ドキッ!?怪人だらけの大運動会⑤
結構な分量になってきたので『番外編』を章として2章から分けました。ちょっとコメディ色強めです。
場所は変わらず第2アリーナ。
「まずいな……」
「ああ、確実に俺らのせいだ……」
俺と金堂は苦い顔を浮かべるしかない。二人三脚で結束バンドをちぎったC組は失格。続く大縄跳びでは1位が医療課、2位がBクラス、3位が技術課という結果となり、C組は最下位となっていた。
「いやほんとに面目ない……」
「まさか一回も跳べないとは……」
1人2種目の競技とは別のクラス種目である大縄でまさかの0回。
「根っこでもはってるのかお前は」
「嫌なこと思い出すからそんなジョークはやめてくれえ!」
金堂は涙目で声を荒げる。2万の植物族が町を攻めてきたのは記憶に新しい。植物関係のネタには気を付けないとな……。
「……あながち冗談でもない。」
植物族いるし。
現在行われているのは仮装レース。300mのコースを走る競技だ。普通のレースと決定的に異なるのがスタートから100m地点に置かれた長机と更衣室のような大きなボックス。
走者は長机の上に並んでいる折りたたまれた紙を選び、そこに書かれている服装に着替えて残りの200mを走らなければいけない。
着替えると言っても体操着を放置するわけにはいかないので更衣室の中で体操着の上から衣装を着るだけだが、走りづらい服装を引いてしまうと残りの200mはキツイ訳だ。単純な走力と運が絡む実に運動会らしい種目といえる。
現在も過酷なレースが繰り広げられているのだ。うわ、Cクラスの後明くんが鎧兜を引いてしまったようだ、もう無理だぞ。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「どうした!?」
なんだコイツ、横で金堂が急に叫び出した。ちなみに俺らは相変わらずアリーナの端で待機中。次は綱引きだからな。金堂の視線の先にはチャイナドレスに身を包んだ茶髪の女の子の姿が。Aクラスのリーダーっぽい子だ!
「あちょおおおおおおお!!!」
しっくりくる服装だったのか猛スピードで駆けていく。もし金堂がカメラを持っていたらスリッドのあたりとかを激写するのだろうか。
カシャ
カシャ
カシャ
カシャ
「持ってんのかよ!!!」
「いや、だってあんなに揺れ――」
「黙れ!」
びっくりしたコイツこんなキモかったっけ?
『はぁ~はっはっはっはっは!!!!』
そうしているうちにアリーナ上空のスクリーンから誰かの野太い笑い声が聞こえてきた。そういえばこの種目は他の学年も行ってるんだよな。
「げ!?」
スクリーンに映し出されていたのは第1アリーナ、三年生のレースだ。そこには、どアップで笑いながら疾走する筋骨隆々の男の姿が……
あれは"6人の例外"天野学園次席の重鳴灯先輩!?てか
「なんで裸エプロンなんだよ!」
その走り姿は威風堂々。まるで聖火ランナーのような、だがしかしムキムキの大男が裸エプロンに身を包んでいても気持ち悪いだけだ。横を見ると金堂が吐きそうになっていた。
「あれも撮っとけよ」
「撮るかッ!!!」
『コラ~!!重鳴くん体操着の上から着ろっていったでしょう!!なんで脱いでるのよ~~~~!!』
『は~はっはっはっはっは!』
『だ~もう失格失格~~~~!!!!!』
向こうの会場は悲鳴と爆笑の渦のようだ。3年生のアナウンスは飯綱先生らしい。眼鏡クールビューティな彼女からは想像もつかない金切声だな。
でもまぁ、一年に一度のイベントだ。盛り上がるのはいいことに決まってる。重鳴先輩も敢えてピエロになっているのだろう。
『はっはっはっはっは』
だよね?
―――――――――――――
その後も仮装レースは進行し、次の綱引きではなんとか3位に入ることができた。これで午前中の非魔力競技は終了した。残るのは午前唯一の魔力競技、魔力球合戦だ。
その名の通り規定サイズの魔力球を形成しぶつけ合う種目。魔力量が多いAクラスBクラスが有利な種目だ。
『続いてはいよいよ魔力競技、この競技では魔力を使うことが許されます!ただし、この魔力球合戦では魔力球の形成と投擲時の腕力強化のみが許されます!』
珍しく黒崎が丁寧に話している。観客を盛り上げるためにルール説明は丁寧にしてるのか?魔力球合戦は各クラスの総当たり、制限時間は5分。5分間でより多くの脱落者を出した方が負け、ということだ。
『それでは初戦はBクラスvsCクラス!!!いきなり因縁の対決だあ!!』
黒崎が煽る。ヒーロー候補生ならではの戦いを見れるということで会場のボルテージは凄まじい。割れんばかりの歓声だ。大和町って人多いよな……。開始ということでBクラスと俺たちCクラスはアリーナ中央のコートにスタンバイする。
テニスコート2つ分くらいだろうか?約40人×2クラスのヒーロー候補生が狭しと並ぶ。双方の陣地には白線が引いてある。ここから向こうには出るなということか。Bクラスまでの距離は15mほど、金堂であっても十分に届く距離だ。届くよね?
