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正義の条件  作者: ありと@
第2章『白い薔薇の少女』
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18.屋内戦闘訓練


 作戦会議のあった日の午後、全校生徒が集められた体育館で五十嵐の話があった。



・目撃されているタンポポやガザミは植物族の怪人であること

・植物族の怪人が町内に大量発生している事態、上位種が潜伏している可能性があること

・植物族の怪人の死体が発見されていること

・何者かが通常残らないはずの怪人の死体を作り出していること

・各地で行方不明者が出ていること

・学園内からも行方不明者が出ていること

・関係性も含めて町内外を広く調査する作戦行動が明日、土曜日の夜に決行されること

・作戦に参加する生徒は3年生と2-A、加えて数名であること

・関係生徒以外は土曜日の夜は自宅待機すること





 流石に詳細は語られなかったが概ね会議で決定したことが語られた。戦争以来小競り合い以上の事件は起こらなかった大和町での作戦行動だ、当然、生徒達にどよめきが起こった。不安の募る天野学園、生徒達が解散になった後もその騒めきは収まらなかった。




 そして、急遽参戦が決定した瀬雅と鐸は、作戦行動に支障をきたさない為に放課後に訓練を行うこととなった。






――第2アリーナ


 広大な敷地を誇る天野学園の第2アリーナ。この施設は他の運動施設とことなることがある。ぱっと見はいつしか瀬雅と魅甘の模擬戦が行われた第3アリーナと変わらない。しかし現在、フィールドに立つ瀬雅と鐸は唖然としている。




「床が割れた……」

「ビルが生えた……」




 そう、土や草が薄く敷いてある地面が突然スライドし、地下から建物がせりあがってきたのだ。



「よし、2人とも準備はできているな。」


 五十嵐は腕時計状の端末を操作し終えると2人に声をかけた。今回は五十嵐の操作によって第2フィールドは屋内戦を想定した訓練場に早変わりしたわけだ。



「米村、金堂。今日はそこのビルの中にいるダミーを討伐してもらう。」


「ダミー、ですか?」



 鐸が聞き返す。Cクラスである鐸は訓練も基礎的なものが中心だったため、緊張気味だ。


「そう、怪人を模ったドローンとでも言っておこうか。今大和町内に大量発生しているガザミ型の怪人のデータを再現してある。」



 現在も依然としてタンポポとガザミの目撃情報は絶えない。鐸は路地裏で見たことがあるが、瀬雅はなかった為、空き時間にネットで情報を調べていた。



 なんでも物陰で発見されることが多く、タンポポは花畑のように綺麗に咲き誇るが、目を離すとなくなっているらしい。


 一方ガザミはたちが悪く、オブジェの裏や庭先に勝手に生えていたりするらしい。家の中でふと家具を動かしたときガザミ畑なんかが現れてきたら一生もののトラウマである。こちらも発見したかと思うといつの間にか消えているらしいが。




 SNSなんかでは不思議現象と面白がるものもいるが、怪人では?という考察も目立ち始めていた。不安を煽る情報はしばしば国によってシャットアウトされるわけだが、怪人の死体を見たという情報も都市伝説レベルで上がっていた。



 いつの時代も人の口に戸は立てられないらしい。流石に"死神"や上位種の情報はなかったことが幸いだ。とにかく、情報である程度は知っていた瀬雅は首を傾げた。



「でも、そいつらって、目撃情報通りなら動かないんじゃ?」



 いつの間にか消えているらしいが、動いているタンポポやガザミを見たものはいない。攻撃してこないターゲットを破壊して訓練になるのだろうか。疑念に応えるように五十嵐は手でピストルの形を作って見せた。



「心配するな、なんかこう、いいカンジの極太レーザーを放ってくるようにしといた。」

「「めっちゃテキトー!!!!!」」



 思わずは持ってしまう2人。五十嵐の謎調整によっていつの間にか固定砲台と化したドローンとの戦闘を余儀なくされていた。




「ま、とにかく、ガザミ型のドローンが建物内に50体いる。それを10分で制圧してこい。」

「10分……」


 シビアな時間設定。しかも3人の前にあるビルは7階層のものだ、当然内部も実際のオフィスを再現してあるだろう。ガザミの怪人は物陰に潜んでいるはずだ、索敵からしなければ。



