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第十章 ー逢うべくして逢うー

ロウエナは他のメンバーが眠っても自分だけ眠れなかった。何故か心に不安が過ったのだ。ロウエナはベッドから出ると、宿屋のバルコニーに出た。柵に寄りかかり空を見上げると、無数の星が散らばり、にわかに紅く染まった月が妖しく輝いている。そして、その月から発せられた光が空を薄紅色に染めていた。そう、この日は年に一度起こると言う天候現象[紅夜]だった。


ロウエナ「そうか……今日は紅夜なのね。」


ロウエナは幻想的な空を見上げながら呟いた。外に出れば多少気分も落ち着くと思っていたが、やはり不安な感じが抜けず、落ち着かなかった。


ロウエナ「……それにしてもこの感じは何なの?変に落ち着かない……何か起こるのかな……。」


ロウエナがとりあえず部屋へ戻ろうとすると、突然目の前に小さな吹雪が起こった。そして、水色の髪の少女が姿を現した。


ロウエナ「……あ!君は……!」


ロウエナが驚いていると、少女はロウエナの手を掴んで急かすようにこう言った。


水色の髪の少女「ロウエナさん……お兄さんが……お兄さんが大変なの!」

ロウエナ「え、えぇ??どうゆうこと……?君は誰……?」


ロウエナが混乱して問い掛けると少女は早口で語り始めた。


ユア「私はユア、詳しいことは後で話すから!とりあえず戦えるように準備をして!はやく!」

ロウエナ「う、うん……?」


ロウエナは訳の分からないまま魔導剣を持ちだし、念のためみんなに置き手紙をしておいた。


ロウエナ「とりあえず準備はできたけど……?」

ユア「じゃあ、わたしの手を握ってて!絶体離しちゃダメだよ!」


ユアはそう言うと、転移魔法を使い、シグナスの居る砦にロウエナと共に転移した。


砦では、衛兵隊とデビル・バッファローとの戦いが繰り広げられていた。


シグナスはユアに動くなと言われていたが、彼の性格がそうさせたのか、無理をして戦い続けていた。しかし、素早いデビル・バッファローの攻撃を全て避けられるだけの体力は残っていなかった。彼にデビル・バッファローの強烈なパンチが当たり、シグナスは吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れ込んだ。


ロウエナ「あ、あれは……!!兄さん!?」


遠目では判りにくかったが、それは確かに兄だとロウエナは確信した。


シグナスは立ち上がろうとするが体が言う事を聞かない。シグナスがもがいている様子を見たデビル・バッファローは、側に居た衛兵を蹴散らし、シグナスの元へ行き、その手に持った巨大なハンマーを降り下ろそうとしていた。


シグナス「く……くそ……!……みんな……ロウエナ……!すまない……俺は……!」


シグナスが覚悟を決めたその時。


ロウエナ「くっ……!!やめろぉぉぉぉぉぉ!![メア・ライトニング]ッ!!」


ロウエナの放った魔法、メア・ライトニングがデビル・バッファローを貫いた。デビル・バッファローはその衝撃で持っていたハンマーを後ろへ落とした。


シグナス「……!?何だ……!?」


シグナスが呆気に取られていると、シグナスの前にロウエナとユアが立ち塞がった。


シグナス「ロウエナ……!?どうして此所に……?」

ロウエナ「詳しい話は後!ユア、兄さんを安全な所に!」

ユア「分かった!」


ユアはシグナスを引きずっていった。


ナヴァル「おっと、こいつは想定外だな。援軍か……。……ん!?」


高見の見物をしていたナヴァルは突然現れたロウエナの魔力を感じ取って、彼女にかつて自身を倒したアーシアの気配を感じ取った。


ナヴァル「あの感じ……アーシアじゃないか……?いや……だが奴は魔王サマが殺した筈だ……ならアーシアと同じ魔力を持つアイツは何者だ!」


ナヴァルはアーシアに一度倒されているため、その力を恐れていた。ロウエナからアーシアと同じ魔力を感じ取ったナヴァルは、この先をデビル・バッファローに任せ逃走する事にした。


ナヴァル「アイツがアーシアじゃないとしても……その力が同じものだと言うなら話は別だね?……心苦しいが、僕は一旦撤退させて貰うよ。じゃ、デビル・バッファロー、後は任せたよ……はーっはっは!」


ナヴァルは逃走したものの、デビル・バッファローを放っておく訳にはいかない。衛兵隊も戦える人員は少なく、シグナスも深手を負ってしまった。戦えるのは自分だけ。ロウエナはその意志を固めていた。


ロウエナ「私が今頑張らないと……みんなが死んじゃう……!そんなのは絶体に嫌だ……!だから……!」


ロウエナはデビル・バッファローに斬りかかる。デビル・バッファローの厚い皮は実体剣の攻撃はほぼ完全に遮断できるが、魔導剣の様な魔法を伴う攻撃には弱かった。ロウエナが[メアブロー]を強化した[ナイトメアブロー]で攻撃すると、デビル・バッファローはよろめき、体勢を崩す。


ロウエナ「よし……効いてる!?でも……あの厚い皮のせいで完璧とはいかないみたいね……。でも、攻撃し続けてればいつか倒れる筈…!」


ロウエナはその後も攻撃を加え続けた。しかしデビル・バッファローも黙ってはいない。その巨腕と足を振り回してロウエナを払い除けようとする。ロウエナはテレポートで回避しつつ、隙を見つけてナイトメアブローを叩き込んでいたが、マナ切れを起こして回避に失敗、デビル・バッファローのパンチを食らって吹き飛ばされてしまった。


