128話 イベント事にハプニングはつきものです〜ファンサービスは重要です〜
無駄に長くなってる気がする……。
全部書き終わったら編集するから、多少変でもいいか、と思い始めてしまっている、今日この頃……。
意識の改革が必要だな……。
階段を下り、2年生のフロアに来た僕達。ここも順番に回っていくようだ。
まず2-Aの出し物だが、合法ギャンブル!、とは高校生の出し物としては如何なものだろう?
とりあえず、入る以外に道はないので、教室へと入る。
「合法ギャンブルへようこそ」
何故かバーテン服を着た女子生徒に、静かにそう出迎えられた。
「まずは、こちらでお金をチップに変えて下さい。10枚200円、ゲームには1枚からベットできます。終了後、返金はできかねますが、あちらに並ぶ景品との交換が可能です」
受付の隣に並ぶ机の上には、"豪華景品"と書かれたポップと共に、様々な物が置いてある。まぁ、内容については、豪華、とは言い難い物もあるが……。
「ご安心下さい。クラスの生徒が持ってきた物もございますが、文化祭予算で買った物が殆どですので」
それは客に言うことではない。予算、とか生々しいだろうが。子供が来てもそう説明するのか?
「ダーツ、トランプ、ルーレットの3種類のゲームがございます。遊んで行かれますか?」
金見をチラリと横目で見ると、首を横に振り
"時間がない"と書く。まぁ、やる気もないがな。そして、宝来に出された指示を見て、僕は眉を顰める。ため息を吐く間もなく、宝来は行動に移した。
「姫、いやグリシーヌ。貴女にこのような場は似合いません。他の所へ行きましょう」
僕の手を握りながら真剣な表情で言う宝来。
「……はい」
頬を引きつらせながらも、僕はそう返答する以外なかった。
ファンサービスは忘れずにってことか。なぁ、カンペを出しながら笑っている金見君?
カメラに映らない、好きに宝来に指示を出せるお前はいいな。楽しそうに文化祭を満喫してて。
2-Bはクレープ&タピオカドリンクの店らしい。少し休憩させろ、と訴えたところ、許可が出た。
だが、一つ言わせてくれ。"買ったり遊んだりは自由"と言ったのはどこのどいつだ?
お前に指示を仰いで許可を貰わなければいけない時点で、自由でもなんでもないんだが。
「では、私はこれを」
タピオカブラックコーヒーを頼む僕
「俺、じゃない私は、これとこれと、あとこれを!」
チョコバナナクレープに、スペシャルケーキクレープ、タピオカイチゴミルクを頼む宝来。
お前、さっきお好み焼きとたこ焼き食ってたよな…?
あと、設定を忘れるな。お前は仮にも王子だ。
お好み焼きとたこ焼きは"粗末な物"で、クレープやらタピオカやらはそれに属さない、と、王子がただの甘党になるだろうが。
少しの休憩を終え、続いて隣のクラスに向かった、が……。
「…………」
「楽しそうだなっ‼︎」
「……ここはスルーだ。関わってはいけない」
"2-C ペイントバトル‼︎"
教室前に置かれた、そう書かれたカラフルな看板に、僕は顔を引きつらせた。
ここをスルーして、次のクラスに向かおうとする僕に対し、宝来は教室を潜った。静止する間もなかった。仕方なく後に続く。
「ペイントバトルへようこそ!参加者ですか?参加者ですね‼︎こちらへどうぞー!」
こちらも、断る間もなく受付へと案内された。そして、案内してくれた後輩女子は、何故かスマホを取り出し、操作しながら、説明を始める。
「こちらでは参加受付と、着替えの貸出を行っております。参加費は着替えの貸出含めて350円‼︎安いですよ!お得ですよ!洗濯代を取らない心優しいお値段設定ですよ‼︎」
押し売り感が凄い。
それよりも、隣に座る宝来の目が輝いているのに不安を感じる。
「参加しますか?しますよね‼︎こちら参加用紙になります!必要事項を記入して、パーカーか雨具か着替えを選んでください!」
「王子。行きますよ」
宝来が食いつく前に、と僕は立ち上がり、宝来の腕を引く。
「えーやんないの?」
不満げに口を尖らせ、立ち上がる気配もなく、僕を見上げる宝来を軽く睨み、魔法の言葉を唱える。
「坂本さんの言葉を忘れたのか?」
途端、ガタリと椅子をひっくり返す勢いで立ち上がり、
「さあ、行こうか!」
僕の手を引き、慌てた様子で教室を出る。しかし、
「あーー‼︎ほんとに先輩いました‼︎」
廊下に出た瞬間、少し遠いところから、聞き慣れた騒がしい声が響いた。
「…………っ幡木」
僕と金見は、ヒクリと頬を引きつらせた。思わず、一歩後退する。
幡木に遭遇したから、ではない。
「しーちゃんが連絡してくれなかったら、会えないところでしたよ‼︎」
バッと後ろを振り返り、先程案内してくれた後輩女子を見ると、教室のドアから顔を出し、
「はーちゃん‼︎頑張って引き止めましたよ‼︎」
幡木に向かって、笑顔で手を振っている。その手には、スマホが握られたままだ。それに幡木は親指を立てて、ウインクを送る。
「さぁ、先輩‼︎ペイントバトル、もちろん参加しますよね‼︎」
「しない」