「では、はじめ。」


 五十嵐が考える暇なんて与えないぞとばかりに手を叩いた、始めの合図だ。建物の中という空間での10分間が始まった。




―――――――――――――――――――――――


 ビルの中は薄暗い、電気がついていないのだ。動きにくいことこの上ないが作戦本番は夜なのだ。瀬雅と鐸は勢いよくエントランスに飛び込んだ。



「鐸、ドローンの場所が分かるか?」

「…………2階に4体いる!」



 目を閉じ集中した鐸は廊下の奥にある2階へつながる階段へ指を向ける。落ちこぼれと呼ばれる鐸であるが、彼の察知能力は優秀であった。微弱な魔力を発信し、エコーロケーションのように物体の位置や形状を把握できるのだ。派手な攻撃や防御を行うには出力が足りないが、この魔力の使い方だけはと磨き上げてきたのだ。



「よし、ならさっそく2階へいくぞ!」

「おう!」


 何せ時間がない。瀬雅の先導で奥へと伸びる廊下を走り突き当りの階段へ向かう。するとそこに




  ビシュン ビシュン ビシュン ビシュン!!!!!1



「「うぉあっ!!!?!?」」




 2人が走る両脇から消防車のホースの水のような強力なレーザーが飛んできた。瀬雅は咄嗟に身をひねって躱すが鐸は反応できずにトレードマークの青髪の先を焦がす結果となった。



「こ こ に も い る じ ゃ ね ぇ か ! ! !」

「ゴメン!」




 ゴゴゴゴゴと聞こえてきそうな怒気を滲ませた瀬雅に対して鐸は素早く謝罪して「時間がないよ!」と急かす。瀬雅はとりあえず後でお仕置きだと思いつつレーザーを放ってきた廊下の柱の影に居たガザミのドローン2匹を殴り壊した。



 鐸の察知能力は優秀なのだが、今回のように鐸が決めつけて上方向のみ索敵したりした場合こういったことは起こり得るのだ。慎重かつスピーディに進むことにした。




――――――――――――――――――――――――



「ドローンあんな魔改造しちゃってぇどういうつもり?」


「……黒崎か。」



 瀬雅と鐸が建物内に入ってから数分、ビルの外ではその様子をモニタリングしている五十嵐と、そこにやってきた黒崎がいた。時折轟音が響く広いアリーナに揺れる金髪と三つ編み。



「不測の事態に対処できるようキツめの条件にしただけだ。」



 五十嵐は当然だといわんばかりに答える。ビル内各階の様子が映し出されている空間投影式のモニターには2階で飛んでくるビームを飛び込み前転で避けている瀬雅と、真似するも完全によけきれずにかする鐸の姿が映っていた。鐸は飛来するビームにかなり被弾しており、気持ち髪型が短めにセットされてきている。



「そんな事態にならないようにボクらは教師やってるんじゃんか」

「それでも例外は起こり得る。特に俺たちは戦闘行為に制限がついてるんだ。」

「ばれなきゃいいよ。怪人を殺すのが先決だ。」



 2人共互いに目が細くなる。五十嵐は迎撃のみを許可されており、黒崎は空間を支配する固有能力(M・アビリティ)の使用を禁止されている。強力すぎる2人の戦闘力は国の不安材料だ。単に秩序が崩れるだけでなく、2人の全力戦闘は間違いなく怪人を刺激する。



 ただでさえ作戦行動で多少なりとも怪人と接触するのだ、慎重にならなくてはいけない。しかし黒崎はそんなことは関係ないといわんばかりである。



「お前の身勝手で大和町を危険に晒してもいいのか。」

「ボクはあの子(・・・)の意志を継ぐだけさ。邪魔な者は殺す。」



 この10年、2人の主張はずっと平行線だ。五十嵐は1つため息をつくと表情の一切を消した。



「お前といると空間だけでなく時間まで狂うようだ。」


「案外そうかもね。ボクの時間はあの子……夏凛を失ったあの日から動いていないのかも。」




 モニターには分かりやすく慌てふためく瀬雅と鐸の表情がよく映っている。それに対してこの2人の腹の中はどうなっているのだろうか。



 決して本心を出さずに語りあう三大ヒーローの2人。しばらくするとそこに三つ編みの姿はなく、五十嵐のため息が再び響いた。

ここまで読んで下さってありがとうございます!(^^♪


次話投稿は明日13時です!是非!

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