5話 彼は意外と根に持つタイプ…?
誤字あったらすみません。
こう見えて僕は放送委員だったりする。
何故かというと、僕の通う逢真高校は、部活に所属していない人が優先的に委員会に入る、という校則がある。入りたい人は、部活優先で委員会に所属しても構わないそうだが、そんな物好きはそうはいない。もちろん僕も、既存するは部活には入っていない。委員会決めの時に僕は細やかながら反論はした。
「僕、帰宅部です」
と。当然取り合ってもらえなかった。帰宅部は帰宅”部”と付いているのに、部活動に含まれないという。
”授業終了後速やかに家に帰る、過保護な保護者を持つ子供にオススメな部活です。”
と謳い生徒会に直談判で部活申請をしている者達もいるようだが。
ちなみに、現生徒会長が率先して”帰宅部部活動化活動”を行っている、という話は今は置いておく事にしよう。
担任及びクラスメイトから、僕の帰宅部主張は、華麗に無視され、クラスで余った放送委員に、いつの間にかなってしまっていた訳だが、まぁなってしまったものは仕方がない。おとなしく放送委員会の活動をのらくらとしている。何故、
”放送部ではなく放送委員なのか”
という疑問を放送委員3年の委員長に聞いてみたところ、
部活動にしてはする事が少ない。たまに活動のある委員会が丁度いい。
との事だ。確かに、毎日放送室から用もないのに、愉快に音やら声やらが全校放送されたら、鬱陶しい以外の何物でもないな、と妙に納得した。そんな自己主張の激しい部活動は、ない方が他の部活の為だ。
過去に部活動として活動していたとき、朝のHR前と放課後に放送し続けて、他の部活から、気が散る、うるさいと苦情殺到。即刻廃部になった、という話もあるそうだ。
そんな、過去に謎のある放送委員である僕は、活動として毎週月曜日の昼休みの放送を担当している。毎日昼休みに活動あるじゃん、等という本音は言わないでおこう。
放送内容は基本的には自由らしいから、僕はクラシックやらJ-POPやらを流していた。
が、今時の歌を流さなかったせいか、生徒から、眠くなるから放送内容を変えてくれ、と多数意見があったらしく、委員長から、何か音楽を流す以外の事もしてくれ、と丸投げな注意をもらった。
…自由ってなんだろうね。何を放送してもいいんじゃなかったのかよ。
と面倒な事に放送内容を変える事になった。
そして次の月曜日、僕は放送2ヶ月目にして初めて放送室のマイクを使った。
「え〜、放送委員1年の佐藤です。なんか眠くなるからと、僕の放送に苦情が来たので、嫌々ながら放送内容を変更する事になりました。そんな訳で、早速ですが、僕を助けて下さい。放送室の前に僕用の投書箱を用意したので、そこに放送して欲しい内容を書いて入れて下さい。聞く側の意見で内容を変える事になってしまったので、聞く側の人が内容を決めて下さい。決して考えるのが面倒だとか、思いつかないとか、そういう事ではないので悪しからず。それでは、今週は先週までと同じく、眠くなるクラシックを流すので、文句があるなら投書箱へお願いします。最後なので、選曲も意見通り眠くなる曲を選びました〜。それでは、僕まだお昼食べてないので、昼休みの時間がなくなる前にこの辺で失礼しま〜す」
今迄と違った月曜日の放送は、教師、生徒の殆どが聞いていたらしい。そのおかげか、投書箱には、予想以上の投書があった。僕は楽ができると喜んだ。が、
その内容は僕を苦しめる事になった
”この前の放送、面白かったです。なので、佐藤くんが何か喋ってたら面白いと思います。”
”音楽より佐藤の放送の方がある意味面白かったわwwお前がグダグダ話してた方がいいんじゃん?”
