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正義の条件  作者: ありと@
第2章『白い薔薇の少女』
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21.大和町調査作戦――月夜に始まる


――土曜日



 日が落ち、作戦決行の時が刻一刻と近づいてくる。無暗に外に行くことは自粛しろとのことだったので瀬雅はギリギリの時間まで寮で考えるつもりでいた。




『だから明日は寮に居て。お願い。』




 頭の中に魅甘の言葉が反響し続けている。魅甘のお願いだ、尊重できるものならしたい。そもそも魅甘の行方は黒崎が知っているはずなのだ。



 そうなると行方不明の魅甘を探すという目的は達成できたことになる。ならば



『私が植物族もなんとかする。みんなも護る。大丈夫、私はセガを護るから……。』




 魅甘は植物族と1人で戦うつもりだ。作戦に参加するにしても町外調査のチームに加わった方が魅甘に会える確立は高いと思われる。




「わっかんね。」



 プラッディとの戦いを皮切りに短期間に色々なことが起こりすぎた。瀬雅の小さな脳には収まりそうもない。いずれにせよ集合時間はもうすぐだ、決断しなければならない。そんな時瀬雅の生徒手帳兼通信端末に連絡が入った。電話だ。




「?知らない番号だ。」




 普段なら迷惑電話だろうと無視する瀬雅だが、作戦会議や魅甘との別れ等いろんなことが起こっている最中だとこんな電話にも何か意味があるのではと思った。




「もしもし。」





『あ!つながった~♪ボクだよボク!』

「……ぼくぼく詐欺ですか?」



『う~んツッコミは鐸くんの方が面白いねぇ……じゃなくて、黒崎先生だよぅ!』




 さらっとディスられている瀬雅は内心穏やかではない。"狂い月"黒崎純子、ここ最近の彼女の言動や行動は謎が多い。警戒して接するべきだと考えていた。




「どうしたんですか、これ学園の番号じゃないですよね?」

『米村くんがお悩みだと思ってプライベートチャンネルから相談の電話をしようかと♪』

「…………」




 お悩み相談の電話は普通悩みを抱えている側がかけるものだと思ったが、それよりどうして黒崎に自分の心までバレているのか、そこが気になってしまった。

 魅甘のことといい、一体黒崎は何を考えどこまでが彼女の思惑の上なのだろうか。ひょっとしてあの空間を統べる固有能力で今この瞬間もどこかから観られているのではないか?心臓を握られているような恐ろしさを感じた。


 「そんなことするわけがない。」そう思われるようなことをやってきたから"狂い月"なのだ。黒崎は息を呑む瀬雅に対して面白そうに喉を鳴らす。



『もうすぐ集合なんだから、ちゃんと来なきゃだめだよ?』



 ここで瀬雅は思い切って踏み込むことにした。



「あいつは……麦町は見つかったんですね。」


『うん?ありゃ、会っちゃったか。』



 イタズラが失敗したような声を上げる黒崎、瀬雅は続けた。


「俺が町内捜査に加えてほしかったのは麦町は行方不明だったからです!」



 もちろんそれだけでなく、純粋にヒーロー候補生としての責務も果たすつもりだ。ただ、黒崎の手のひらの上で転がされているような感覚が解せなかったのだ。




『――いーからキミはちゃんと町内捜査するの!それが一番面白い(・・・)んだから♪じゃないと……』



「じゃないと……?」








『ボクの機嫌がわるくなっちゃうんだから。』










 電話が切れる――瀬雅は立ち上がる、これじゃあまるで脅しだ。腑に落ちない感覚は拭えないが集合場所へ向かった。




――――――――――――――――――――――


――第1グラウンド




「全員揃ったな。」



 五十嵐の声でざわついていた校庭が鎮まる。ここには大和町調査作戦に参加する顔ぶれが揃っている。瀬雅に鐸、"6人の例外"、OBOGでもある現職のヒーロー達、学園の教師たち、そして"三大ヒーロー"の五十嵐と黒崎。


