33.人間領拡大作戦――米村瀬雅vsマツボロス②
登場怪人のビジュアルは全部考えてあるんですが……
見たいヒーローとか怪人いますかね?
「かっは――!?」
「チッ。とんだ期待外れだぜ……」
――大和町西区の中でも南区に近い区画。
その中でヒーロー達は蹂躙されていた。
マツカサの怪人、マツボロスの登場により戦況は一気に傾いてしまったのだ。
「グッ"魔力砲"!!」
苦し紛れに眼鏡の教師が腕から魔力の光線を放つ。窮鼠の気分になっているせいか、普段以上に絶妙に圧縮された光線が鋭く放たれた。
戦車の主砲にも勝るその強力な光線は、ギュイイイイイイ――と空気や地面を抉りながらマツボロスに吸い込まれていく――。
「甘い!」
が、マツボロスはその攻撃を避けようともしなかった。分厚い装甲に包まれた腕を体ごと引き絞ると、一気に開放し、体の回転と腕のバネが加わった裏拳で魔力砲を弾き飛ばした。
ズドオオオオオォォォ-……
強靭な肉体によって強引に軌道を変えられた魔力砲は近くのビルに直撃した。地鳴りのような衝撃と共に建物が倒壊し、近隣の小さな店舗を巻き込んで瓦礫と変わり果てる。
その様子から、決して眼鏡の教師の攻撃の威力が不足していた訳ではないことが伺える。単純にマツボロスの身体能力が高すぎるのだ。
「そんな、私が手も足も出ないなんて……」
眼鏡の教師は建物が減って少しだけ広くなった空を見て唇を噛む、肩で息をしていることから、体力も魔力も心もとなくなっていることが窺える。もう得意技の魔力砲も打てそうにない。
(手も足も、魔力も出せないなんて……出るのは皮肉だけね。)
自らの魔力で守るべき町を破壊してしまっている。その屈辱が彼女のプライドをも傷つけていた。住民が避難していることが唯一の救いか。
「もういいぜ、お前。次に期待するとしよう。」
マツボロスが手を向ける。教師はその言葉にハッとする。自分が負けたら後ろにいるヒーロー候補生達の命もどうなるか……
「"Pine squall"」
マツボロスが静かに口にすると、上空が茶褐色に鈍く光った。マツボロスが現れたときと同じ、マツカサの流星群だ。天候が変わったかと錯覚するような砲撃が音を立ててコンクリートに埋まっていく。
その原理は魔力砲にも通ずるところがあった。限界まで圧縮された魔力の塊、しかしそれを開放せずただ単に超重量の爆弾として上空から投下する。
それが1000を超える規模で行使されるのだ。眼鏡の教師が放つ魔力砲が1000倍で返ってきているようなものだ。まさに絶望。しかもこれだけの魔力を使って尚マツボロスに消耗は見られない。
「撃ち返せー!!」
「先生を護るんだ!!!」
降り注ぐ絶望に対峙したのは教師の背後にいるヒーロー候補生とヒーローたちであった。彼らは限界を迎えそうな教師を援護するかのように各々の魔力をマツカサの吹雪にぶつけ始める。
魔力球、魔力壁、魔力矢、魔力弾、魔力爪――ありったけの魔力を放つ彼ら。その七色の魔力光は一瞬魔力のまつぼっくりと拮抗するがすぐに破られてしまう。
それでも降り注ぐ嵐から眼鏡の教師の周囲だけはなんとか護ることに成功した。
「よし!行けるぞ!!」
「みんなでやれば!」
己を鼓舞する者達、しかし現実は無情であった。
「うわ!また怪人達が!!」
「やめ、うわああああああああああああああ!!」
マツボロスの登場によって動きを止めていた怪人達が再び攻撃を始めていた。いや、シュルームの命令によってヒーローを効率よく撃破することのみを実行するその怪人達は、端からマツボロスに意識が集まったところを奇襲するつもりだったのだろう。
前方には無限の爆撃と尋常ならざる膂力を有す上位種。後方には百鬼夜行なんて言葉では済まされないほどの植物族の大軍。一般人がいないということ以外はその乱戦模様は10年前の戦争とまるで同じ光景であった。
