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正義の条件  作者: ありと@
第2章『白い薔薇の少女』
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31.人間領拡大作戦――絶対強者vsリュウゼツラン①

思わず長文に……

今話は時系列的には『22.大和町調査作戦――月夜に逢う』の続きくらいです。忘れた方はそちらも是非(^^♪

――大和町外


 時は土曜の夜まで遡る。大和町の内外を調査する作戦が立てられたその日、3人のヒーロー候補生達が大和町の外をうろついていた。



「ったくホント勝手なセンセーだな。ちょっとはリセー的な行動を取ってほしいもんだぜ」



 活発さを感じさせる短髪をくしゃくしゃといじりながら、つまらなそうに言うのは天野学園第三席の紫芽式乃(むらさめ しきの)。その表情は退屈で今にもあくびが飛び出してきそうであった。



「その通りだけど、式乃にそれを口にする権利はないと思うわ。」

「なんでよ!」

「紫芽も金堂もボリュームを落としてくれ……」



 それにツッコミを入れるのは第五席金堂鏡(かねどう かがみ)。後ろで1つにまとめた姉弟お揃いの青髪は今日も凛と揺れている。


 反発する式乃と鏡がにらみ合いを始めてしまうと、次席の重鳴灯(かさなり ともしび)がすかさず仲裁に入る。



 天野学園創立以来の逸材達、"6人の例外"。全員が高いステータスと強力な固有能力(M・アビリティ)を持っており、その実力は現役ヒーローをも凌ぐという。



 学園に残っている主席と、別動隊に入っている第四席、第六席はここにはいないが、"例外"の三人がこうして共に行動していれば大抵の自体は解決できてしまう。



「ッキキキキキキキ!!!」



「――うっさ。」



 今もまた、襲ってきた植物族の怪人を式乃が赤熱する拳(・・・・・)で消し飛ばしたところだ。



 一瞬のことで詳細は確認できなかったが、たった今消し飛んだ怪人は大和町で目撃されているガザミの怪人よりは圧倒的に強力であった。



 先ほど、何故か黒崎が突然離脱してしまったが、調査行動自体は順調に進んでいる。だからこそ、3人は気づかなかったのだ。





「貴様らだけか」





 "最悪の事態"、上位種の中でも高位の存在が3人の接近を待っていたことに。





「なんだ!?」



 突然響いた声に式乃が周囲を見回す。

 


「あそこ……」


 最初に発見したのは鏡であった。その怪人は現れた訳ではない、朽ちた街路樹のように巨大な体躯、幹はなく、地面から龍の舌が何本も生えているかのような植物。


 最初から怪人はそこにいたのだ。ただ、10mにも届こうかというその巨体に、怪人と認識するのが遅れていたのだ。




「三大ヒーローが釣れると思っていたのだがな」



 リュウゼツランのような怪人はどこから発しているのかもわからない声でそう言った。どうやら三大ヒーローをおびき出して何かをする予定だったようだ。



 幸いというべきか不幸というべきか、先ほど三大ヒーローである黒崎はこの場から離脱している。リュウゼツランの怪人の目論見はとりあえず失敗したと言っていい。





「まぁいい。少し遊んで貰おう」





 1つ1つが大剣のように鋭利になっている葉を退屈そうに揺らしながらリュウゼツランの怪人は告げた。




「どうする?見るからにやばそうだぜ……」



「しかし、紋章(・・)は見えないが……」




 そう、上位種は体のどこかにその種族の紋章を持っている。目の前の巨大な植物にはその紋章がうかがえなかった。





「やりましょう、私達で。」




 故に鏡達はそう判断した。天野学園始まって以来の逸材と言われた6人のうちの3人。しかもこの場にいる3人の固有能力は全員かなり攻撃的で、直接戦闘に向いている。殲滅力の点でいったらこの3人に叶うヒーローは学園の外にはいないだろう。





