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正義の条件  作者: ありと@
第2章『白い薔薇の少女』
52/85

27.深夜

本日1つ歳を取りました( *´艸`)

なんだか昨日たくさん読んでもらえたみたいで……!嬉しいです(^^♪




 時間は少し遡り、作戦行動が中止になった深夜。



 天野学園のグラウンドには作戦に参加したヒーロー達と、国の代表で来ているスーツの男高橋が集まっていた。生徒達の姿はない。


 これは作戦中止を受けた臨時会議だ。沈黙とやるせなさがグラウンドを支配していた。




「そんな、灯が……」



 信じられないという顔で巨体を震わせる教師、生徒からはギガンテス先生なんてあだ名で親しまれている彼の名字は"重鳴"。天野学園次席の重鳴灯の実の父である。



 子が失踪したとあっては流石に冷静ではいられない。彼ほどではないにせよ、学園の生徒に被害が出ているという実態に学園の教師たちに焦りの表情が生まれていた。




 動揺を隠せない瀬雅と、心を閉ざしてしまいそうな鐸をなんとか帰した五十嵐もその顔は暗かった。



 いや、五十嵐は落ち込んでいるというより、疑問に思っているという顔だ。そんなとき、グラウンドに緊張感のない声が響く。それは五十嵐の疑念の正体でもあった。






「いきなり撤退なんてひどいよ。いいとこだったのに~」



「……黒崎」




 "狂い月"黒崎純子。彼女の帰還にグラウンドに集まったヒーロー達がざわめく。彼女はここにいてはいけない(・・・・・・・・・・)人間だったからだ。




 みんなの意見を代表するように五十嵐が言った。



「どういうことだ黒崎。説明しろ。」


「んん?どういうことってどういうことさ~」




 へらへらとしている黒崎に五十嵐のこめかみがひくついた。



「そのままの意味だ。なぜお前がここにいる、どうしてお前とチームを組んでいた生徒3人だけ(・・)が失踪したんだ!!」




 ついつい声に力が入ってしまう。

 大和町外で失踪した3人、天野学園次席の重鳴灯、第三席の紫芽式乃、第五席の金堂鏡は黒崎とチームで調査作戦に当たっていたはずなのだ。




「いやぁ、はぐれちゃってね♪」




 相変わらず飄々とした態度を崩さない黒崎に五十嵐は呆れる。少なくとも絶対強者の黒崎が傍についていればこんな事態にはならなかっただろう。




 重鳴灯の父であるギガンテス先生は黒崎のそんな態度に怒りを燃やすが、ヒーローとして息子が困難を切り抜けられなかったということへの悲しみが上回るらしく、歯を食いしばりながら黒崎を睨み付けるだけであった。


 そんな五十嵐達の代わりに進みでたのは国の使者、スーツ姿の高橋だった。



「そんな!探しにいったり、責任をもって生徒を護ったり、そういうことはしなかったんですか!あなたは教師、いや、ヒーローでしょう!!」





 声を荒げる高橋、ヒーローではない彼には失踪した3人が自分で解決するべきという考えはない。すぐにでも黒崎が3人を助けに行くべきだと強く主張をしたのだ。







 それが致命的な矛盾を孕んでおり、また黒崎の怒りに触れるとも知らずに。








              「は?」






――その瞬間、グラウンドが裂けた。







 黒崎が手を振るったのだ。空間を司る彼女の力は一周が1キロメートルにもなる広大なグラウンドに大きな地割れを起こして見せたのだ。





「うわああ!?」




 幸い、彼女が意図的にそうしたのだろうが、人のいない方向へ亀裂は伸びていったので、巻き添えを食うような事態は起こらなかったが、音を立てて大地が抉れる凄まじい光景に高橋は怯えてしまう。




 そんな高橋を黒崎は侮蔑の目で見ていた。いつもの笑顔ではない、軽蔑。








「キミは自分がどれだけ虫のいいコトを言っているのか分かってるのかい?」




 黒崎が再び手を翳す。高橋の回りの空間が震え始めた。




固有能力(M・アビリティ)の使用は禁止するけどヒーローとしての義務は果たせ?ボクみたいなか弱い女の子が、この力を使わずに戦えって?」





 黒崎が嘲笑する。同じ三大ヒーローの五十嵐と違い、黒崎自体の戦闘能力は実はそれほど高くない。能力を使わなければ瀬雅が倒したネズミの怪人といい勝負といったところか。

 もっとも、それを補って余りある凶悪な固有能力が彼女を絶対強者たらしめているのだが。





 たしかに高橋――国は黒崎の固有能力の使用を許可しなかった。その状態で上位種との戦闘をこなすことなんてできやしない。そんな理不尽を突きつけられて、生徒の失踪を受けて命からがら撤退してきた黒崎をどうして高橋が責められようか。確かにその通りだ――だが





