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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
一章 高校一年、一学期
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15話 佐藤君は苦労人 9

オリエンテーション編やっと終わったー‼︎


お付き合い下さりありがとうございました!

できれば10で終わらせたかったけど、書いててこうなったんだ、仕方ないと言う他ない。

かくあじとは、調理の際に主要な食材以外の材料(目立たない程度であり、たいていは微量)を加え調味する技法、またはその材料を指す用語。wiki参照


ご飯を炊く際の隠し味、というか裏ワザ的なものは、調味料ちょうみりょうを加える事だが、分量はそんなに多くなくてい。

塩ならひとつまみ、砂糖なら小さじ半分〜1杯、はちみつなら小さじ1杯、お酢なら大匙おおさじ1杯等がある。しかしこれは、古い米を美味おいしく炊く、米にツヤを出す、米をモチモチした食感にする、米に甘みが増す(本来ある甘みが増すだけで、甘くしている訳ではない)、といったように味をつける事が目的ではない。




台の上を見てみると、米は火にかかり、使ったザル、ボウル等は片付いていた。


「よう佐藤!米はもうすぐできるぞ!」


「…みたいだな」


「ちゃんとできたみたいだよ。俺が来たときにはもう火にかかってたし」


「…そうか」


水城は大丈夫だと微笑わらっているが、宝来彼方という男の存在が僕の不安をてる。

僕は注意深く台の周りを見る。最初に目に入ったのが、ボウル等の横に置いてあったものだ。


「宝来、米を飯盒はんごうに入れるとき、ちゃんと水を入れたか?間違っても洗剤なんて入れてないよな?」


器具を洗う際に使用したとみられる、食器用洗剤が台の上にあった。米をとぐ際には使用していないとは思うが、炊く時に使った、等と言われては敵わない。


「お前、バカか?米に洗剤なんて入れたらえなくなるだろ。何考えてんだよ」


「…………」


馬鹿はお前だ。何故それが分かっていながら、米をとぐ際に使おうと思ったのかを聞かせてもらいたい。是非。

まぁ馬鹿こいつに常識や理屈や意味を求めても無駄な事は長い付き合いだ、よく分かっている。


「…じゃあ水以外入れていないな?」


「いや入れたぞ」


「えっ?何か入れたの?」


サラリと返ってきた答えに反応したのは水城だった。


「おう!2つあったから、片方は塩でもう片方は砂糖だ!」


バッと台に向くと、ボウルとザルの影に塩と砂糖の袋があった。何故こんなところに?カレーには必要ないはず。というかどこから持ってきた?という疑問は一旦置いておく。


「入れると美味うまくなるってばあちゃんが言ってたんだ!」


どうやら岬の入れ知恵らしい。祖母そぼに聞いたのであれば、まだ可能性はある。重要なのは分量だ。


「…どれくらい、入れたんだ?」


聞きたくはないが、聞かなくてはならない事を問う。答え次第では僕の昼食がカレーライスからライスなしカレーになる。


「塩も砂糖も袋の中に塊があったから、それを入れた」


「入れたというか乗せた、だな。大きさはこれくらい」


新井山の言葉に訂正を入れつつ、これくらいと、指で大きめの飴玉くらいのサイズの輪を作る岬。その大きさを見て、それ位ならまだ大丈夫だと、胸を撫で下ろす僕と水城。しかし炊き込み御飯よろしく塩及しおおよび砂糖のかたまりを上に乗せるのはどうかと思う。やんわりと注意してやろうとした時、宝来が絶望を叩きつけてきた。


「それを5、6個」


「結構大きめの塊もあったからそれも入れたんだ!」


無邪気に笑う岬の言葉に、台の上にある砂糖、塩に目を向けると、1Kgの袋の中身は3分の1程減っていた。


「「………」」


昼食がライスなしカレーに決まった。




「「「………」」」


「で、どうだ?塩と砂糖の炊き込み御飯とカレーの組み合わせは」


「きっと美味しいはずだよ。夏野のお婆ちゃんのレシピなんだから。ね?」


「……レシピ、ね」


一口目を口にし、スプーンをくわえたまま動きが止まった米担当の3人。それに追い打ちをかける様に感想を聞く僕と、顔に笑みを貼り付け有無を言わさぬ同意を求める水城、3人を見て苦笑する金見。調理時間は約1時間30分。全班調理が終わり、器具などを横によけて昼食を取り始めた。僕達宝来班も同様に自分で調理したカレーライスを口にしている訳だが、当然隠し味ご飯は責任を持って、3人に処理して頂く形になった。