といった内容の投書が殆どだった。解せぬ。そんな無責任な投書は望んでいない。あの放送で、何故だかちょっと有名になってしまった僕は次の月曜にまたマイクを握った。
「え〜放送委員1年の佐藤です。先週は、月曜日の放送内容の投書を募集したのですが、何故か僕の望んでいた様な内容の投書は、一つもありませんでした。あったのは、何が面白かったのか、僕がこうして喋っていたらどうか、という内容でした。僕のお昼休みの時間を全て放送に費やせ、という一種の罰ゲームの用な無責任な意見ばかりでした。そんな投書が約40程あったので、考えるのも面倒だから採用する事にしました。ですので、僕が放送する為の放送内容を再度募集します。僕に聞きたいこと、言ってほしいこと、先生方への意見、文化祭、体育祭などへ向けての意見、呼び出し、告白等々、内容はなんでもいいので、投書をお願いします。あ、先生方もよろしければどうぞ。なかった場合、クラシックを流しますので、クラシックが嫌な方々は、投書箱へどうぞ〜。回収は金曜にしますので、それまでにお願いしま〜す。そんな訳で、今週も眠くなるクラシックをお聞き下さい。あ、先週の曲とは違うのでご安心を。それではまた来週〜」
という放送をした週の金曜日。驚く事に50以上の投書があった。皆暇だな〜。そんな事してる時間があったら、その時間を勉強やら部活動やらに注げば良いものを。だが、放送内容は溜まった。50通もあれば、暫くは放送内容を考えないで済むと、その時の僕は軽く考えていた。
次の月から、何故かは知らないが、放送が好評らしく、月、水、金の週3回担当する事になったのだが、今は聞かないでくれ…。
最近、投書が増えてきた。あの放送から、1ヶ月と少したった。だが、少し注意事項が必要だな、と感じた、月曜日の3限目と4限目の間の休み時間。僕の机の上には、たった今、教室で渡された、投書が6通程あった。僕はそれに目を落とした。そして、
僕は、今日の放送内容を決定した。
「え〜、放送委員1年の佐藤です。投書についてですが、投書自体は大変嬉しいです。最近は僕に手渡しする人も増えてきています。手渡し自体は別に悪いと言っている訳ではないのですが、注意事項を言っておきます。僕は基本的に内容の確認はしますが、選別はしません。書いてあるものを僕の意見を混ぜつつ、書いてある通りに読みます。そこに名前が書いてあれば、それも読みます。匿名希望と書いてあれば、字や内容から、男か女かとか、こんな人物だろうと、僕なりの予想を言います。そこで、手渡ししてくる人についてですが、僕は顔を知っています。もしかしたら、名前も知っています。上履きの色から学年が分かります。その人が渡してきた投書の内容に関わらず、匿名希望と書いてあろうと、手渡しの場合、学年、特徴、分かったら名前も放送しますので、それが嫌なお方は投書箱へお願いします。ああ決して、投書箱へ、と言っているにも関わらず、僕に手渡しで渡してくるのが嫌だと言っている訳でも、人の言う事を理解できていないんだなぁとか思っている訳でもないです。僕に手渡ししてくる方が増えたので、僕の時間を削らされない為の対策の一つですので悪しからず。放送室が教室から少し遠い場所にあるのも分かりますが、僕は皆さんの意見から、週に3回も昼休みにこの放送室に足を運ばなくてはならなくなったので、遠いとか思われるのであれば、別に投書は強制している訳ではないので、投書される事はないと思います。以上ちょっとした注意事項でした。それでは、本日の投書です……」
それ、注意事項じゃなくて脅しだから!
と聞いていた人全員が思ったのだろう。
僕が教室に戻ってから、クラスメイトの奴等に、何故だか微妙な視線を送られた。
お前怖えよ、とも言われた。目を合わせようとしない奴もいた。知っているぞ、お前、この間僕に手渡ししてきた奴だよな。
分かっているのか、クラスメイト諸君。僕は主に、君等に注意したという事を。同じクラス、学年だからと、手渡ししてくる輩が多い。ただでさえ、昼休みのなくなった僕の、貴重な休み時間を削る君等に向けて、言った言葉だということを、理解して頂けるだろうか?
今後、君等の投書があった場合、完全公開での放送を約束しようじゃないか。字は覚えたからな…。
週に1話は更新したいです……できるように頑張ります。