表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
八章 高校三年、二学期
150/178

128話 イベント事にハプニングはつきものです〜ファンサービスは重要です〜

無駄に長くなってる気がする……。

全部書き終わったら編集するから、多少変でもいいか、と思い始めてしまっている、今日この頃……。


意識の改革が必要だな……。



階段を下り、2年生のフロアに来た僕達。ここも順番に回っていくようだ。


まず2-Aの出し物だが、合法ギャンブル!、とは高校生の出し物としては如何なものだろう?

とりあえず、入る以外に道はないので、教室へと入る。


「合法ギャンブルへようこそ」


何故かバーテン服を着た女子生徒に、静かにそう出迎えられた。


「まずは、こちらでお金をチップに変えて下さい。10枚200円、ゲームには1枚からベットできます。終了後、返金はできかねますが、あちらに並ぶ景品との交換が可能です」


受付の隣に並ぶ机の上には、"豪華景品"と書かれたポップと共に、様々な物が置いてある。まぁ、内容については、豪華、とは言い難い物もあるが……。


「ご安心下さい。クラスの生徒が持ってきた物もございますが、文化祭予算で買った物が殆どですので」


それは客に言うことではない。予算、とか生々しいだろうが。子供が来てもそう説明するのか?


「ダーツ、トランプ、ルーレットの3種類のゲームがございます。遊んで行かれますか?」


金見をチラリと横目で見ると、首を横に振り

"時間がない"と書く。まぁ、やる気もないがな。そして、宝来に出された指示を見て、僕は眉を顰める。ため息を吐く間もなく、宝来は行動に移した。


「姫、いやグリシーヌ。貴女にこのような場は似合いません。他の所へ行きましょう」


僕の手を握りながら真剣な表情で言う宝来。


「……はい」


頬を引きつらせながらも、僕はそう返答する以外なかった。

ファンサービスは忘れずにってことか。なぁ、カンペを出しながら笑っている金見君?

カメラに映らない、好きに宝来に指示を出せるお前はいいな。楽しそうに文化祭を満喫してて。




2-Bはクレープ&タピオカドリンクの店らしい。少し休憩させろ、と訴えたところ、許可が出た。

だが、一つ言わせてくれ。"買ったり遊んだりは自由"と言ったのはどこのどいつだ?

お前に指示を仰いで許可を貰わなければいけない時点で、自由でもなんでもないんだが。



「では、私はこれを」


タピオカブラックコーヒーを頼む僕


「俺、じゃない私は、これとこれと、あとこれを!」


チョコバナナクレープに、スペシャルケーキクレープ、タピオカイチゴミルクを頼む宝来。

お前、さっきお好み焼きとたこ焼き食ってたよな…?

あと、設定を忘れるな。お前は仮にも王子だ。

お好み焼きとたこ焼きは"粗末な物"で、クレープやらタピオカやらはそれに属さない、と、王子がただの甘党になるだろうが。





少しの休憩を終え、続いて隣のクラスに向かった、が……。


「…………」


「楽しそうだなっ‼︎」


「……ここはスルーだ。関わってはいけない」


"2-C ペイントバトル‼︎"

教室前に置かれた、そう書かれたカラフルな看板に、僕は顔を引きつらせた。


ここをスルーして、次のクラスに向かおうとする僕に対し、宝来は教室を潜った。静止する間もなかった。仕方なく後に続く。


「ペイントバトルへようこそ!参加者ですか?参加者ですね‼︎こちらへどうぞー!」


こちらも、断る間もなく受付へと案内された。そして、案内してくれた後輩女子は、何故かスマホを取り出し、操作しながら、説明を始める。


「こちらでは参加受付と、着替えの貸出を行っております。参加費は着替えの貸出含めて350円‼︎安いですよ!お得ですよ!洗濯代を取らない心優しいお値段設定ですよ‼︎」


