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正義の条件  作者: ありと@
第2章『白い薔薇の少女』
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34.人間領拡大作戦――学園最強vsダンデライアン①

ブクマ増えてる……嬉し( ;∀;)

――大和町外部



 天野学園次席の重鳴灯と第三席の紫芽式乃はリュウゼツランから逃れてから一日以上が経過している。



 通信機器が破壊された今、大和町に戻り応援を呼ぶのが先決である。




「紫芽、まただ。隠れるぞ。」


「~~~~~ッイライラするぅ!」




 だというのに、彼らは未だに大和町に戻れずにいた。リュウゼツランが登場してからなのか、他の要因なのか、数百、ヘタをすれば数千規模の植物族が大行進していたからだ。




 もともと大和町周辺の怪人領は植物族のテリトリーだった。それは灯たちも知っていたが、そもそも彼らがリュウゼツラン相手に初動が遅れたのは、あまりにも閑散とした怪人1人いない景色だったからだ。




「なんでまた急に……」



 灯は大昔に崩れたであろう建物の影に隠れながら怪訝そうにしている。

 2人の前に広がっているのは怪人の大名行列。黄色く太陽のような輪郭に茶色がかった粒粒がぎゅうぎゅうづめになった不気味な顔。群れを成して移動するその怪人達は例外なく"ヒマワリ"の怪人であった。




 昨日は何事もなかったのに、今は断続的に怪人と遭遇するせいで碌に休憩も移動もできないでいたのだ。

 

 通常であれば果敢に挑んでいくのだが、リュウゼツランに受けた"封印"。あの怪人の固有能力のせいで灯と式乃の固有能力は封じられていた。どうやらリュウゼツランが倒れない限り効果は無限に続くようだ。



 上位種でもない限り、固有能力がなくても十分に戦闘できるだけのステータスはもっているのだが、敵の数が千にも届きそうなると話は変わってくる。




 自分達が倒れるすなわち鏡に救助が向かわなくなるということだったからだ。




「くそ……」



 短く切りそろえた髪を掻きながら焦る灯。足止めをすると言って2人を逃がした鏡、既に1日が経過しているとなると……




「あ~あ、早くどっかいけよなぁあの怪人。ウチ花とか別にすきじゃないし……はぐはぐ。」




 悩む灯をよそに、式乃は移動する怪人の群れを忌々しげに睨みながら携帯食を齧っていた。一日の町外活動で普段からあまり整えられていないショートヘアは更にボサボサになっている。一見能天気にも見えるその発言に灯は思わず聞きたくなってしまった。




「紫芽、金堂が心配じゃないのか?」




 責めるような口調にならないように尋ねる。しかし式乃から帰ってきたのは予想外の言葉だった。




「ウチらって強いよな?」



「うん?あ、ああ。少なくとも学園内でトップ集団になれるだけの力はあるつもりだ。」



 ふんふん、と頷く式乃。そのやりとりの真意が分からず間抜けな顔をする灯、鍛えられた体とのギャップがなんともシュールだ。式乃は持っていたスティック状の携帯食を指揮棒のように怪人の群れに向けた。



「例えば固有能力がなくったって、あそこの真ん中に2人で入れば全滅させてやれる。」

「紫芽、それは」

「わかってるって、そんなことしない。」



 思案顔の式乃は確かめるように告げた。勝算がないかと言われればそんなことはない、が。応援を呼ぶという目的の前にリスクを負う愚は犯してはいけないのだ。




「でも、固有能力なしで戦うんだったら、ウチらはきっと鏡にかなわない。」

「……そうだな。」



 3年の序列争いは固有能力ありの模擬戦で決定する。灯や式乃はその能力の強力さで鏡に勝ってはいるが、仮に固有能力なしで、魔力と体術のみで戦うのならば金堂鏡の魔力量と剣技の右に出る物はいないだろう。


 そんな彼女が第五席に落ち着いているという事態が"固有能力(M・アビリティ)"がいかにチートであるかを示しているが。




「ウチは頭がよくないから、今も灯の言われたとおりに動くからさ。」



 告げる式乃、彼女はその戦闘センスとは裏腹に作戦を立てて動くということが苦手だった。今も1人ならとっくに怪人の群れに飛び込んでいるだろう。しかし式乃の周りには頭の冴える仲間達がいる。彼女は仲間の言う通りに力を振るうだけだった。



「だから、今ウチより強い鏡の"作戦"もウチは疑わない。鏡はあのキモイトゲトゲを足止めして、ウチらは応援を呼ぶ。」




 それだけだ。二カッと八重歯を見せる式乃。灯は思わず見とれてしまった。そうだ、第三席、紫芽式乃とはこういう人間だ。恐ろしいほどに真っ直ぐで仲間を信じる熱い心。そんな彼女だからこそあんなにも熱い(・・・・・・・)、勇気に溢れる固有能力を持っているのだ。灯は再認識した。





