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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
七章 高校三年、一学期
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121話 夏休みの訪問者 その2

遅くなってすみません。

なんとか書けました



「………………」


「はっはっは‼︎誰だ?と思ったら私だ‼︎」


「お帰り下さい」


一人自室にて勉強の合間の休憩中、明るいからと部屋の電気を消し、窓際にて太陽の光で本を読んでいた僕は、電気を付けなかったことを後悔した。

流石に今日は来ないだろうと、高を括っていた僕は、先輩の行動力を侮っていた。

昨日の訪問から一夜明け、翌日の正午。皇先輩が何故か二階の窓からやってきた。早朝に迷惑な事に自宅の電話が鳴った。日も登らないくらいの時間なので無視しようかと思ったが、何分経ってもやむ気配がなく、眠い目をこすりながら仕方なく受話器を取る。大方の予想はできているから、相手の出方を待つとする。まぁどちらにせよ、話を聞く相手でもないのだが…。


「近いうちに訪問するとをここに誓おう!」


「誓わなくていいです」


「まぁそう遠慮するな。事前に連絡を入れろと言ったのは君だ。私は約束は守ったぞ」


「約束も何も、来るなって言っ「またな少年‼︎」


ブツン、という音と共に切られた通話。


「………………」


毎度毎度話を聞かない人だな……。寝起きの僕の耳には毒でしかない。

そして起きるのにはまだ早い為、二度寝をし、アラームで起床。色々済ませ、勉強をしていた。2時間程経っただろうか。休憩の為本を開いた、その時だ、


コンコン


背後から、正確に言うと窓から音がした。無視して本に目を落としたが、


コンコン、コンコン、コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン


「…………」


騒音被害で訴えるぞ、と背後を振り返り睨みつけようとしたが、


「………………」


そこにはノック音通りの見た目の、出来が悪く見た目も悪い狐がいた。まあ、ただのフードの大きいパーカーだが。


「コンコン」


ノック音ではない。

狐の中から発された、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「…………はぁ」


「ため息を吐くと幸せが逃げると何度も言っておるだろうが‼︎」


「狐が何を言っても説得力がありませんね」


僕は窓の外に向き直り、胡座をかき頬杖をついた。


「ふっふっふ。私が誰か分からないようだな」


「そうですね。わかりませんね。なので自分の里にお帰り下さい」


そう言うと、狐は自分の頭に右手を乗せると、バッと勢いよくフードを取り去った。


「はっはっはっ‼︎誰だ?と思ったら私だ‼︎」


「お帰り下さい」


「まあ、そう言うな少年よ」


そう言うと、皇先輩は昨日と同じところにドカリと腰を下ろした。


「即刻お帰り下さい」


「何故だ?一報は入れただろう」


「そうですね。非常識な時間にイタズラ電話は入りました」


不思議そうな顔をする先輩に、僕は嫌味と共に返答する。しかし、


「なんとっ!私とした事が、名乗るのを忘れていたな。私だと分からなかったとは…。すまない。今回は私の失態だ。謝ろう」


先輩は悲痛な面持ちで頭を下げた。

先輩は自分のいいようにしか物事を捉えられない。気をつけろ。ここ、テストに出るぞ。

痛み出してきた頭を押さえ、ため息を吐く。


「では、失礼してこの場で。……本日君の家を訪ねよう」


もう訪ねてます、とツッコむ気力すらない。


「だから、家の中に入れてはくれまいか?今日も最高気温を更新したという。この長袖のパーカーも相まって非常に暑いのだ」


「お帰り下さい」


僕の答えは変わるはずがない。






15分後。



「しょ、少年……。頼む。入れてくれ。暑いんだ……」


パーカーのフードを被り、直射日光を避けてはいるが、先輩がいるのは屋根の上。それも日中は一番日の当たる場所だ。汗をダラダラと流し、ペタリと窓に手を貼り付けて僕に懇願する。


「自分の家に帰ればいいでしょう」


「ああ、冷たい……。中は涼しいのだな。先輩にこんな苦行を強いておきながら、後輩であるはずの君はなんて快適な所にいるのだろうな?…いいや、いいんだ。責めているわけではない。ここは君の家だ。決定権、選択権は君にある。私はただの客でしかないのだからな。君の好きにするといい」


「…………」


頬が引きつった。

窓に手を当てたまま、伏し目がちに遠回しに僕を責める先輩。

でも一つだけ言わせてくれ。


僕は何一つとして悪くないよな?