押し売り感が凄い。

それよりも、隣に座る宝来の目が輝いているのに不安を感じる。


「参加しますか?しますよね‼︎こちら参加用紙になります!必要事項を記入して、パーカーか雨具か着替えを選んでください!」


「王子。行きますよ」


宝来が食いつく前に、と僕は立ち上がり、宝来の腕を引く。


「えーやんないの?」


不満げに口を尖らせ、立ち上がる気配もなく、僕を見上げる宝来を軽く睨み、魔法の言葉を唱える。


「坂本さんの言葉を忘れたのか?」


途端、ガタリと椅子をひっくり返す勢いで立ち上がり、


「さあ、行こうか!」


僕の手を引き、慌てた様子で教室を出る。しかし、


「あーー‼︎ほんとに先輩いました‼︎」


廊下に出た瞬間、少し遠いところから、聞き慣れた騒がしい声が響いた。


「…………っ幡木」


僕と金見は、ヒクリと頬を引きつらせた。思わず、一歩後退する。

幡木に遭遇したから、ではない。


「しーちゃんが連絡してくれなかったら、会えないところでしたよ‼︎」


バッと後ろを振り返り、先程案内してくれた後輩女子を見ると、教室のドアから顔を出し、


「はーちゃん‼︎頑張って引き止めましたよ‼︎」


幡木に向かって、笑顔で手を振っている。その手には、スマホが握られたままだ。それに幡木は親指を立てて、ウインクを送る。


「さぁ、先輩‼︎ペイントバトル、もちろん参加しますよね‼︎」


「しない」


ジリジリと笑顔で距離を詰めてくる幡木に、僕達は後退しつつ返答する。事態が飲み込めていない宝来の手を、僕と金見とで引きながら。


「楽しいですよ!水鉄砲とか水風船使って、相手に当てるだけですよ‼︎やりましょう‼︎」


「やらない。汚れるから寄るな」


水鉄砲こそ持っていないが、幡木のその姿は、弾丸そのものだ。


「当たり前ですよ!ルール説明のデモンストレーションは、全部私がやってるんですから‼︎」


頭から足の爪先まで、ペイントがべっとりとついた幡木のその姿に、僕と金見は出会った瞬間から嫌な予感がしていたのだ。


「なら、力づくで参加させてみせます!」


「走れ‼︎」


金見のその声を合図に、僕と宝来は踵を返し、走り出す。幡木もスタートダッシュをきり、追いかけてくる。


「なになに、鬼ごっこか?これがイベントなのか‼︎なあなあ!」


「楽しそうにするな!いいかよく聞け、あいつに、指先一つでも触られてみろ!……服が汚れるぞ」


瞬間、宝来の走るスピードが上がった。金見のスピードも上がった。もちろん、新井山もカメラを持ち撮影しながら並走する。しかし、


「クソッ」


女装で動き難い服な上、5センチとはいえヒールを履かされている僕は、宝来達から離され、幡木との距離が縮まっていた。思わず悪態を吐くが、それでスピードが上がる訳ではない。それを見た金見は、何かを思いついたのか、宝来に向かって叫ぶ。


「彼方っじゃなかった王子‼︎姫を抱えて下さい‼︎」


晴汰はカメラ‼︎と新井山にも指示飛ばす。すると、数コンマ程の間を置き、僕の前方3メートル程先を走っていた宝来達が立ち止まり、振り返った。


「姫っ‼︎こちらへっ」


僕に向かって腕を伸ばす宝来。僕は走る足を止めず、そんな宝来の横を通り過ぎようとするが、腕を掴まれ、途端景色が回る。


「しっかりつかまっていて下さい‼︎」


「…………」


次の瞬間には、風をきっていた。

隣を見ると、いい笑顔の金見がカンペに書いた先程のセリフを見せて、親指を立てた。

そのバスケをやるのに大切な指、へし折ってやろうか。

そして、横向きながら並走し、ブレることなくしっかりとカメラを回す新井山。

流石運動部、と褒めるべきだろうか?


「………………明日、覚えてろよ」


僕は宝来、基リベルテ王子に横抱き、まあ所謂"お姫様抱っこ"をされながら、幡木から逃走していた。


当然、バスケ部レギュラーのスピードに敵う訳もなく、幡木を撒くことに成功した。






幡木の所為で2-Dを抜かしてしまったが、逃げる過程で1年生のフロアに来た僕達は、1-Dの教室の前で立ち止まった。

いや、"僕達は"という表現は正しくないか……。


「入りましょうか」


面白いそうにカンペを出す金見と、それに従う宝来。

『1-D 恋人カフェ キューピッド』に僕は入店した。



宝来に横抱きにされたまま。



「いらっしゃいま、、キャーー‼︎」


入店した瞬間、後輩の一人がキャーキャー騒ぎ、その悲鳴を聞いた他の店員も客もキャーキャーと騒ぎ始めた。

皆が騒ぐ中、一人の後輩店員が頬を染めながら、僕と宝来を案内する。

教室のど真ん中のVIP席へと…。

この教室内で一席だけ目立つ、椅子もテーブルもハートになっており、しかも桃色に彩色されている。


ここでやっと僕は降ろされた。

二人用のハート形の椅子に。

そして、宝来は床に膝をつき僕の左手を取り、王子らしく微笑んだ。


「グリシーヌ。少し休憩いたしましょう」


「…………」


僕は顔の筋肉を総動員し、にっこりと引きつった笑顔を浮かべた。

宝来が右隣に座り、仕方なくメニューを開こうとしたが、


「こちら、当店の看板メニュー"恋するキューピッド"です」


ハート形のストローが2本ささり、フルーツや食用花で装飾された豪華なドリンクが運ばれてきた。

所謂カップルドリンクというやつだろうか。


これを飲めと?

宝来と二人で?

この僕が?


「すっげぇなコレ‼︎飲んでいいのか?」


「はい。どうぞ、お隣の彼女とご一緒に」


ヒクリと、また顔が引きつる。視界の端で、カンペになにやら書き込んでいる金見の姿が見える。僕はその指示が飛ぶ前に、行動に出る。


「……王子。私、先程飲んだコーヒーだけでお腹が一杯になってしまって……。全部王子が飲んで下さい」


「待っ「マジで‼︎いいのか‼︎」


金見の声は宝来の声にかき消された。


「はい。どうぞ」


ドリンクは宝来が一人で美味しく頂きました。



なんとか1-Dを出た僕は、入口にあった看板を見て、次いで金見を見た。

金見はニヤリと笑った。


「…………」


看板にはこう、書かれていた。


【♡入店諸注意♡

カップルメニューが豊富です。

男女の組み合わせは問いません。二人以上、偶数人数じゃないと入店できません。

その上、カップル用メニューしかない為、ご注意を。

お席に着いたら、一品は頼まないと退店できません。】



「本当、明日は覚えてろよ……」


文化祭本番その2。

掬ちゃんに遭遇。命の危機。その他諸々でお送り致しました。


次回で文化祭1日目を終わらせられればな、と思っております。書きたい2日目が遠い……。


それでは次回もどうぞ、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