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正義の条件  作者: ありと@
第1章『激突する憎悪と正義』
14/85

14.気づく瀬雅と決意するルミ(挿絵有)

やべえ挿絵のせいで投稿間に合わないとこだった……

――翌朝


 昨日の騒動はあまり世間で騒がれることはなかった。テレビや新聞でも犬の怪人が出現し、天野学園の3年生がこれを鎮圧したというニュースが短く紹介されただけだった。



 東区の裏路地のだれも通らない場所であったこと、負傷者が1名であったこと、上位種ルミ・ティイケリの情報は学園外には秘匿されていること等が重なった結果だろう。



 そして、天野学園2-Cには昨日の隠れた功労者、かつ唯一の負傷者、米村瀬雅が登校してきたところである。


「おはよーっす。」


「おうおはよう……ってセガ!?どーしたその腕!」



 友人である金堂鐸が挨拶もそこそこに声を荒げる。既に登校している者の視線が瀬雅に向かった。



 瀬雅は昨日の戦いで右腕に深い切り傷、左腕は裂傷や骨折でボロボロ、という状態であった。幸い、ネズミ戦のときのように全身ではなかったため一晩で退院できたが、最新の医療機器で外見だけ治してもしばらくは安静にしておかないといけなかった。



 つまりぶすっとした瀬雅は現在、両腕がギプスで固定され包帯で首から吊るされていた。


「えっと、封印的な……?」


「そんなわけないだろ金堂。」

「じゃ、じゃあどうしたんだよ!」


「必殺技を放ったら腕が弾けた。」


「「「「そんなわけないだろ!!」」」」



 瀬雅と鐸のいつもの軽口のはずが、クラス総ツッコミをもらってしまう瀬雅。昨日の今日ではコボルト事件に瀬雅と魅甘が居合わせたとは誰も知らないようだ。


「まぁ、でもあれだな。」


 鐸が怪我の原因の追究を止める、がその体は小刻みに震えていた。



「大変不謹慎なのはわかっているが……ププッ」


「言うな、自分でもアルティメットダサいと思っている。」


 瀬雅の言葉に鐸は吹き出してしまう。両腕を吊るした学生などシュール過ぎて刺激が強かったようだ。



「くくッくくく。どうやって1日過ごすんだよそれ!アッハッハ。」


「そのリアクションは想像してたし実際困るんだがお前の笑顔は腹立つな金堂殴らせろ。」


「なぐる腕あるのか?」


「ぐっ!」


 珍しく劣勢な瀬雅、もっとも今回の鐸は反則だが。登校するだけでも既に不便なのは分かっていたので、1日をどう過ごすか悩んでいると、不意に後ろから声がかかった。


「……こうする。」


「ん?」

「え?麦町さん?」


 いつの間にか登校していた麦町美甘が机を瀬雅とぺったりくっつけていた。


「こうするって、セガの面倒を麦町さんが見るってことか!?」


「……そうする。」


 鐸が汗を垂らしながら尋ねる。明らかに昨日より距離が近い瀬雅と魅甘に、何かあったのかと邪推する。



「授業はどうするの?」

「……授業、こうする」


 くっつけた机の中心に教科書を開いて見せる魅甘。自分がめくれば何も問題ないということか。鐸はならばと問いかける。


「ノートは?」

『……ノート、こうする』


 ノートを2冊取り出し、両手で書いて見せる魅甘。左右共に女の子らしい、読みやすい字であった。これなら後で写す手間などもなさそうだ。鐸はついに聞く。



「じゃあ、ご、ご飯は!?」

「…………ご飯、こうする。」


 わずかな沈黙の後、右手で箸の形をつくり、瀬雅の口元にもっていくジェスチャーを見せる魅甘。左手を下に添えるのも忘れない。ここで鐸の血管が切れる音がした。




「ぐぐぐ、し、死語かもしれんが、爆発しろぉ!!!!」


「腕が爆発したからこうなってんだよなぁ。」


「くぅぅッ!」

挿絵(By みてみん)

 走り去る鐸、ホームルームが始まる時間だというのにどこへ行くのか。瀬雅は朝から騒がしい奴だ、と思いながらも、昨日の殺伐とした戦いとは違う日常にありがたみを感じた。



「なぁ麦町、ありがたいがそんなにお世話してもらわなくても。」


「……セガは守ってくれたから。」


 ぽつりと魅甘は言う。最終的に魅甘の家が無事だったのは偶然だが、守ってくれようとした意思にこそ魅甘は感謝していた。それほど大切な家なのだろう。



「そっか、じゃあ今日だけ頼んだ。」

「……ん。」



 瀬雅の隣に座る魅甘。いつもの人形のような無表情が微笑むのを瀬雅は見た。それは可憐な花のようで、瀬雅の頬に微かに熱を与えた。



―――――――――――――――――――――


――放課後


 授業が終わり、すさまじい眼力で睨んでくる鐸をいなした後いつもの如く訓練に向かっている瀬雅、とはいっても今日は見学だろうが。もちろん横には魅甘が横で結わいた髪を揺らしている。



 瀬雅の脳裏には、昨日のルミのことが浮かんでいた。


(なぜルミは戦わずに撤退したんだ?いや、それより、奴が言っていた回りくどいやり方を止めるとはどういうことだ?)


