17.大和町作戦会議
「会議パートなんて何話も使っても退屈だし、一話にまとめるかー」
→8000字
(´◉◞౪◟◉)
――天野学園第一会議室
ひと昔前に関東地方と呼ばれていた大和町。その北区の殆どを占めている天野学園。職員棟に据えられた非常事態にのみ使用されるのがこの第一会議室だ。普段の職員会議等で利用される一般的な会議室と違い白い遮音壁に守られた円卓だけの部屋。20人ほどがその円卓に付き、他の面々は円卓の傍らに用意された椅子に腰かけていた。
平日の会議で、他の生徒は自習を行っている中で、2-C米村瀬雅と金堂鐸は、その傍らに用意された椅子――円卓に向かう五十嵐の背後に座っていた。
この空間には大和町の教職員、つまり国から能力の使用を禁じられている元ヒーロー達はもちろん、大和町の外周に配置され町の外側を監視している現職のヒーロー達の代表、大和町各ブロックの要人達、大和町三大ヒーローの五十嵐と黒崎など、大和町の主力が勢ぞろいしている。
学園長は不在だが、これだけの面子がプレッシャーを放ちながら1つの部屋にいるのだ。瀬雅は真空なのではないかと思えるほどに呼吸が苦しかった。
しかし、この空間に瀬雅と鐸以外の生徒もいる。そちらは重圧の中でも涼しい顔をしていた。
それもそのはず、彼らは現職のヒーローとも張り合える天野学園の3年生、その中でも"6人の例外"と呼ばれる猛者達なのだ。
その"例外"のうちの4人が今、この空間に揃っている。純粋な戦闘力だけで見れば三大ヒーローに次ぐ実力を持つ者達。それが好奇心、心配、無関心、不機嫌――それぞれの感情をぶつけてくる。居心地が悪いどころの話ではない。
瀬雅と鐸が緊張で固まっていると、新たに1人入室してきた。痩身で短い黒髪をぴっちりセットしたスーツの男だ、いかにもエリートのような雰囲気を醸し出している。
「これはみなさんおそろいで。すみません、お待たせしてしまったようですね。」
社交辞令じみた台詞だが嫌味を感じさせないのはスーツ男のスキルだろうか?
「私はこのたび総理の代理で都ノ町から参りました、高橋と申します、どうぞよろしく。」
(国の代表ってことか。やっぱり大事なんだな今回の件は。)
高橋と名乗ったスーツ男が簡単な挨拶をし、円卓の上座に座ると自然に会議が始まった。瀬雅は総理大臣の代理、つまり国絡みの作戦会義だということでより一層気を引き締めた。
司会進行は養護教諭の外西だった。白衣に眼鏡という保健室が良く似合う彼は知的な雰囲気と落ち着いた物腰でこうした進行役に向いている。しかし瀬雅はこの男がどうにも好きになれなかった。なんとなく合わないというやつだ。
「それでは私、外西の進行で進めさせていただきます。高橋さん、今回会議を開くにあたった経緯をお願いします。」
「はい。大和町にタンポポやガザミが大量発生しているとの噂はSNS等でも広まっています。天野学園の皆さんの見解では植物族の怪人であるとのこと。しかし、目立った被害も上位種の出現も確認されていませんね?」
スーツの男、高橋の発言に頷く面々。厳密にはプラッディという上位種が出現しているのだが、大量発生はそれより後のことなので考慮から外しているようだ。
「このことをこちらで話し合った結果、タンポポやガザミの怪人を情報収集に当てて、上位種は町外で何かを準備しているのでは、という考えに至りました。」
高橋の言うことは国の意向と等しい。現段階で植物族による大規模な戦闘準備がされてると予想している。もし他の種族とも団結して攻めてきたら再び戦争となる可能性がある。そうなる前に町外へ調査に出るべきだという内容であった。
「そして、ここ数日で新たに発見された怪人の死体の情報……怪人の死体など聞いたことがありません。問題は誰の仕業か分からないということです。」
「それに関しては私から報告が。」
話題が植物族の死体の方に向かうと、壮年の男が手を挙げた。厳つい顔に禿げ上がった頭、軍人のような風貌の男は事実兵隊上がり。現在は大和町西区の長を務めている。
