うと?」
ロウエナは魔導剣をケインズに見せた。
ロウエナ「こういう武器を使ってるんですが……。」
するとケインズは目を丸くして驚いたような表情を見せた。
ケインズ「……これは!?まさか、あの[メイジセイバー]じゃないか……!?」
ロウエナ「? この武器について知っているんですか?」
ケインズ「あぁ、600年前に魔王を倒した英雄の内一人が使っていた武器。その刃に魔法を纏わせて攻撃する唯一無二の武器じゃ。しかし、その武器はかの英雄しか持っていないはず……!お主、それを何処で?」
ロウエナ「えっと、実は……」
ロウエナはスカーレットレイク・タウンで起きた事件とあの夢について説明した。
ケインズ「ふむ……ロウエナ殿、少しいいかな?」
ロウエナ「はい……?どうぞ。」
ケインズはそう言うと、ロウエナに自身の杖をかざし魔法を唱えた。暫くしてケインズは静かに口を開いた。
ケインズ「ロウエナ殿、お主について分かったぞい。お主は……かの英雄、アーシアの生まれ変わりなんじゃ。」
ロウエナ「な……!?」
ケインズ「お主が見た夢とやらでアーシアがお主の事は何でも知ってるような素振りだったのは、自身の生まれ変わりだからじゃ。そしてお主がアーシアの力を何の苦もなく扱えるのも、彼女の生まれ変わりだからなんじゃよ。」
ロウエナ「そ、そうだったんだ……。私が……アーシアさんの生まれ変わりなんだ。なんか、不思議な感じ。」
ケインズ「おっと、噂をすれば……。張本人が出てきたわい。」
ケインズがそう言うと、ロウエナの背後からアーシアの幽体がひっそり姿を現した。
アーシア「ちょっとちょっとケインズ爺さん。ロウエナが困惑すると思って秘密にしておいたのに、何でばらしちゃうかなぁ。」
ケインズ「ほっほっほ。事実なんじゃから問題なかろうよ。それに、本人は満更でもなさそうじゃよ?」
ロウエナ「ま、まぁ……最初は驚きましたけど……何となくそんな気はしてたんです。アーシアさんと初めて会ったあの時、まるで自分と話しているような気分になって……見た目もそっくりだったから。」
アーシア「なぁんだ、察しはついてたのね。」
ケインズ「あぁ、そうじゃ。ちなみに言うとアーシアはワシの教え子なんじゃよ。昔はわしも最前線で戦っていた魔法使いだったからの。」
アーシア「そうだ、ケインズ爺さん。私が修業してた時のプログラム、ロウエナにやらせてみようよ!ロウエナはルーツは私なんだから恐らく効果あるはず!」
ロウエナ「随分あてずっぽな推測ね……。」
ケインズ「ほっほ。構わぬよ。ロウエナ殿。お主はやりたいかの?」
ロウエナ「はい、是非。アーシアさんから貰った能力をなるべく早く使いこなせるようになりたいので……。」
アーシア「おぉ!やる気だねぇ。」
ケインズ「承知したぞい。では、これからポータルを生成するから、中にいる魔物を倒し、[倒した証しになるようなもの]をもってくるのじゃ。さあ、頑張りなさい。」
そう言うとケインズはポータルを生成し、ロウエナを送り出した。
ポータルの中にて。
ロウエナ「ここに居る魔物を倒せば良いのね。……あのデカブツかぁ。」
ロウエナの視線の先には、巨大な岩石とスライム状の物質が混ざりあった様な魔物[スラゴーレム]が居た。スラゴーレムはその巨体を揺さぶりながら、こちらを威嚇しているようだった。
ロウエナ「なんかすごい強そう……でも、こいつを倒さなきゃ私は強くなれない!いくわよ!」
ロウエナは覚悟を決めると、いつもの通りダークネスチェーンでスラゴーレムを拘束しようと試みた。しかし、スラゴーレムの力が思いの外強く、ダークネスチェーンはいとも容易く千切られてしまった。
ロウエナ「な……!そんな……!?」
ロウエナは即座に敵から間合いを取り、態勢を立て直す。
ロウエナ「ダークネスチェーンが使えないってことは……実力で戦えって事ね!挑むところよ!」
ロウエナは再び間合いを詰め、近接攻撃用の魔法[メアブロー]でスラゴーレムを攻撃する。するとスラゴーレムは反撃しようとその巨腕を振り上げ、ロウエナに向かって叩き付けようと振り下ろした。
ロウエナ「……ふっ!」
ロウエナは攻撃をステップで避け、スラゴーレムがよろめいた所へ再びメアブローを叩き込む。しかしスラゴーレムのスライム状の物質により、攻撃が思ったように通らない。
ロウエナ「くっ、まるで効いてない……!こいつは斬った方が良いみたいね……!」
ロウエナのメアブローは殴るような攻撃の為、スライム状の物質により衝撃が吸収されてしまっていたのだ。
ロウエナ「どうすれば……ん?」
ロウエナが悩んでいると、傍らから小さな死神のような生き物がふらりと現れ、ロウエナの方を見て微笑むと、スラゴーレムの方へ向かっていった。それは死神のような、というか、死神のような服を着た自身の顔位のサイズの少女だった。ロウエナが謎に思っていると、その少女は突如人間並みの大きさになったかと思うと、持っていた鎌を振り上げ、スラゴーレムのスライム状の物質を全て切り裂いた。そして、ロウエナの方を再び見て親指を立てると、また元の大きさに戻りロウエナの元へ戻ってきた。