「そうと決まったら速攻だぜッ!」


「あ、式乃!?」

「しかたないヤツだ……金堂、合わせるぞ。うおおおおお!」

「了解!はあああああッ!」




 先行した式乃を追いかけるように灯と鏡も駆け出す。3人全く同タイミングでの攻撃、式乃のとび蹴り、灯の巌のような拳、そして鏡が抜き放った刀による一閃――



 普段言い争うことがあってもこと戦闘になると完璧なコンビネーションを見せるこの3人の攻撃が、地面に体をはやしていて、恐らく移動できないであろうリュウゼツランの怪人に直撃した。



 魔力を介して身体能力を強化した3人の攻撃は凄まじい衝撃波を生み出す。周囲に散らばっている瓦礫が巻き上がって一瞬視界がなくなった。




「!?」

「っち!」



 その瞬間を狙ったかのように煙の中から刃の葉が飛び出してくる。それはもはやギロチンと呼ぶべき重さと鋭さであった。


 リュウゼツランの怪人は何事もなかったかのように平然としている。それどころか



「見た目通りのリーチじゃないってか?」



 式乃の顔に緊張が走る。


 怪人の体は何本もの巨大な葉の集合体。しかもそれは一般的な葉ではなく、一枚一枚が分厚く、強靭であった。それが届かなそうな射程から3人へ的確に襲い掛かってくる。



 今の攻防だけで敵の葉は伸縮自在であること、敵は視界がふさがれてもこちらを把握できること、そして、3人の普通の攻撃では傷1つつかないことが分かったのだった。





「むぅ、これは厄介ね。」

「何て硬さだ……!」




 鏡と灯も距離を取りながら愚痴をこぼす。年齢相応以上に鍛えられた灯の肉体から繰り出された鉄をへこませるともいわれる拳が逆に痛んでいた。




「固有能力でいくぞ!」



 長期戦になるとまずい。本能でそう感じた式乃は、今度は四肢を赤熱させてリュウゼツランへ向かう。彼女が駆けた後はオレンジの魔力が軌跡を描き美しい。



「だからいっつもはやいのよ!――"三斬(めづき)"」

「"剛重大鉄拳"!!」



 またもや勝手に先行してしまった式乃を追いかけるように灯と鏡も続く。鏡は刀を振るう。振るわれたのは1度、しかし、生み出された斬撃は3つ。彼女の透き通るような青い魔力が薄氷の剣となって第二第三の刀となっているのだ。



 灯の攻撃は先ほどと変わらぬ拳の一撃、しかしそのパワーはけた違いだった。いや、けた違いなのは山吹色の魔力に包まれた彼自身の質量なのかもしれない。




 三者三様、しかし完璧なコンビネーションでの攻撃。通常の上位種、例えばこれがプラッディであったらたちまちその体は吹き飛ばされていただろう。それほどの攻撃がもはや爆発となってリュウゼツランに叩き込まれた。







 だから、この3人は何も悪くない。



 悪かったのは、相性だった。







「全員固有能力持ちとはな。だが、ご馳走様だ。」




「んな!?」

「効いてないですって?」

「馬鹿な……」



 再び無傷で現れたリュウゼツランの怪人を前に動揺するしかない。もはやダメージが通ってないというレベルではなかった。まるで何かに攻撃がキャンセルされたかのようだ。式乃は悔し気に顔を歪ませ、もう一度攻撃を加えようとする。




「!?……熱がでねぇ……!」


「何を……なっ、能力が発動しない!?」


「一体どうなっている!?」




 しかしそれは叶わなかった。なぜか3人の固有能力が発動しなくなっていたのだ。魔力は練られる、しかし能力に変換できない。焦りはじめる3人にリュウゼツランは愉快そうにタネを明かした。





「"凡夫で在れ(セーマンテーリオン)"受けた固有能力の一切を無効化し、その能力の発動を封印する能力だ。貴様など我からすれば青二才に過ぎん。」




「能力を無効化し、封印だと?」

「なんて滅茶苦茶な……!」



 信じられないといった顔をする3人。もしリュウゼツランの怪人の能力が真実ならば、絶対に固有能力で攻撃してはいけない。それは無効化され、逆に封印されてしまうのだから。