 思えば最初のネズミの怪人の襲撃の際からおかしかった。ルミ・ティイケリは災害とも称される上位種で

ある。そんな彼女が直接戦わずに配下に戦わせているのはなぜか。


 かと思えばあっさり撤退したり、配下が死に逆上したり、その行動はチグハグである。彼女があれほど殺意をこめて言った"人間への復讐"がただ死者を出さずに町を騒がせることだとは考えられない。


 そんなことを考えているうちに職員室、2-C担任にして瀬雅と魅甘の補習担当、五十嵐のもとへたどり着いた。五十嵐は生徒指導室――人の来ない部屋まで移動するように指示をした。



――進路指導室。



「さて、昨日は大変だったそうだな。3年を向かわせてよかった。」


「やっぱり、あの人たちは先生が?」

「そうだ。」


 全員が教室に入ると五十嵐。怪人の出現情報を知った五十嵐は3年の成績優秀者を援護に向かわせたという。



「丁度次席と第五席が目の前を通ったんでな。なんにせよ、ご苦労だった。」


 ねぎらう五十嵐、だが、その雰囲気はどこかいつもと違うように感じられた。瀬雅と魅甘は頭を下げる。五十嵐は瀬雅に視線を送った。瀬雅も五十嵐と目を合わせ、違和感の正体に気づいた。



 目だ、目が笑っていないのだ。それどころか瀬雅を値踏みするような気配がある。



 冷や汗を浮かべる瀬雅、大和町3大ヒーローとまで称される五十嵐光。その実力は昨日圧倒的な強さを見せた3年生より遥かに上のはずだ。戸惑っている瀬雅に、五十嵐はついに禁断の言葉を口にした。














「で、米村。お前はいつ魔力を使うんだ(・・・・・・・・・)?」







 固まる瀬雅、怪訝な顔を瀬雅に向ける魅甘。






 五十嵐の言うことはおかしい。2-C米村瀬雅は、抜群の運動能力と卓越した戦闘技術を持ちながらも、魔力が使えない故に落ちこぼれの立場に甘んじていることになっているのだから。




「学園長はもちろんお前のことは把握している。他に知っているのは俺と黒崎くらいだが。」



 何も言わない、否、何も言えない瀬雅に対し五十嵐は続ける。魅甘は何かに思い当たったようで五十嵐の言葉の続きを聞いた。





「まぁ事情を知っているからお前の気持ちも分かるが、米村、死ぬくらいだったら躊躇うな。大人が何とかしてやる。」






 要件はそれだけだった。瀬雅は最後まで何も言えなかった。魔力が使えない落ちこぼれ。自分がそうなったのには訳があるからだ。



「……セガ。」

「あ、ああ。悪い、ちょっと考え事してた。」



 動かない瀬雅に魅甘が声をかける。魅甘は僅かな逡巡の後、小さな口を開いた。



「……分からない、けど、多分あってる。セガにも事情がある。」

「ッはは。ありがとな――麦町。」



 お世辞にも上手いとは言えないなぐさめに思わず苦笑いする瀬雅。魅甘は、魔力を使えないというのには、それを指摘されて躊躇うのには事情があると気づいているようだった。




「じゃあ、帰る、、かーーーーーー!!!!!」






 その時、瀬雅の中で何かが閃いた。さっきまで考えていたことだ。


 なぜ、人間に復讐したいのか


 なのになぜ、人間を手当たり次第に襲う真似はせず、各地を騒がせるだけなのか。


 なぜ、自らは戦わないのか




 


 瀬雅は複数の疑問が1つの仮説でつながっていくのを感じた。









「あいつも、ルミ・ティイケリも俺と同じ(・・・・)なのか?」









――――――――――――――――――――


――???



 暗い場所。どこだかは分からない。本来自分がいるべき場所を離れてここに潜んでいる。




失った仲間たち。


失った誇り。


失った体。





 始めは自分を"実感台"にした者達への復讐であった。しかし、蝕まれた肉体は果てしない破壊衝動に侵され、10年間という長い時を経てルミ・ティイケリという怪人の性質を変質させてしまった。


 破壊衝動を抑えることに精一杯なルミは一部の者への復讐が、いつの間にか人間全体への強い憎悪に代わってしまっていることに気づいていない。


 今にも狂って大和町を破壊して回りそうなルミを見て立ち上がった配下達、彼女にとって彼らは家族のようなものだった。故に無理はさせてこなかった。





 配下が2人死んだ



 半身をもがれるような気持ちと共に、ルミの中で必死に抑え込んでいた破壊衝動が溢れ出してきた。



「次の出撃地点ですが、、、」



 彼女の身を案じながらも、配下の1人が切り出す。配下達はルミを元に戻すには元凶を探さねばならないと考えていた。


 手がかりのない末端怪人の彼らでは、騒ぎを起こして情報をもった人間を炙りだす、そんな手段しか思いつかない。




「待機していろ。」


 ルミが岩肌をつかんで何とか立ち上がった。大和町の外側、洞窟のような空間にルミと配下達はいた。



「ですが、そのお体では!我々が戦います!」



 配下達からルミを気遣う声が上がる。相変わらず甘い奴らだ、ルミは思わず乾いた笑みをこぼした。





「ワタシが戦う。手出し無用。これは命令だ。」




 気がかりなことがあった。怪人と衝突しておきながら、殺さずに、しかも命を懸けた戦いだというのに魔力を使おうともしない、そんな人間の存在。



 もはや立ちふさがるもの全てに殺意を覚えるようになりつつあるルミは、だからこそ前線に出ておきながら負の感情を見せない少年がひどく気にかかった。



 愚かな人間の真意を聞いてみたくなったのは狂ってしまったルミの気まぐれか、それとも。



 いずれにせよ会うなら急がねばならない。自分が完全に自我を失い暴走する前に。



 決意したルミは転移結晶を握り洞窟を後にした。

誤字脱字等ありましたらご指摘いただけるとありがたいです。


家庭の事情があり、文章のストックが切れています。

次話投稿は明日の18時までになんとか!



※2016.10.19 ルミの口調と怪人サイドの字の分を加筆修正

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