(茶番――だな。どうせ守りもしないくせに……)




 その様子を見ていた五十嵐は内心ため息をつく。そう、黒崎はそもそも固有能力使用の禁止なんて護っちゃいない。プラッディ戦のときも、今現在この時も。だから恐らく、3人の生徒が失踪したときは彼女は近くに居なかったのだ。




 少し考えればわかることだったが、目の前で大地を割られるという芸当を見せつけられた高橋は恐怖に顔をゆがめ、尻もちをついたまま動けなくなってしまっていた。




 黒崎は不気味な笑みをつくり、高橋の周りの空間を開いた。





「か弱いボクが外でどんな怖い思いをしてきたか(笑)そんなにボクに怖い思いをさせたいなら、自分でも見てきなよ。」




「え?え……やめ、やめてくれぇッ!悪かった。私が悪かった。」




 黒崎が指をクイっと曲げると、高橋の回りの開いた空間が瓦礫の山のような場所につながる。町の外だ。僅かな挙動で学園と町の外をつなぐワープホールをだしたのだ。



 主席のつくる結界(・・・・・・・・)に護られた町内と違って町外には普通に怪人がうろついているという。そんなところにヒーローでもなんでもないキャリアの高橋が放りだされてしまっては何もできずに餌になってしまうかもしれない。


 必死に抵抗する高橋だが、黒崎のイタズラっぽい笑みに空間の歪みは更に広がり、すっぽりと高橋の体が入って行こうとしていた――








「あれ?」




「やりすぎだ、黒崎。」



 だがしかし、高橋が町の外に放りだされることはなかった。すんでのところで救出されたからだ。


 空間の歪みから少し離れた所には、高橋を抱えた五十嵐の姿があった。




 五十嵐は高橋を下し、庇うように前に立って黒崎と向き合った。三大ヒーロー同士のにらみ合いに場の緊張感が一気に高まる。




「何?ボクの邪魔をするわけ?」



 静かに構える黒崎。彼女から軽い雰囲気が消える。しかし裂けそうなほど上がった口角、三日月のような笑みはそのままだ。




「いいや、お前と敵対はしたくないな。お前が相手だと手加減(・・・)もできなさそうだ。」




 対して五十嵐は棒立ちのまま。しかし、彼の体から薄らと湯気のような輝きが立ち昇り始めている。


 煙のように広がる黄金の魔力が夜のグラウンドを照らし始める。



"太陽"五十嵐光が見せる幻想的な光の粒子に見ているものは思わず固唾を飲んだ。





「ふぅん、"ブーストモード"かぁ……♪」




 黒崎は獰猛な笑みを浮かべていたが、五十嵐が本気だということを悟るとフっと力を抜いた。余裕気だがその頬には汗が浮かんでいた。




「ま、こんなことになった責任はボクも感じてるんだ。今回は大人しくしてるよ。」



 クルリと踵を返して去ろうとする黒崎。



「おい!」



 相変わらずの勝手な行動に五十嵐は呼び止めようとするが、黒崎は視線を未だに震えている高橋に固定していた。





「情報をあげよう、"死神"は早くなんとかしたほーがいいよ。あれは危険な怪人だ。」




「死神……」



 高橋は繰り返す。五十嵐は動きを止める、瀬雅から聞いていた"死神"の話、"死神"を探し出すことを瀬雅と約束していたのだった。しかし、なぜそういう流れになったのか?死神の正体がなんなのか思い出せないことに気づいたのだ。




 この時点で魅甘の固有能力は五十嵐の中から麦町魅甘の記憶を消し去っていた。





「もっかい作戦を立て直しておくんだね。それじゃあね?」




 戸惑う面々を残して黒崎は去っていく。

 しばらくした後、生徒達を招集し、もう一度作戦を練って失踪した3人の捜索、上位種の討伐、住民の安全確保にあたることが決定した。






 グラウンドの修繕は、翌朝に生徒達が登校し始めるまで続いた。

ここまで読んで下さってありがとうございます!


次話投稿は明日21時!

プレゼンあるので遅い時間になってしまいますが、、、是非よろしくお願いします( ;∀;)

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