「フッ。因縁だなんて黒崎先生も人が悪い。まるでボク達Bクラスとそこの落ちこぼれ達が同格みたいじゃないか。」
コートの反対側から憎たらしい声が聞こえてくる、B組のリーダー格田辺だ。眼鏡をクイと上げながら得意げな顔で続ける。
「魔力の量の大小とは生物としての存在価値の差に等しい。キミ達がこの種目で勝てる道理なんてないんだよ!ヒヒヒヒㇶ」
つられるようにB組全体から嘲笑が起こる。男も女も関係なくみんながこちらを見下した表情を浮かべているのだ。てか笑い方キモッ
「笑い方キモッ!?!!?」
金堂も同じことを思ったようだ。うん、正直台詞よりそっちが気になるよな。金堂が人をキモイと言えるかは微妙だが。
「なんか失礼なこと考えたか?「金堂が人キモイと言える立場かなって」
「いや言うなよ傷つくから。すごい即答だったね今!?」
しかしBクラスの露骨な挑発を適当に受け流せるのは俺たちだけだったようで、Cクラスのみんなは怒りに滾っている。
「ぐぬぬ~バカにしやがって!」
「絶対ぶっ○してやる!」
「負けないぞ!!」
なんかやばいこと口走ってるやつがいるな、と思ったら後明くんだった。なんでまだ兜つけてるんだ!?
『さあ、魔力球はサイズが上限サイズが決まっているので、拳より大きなものはつくらないでね!そして選手たちには安全の為このプロテクターを装着してもらいます!』
黒崎のアナウンスと同時にコートの自陣にヘルメットやジャケットが出現する。これは最近技術課が完成させたと噂のプロテクター。
魔力が直撃した場合に抵抗を極限まで減らし、軌道を逸らすことができる代物だ。これによって仮に魔力球が直撃コースでもヌルンと逸れてくれるのだ。
ただし、これは試作中で魔力が当たるともともと黒いコーティングがオレンジに変色してしまうと聞いているが……
『実際にダウンするまで戦うのは危険なので、そのヘルメットかジャケットがオレンジになった人は脱落とします!頑張ってね!』
なるほど。逆にその性質をヒットしたかどうかの判断に利用するのか。これなら力加減を気にしないでもよさそうだ。
「絶対勝つぞ!勝って午前中は俺らが32点総取りだ!」
『おおおおお!』
Bクラスが円陣らしきものを組んでいる。そうだ、リーグということはAクラスとも戦うのだ。ここで負けるわけにはいかない。
『さぁ準備はよろしいでしょうか!合図と同時に激しく魔力球を投げ合ってください♪では……よーいスタート!!』
「「「「「「魔力球!!!!!!」」」」」」
始まると同時にみんなが魔力球を形成する。掌に魔力を集めて体外で球状にまとめて放つ、全ての技の基本にして神髄。実戦でも多くのヒーローが使っているほど実用的なこの技。
計80人にも及ぶヒーロー候補生が互いに激しく撃ち合うその光景は正に圧巻。
ライフルの射撃戦よりも過激なその攻撃の嵐は観客席のテンションを限界を突破して盛り上げていく――!
「絶対まけないんだから!」
「フリーパスの為にいいいい!!!」
「Aクラスにだって勝って見せるッ」
各々が目標を叫びながら全力で魔力球を投擲する。1人、また1人と被弾し脱落していく。自陣の中でなら回避行動は可能だが、身動きがとりづらい上、雨のようなこの魔力球の弾幕の中では不可能に近い。自分がやられる前に相手を倒す。1人倒れたら2人倒す。
そうした前のめりな姿勢が勝利への近道なのだ。
「「「「「「「うおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」
いつしか互いの台詞は雄叫びのみとなり、アリーナを震わせる。爆煙渦巻く中、その熱い戦いは見る者の心を揺さぶった。
『ワアアアアアアアア!!!!』
3つほど敗因を説明しよう。
まず俺、米村瀬雅は魔力を練ると悪魔の姿が露わになってしまう。回避をしようにもクラスメートに囲まれている。弾こうとすればジャケットやヘルメットに当たるかもしれないし、味方に当たるかもしれない。
つまり俺はこの競技において何もできない。早々に躱しきれない流れ弾で脱落してしまった。
次に金堂。コイツは開始と同時に自分の魔力球の制御を誤って暴発。周囲のクラスメート2人を巻き込んで勝手に脱落していった。今金堂の姿が見えないのはどこかで折檻を受けているからだろう。
そして最後、この競技におけるCクラスの勝ち筋は上位種プラッディと吹雪のような魔力球が打ちあえる程の魔力を持つミカンなわけだが
彼女はこの前の種目、綱引きで疲れすぎてグロッキー状態で救護室へ運ばれていった。
つまりCクラスはただでさえ不利な上に数でも劣り普通に全クラスに押し負けたのであった。
――――――――――――――――――
ここまでの点数
Aクラス
109点
Bクラス
91点
Cクラス
40点
技術課
79点
医療課
77点
ここまで読んで下さってありがとうございます!
一人称の方が書きやすいなぁ……(手遅れ)