 1人1人が旧時代の戦車を上回る戦力の持ち主だ。滅多なことでは作戦に支障は生まれないだろう。



「では、町外調査、町内捜査組は作戦行動に移ってくれ。防衛組は配置について警戒だ。」



「「「「「はい!」」」」」




 五十嵐の号令で全員が返事をする。気合が入り、しかし余計な力は入っていない返事からも精鋭達の熟練度が分かる。瀬雅も気合を入れなおす、町内の捜査に加わる瀬雅はガザミやタンポポの怪人に遭遇したら戦わなければならない。



「麦町がどっかにいるかもしれないしな……」

「セガ?」

「いや、行こう金堂。」




 まだ魅甘と遭遇しないと決まったわけではない。怪訝そうな鐸を誤魔化し五十嵐の下へ向かう。



「準備はいいか?お前ら2人は俺と共に行動だ。」

「「はい!」」



 大和町はかなり広いので、2~3人のグループ毎になって広く散らばって行動する。Cクラスである2人と他のグループとの戦力バランスをとるには五十嵐と組むのが妥当ということになっていた。



 瀬雅や鐸からしてもこれ以上頼もしいことはない。




「まずは東区の駅前から調べて行こう。」


 町内捜査がいよいよ始まる。





――――――――――――――――――――――


――大和町東区


 普段、人で賑わう商業中心の東区も今は静まり返っている。時刻が遅いということもあるが、各ブロック長が会議のあと、夜中の外出を控えるように周知を徹底したのだ。おかげで怪しいものが現れたらすぐに分かりそうだ。




「こりゃひどい。」

「ええ、もう何回目ですか。」

「……」




 3人の前に広がっているのはタンポポの怪人の集団。10体程のタンポポの怪人は、1匹のこらず死体となっていた。東区に着いてから僅か10分ほど、なのにも関わらずこうした怪人の死体がそこかしこに散乱していたのだ。



 嘆く瀬雅と五十嵐、青い顔で黙り込む鐸。植物族の怪人とはいえ生き物の死体だ。




「大丈夫か金堂。」

「は、はい!」



 心配する五十嵐、鐸もいずれは単独で実戦にでていかなければならないのだ。今回の作戦が鐸を成長させるきっかけになるといいのだが。


 鐸も正義感を振り絞って参加したのだ、自分がこの作戦で浮いているのは分かっている。ならばせめて得意な索敵だけでも役に立たなければ。



「索敵を使います。……………………………………………………商店街の裏……生きてる怪人です!」



 早速成果が現れる、鐸の薄い魔力は動いている怪人を察知した。



「よし、米村倒せるな?」


「はい!」



 瀬雅は準備できていた。怪人を打倒する。







「待てセガ!?人だ」

「なに!?」

「襲われてる!!」



 鐸が声を上げる。察知した怪人の中に人が混ざっていたのだ。それを聞いて瀬雅は全力で駆け出す、アスリートも目ではない身体能力ですぐに現場に到着した。



「おい!大丈夫か!?」

「た、たすけてくれぇ~!!」




 30代くらいの男がガザミの怪人に群がられていた。瀬雅は慌ててガザミを蹴散らす。一匹一匹は小さく、力もなかったので瀬雅の攻撃でたまらず霧散していった。訓練のようにレーザーを出さない分楽だ。無力化するつもりだったが、一般人を襲っているのを見て力が入りすぎてしまった。






「人を襲っている……?」



 瀬雅が今倒した怪人はやはり魔力を霧散させ消滅した。やはり"怪人の死体"が残るのは特殊な能力によるものだろう。

 そして、これまで報告になかったガザミの怪人が人間を襲っているという事態に困惑した。しかし、今のように夜中建物の裏でひっそりと襲っていたとすれば……




「行方不明者はもしかして……」





 瀬雅は嫌な想像が沸いてくるのを振り払って五十嵐と鐸が合流するのを待った。








ここまで読んで下さってありがとうございます!


次話は明日21時です!ちょっと遅くなってしまいますがよろしくお願いします( ;∀;)

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