「…あまい……カレーなのに……」


「まずい……」


「こんなもん食えるかーー‼︎」


ガタンと椅子を倒しながら勢い良く立ち上がりそらに向かって叫ぶ宝来。そして僕の肩を揺さぶり始めた。


「なぁ佐藤!頼むから一緒に減らしてくれよ!こんなもん食えねぇよ!それか捨てようぜ。お前らは他の班から米もらってんじゃん!俺等もいいだろ?な⁈」


「……」


「うわ〜佐藤君凄いな。あの状態で黙々とカレー食ってる」


「彼方も必死だな。当然といえば当然なんだけど。片やデザートの様な甘いご飯、片や舌が痺れる塩辛いご飯。それに刺激物のカレーなんて合わせたら、なぁ?」


宝来は僕の肩を揺らしながら、泣きついている。それを傍観している水城と金見。おいお前等席変われ。なんで僕の隣に宝来を配置するんだ。


「はぁ…お前等がやったことだろう、責任を持って食え。僕の言うことを聞かなかったお前等が悪い。確かに米が余っている班もあるが、お前等には山程その炊き込み御飯があるだろう。捨てる事は許さない。きっちり完食してもらう。食べるのもトレーニング、なんだろ?」


開けていない塩の方の飯盒を顎で指し、一度も宝来の方を見ずに、手を叩き落とし食事を再開する。


「うぅぅ、俊〜橙里〜」


涙目で正面に座る2人に助けを求める宝来。


「自業自得だよ、彼方。少しは黙って食べてる夏野と晴汰を見習ったら?」


「俺もマズイめし御免ごめんだな。がんばれ」


2人の冷たい反応に、台に突っ伏す。一方で、原因である岬は泣きながら砂糖ご飯を食べ進め、新井山は水を飲みながらご飯を流し込んでいる。本当少しは見習え。往生際の悪い宝来は、顔を伏せたままうなっている。


「でも、だって、夏野が美味しくなるって言ったんだ…」


連帯責任れんたいせきにんと言う言葉を知っているか?岬の案に乗ったのはお前だ。確かに少量であれば問題ないが、分量を考えなかったお前にも非はある。人に責任を押し付ける前に、疑問を持たなかった自分の馬鹿さ加減を見直せ。塊を5、6個入れ更に追い打ちをかけて味を付ける馬鹿3人。救いようがないな。お前等にはそれを食べ切る責任がある。食べるのは義務だ。分かったら黙って食え」


睨みつけながらスプーンを目の前に突き出すと、緩慢かんまんな動きで渋々スプーンを手に取り、勢いよく掻き込み始めた。


「か、彼方…」


同士の勇姿ゆうしに涙を流す岬。


「っ、彼方……」


彼方から顔を背ける新井山。

そんな茶番には目もくれず、悠々と食べ終わった食器を片付ける僕。水城と金見は、他の班にご飯のおかわりを貰うために席を立つ。


「ぷはっ、ご、ごちそう、さま…」


水城、金見が戻り席に着いたとき、宝来の皿が空になった。青い顔で食器を片そうとする宝来。僕は席を立とうとする宝来の手を掴む。


「塩がまだ残ってるぞ」


空いている方の手で、宝来の目の前に飯盒をかざす。


「うっ、もう、いらない」


顔を背け、僕の手を払うと逃げ出そうとする。


「岬と新井山はちゃんと食べてるぞ。お前は食べないのか」


「っ、…………」


ピタリと動きが止まり、肩を震わせると、黙って椅子に座った。


「おかわり、、ください……」


ギギギとびたロボットの様な動きで、僕に皿を突き出してくる。それを受け取り、飯盒に残っていた宝来の分のご飯をよそい、カレーを多めにかけてやる。


「ほら」


「、、いただき、ます…」


震える右手でスプーンを手に取ると、先程と同様、勢いよく掻き込んだ。




「ごちそうさま」


「うん。美味かった」


行儀良く手を合わせる水城と、食器を集め僕の方へ持ってくる金見。それを受け取り、代わりに洗い終わった鍋とタオルを渡す。金見は鍋の水気をタオルで拭き取り、台の上に置く。そして僕は次いで洗い終わった食器を金見に渡し、金見がタオルで拭く。そう僕と金見は後片付けをしている。水城は隣の台だ。ザルとボウルを返すくらいだから1人で大丈夫だろう。