全員の関心が壮年の男にむかうと、男は手元にあった端末を操作する。すると円卓の中央にスクリーンが投影された。どの角度から見ても映像を把握できる魔力技術の賜物である。
「怪人が死ぬ瞬間は捉えることができませんでしたが、この西区が一番死体の目撃情報が多い。昨夜、偶然町の監視カメラにその犯人と思われる者が映っておりました。」
男が監視カメラの映像を流す。深夜、人通りのない住宅街の道路、そこに人影のようなものが一瞬映る。
「ズームします。」
男が一時停止した映像をズームする。そこには人と思われる者が不鮮明ながら映っていた。定かではないのは、その人物が真っ白なコートを着てフードを目深にかぶっており、詳細がわからないこと。そして――
「これは――鎌?」
誰かが呟く。そう、その人物は身の丈ほどもある巨大な鎌を手にしていたのだ。男は続ける。
「この人物――仮称を"死神"としよう、死神が去った後この場所の付近で植物族の死体が発見されました。」
ごくり。唾を飲む音、瀬雅の隣からだ。鐸は瀬雅と違って初めて実戦に出ることになる。瀬雅は鐸の肩に手を置いて少しでも緊張を和らげようと努めた。
西ブロック長の話を受けて他のブロック長も報告をする。
「東区は大きな事件は先日の駅前公園の爆破以外ありませんが、ここ数日で2名が行方不明になっています。」
「南も同じく」
「西も同様に。」
相次ぐ報告に会議室の空気は更に張り詰めていく。行方不明自体は普段も何件か起こりうる、が大抵は家出やら迷子やらなので優先度は低い。
が、こうして各ブロックで同時に起きているとすると事件性が高まってくる。
それに――
「……北区、天野学園の生徒からも先日、一名行方不明がでた。」
苦い顔で五十嵐が告げる。そう、魅甘の行方不明も各ブロックの行方不明と同様に関連性を持ってきてしまった。ここまでの話をふまえて国の使者、高橋は改めてまとめた。
「町外に潜伏している植物族がいないかの調査。町内にいる死神の捜査。そして各地の行方不明と本件との関係があるかの調査。これを国からの依頼とさせていただきたいと思います。」
瀬雅は拳に力を込める。魅甘の安否の確認が作戦に組み込まれているのだ。自分の力を示して参加させて貰わなければいけない。自然に肩に力が入っていたのを隣から揉まれたことで気づいた。今度は鐸が解す側になっている。
何をしているんだと2人で目配せして小さく笑った。
高橋の依頼をもとに作戦会議に移る。ここからはヒーロー達をどう配置するかだ。
進行役の外西が提案はあるかと聞いてくる。どうでもいいがなぜ作戦会議の場でも白衣なのだろうか。瀬雅が割とどうでもいいことに注目してしまうあたり、余裕が戻ってきたのだろう。
外西の質問に最初に答えたのは筋骨隆々の体育教師、通称ギガンテス先生であった。
「町外調査、町内捜査、防衛の3戦力に分けるのが無難だろう。」
筋肉が盛り上がりすぎて、理知的な台詞を吐くだけで意外そうにされるギガンテス先生の提案であるが、得に反対意見はでなかった。沈黙を肯定と受け取ったのか、メガネの女教師が発言を引き継いだ。
「向き不向きもありますからその分担までここで決めておくのがいいでしょうか。……となると私たちの能力制限がネックなのだけど……」
女教師の発言の瞬間、視線が高橋に集まる。天野学園の教師はすなわち戦力の行使を禁止された強力なヒーローの軍団である。平和のためにも戦闘を制限されることを受け入れてはいるが、今回の調査の規模からその制限が緩和されることを期待しているのだ。
強大な戦力を持つ猛者たちの圧力のこもった目線を受けた高橋は冷や汗を流しながら告げる。
「も、もちろん今回の作戦行動の際には天野学園教師の戦闘行為を許可するとのことです。」
「ほんと!?やったぁ~♪」
僅かな喜色に包まれる部屋の中で一人だけ場違いなほどテンションを挙げている人がいる。いわずもがな黒崎純子である。高橋は慌てて言葉を続けた。
