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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
一章 高校一年、一学期
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14話 佐藤君は苦労人 8

コレジャナイ感がありつつも、更新。

読んで下さっている方、ありがとうございます。ログインする毎にアクセス履歴を見て、やる気をもらってます。


目の前に並ぶのは、乱雑に置いてある野菜が数種類。50近くある水道付きのキッチンテーブルにバーベキューコンロ。テーブルの上には鍋と飯盒はんごうと包丁。

そよそよと風が肌を撫でる感覚と、雲ひとつない青空。

時刻は午前11時。僕達は緑に囲まれたとあるキャンプ場に到着していた。

ここから僕指導のもと、昼食作りの飯盒炊爨が行われる。


「これから昼飯を作る。各班に飯盒はんごうがあると思うが、それでご飯を炊く。調理担当の奴らがカレー、その他が飯を担当だ。ご飯を炊くだけなら、包丁は使わないからどんな料理下手でもできるはずだ。コンセントのない屋外で炊飯器なんて物があるはずもないのは、言わずとも分かることだとは思うから、頑張って飯盒でご飯を炊いてくれ。やり方はプリントに書いてある。とりあえず各自レシピを書いたプリントを参考に準備してくれ。分からない事があったら僕か、分かる奴に聞け」


僕が簡単に説明を終えると、各自準備を始めた。最初にやっているのは、火起こしだ。火がなければなにも作れない。まぁ今は文明の利器のチャッカマン、ライターといったものがあるから簡単に火は付くだろうが、炭に火をつけるのはコツがいる。プリントに火起こしの方法も書いてあるから、そこらへんは各々でやってもらう。できませんでした、と言われても僕は知らない。どうぞ年配の方に聞いて下さい。ちなみに、1班ごとに2台だから両方忘れずに火を起こせよ。僕も自分の班の台へと向かう。


「おい佐藤。俺が米炊くのか?」


「…そうだな。お前と岬と新井山でやるんだな。カレーは僕と水城と金見だな」


「これじゃあ俺等が調理から外れた意味がないじゃん!」


来て早々に宝来と岬が頬を膨らませ抗議してくる。新井山も無言で頷く。水城と金見は米、野菜などの食材を取りに行った。


「調理の奴は、作る物の提案、レシピ作成、材料の手配と本来なら教師がやる仕事を事前にやっている。だから米はお前等がやれ。ちゃんと馬鹿でも分かるように振仮名付ふりがなつきのレシピを作ってやったんだからな」


レシピとは言っても、飯盒でのご飯の炊き方である。各自1枚ずつ配ったそれを見て、「振仮名が付いてる!」と喜ぶ宝来、岬の2人。

……お前等高校生だよな?

呆れると同時に自分の予想は正しかったと喜ぶべきか、奴等の頭の悪さを悲しむべきかが分からない。2台目のコンロの炭に火を付けながら冷めた目で馬鹿を見ていると、戻ってきた2人が台にゴトゴトと食材を置いた。


「…多くないか?」


予定の倍の野菜と米が台の上にある。


「こんなもんだろ」


「僕らは食べるのもトレーニングだから」


成る程。図体がでかい上に態度もでかい邪魔なバスケ部が5人もいるんだ。倍の量でも足りるかどうか、といったところか。僕は1杯で十分だ。まぁ無事にできたら、の話ではあるが。


「なぁ、米をとぐって洗うってことだよな?」


「とぐも洗うも同じだろ。洗うってことは、洗剤が必要か?」


「洗剤なら皿の近くにあったぞ」


僕が火を付けている横で不穏な言葉が行き交っている。いつもならば華麗に無視するところだが、今回は僕の口にも入るものだ。見過ごす訳にはいかない。料理下手のレベルを超えたドジっ子クッキングは御免だ。僕は洗剤を取りに行こうとする宝来の肩を掴み止める。


「いいか、米は”水で”とぐんだ。特殊な液体はなにも必要ない。お前等はなにも考えず、ただプリントに書いてある指示の通りに米を炊けばいい。余計な事はするな。不味い飯を食いたくなければ、僕の指示に従え。分からない事は僕か水城か金見に聞け。いくら馬鹿でもそれくらいならできるよなぁ?」


ギリッと肩を掴む手に力を込める。目の前にいる3人は顔を青くして千切れんばかりに首を縦に降る。


「じゃあ、大人しく水で、水で米をとげ」


大事な事だから2回言った。

そして、料理の知識のない3人に指示を飛ばす。


「まず、ザルに米を入れてその下にボウルを重ねろ。本当ならボウルだけでもいいんだが、米をこぼさないようにザルも使え」


僕の指示に素早くザルとボウルを用意し、米を入れる。そして続きを促し黙って僕に顔を向ける。


「まず零れない程度に水を入れ、軽くといで水を捨てる」


「とぐってどうすればいいんでしょうか!」


「……手で軽く押し付ける様に混ぜろ」


元気よく手を挙げた岬に、どう説明するべきか少し考え、おそらく間違っていないと思う説明をする。


「そして、それを4、5回繰り返す。2回目からは水の色が濁ったら捨てる。ある程度水が澄んできたら終わりだ。完全に水が澄む事はないから5回位で大丈夫だ。とぎすぎても良くない。米がとぎ終わったら、計量カップで4合計ごうはかって飯盒に入れる。僕達の班は8合あるから飯盒を2つ使う。飯盒にメモリが付いているから、そこまで水を入れて蓋をする。そして30分程度放置だ。ここまでで分からない事は?」