僕が冷房の効いた快適な部屋で過ごしている事を責められるいわれはないし、先輩を客として招いたつもりもない。つまりは、決定権も選択権も最初から存在しないのだ。

なのに、先輩といったら……。


「ああ、暑さで頭が痛くなってきた。少年、もう中に入れてくれなくてもいい。だから、水を一杯もらえるかい?そうしたら私は素直に帰ろう」


嘘だ。絶対嘘だ。


「…………そのパーカーのポケットに刺さっているペットボトルは、飲み物ではないんですか?」


狐のパーカーの大きめのポケットから覗く、青いキャップのペットボトル。それを指差すと、先輩は舌打ちと共に表情を一変させた。


「チッ、流石少年。目敏いな。よくぞ見抜いた、と褒めてやろう。そう、これはスポーツドリンク。最初から長期戦は覚悟の上だ。さぁ少年、根比べだ。私が君の家に入るのが先か、君が諦めて鍵を開けるのが先か、な」


「どちらにしろ家に入る気満々じゃないですか。そこは、先輩が諦めて帰る、というのを選択肢に入れてくれないと勝負が成り立ちません。只々僕が迷惑を被るだけじゃないですか」


「私の辞書に"諦める"という文字は存在しない‼︎」


「……でしょうね」


堂々と胸を張って叫んだ先輩に、最早ため息すらでない。

そんな時、


ピンポーン……。


インターホンが鳴った。


「…………」


「どうした少年。客だぞ」


僕はジト目で先輩を見ながら、立ち上がり、釘を刺す。


「……分かってます。ちょっと行ってくる間に、窓ガラス割って入ったりしないで下さいね」


「何を言っている少年!私がそんな非常識な事をする訳がないだろう‼︎」


屋根から訪問してくる時点で十分非常識だよ。


「…………」


僕は部屋を出る時まで先輩から視線を逸らさず、妙な事をするなと視線で訴える。ヒラヒラと笑顔で手を振る先輩には、何も伝わっていないようだが。




ピンポーン。


階段を降りている間に、2度目のインターホンが鳴った。


「はいはい……」


3度目が鳴らされない内にと、少し早歩きで玄関に着き、鍵を開ける。


「どちら様で「後輩君‼︎今だっ‼︎」


「おっじゃまっしまーーす‼︎‼︎」


その声と共に開いたドアに手がかけられた。しかし、

ガチャン。


「あいたっ‼︎」


「…………なんでお前までいる?」


チェーンロックの所為で、人が通れる程は開かなかったドアに思いっきり頭をぶつけて蹲ったバカを見下ろしながら、僕は問う。


「それに上から、今だ、とか聞こえた気がするんだが?どういうことか説明してくれるか?なあ、幡木」


それに対し、ニヤリと笑うだけの幡木。


「それはですねぇ、スメラギ先輩にお呼ばれしました‼︎」


「…ここは僕の家だが?」


「それくらい知ってますよ〜。スメラギ先輩がここに来いって、ここで遊ぶって言うんで来ました‼︎」


「そうか」


「はい!なので、中に入れて下さい‼︎」


「僕は呼んでないからお帰り下さい。お前みたいなバカと遊んでる暇もないんでな」


そう言いながら勢いよくドアを閉め、鍵をかける。


「なんで閉めるんですか⁈私がわざわざ先輩の家にまできてあげたのに‼︎」


「頼んでない。上の先輩と一緒に他のとこで遊べ。何度も言うが僕は忙しい」


ドンドンと叩かれ、抗議の声が響くドアに背を向け、僕は自室に戻った。戻ってすぐに聞こえたのは、


「チッ、この作戦も失敗か……。しぶといな、少年」


姑息な先輩の呟きだった。


「……お願いですから帰ってくれませんかね。僕これから勉強するんですが」


「本を読もうとしていたじゃないか!嘘は良くないぞ」


「本を読もうとしていたのは事実ですが、もう予定していた休憩時間を大幅に過ぎているので、勉強を再開したいんです」


時計を指差して言う。先輩の訪問から既に30分程経っていた。


「ちょうどいいじゃないか!ランチの時間だな‼︎どうだ少年。この先輩と一緒にランチでも」


「結構です。お帰り下さい」


そう言ったその時、屋根の縁に手がかかり、ひょっこりと幡木が顔を出した。


「ひどいですよ先輩‼︎こんなに可愛い後輩を追い出すなんてっ‼︎」


屋根の上の住人が増えた。

誰か助けてくれ……。

今日中に書ききれる気がしないので、続きます。本当にすみません。


今回は、厄介な子が2人纏めて訪問してくる話でした。次回、どうなるかな……。


それでは次回もどうぞよろしくお願い致します。

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