「い、いえ。三大ヒーローの五十嵐さんと黒崎さんには直接戦闘は遠慮していただければと……それと、戦闘行為の許可は限定的です。具体的には固有能力の使用は許可できません。」
「は?」
黒崎が一転して不機嫌になる。それもそうだ、それでは五十嵐と黒崎は結局何も現状と変わらない。他の教師の中にも固有能力を持った者もいるが、その条件は明らかに黒崎の能力を危険視してのものだった。
「ま、まあまあまあまあまあ落ち着いて!!落ち着いて?」
黒崎の機嫌を損ねたらどうなるのか、決まっている。空間毎引き裂かれるのだ。国の使者だろうがなんだろうが彼女には関係ない。それを戦場で見てきたであろう他の教師達が必死でなだめていた。
「ちっ」
粗々しく座りなおす黒崎。全員の安堵が「ほっ」と部屋に浮かんで見えるほど瀬雅と鐸にも伝わった。不機嫌を向けられた高橋本人はというと疲れた顔で小刻みに震えている。遠く離れた都ノ町の国会にも狂い月の評判は伝わっているようだ。瀬雅は高橋という男が苦労人のように見えた、少し同情する。
雰囲気を変えようと外西が戦力の割り振りの話に戻した。今回の作戦に参加するのは、現職のヒーロー、つまり天野学園の卒業生たちと、学園の教師、そして生徒のうち3年生と2年Aクラスの者たちだ。
まず現職のヒーロー達は普段の町周辺の監視の任務に充てる者を除き、残った戦力を個々人の向き不向きで3等分すればよい。その割り振りは代表して会議に参加しているOBに託された。
学園の教師達も同様で、どこに割り振られるかは話し合いの結果決まっていく。
そして防衛についてだが、実戦経験の浅い2-Aと3年はここに置かれることになる。調査中に一気に攻め入られては元も子もない。特に大和町の戦力育成の要である学園の防衛は最優先だ。
しかし、防衛に充てられる者達が今回の作戦行動では最も危険に晒されにくいだろう。何故なら
「わたくしの任務はこれまでと変わりませんわ。"ドーム"は普段通りに学園に陣取って有事に備えております。安全はわたくしが保障致しますわ。」
円卓から声が挙がる。徐々に白熱していた会議の中でも思わず耳を傾けてしまう優雅な声であった。
瀬雅もつられて声の主を見ると、そこに座していたのは声と同じく優雅な風貌を持つ少女であった。丁寧に結わかれた輝く白金色の髪にグレーの目。見る者全てを魅了する美は自分の主張は終わりだとばかりに沈黙を決め込んでしまう。
「……そうだな。お前がいれば守りのほうは確実だ。この町が今大群に攻められないのは何せお前のおかげだ。」
ギガンテス先生が頷く。そう、この優雅を象徴するかのような少女こそ天野学園の"6人の例外"のトップ――絶対防御の固有能力を持つ3年生主席なのだ。
学園の生徒は、教師がしっかり監督するという条件で戦闘行為の一切の制約から除外される。つまり事実上この町の最大戦力となり得るのは彼女なのだ。
防衛組の話がまとまったということで次は町外の調査への分担の話に移る。ここが最も接敵回数が多いと予想される。なにせ大和町の外側は未だに怪人領なのだ。誰がどこに行くか慎重に話し合いが行われる。あーでもないこーでもない。
瀬雅は正直退屈であった。何せ瀬雅の目的は魅甘、つまり行方不明に関わる町内捜査なのだから。どうやら長時間進展のない話し合いを退屈に思っていたのは瀬雅だけではないようだ。
「あーもう!要は外で暴れてくればいーんだろ!?主席さん以外のウチら5人でいきゃあいいじゃんか!」
じれったそうに声を上げたのはまたしても6人の例外のメンバーであった。ところどころハネている単発に瀬雅に匹敵する釣り目、見るからに活発な印象を与える少女であり先ほどの主席とは真逆であった。
「いや、暴れるのは……」
再び冷や汗を流す高橋、先生も生徒もこらえ性のない人がいて大変そうだ。
「紫芽、調査であって殲滅戦ではないのだぞ。」
「だけどまぁ、私達が出るのは賛成ね。」
すかさずフォローに入ったのは紫芽と呼ばれた少女の両脇に陣取る男女。瀬雅は二人共に見覚えがあった。何せ一度危ないところを助けてもらっている相手だ。