「大丈夫!佐藤の説明の方は簡単だな!」


宝来、僕の説明だが、プリントに書いてある事と変わらないのだが?見ていないのか?振仮名も付けてやったと言うのに、口で説明しないと理解出来ないのか?料理の出来ない馬鹿の相手がこんなに疲れるとは…。

やり方を理解し動き始めた3人に多大な不安を残しつつ、カレーの調理をする隣の台へと戻る。


「佐藤くんお疲れ。野菜の皮剥かわむきは終わったよ」


「だけどさ、これいくら剥いても終わらなくて、気がついたらこんなになった」


「……ん?」


下準備は終わったと聞き安心したのも一瞬だった。にんじん、じゃがいも、りんごはまだ良かった。ピューラーで皮を剥いた様で、にんじんの表面を少しけずりすぎなのと、じゃがいもに少し芽が残っている位で許容範囲だ。りんごは8等分に切ってあるだけだ。が、玉ねぎがにんにく1欠位の大きさ(5センチ位)になっている。ああ初心者あるあるだな、と片付けられないくらい小さい。


「っ、…玉ねぎは、外側の数枚の薄い皮だけ剥けばいいんだ。もう1個玉ねぎ取ってこい」


漏れそうになるため息を必死に嚙み殺し、代わりに言葉を吐き出す。お前もか、とは口には出さない。

金見が玉ねぎを取りに行き、僕は残っている玉ねぎの皮を剥き、じゃがいもの芽を処理する為に包丁を握る。


「水城、お前は鍋の用意をしてくれ。食材は全部僕が切る」


「分かった。お願いするよ」


最初に、豚肉を含む食材を一口大に切り、金見が持ってきた玉ねぎを、皮を剥いてもらい、僕が切る。隣で涙を流す金見。


「佐藤君、よく平気だね」


「慣れだ」


袖で涙を拭う金見を横目に見ながら、淡々と食材を切っていく。その間に金見にりんごとにんじんを1本すりろしてもらう。


「佐藤君、鍋の用意出来たよ。油も引いといた」


その言葉に、思わず涙が出そうになる。水城、お前だけが僕の味方だ。鍋を火にかけるだけでなく、油まで引いておいてくれるとは。たったそれだけの事なのに、感動を隠せない。


「助かる。あとは炒めて煮込むだけだから、あっちの3人を見て来てくれるか?米ももうすぐ火にかけられる時間だ」


「分かった。じゃあこっちは任せるね」


水城は多少料理のできる様なので、不安しかない米担当の方のサポートに行ってもらう。カレーは僕1人でもできる。金見には食材を取る、という簡単な事だけ手伝ってもらう事にする。


「よし、じゃあ金見、最初に玉ねぎを取ってくれ」


「オッケー」


切った食材は分けてボールに入れたので、取ってもらうのも鍋に入れるのも楽だ。だが、なにせ量が多い。それだけで時間がかかるだろう。目の前にあるのは、約30センチの寸胴鍋ずんどうなべ。家庭では見ない大きさの鍋に、辟易しながらも、意を決して玉ねぎを投入する。


「ねぇ、レシピだと肉からなんだけど、玉ねぎが先でいいの?」


「僕の作り方は玉ねぎが先だ」


「ヘぇ〜そうなんだ」


レシピを見ながら、鍋と食材を見る金見。ただ食材を取るだけだから、暇な様だ。


「金見、肉」


「はいよ」


玉ねぎが透き通ってきたので豚肉を投入し、ある程度色が変わったらにんじん、じゃがいもを入れる。軽く火が通ったら食材全てが浸るくらいに水を加える。灰汁あくをとりながら煮込み、じゃがいもに竹串が刺さるくらいになったら、すり下ろしたりんごとにんじん、カレールウを加える。


「あとは煮込むだけだな。金見、軽く混ぜながら見ておいてくれるか?」


「もう完成?早いなぁ。いいけど、佐藤君はどうすんの?」


「後片付け、と言いたいところだが、隣を見てくる」


「なるほど。りょーかい」


僕からお玉を受け取り、混ぜる金見。そして僕は、問題児のいる隣の台へと向かう。対して距離もないはずなのに、遠く感じるのは足が重いからだろうか?水城を送ったとはいえ、不安要素は消えない。


奴らに飯盒は荷が重かったか、と米の心配をしながら4人のもとへ足を向けた。


また中途半端ですみません。カレーの作り方だけ書いた、みたいな感じに…


予想よりも週1更新が大変です。でも楽しく書いてます。


次でオリエンテーションが終わると思います。…多分。更新遅くなったらすみません。

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