 怪人の群れはいつの間にか遠くへ去ってしまっていた。灯は携帯食を取り出して一気に齧りつくと雄々しい顔をつくり気合を入れた。





「よし、行くぞ。」


「おうよ!」



 式乃も勝気な笑顔を作ってこれに応えた。








――――――――――――――――――――


――――





「まさか町外がこんなことになっていようとは……」

「ええ、町内もひどいって報告が来てますよ……」




 大和町外の荒れ地に小声の会話が響く。


 その集団は10名程の精鋭だった、半数が学園の教師、つまり戦争を勝ち抜いた猛者であり、残るメンバーも天野学園の卒業生の中で屈指の実力者たちであった。



 彼らは失踪した3年生達の捜索を任されている一団である。町の外は怪人が跋扈する恐ろしい領域と化していた。特にヒマワリのような怪人が群れをつくってズルズルと動いているのだ。




 この小隊のリーダーを任されている筋骨隆々な体育教師は、逸る心を抑え込んで怪人と遭遇しないように進路を決める。


 教師の名は重鳴、次席である灯の父親だ。私的な感情もあって彼は人一倍捜索に力を入れる。





 そんな時、廃墟とも荒れ地ともいえる町外で遠くから2つの影の接近を見つけた。敵か?いや、それは見間違えるはずもない逞しくなった我が子の姿だった。





「灯!」


「親父!」

「ゲ……ギガンテス先生!」



 2人は互いに駆け寄り、敵地の最中であるのも忘れて親子の抱擁を交わした。

 灯と一緒だった式乃は筋肉ダルマ親子のスキンシップを引いた目で見ていたが。小隊の皆も親子の再開に穏やかな視線を送っている。




「無事だったか。」



 腕や肩をはたきながら、灯に怪我がないかチェックする教師。灯はすぐにハッとなった。



「そうだ親父、聞いてくれ。強力な怪人が居て、金堂が足止めしている。通信機器が壊されて応援を呼びに来たんだ。」



「何!?お前らでも手に負えない相手なのか……?」




 驚く体育教師。学生ではトップの強さを誇る3人が分断と逃亡を余儀なくされるほどの相手。そんな怪人がそう簡単に現れるとは考えづらかった。




「ああ、固有能力を封じられているんだ。」


「……そいつは厄介だな。」



 兎に角一大事だ。灯の言うことが本当なら金堂鏡は今もその怪人を相手にしている。だがこの場に居る10人を加えても果たして勝てるかどうか。そんな教師の考えは式乃の焦った声に遮られた。





「みんなっ!周り見ろ!!」





 その言葉にすぐに臨戦態勢を取る面々。流石に精鋭だ、町内でマツボロスを相手にしていた候補生たちとは練度が違った。が







「なんだ……?」



 それは誰の呟きだったか。小隊の周囲はすべて黄色く染まっていたのだ。一体、いつの間に囲まれたのか?そんなことはこの際どうでもよい。



 問題なのはこの本能的に降りかかってくる恐怖だ。



 1000を超えるヒマワリの怪人がぐるっと大きな円陣をつくり、その中に小隊は閉じ込められてしまっている。光の方を向くことなく、すべてのヒマワリが小隊のほうに顔面のない茶色い中央部を向けている。


 一匹一匹がそれほど脅威ではないのは分かっていたが、この数と、言葉もなくこちらを向いた物言わぬヒマワリの花は理屈抜きで不気味だった。




 そして、恐怖の根源が小隊に向かって歩みだしてきた。








「ほお、なかなかの実力者が揃っている様子。配下に巡回させておいて正解でした。」





 その怪人は他のヒマワリとは一線を画していた。まずヒト型――西洋の全身甲冑をより流線型に洗練したような美しい鎧がヒマワリの頭部と何ともミスマッチしてる。そして怪人とは思えないほど紳士的な声色。こちらに対して敬意すら感じるほどだった。しかし、決して実力が低そうとか、そういうことはない。



 悠然とした雰囲気、その手には抜き身になった騎士のようなサーベル、見るからに優れものだ。そして、左肩に刻まれている植物族の紋章。



上位種(ゼラ)――」






 式乃の呟きに、その上位種はない顔を歪ませた。




「植物族上位種――ダンデライアンが僭越ながらお相手させて頂きます」



 ダンデライアンと名乗った怪人がサーベルをビュンと振るって顔前で立てて見せる。その一振りで周囲の瓦礫を吹き飛ばす程の風圧が生まれた。



 



私のPCの変換はすごいんです。

"顔"と打つとたくさんの顔文字が候補に出てきてくれるわけですが、筆が乗っていると


『灯は携帯食を取り出して一気に齧りつくと雄々しい(´◉◞౪◟◉)をつくり気合を入れた。』


 こういった事態が発生します。これは雄々しい顔ですね。



次話投稿は明日13時です!(´◉◞౪◟◉)

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