 しかし既に遅い。怪人の固有能力は既に発動してしまっている。3人が能力を発動できなくなっているのがその証拠だ。




 3人の戸惑いを見逃すほどリュウゼツランの怪人は甘くなかった。素早くギロチンのような葉を伸ばす。




「クッ!」


「何!?」


「うわぁ!」




 かなりのスピードに3人は躱しきれない。いや、それは確実にリュウゼツランの目論見通りにヒットしてしまったのだ。




「!通信機器が――!」



 そう、今の一瞬で、3人の通信機器のみが破壊されてしまっていた。これまで怪人との戦闘経験は幾度もしてきた3人だが、こんなやり方、こんな強力な能力は初めてだった。




「こいつ!"ヒーロー"を良く知ってやがる!」



 能力を封じ、応援を呼ぶ手段を封じる。小賢しく策を弄するのは怪人のやることではないと思っていただけにしてやられたという気分になった。




「さあ、我の退屈しのぎに付き合ってもらうぞ。」




 シュイン――と鋭い音が響く、リュウゼツランが何本もある葉の刃同士を擦ったのだ。そしてそれを縦横無尽伸縮自在に振り回した。





「「「ああああああああああああああっ!?!!!!」」」




 咄嗟に防御魔法を展開する3人だが、ギロチンのような葉は更に腹の部分が鋭いやすりのようになっていて。触れた部分を根こそぎ削り取る。




 なんとかしのいだものの、3人と怪人の周囲の地面は無茶苦茶になっていた。表面がキレイなクレーターは違和感しかない。




 固有能力を封じ、自らも強力な戦闘手段を持つ怪人。恐らくこれまで3人が戦ってきたどの怪人よりも強い。



「こんなのが町にでたら……」



 鏡が汗を流しながらつぶやく。地面に埋まっているタイプの植物族は、移動できる形態も持っているはずだ。事実、公園を襲ったプラッディも人間形態で移動していた。




「どうするよ?」

「応援が期待できない以上足止めに徹するしかあるまい……」



 小声で相談する灯と式乃。その声には僅かな震えが含まれている。



 それを聞いていた鏡は1つ息を吐く。






「私が囮になるわ。」





「何!?」

「無茶だよ鏡!」




 唐突な提案に素っ頓狂な声を上げる灯たち。



「そんなことないわ。魔力量が多い私が足止めに徹する。2人はその間に応援を呼んできて頂戴。」




 鏡のステータスは魔力量が特に秀でている。その鏡が時間を稼ぐのだ。



「だったらウチも!応援は灯が呼びにいけばいい!」

「いや、それを言うなら紫芽が応援を呼びに――」




 口々にアイデアを出す灯と式乃。鏡は心配してくれるいい仲間を持ったと思いながらも冷静に告げた。



「ここは何が起こるか分からない町の外。いざというときにアナタ達は2人とも町に戻れないと。私は第五席、だけどあなた達は主席を除いて学園最強なのだから。」



「そんな!ウチと鏡はタダの相性の問題で――!」

「その相性差で私達は今絶望しているところよ。」

「っ――それは」




 食い下がる式乃を言いくるめる。死を覚悟していると遠まわしに告げる鏡に式乃はなにも言えなくなってしまった。





「絶対、無事に合流するぞ!」

「勿論よ。」




 代わりに答えた灯。凛々しい顔を僅かに綻ばせる鏡。式乃を覚悟を決めたのか1つ頷くと駆け出した。











「準備はいいか?」





「……追わないのね。」




「強者が来てくれるなら大歓迎だ。三大ヒーロークラスをおびき出して、処理する。」




 あっさりと2人を見逃したリュウゼツランはゆっくりと葉を揺らしていた。どうやら三大ヒーローを狙っているようだ。確かに如何に黒崎でも能力を封じられてしまえば目の前の怪人の相手はできまい。





「折角通信機器を壊したのにどうして?」




 時間稼ぎの意味を込めて鏡は尋ねる。




「応援を呼ぶより、連絡がつかなくなったほうが事件性が高いであろう。その方が強い増援を送り込んできそうだ。」




「どちらにせよ、私達は餌にすぎないってことね……」




 リュウゼツランの答えを聞き、鏡は一度目を閉じる。





 そして目を開けると愛刀をリュウゼツランに向けて見せた。









「――不快だわ。」




ここまでよんでくださりありがとうございます!


次話は明日15時です!よろしくお願いします!

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