男のほうは3年次席重鳴灯。ガッチリと鍛えられた体から質実剛健の言葉がぴったり似合いそうだ。ギガンテス先生とどこか似ている雰囲気がある。
女は海のように青い長髪を後ろで一つに束ねている。流石に会議の場ということで傍らにいつもの愛刀はないが、凛とした姿は彼女自身に鋭い刃物を幻視してしまうほどである。3年第五席金堂鏡、通称"絶対零度"
二人ともコボルト戦で瀬雅と魅甘を救ってくれた恩人だ。6人の例外からは主席と紫芽を含む4人がこの場にいた。
「結局接敵したらかますんだろ!?じゃあ見つけ次第ぶんなぐっていきゃあいいじゃん!」
紫芽が駄々をこねる。現職のヒーローに次ぐ能力に制限されていない固有能力。彼らが町外の調査にあたってくれるのであれば頼もしい。しかし彼女は不必要に町外の怪人を刺激しそうだった。そのせいでなかなか分担を決められないのだ。
それを見かねたのか、黒崎は「ハイ!ハイ!」と手を挙げ、こんな提案をした。
「じゃあ紫芽ちゃん達にはボクがついていくよ!これで安心♪」
((((((((不安だ…………)))))))))
この会議が始まってから最も一同の気持ちが一つになった。瀬雅はそう感じた。
結局逐一報告を入れる条件付きで6人の例外と黒崎が町外調査に入ることが決まった。まったく信用されていない黒崎が「ちぇ~」と頬を膨らまして黙ってしまったことも述べておく。
「さて、それなら残りの人員が町内の捜査にあたることになりますが……」
「待ってくれ、そのことに関して加えることを検討してほしい人物がいる。」
そしていよいよ町内捜査――転じて魅甘の捜査の話に移った。手早く話がまとまりそうだったところで五十嵐から待ったがかかる。会議も終わりの空気だったのでみんなの機嫌は悪い。
(タイミング下手かよ……)
あからさまにイラついている者が多数の中で、これから瀬雅と鐸は自己PRをして作戦に加えてもらわなければいけないのだ。
五十嵐の紹介で視線が瀬雅達に集まる。品定めするような目つきの塊に思わず立ち上がる2人。
「検討って……3年と2-Aの生徒は防衛にあたるはずでしょう?ということは……」
「ああ、2人は俺のクラス――2-Cの生徒だ。そして防衛ではなく俺と共に町内の捜査に加えてほしい。」
「2-C?」
「Cか……」
「大丈夫か?」
クラスを聞いた瞬間学園関係者の顔が曇る、魔力至上主義の弊害だ。素質順にクラス分けがなされる2年生のC、つまり最も落ちこぼれのクラスから、しかも比較的安全な防衛ではなく死神と接触する可能性もある町内捜査だ。集団行動を乱しかねない不安因子にはいくら三大ヒーロー五十嵐の推薦とはいえ賛同しにくい。
「俺は怪人と数回戦っています!上位種との戦闘経験もあります。」
「お、俺は鋭いツッコミ……じゃなくて!索敵能力には自信があります!住民を避難させる事態になるかもしれない町内捜査で力になれるかと!」
2人は慌てて自己PRを始める。瀬雅は実践経験でいえば濃いものを積んでいる。何せ今年に入ってからまだひと月というのに、既に何度も大けがをしながら怪人を退けているのだから。しかし……
「これは大きく出たな。」
「本当なのか?」
「金魚の糞や腰ぎんちゃくは実践経験に含まないんだぞ。」
落ちこぼれというバイアスを通して見られている2人の発言はまったく取り合ってもらえない。
「皆、こいつらのいうことは本当だ。米村は去る獣族上位種ルミ・ティイケリや植物族上位種プラッディに対して大きな戦果をあげている。」
五十嵐の証言で一同が静まり返る。そう、2人は嘘など吐いていないのだ。ここにいる面々は世間に伏せられている上位種のことを知っている。いつの間にかプラッディ戦まで瀬雅の手柄になっていたが、真相を明かすと黒崎が堂々と固有能力を使用していたことがばれてしまうので仕方ない。
「いやしかし……」
一応信じることにしたもののまだ難色を示す者たち。学園の教師は心配し、学園外の要人はうさん臭そうな目で2人を見ていた。