ロウエナ「うわぁあっ!!…しまった、油断した──!」


ロウエナは強化魔法[メアプロテクト]を使っていた為ダメージは抑えられていたものの、マナ切れの反動で体が硬直してしまった。


ロウエナ「く……!こんな時にマナ切れ……!」


ロウエナが棒立ちになったところに、デビル・バッファローがタックルしようとこちらに向かってきていた。


ロウエナ「こ、このままじゃ……!!」

ユア「[フロスト・ウォール]!」


ロウエナが覚悟を決めたその時。ユアが駆け付け、分厚い氷の壁を生成する魔法、フロスト・ウォールを使う。突如目の前に氷の壁が現れた為、デビル・バッファローはそのまま壁に激突し、後ろへ倒れ込んだ。更に、倒れた先に赤い魔方陣が現れる。


???「[アトラクト・メテオ]!!」


と掛け声が聞こえた直後、デビル・バッファローに無数の火球が降り注いだ。デビル・バッファローに火球の火が燃え移り、その分厚い皮を焼かれて失った。


ロウエナがその場に立ち竦んでいると、金髪のツインテールの少女が目の前に現れた。


ツインテールの少女「まったく……マナ切れなんて情けないわね!それでも魔導剣の使い手なの?もっとしっかりしてよね!ユアちゃん、この鉄砲玉を回復してやって!」

ユア「おっけ!」


ユアがロウエナを回復する。ロウエナは突然現れた少女に困惑しながらも、礼を言った。


ロウエナ「ごめん……ありがとう。」

ツインテールの少女「礼なら後ででもいいわよ。とにかくあのデカブツをさっさと潰すわよ!さ、その剣を突きだして。」


少女に促されてロウエナが剣を突きだすと、少女も剣を取り、ロウエナの剣とクロスさせた。


ツインテールの少女「さぁ、やるわよ!せーので魔力を込めて一緒に[インフェルノ・クロス]って唱えて!」

ロウエナ「う、うん。分かった!」


二人はクロスさせた剣に魔力を集中させる。ロウエナの闇の魔力とツインテールの少女の炎の魔力が混ざり合い、黒い炎となって燃え上がる。


ツインテールの少女「さぁ、行くわよ!複合魔法……」

二人『インフェルノ・クロス!!』


二人がそう唱えると、黒い炎が巨大な十字架の形を象る。そして、倒れたデビル・バッファローに向かって飛んでいき、その巨体を貫いた。やがて炎の魔力によりデビル・バッファローは燃え上がり、更に闇の魔力によって跡形もなく消滅した。



ロウエナ「倒……せた……?」


ロウエナが佇んでいると、ツインテールの少女は呆れた様な顔で答えた。


ツインテールの少女「はぁ……見れば分かるでしょ?ほんとにしっかりしてよね……。」

ロウエナ「う、うん……。そう言えば、君は何者……?」


ロウエナが問うと、ツインテールの少女は腰に手を当てて少し偉そうに名乗った。


アリア「私はアリア。アリア・バーゼラルド。あんたと同じで魔導剣の使い手よ。ま、属性とか細かい部分で違うところはあるけど殆ど同じね。」

ロウエナ「え……?」


ロウエナは魔導剣を使っているのは自分だけだと思っていた為、突然現れたいるはずの無い別の魔導剣の使い手と言うアリアの言う事が信じられなかった。ロウエナが混乱していると、アーシアが姿を現した。


アーシア「ロウエナ、この子は英雄と同質の力を持っていた数少ない一族の末裔よ。特にバーゼラルド一族は私と同質の力が使えた一族。私が闇の力を扱う一方、バーゼラルドは炎の力を扱っていたわ。」


アーシアが補足すると、ロウエナはようやく整理がついたようだ。アリアはアーシアの姿を見て、ロウエナがアーシアの生まれ変わりだとすぐに見抜いた。


アリア「ふぅん……。あんたは英雄の生まれ変わりって事なのね。まだその力を扱いきれてないみたいだけど。」

アーシア「さすがバーゼラルド一族の子ね……説明せずとも分かってるんだ。」

アリア「そりゃそうよ。そもそも見た目が酷似してる時点で気付くわ。」


アリアはそう言うと、バカにするなと言った表情を見せた。


アリア「ま、とにかくこんなところに居ても気味悪いし……スカーレットレイクに行くわよ。詳しい話はスカーレットレイクについてから話すわ。」

ロウエナ「分かった……とにかく帰ろうか。おーい、ユアちゃーん!」


ロウエナがユアを呼ぶと、シグナスと共にこちらへ駆け寄ってきた。


ユア「はいはい、スカーレットレイクに行くんだよね!」

ロウエナ「そういえば兄さんは大丈夫なの?」


ロウエナが心配そうにシグナスに聞くと、シグナスは首を縦に振った。その間にアリアはスタスタと歩いていっていた。


アリア「ほーらー、早く来ないと置いてくわよー!?(って言っても私、道分からないんだけど……。)」

ロウエナ「あ、待ってよー!今行くからー!!」


かすかに何か聞こえた気がするが気にせず一行を引き連れてアリアの後を追った。



──ユア、そしてアリアの協力により、シグナスと衛兵隊、そして街を守れたロウエナ。彼女自身、また一段と強くなった気がした一日なのであった。

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