ジリジリと笑顔で距離を詰めてくる幡木に、僕達は後退しつつ返答する。事態が飲み込めていない宝来の手を、僕と金見とで引きながら。
「楽しいですよ!水鉄砲とか水風船使って、相手に当てるだけですよ‼︎やりましょう‼︎」
「やらない。汚れるから寄るな」
水鉄砲こそ持っていないが、幡木のその姿は、弾丸そのものだ。
「当たり前ですよ!ルール説明のデモンストレーションは、全部私がやってるんですから‼︎」
頭から足の爪先まで、ペイントがべっとりとついた幡木のその姿に、僕と金見は出会った瞬間から嫌な予感がしていたのだ。
「なら、力づくで参加させてみせます!」
「走れ‼︎」
金見のその声を合図に、僕と宝来は踵を返し、走り出す。幡木もスタートダッシュをきり、追いかけてくる。
「なになに、鬼ごっこか?これがイベントなのか‼︎なあなあ!」
「楽しそうにするな!いいかよく聞け、あいつに、指先一つでも触られてみろ!……服が汚れるぞ」
瞬間、宝来の走るスピードが上がった。金見のスピードも上がった。もちろん、新井山もカメラを持ち撮影しながら並走する。しかし、
「クソッ」
女装で動き難い服な上、5センチとはいえヒールを履かされている僕は、宝来達から離され、幡木との距離が縮まっていた。思わず悪態を吐くが、それでスピードが上がる訳ではない。それを見た金見は、何かを思いついたのか、宝来に向かって叫ぶ。
「彼方っじゃなかった王子‼︎姫を抱えて下さい‼︎」
晴汰はカメラ‼︎と新井山にも指示飛ばす。すると、数コンマ程の間を置き、僕の前方3メートル程先を走っていた宝来達が立ち止まり、振り返った。
「姫っ‼︎こちらへっ」
僕に向かって腕を伸ばす宝来。僕は走る足を止めず、そんな宝来の横を通り過ぎようとするが、腕を掴まれ、途端景色が回る。
「しっかりつかまっていて下さい‼︎」
「…………」
次の瞬間には、風をきっていた。
隣を見ると、いい笑顔の金見がカンペに書いた先程のセリフを見せて、親指を立てた。
そのバスケをやるのに大切な指、へし折ってやろうか。
そして、横向きながら並走し、ブレることなくしっかりとカメラを回す新井山。
流石運動部、と褒めるべきだろうか?
「………………明日、覚えてろよ」
僕は宝来、基リベルテ王子に横抱き、まあ所謂"お姫様抱っこ"をされながら、幡木から逃走していた。
当然、バスケ部レギュラーのスピードに敵う訳もなく、幡木を撒くことに成功した。
幡木の所為で2-Dを抜かしてしまったが、逃げる過程で1年生のフロアに来た僕達は、1-Dの教室の前で立ち止まった。
いや、"僕達は"という表現は正しくないか……。
「入りましょうか」
面白いそうにカンペを出す金見と、それに従う宝来。
『1-D 恋人カフェ キューピッド』に僕は入店した。
宝来に横抱きにされたまま。
「いらっしゃいま、、キャーー‼︎」
入店した瞬間、後輩の一人がキャーキャー騒ぎ、その悲鳴を聞いた他の店員も客もキャーキャーと騒ぎ始めた。
皆が騒ぐ中、一人の後輩店員が頬を染めながら、僕と宝来を案内する。
教室のど真ん中のVIP席へと…。
この教室内で一席だけ目立つ、椅子もテーブルもハートになっており、しかも桃色に彩色されている。
ここでやっと僕は降ろされた。
二人用のハート形の椅子に。
そして、宝来は床に膝をつき僕の左手を取り、王子らしく微笑んだ。
「グリシーヌ。少し休憩いたしましょう」
「…………」
僕は顔の筋肉を総動員し、にっこりと引きつった笑顔を浮かべた。
宝来が右隣に座り、仕方なくメニューを開こうとしたが、
「こちら、当店の看板メニュー"恋するキューピッド"です」
ハート形のストローが2本ささり、フルーツや食用花で装飾された豪華なドリンクが運ばれてきた。
所謂カップルドリンクというやつだろうか。
これを飲めと?
宝来と二人で?
この僕が?
「すっげぇなコレ‼︎飲んでいいのか?」
「はい。どうぞ、お隣の彼女とご一緒に」
ヒクリと、また顔が引きつる。視界の端で、カンペになにやら書き込んでいる金見の姿が見える。僕はその指示が飛ぶ前に、行動に出る。
「……王子。私、先程飲んだコーヒーだけでお腹が一杯になってしまって……。全部王子が飲んで下さい」
「待っ「マジで‼︎いいのか‼︎」
金見の声は宝来の声にかき消された。
「はい。どうぞ」
ドリンクは宝来が一人で美味しく頂きました。
なんとか1-Dを出た僕は、入口にあった看板を見て、次いで金見を見た。
金見はニヤリと笑った。
「…………」
看板にはこう、書かれていた。
【♡入店諸注意♡
カップルメニューが豊富です。
男女の組み合わせは問いません。二人以上、偶数人数じゃないと入店できません。
その上、カップル用メニューしかない為、ご注意を。
お席に着いたら、一品は頼まないと退店できません。】
「本当、明日は覚えてろよ……」
文化祭本番その2。
掬ちゃんに遭遇。命の危機。その他諸々でお送り致しました。
次回で文化祭1日目を終わらせられればな、と思っております。書きたい2日目が遠い……。
それでは次回もどうぞ、よろしくお願い致します。