「俺の仲間が行方不明になっているんです。探したい。お願いします。」
「お、俺からも!」
瀬雅は本心もぶちまけて頭を下げる。しかし、その言葉は完全に裏目に出てしまった。
「キミは行方不明になった者の家族や友人が希望したら作戦に加えるのか?」
西区の長が厳つい顔を思いっきりしかめながら聞いてくる。失敗した――瀬雅はすぐに悟ったが覆水盆に返らず。発言を引っ込めることはできない。会議室は否定の空気になっていく、そして1人が円卓を叩きながら立ち上がった。
「私は絶対に反対よ!あなたは私と灯君が加勢に入ったとき、ボロボロだったじゃない!それに鐸――彼の戦力は到底作戦加わるに値しない!」
立ち上がったのは凛とした顔を真っ赤にした第五席、金堂鏡であった。その剣幕に室内は再び静まり返る。鐸は思い切り低く評価されているが、ある程度予想がついていたので黙って唇を噛む。
「む、俺はそっちの――米村といったか?は見どころがあると思ったがな?」
「っ――!それはともかく、もうひとりの参加は不必要よ!」
次席、重鳴灯が瀬雅を評価するが鏡はとにかく鐸の参加を否定した。彼女の発言によって2人の不参加がより決定に近づく。そんなとき、円卓の反対側からポツリと声が挙がった。
「ボクは賛成だなぁ~」
「な――!?」
唐突に賛成意見を出したのはもちろん黒崎、事前に言っていたように瀬雅達を推薦してくれるようだ。
「東区のスーパーの襲撃事件。あれは死者が出てもおかしくなかったよ、鐸くんの避難誘導は素晴らしかったと思うな♪」
「しかしっ!」
空気が変わる。これで三大ヒーローの2人が賛成することになったのだ。信憑性が違ってくる、各々思う所はあるようだが、表立って反対する者は一気に減り鏡だけとなった。
「私は反対です。未熟な者が実践にでて傷つかないためのクラス分けなのではないのですか!?Cクラスの鐸をどうしてわざわざ……」
取り乱す鏡。いつの間にか瀬雅と鐸両方への反対から鐸1人への反対に変わっていることを本人は気づいているのだろうか。愉快そうに聞いていた黒崎は、ふいに目を細めて見せた。
「未熟ねぇ……ボクから見たらこの空間で未熟じゃないのなんて五十嵐クンくらいなんだけど……?」
「ぅ……」
ごく一瞬だけ発せられたプレッシャー。絶対強者のそれは鏡をしり込みさせるのに十分な迫力であった。
「そんなに弟が心配?」
「!そ、そんなこと!」
一転してからかう口調。鏡は慌てて否定するが真っ赤になった顔が先ほどの怒気とは全く異なる原因から来ていることは明らかだった。
(結局はブラコンなんだよなぁ……)
瀬雅は何故か鐸まで吊られて赤面しているのをジト目でみながら肘でつつく。鐸はハッとしたような顔をし、続いて真剣な眼差しを鏡に向けた。
「俺、この町が好きだ。力になりたくてここにいるんだ。俺にもこの町を守らせてください。」
決意――普段ツッコミピエロのような立ち振る舞いをしているが、人一倍正義感にあふれた鐸だ。金堂姉弟も戦争で家族を失った経験を持つ。その台詞は優秀な姉の背中を追うだけの日々、そこから踏み出そうとする決意の表れだった。
「……好きにしなさい。」
「心配するな。俺が責任をもって監督する。」
鐸の覚悟を聞いて諦めたように着席する鏡。懸念を払うように五十嵐が声をかけると
「よろしくお願いします……。」
そっぽを向いたまま呟くのだった。
会議はその後もしばらく続き、午後の全校集会で作戦の概要が説明されることとなった。決行は明日の夜、混乱を避けるために敢えて一般人が少ない時間帯を選ばれたこの作戦行動に、無事瀬雅と鐸も参加できることになった。
ここまで読んで下さってありがとうございます!
膨大な量になってしまったので17時頃に会議の内容をまとめたものを差し込みます!
分かりづらいところがあったら教えてください( ;∀;)
結構人が新たに出てきましたが、再登場する人物はその都度描写されていくので、第五席 金堂 鏡の名前だけ分かれば大丈夫です!