ロウエナ「よく分からないけど、これでアイツを粉砕できるって訳ね!」
ロウエナは再びスラゴーレムにメアブローを叩き込む。するとスラゴーレムはいとも容易く崩れ落ちてしまった。
ロウエナ「ふぅ、ようやく倒せた!死神さん?でいいのかな?ありがとう!」
ロウエナがそう言うと死神のような服を着た少女は微笑んで何処かへ消えてしまった。
ロウエナ「何だったんだろ、あの子……?まあいいや、後でアーシアさんに聞こうっと。それよりも[倒した証しになるようなもの]を探さなきゃ……。」
ロウエナは証となるものを探す為、スラゴーレムの残骸を漁ってみた。すると、中から綺麗な紫色の宝石が出てきた。
ロウエナ「うん、これならいいかな?とりあえず戻ってみよっと。……でもどうやって戻れば良いんだろ?」
ロウエナが考えていると、スラゴーレムの残骸があった場所にポータルが現れた。
ロウエナ「あ、あのポータルに入れば良いのね。」
再び図書館。
ロウエナが戻ってくると、ケインズは拍手で出迎えてくれた。
ケインズ「素晴らしい。さすがアーシアの生まれ変わりじゃな。うむ、証もちゃんと持っておるの。」
アーシア「さっすが!スラゴーレム、結構強かったでしょ?」
ロウエナ「うん、メアブローが弾かれちゃって……でも、死神みたいな服を着た小さな女の子が助けてくれて。」
アーシア「あぁ、あの子、ちゃんと生きてたのね……。あの子はナナっていってね、いわゆる使い魔みたいな子よ。ぶっちゃけほんとに死神ね。元々私に憑いてたんだけど、私が死んじゃったから主を失って放浪してたのかな。でもロウエナに私の力が移ったから、あの子はロウエナを新たな主と認識したのね。」
ロウエナ「死神……の割りに明るいなぁ。アーシアさん、ナナが出てくるには何か条件があるの?」
アーシア「あの子は無口だけど、主の意志を感じ取って勝手に来てくれるわ。来て欲しいと思えば出て来てくれるわよ。」
アーシアの話を聞いてロウエナがナナを呼ぶと、再びひっそりとナナが姿を現した。ナナは先代の主であるアーシアを見て、懐かしかったのかアーシアの元へ近寄っていった。そして、アーシアの前で、何かをねだるような仕草を見せた。それを見たアーシアがナナの頭を撫でてやると、ナナは死神とは思えない可愛らしい笑顔を見せた。
ロウエナ「何あれ……!かっわいいー!!」
ケインズ「(さすが生まれ変わり……反応が全く当時のアーシアと同じじゃ……。)」
ロウエナが目を輝かせていると、ナナはロウエナの元へ来て再び人間並みのサイズになると、ロウエナに握手を求めた。
ロウエナ「えっと……ナナちゃん、これからよろしくね?」
ロウエナがナナの手を握るとナナはまた可愛らしい笑顔を見せ、元の大きさに戻った。そして、何処かへ去っていった。
アーシア「さて……無事試験も合格ってところかしら。ケインズ爺さん、ロウエナにもあれをやってあげて。」
ケインズ「うむ、勿論。ロウエナ殿、そこに立って心を落ち着かせて待っていて欲しい。それと、さっきスラゴーレムから拾ったあの石を持っているんじゃ。」
ロウエナ「? 分かりました。」
ロウエナはケインズが示した魔法陣の上に立ち待っていると、ケインズが何かの魔法を唱え始めた。すると持っていた紫色の宝石から紫色の光が出始め、ロウエナを包み込んだ。その状態が10秒程続いた後、光は止み、持っていた宝石が消滅した。
ケインズ「よし、もう大丈夫じゃよロウエナ殿。今のはお主の能力をあの宝石に含まれていた特有のマナにより強化したのじゃ。特有と言っても、通常の魔法使いが使うマナより少し近接攻撃向けなだけじゃがの。じゃが、この強化によってお主の使える魔法は増え、今まで使っていた魔法もより強化できるじゃろう。」
アーシア「具体的には[メアブロー]が[ナイトメアブロー]となって攻撃を当てたときのヒット数、攻撃速度が上がったり、味方を強化する[オーラ]系の効果が強化されるわ。あと……テレポートも出来るようになってるんじゃない?」
ロウエナ「……えっ!?」
ロウエナがアーシアにやり方を聞いて試してみると、まだ距離は短いもののテレポートすることができた。
ロウエナ「す、すごい!やっと私もテレポートができるのね……!」
アーシア「ただ、マナの消費量も多いから気を付けてね。あ、それと魔導剣によってテレポートを使うと、テレポートした区間に敵がいればダメージを与えられるの。回避しつつ同時に攻撃もできる、一石二鳥ね。」
ケインズ「さて、ロウエナ殿。またある程度身体が慣れてきたと思ったら、ワシの所へ来なさい。また試験をして能力を更に上げてあげよう。これはワシからの選別じゃ。」
ロウエナ「これは[転移の書]!ケインズさん、ありがとうございました。」
ケインズ「最近妙に嫌な予感がする。ロウエナ殿、これからの冒険はくれぐれも気を付けるんじゃぞ。」
ロウエナ「はい、ありがとうございます。」
ロウエナはケインズに礼を告げ、図書館を後にした。
──かくして新たな力を手に入れたロウエナ。こうしている間にも世界を覆う暗雲は拡がり続けている。果たして、ロウエナはこの世界を救える程の力を手に入れる事は出来るのか……。