「これでオリエンテーションも終わりか」


「なになにさびしいの?丸々2日俺達といて、楽しかったとか?」


「そんな事、万に1つもある訳がないだろう。ただただ疲れた2日間だった。早く帰りたい」


ニヤニヤとからかうように笑っている金見に皿を渡しながら、ひとつため息をつく。


「まぁ、あの様子じゃあ帰りは静かだと思うよ。ここさえ乗り切れば”全兼任オリエンテーション”はほぼ終わりでしょ」


腹を抑えながら、台に突っ伏し唸っている宝来、岬、新井山の3人を指し苦笑する金見。

見事、”炊き込みご飯カレー”を完食した3人は食べ終わると同時に台に伏せた。


「そうだな。これでやっと、終わる…」


「お…?佐藤君…」


「?」


僕の顔を見て驚いている金見に首を傾げる。


「このオリエンテーションで、はじめて笑ったね」


「うん?今までも普通に笑っていたと思うが…」


「あっても多分嘲たぶんあざける方の笑いだったよ。佐藤君基本無表情だから」


「そうだったか…?」


「怒ってるのは良く見たけど、笑ったのははじめて見たよ。佐藤君も笑うんだなって、少し安心した」


「僕だってロボットじゃないからな。笑いもするし泣きもする」


話しながらやっている内に片付けが終わり、荷物(宝来達3人含む)を持ってバスの前に集まる。


「でも、終わるときには泣くものじゃないかな。笑っても達成感とかがあってだと思うよ?終わる事が嬉しくて笑うって、佐藤君らしいよね」


うるさい、と言ってやりたかったが、僕はその言葉を黙殺した。



帰りのバスは行きの時とは違い、静かだった。”騒ぐ”の筆頭である、宝来と岬が静かだったのも原因であろう。皆疲れて眠っているか、静かに話しているかだ。僕は宝来が静かなら、と窓の外を眺めていた。


17時、学校前にバスが到着した。

バスを降り、最後の点呼を終え、教師に提出する。


「これで1年次のオリエンテーションは終了だ。明日は日曜日だ、ゆっくり休め。月曜に遅刻してくるなよ。そんじゃあお疲れさん。帰っていいぞ〜」


五井先生の締まらない挨拶で皆解散していく。


これで僕の全兼任オリエンテーションは終わりを迎えた。




…………はずだった。



「なぁ佐藤〜。俺等これからファミレスで晩飯ばんめし食ってくんだ。お前も来いよ〜」


僕の左手にまとわりつく、馬鹿が1匹。学校から出てすぐ、歩いていると宝来が後ろから大声で僕の名を叫び、走ってきた。バスの中で回復したのか夕飯に誘ってくる。あれを食べてもう食えるのか、と感心したものだが、もう少し大人しくしてくれてたら嬉しかった…。


「ファミレスにはお前等だけで行け。僕は家に帰れば夕飯がある。もうこれ以上お前に付き合ってられるか」


「まだ作ってないだろ?連絡すれば大丈夫だって」


「後半は無視か?とにかく、僕は帰る」


家に着くまでが遠足、だとは良く言ったものだ。最後に障害が残っていた。

腕を振り払い宝来に背を向け歩き出す。

が、そう簡単には帰してくれないのが宝来彼方だ。


「あ、もしもしおばちゃん?俺、彼方。久しぶりです。これからファミレス行くんだけど、今日佐藤借りていいかな?」


「ちょっと待て。どこに電話している?」


後ろから聞こえてきた声に、進めていた足を止め、宝来に走って詰め寄り肩をつかみ問い詰める。


「ん?お前の母ちゃん」


サラリと問題発言をした直後、携帯を閉じ、ニッコリと笑うと、僕の手を掴む。


「いいってさ!行くぞ佐藤!」


僕はガックリと肩を落とし、宝来に手を引かれるまま水城、金見、岬、新井山と共にファミレスへと行く事になった。連絡してしまった以上、行かないという選択肢がなくなってしまった。帰ったら母に怒られる。母は宝来の事を大層たいそう気に入っており、宝来が連絡してしまった為、退路が断たれた。1人適当にどこかで時間を潰すという手もあるのだが、宝来に手を引かれている為叶わない。逃げるのを見越してか先手を打たれた。僕は水城、金見に肩を叩かれ慰められながら、ファミレスに連行された。



散々ファミレスに付き合わされ、僕が家に帰ることができたのは21時近く。


こうしてやっと、僕の苦労の2日間は幕を閉じた。

佐藤君は苦労人、やっと終わりました。

タイトル通りの話になったかな…?

傍観”的”にした理由がコレですからね…


暇なときに読み直して、ちょこちょこ編集したりしてますが、誤字脱字等あったら報告よろしくです。


彼方は書いてて楽しい!

こんな奴いたら見てる方は面白いとは思うけど、巻き込まれるのはごめんですよね。


次は放送委員会の話だと思います。

やっと(?)新キャラ出せる、カモ。


……新キャラ、と言えるのか…?

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