眼鏡の教師――戦争を生き残ったヒーローはこの場で彼女1人。後は全員戦争後にヒーローになった者達や学園の生徒達だ。
この場で若い芽を絶たれてしまっては、今後再び訪れるであろう怪人との衝突に備えることができない――。
教師は目を閉じ、決断した。
「撤退!!!!!」
―――――――――――
―――――
――マツボロスは呆れたようにその様子を見ていた。
「弱い、弱すぎる10年間何してたんだ?それともあの戦争ってのはお前ら如きが生き残れるぬるい場所だったのか?」
怪人の問いに応える者はいない。
撤退の命令が出てからは、マツボロスを無視して雑魚怪人を何とか切り開こうとしているヒーロー達。何とも情けない。敵前逃亡なんてヒーローのすることではないだろうに。
やがて眼鏡の教師が放った最後の魔力砲によって道が開かれ、一瞬の隙にヒーロー達が離脱していく。植物族の軍勢達は去っていくヒーロー達を追っていってしまった。
「はぁ、俺も町の外に居たかったぜ。」
辺りの地形は無茶苦茶になってしまった。建物は崩れ、アスファルトは粉々。瓦礫の1つに腰掛けたマツボロスは期待外れだった戦闘に1人ため息をついた。
マツボロスは戦争の後に生まれた怪人である。まつかさというモチーフの怪人の中で彼は突然変異種であった。通常の遠距離攻撃に加えてその装甲は上位種の攻撃にも傷1つつかない。
圧倒的な力を持つマツボロスが上位種になるにはそう時間はかからなかった。もっと戦いたい。強い者との闘いに魂を燃やしたい。彼は生まれながらの戦闘狂であった。そして傲慢さが芽生え始めた時、完全に敗北することになる。
『良い腕だ。俺たちが、お前に刺激的な戦闘の場を与えてやる。』
徹底的に敗れた後、マツボロスはシュルームの傘下に入った。自身のプライドなどすっかりなくなっていた。そしてシュルームとリュウゼツランという強大な上位種の元で、もはや改造と呼べるほどの強化を受けつづけ、"戦闘兵器マツボロス"は完成した。
「シュルーム様はまだ現状に満足してねぇ。俺もだ。だが、」
己の拳を見つめる。そこに残るのは女教師が放った渾身の魔力砲を弾き飛ばした感覚。意外な威力に痺れていた拳はもう完全に治っている。強くなりすぎたのかもしれない。驕りではなく虚しさからそう思ったマツボロス。
町の外側では恐らくあの女教師のようなヒーローがゴロゴロいるのだろう。そちらの方がどう考えても充実しそうだ。しかし、町内で暴れるというのがシュルームの指示。仕方ない、適当に暴れるしかないか。
そう思い腰を上げたマツボロスだったが、ふとゴツゴツした装甲に包まれたその身が震えるのが分かった。
本能に備わる危険信号だ。
「なんだ?何かが急接近してきやがる。」
ビリビリと危険を感じる。シュルームと戦った時ともまた違う感覚。魔力ではない、むしろ接近する影からはまるで魔力を感じない。
危険なのはその意志だ。何かに決意を固めたような弾丸のような魂。それが実力以上の戦闘力を引き出してくれるのはマツボロス自身がよく知っていた。己がそうだからだ。
やがて走る音が近くなり、マツボロスの前で止まる。マツボロスの目は自然と歪んでいた。これだ、望んでいた強者がやってきた。本能が魔力も練っていない敵から強者の雰囲気を察知する。
マツボロスは滾る戦いの為に用意していた口上を述べた。
「俺は植物族上位種マツボロス。てめぇは何者だ?」
やってきた少年もそれを聞いて口を開く。その目は決意とやる気にギラついていた。
「"終焉の実験台"米村瀬雅。あんたは親玉の居場所を知ってそうだな。」
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