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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
一章 高校一年、一学期
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13話 佐藤君は苦労人 7

遅くなりました。またもダラダラと書いております。短いですすみません…。

AM5:00

肝試し翌日の早朝。僕は何故か旅館の外に居た。

こんな時間に起きたのには、それなりの理由があると言ってもいい。

約30分前の出来事だ。



「行くぞ‼︎」


宝来に叩き起こされる、という最悪の目覚めで始まったオリエンテーション2日目の朝。時計を見るとまだ4時30分だった。起床時間は6時のはずだが?集合時間はその更に30分後のはずだ。


「………どこに?」


寝起きの回らない頭で、朝っぱらから騒がしい宝来をぼんやりと寝転がったまま見上げる。


「ロードワーク‼︎」


「…………勝手に行ってこい」


僕は布団を頭まで被り、2度寝を決めた。ああ、こんなアレでもバスケ部のレギュラーだったな、とは思いつつも、こんな早朝に僕が起こされ、尚且つロードワークに付き合わされる理由はない。


「佐藤も行くんだよ‼︎いいから起きろ!」


バサッ!と布団が剥がされ、開いたカーテンからの光が目に入る。枕に顔を押し付けながら、くぐもった声で


「僕は運動部じゃない。走る理由も意味もない。分かったら僕の睡眠の邪魔をするな。あと1時間は寝る」


掛け布団はないが、6月の気温なら枕さえあれば寝れる。2度寝を再開しようとするが、それは再度阻止される。


「タイム計るやつがいるんだよ!皆もう外で待ってる。あとは佐藤だけだ!」


ユサユサと体を左右に揺すられ、睡眠どころではない。


「起きろよ!早起きは三文の得って言うだろう」


お前そんな言葉を知っていたのか、と戦慄するも、口から言葉は出てこない。眠気のせいで口を開く事すら億劫だ。


「なぁなぁなぁ〜」


ユサユサ、ユサユサ、ユサユサ…


いい加減腹が立ってきた。しばらくすれば諦めるだろう、と考えたのが間違いだったようだ。僕は文句を言おうと決め、勢いよく枕から顔を上げた。


ゴチンッ‼︎


「うぐっ」


「……………悪い……」


僕の体を揺する為に膝をついていた宝来の顎に、僕の頭がクリーンヒットした。

顎を抑え蹲る宝来に、思わず謝罪を述べる。だが、何故僕が謝る必要があるのだろうかと思う。睡眠妨害、騒音被害、精神的苦痛(宝来に起こされた、という点が大きい)、僕がこの数分で宝来からもたらされた被害だ。それに比べたら顎に一撃ぐらいはくらわせてやっても良いのではないか?と、思ったが、未だに蹲り痛みに震える宝来を見て、偶然とはいえ外的被害を出した僕にも非はあるか、と思いなおす。視界の端で宝来が顔を上げた。再度謝罪を告げようと口を開いた時、


「外、行くぞ!はやく着がえろ」


顎を抑えながら涙目の宝来が笑った。


謝罪の代わりに僕は外へと連れ出された。



そんな、それなりの理由で僕は旅館の入口の階段に座っていた。僕の前では準備運動をする5人のバスケ部。そして、僕の首には5個のストップウォッチがぶら下がっている。僕の座る階段にはバインダーも置いてある。欠伸を噛み殺すことをせず、一際騒がしい宝来をぼんやりと眺めていると、目が合った。


「よし!じゃあ頼むぞ、計測係」


そう言うと、僕の前に1列に並ぶ5人。頬杖を付きそれを眺める僕。


「………」


「………」


「……?」


何故か僕に視線を向ける5人。不思議に思い首を傾げると、水城から苦笑まじりに注意を受ける。


「スタートの掛け声、お願いできるかな?それか、ストップウォッチ構えてもらえる?」


「…ああ、そうか。僕がやるんだったな」


首に下がるストップウォッチを2つ手に取る。ここで1つ問題が発生した。


「僕の手、2本しかないから、計れるの2人ね」


「いやそれは僕らも分かってるから、スタートするのずらすよ。だから、順番に5人分お願い」


「…分かった」


そうして10秒ずつ間隔を開け、5人が走り始める。走るのは旅館の外周を大回りに5周。1周約1km。タイム走のようなのでそれなりに早い。


僕にとっては果てしなくどうでもいいし、面倒なので結果だけ言うと、一番速かったのは岬だ。順に宝来、金見、新井山、水城と続く。


ここでは、僕が予定よりも1時間早く起こされた、という事実だけを知っておいてもらおう。



残るイベントは、”自炊”のみ。

これさえ終われば、僕の全兼任オリエンテーションは終了する。

目の前に並ぶ朝食をつまみながら、僕は最後のイベントの構想をする。だが、眠気で頭が働かない。朝4時30分に起こされた、というのはまだ良いとしよう。だが昨夜、消灯時間は夜10時。それに従う彼等ではないことは、考えずとも分かることだ。枕投げから始まり、トランプ、UNOといったカードゲームからオセロなどのボードゲームまで、とにかく遊んだ。僕も0時まで付き合わされた。そして皆が眠りについている2時頃、僕は宝来&岬の馬鹿コンビに、怖いからトイレに着いてきて欲しいと起こされた。何故僕が、と睨みながら聞けば、他の3人には悪いから、と。…僕ならいいのか?悪いと思わないのか?そう思いつつも、騒がしくなってきた2人に仕方なく付き合ってやり、再度布団に入ったのが2時15分。そして2時40分頃、今度は金見に起こされた。隣で寝る宝来の寝相が悪いから、少し壁に寄ってくれないか?と申し訳なさそうに言われると、断ることもできず、眠い目を必死に開きながら布団を移動させ、また眠った。3時には新井山に起こされ、またトイレに付き合わされた。このチキン共め!どうせなら3ピースまとめてお得感を出して欲しい物だ……僕は何を言っているんだ…?

水城は物音にも反応せずぐっすりだった。羨まし……恨めしい限りだ。そして宝来に起こされたのが朝の4時30分。所々で誰かしらに起こされ、十分な睡眠をとったとは言えない状況でオリエンテーション2日目が始まった。


各自朝食を終え、部屋から荷物を持ちバスへと向かう。ここからキャンプ場まで移動だ。10時過ぎには着くはずだから、2時間は寝れる。そう考えつつ、閉じかける目を必死に開きながら、バインダーを手に点呼をする。


「全員いるな……。よし、宝来、提出してこい…」


バインダーを宝来に渡す。そして素早く鞄を預け、バスに乗り込む。他の奴らは宝来を待っているようだか、僕はもう限界だ。一番後ろの席を2席使い、預けていない小さめのリュックを枕に目を閉じた。



「なあ、佐藤寝てるんだけど…」


「昨日遅くまで付き合わせたからね」


「トイレにも着いてきてもらったし…」


「……俺もだ」


「俺も途中で彼方の寝相が悪くて、布団移動させるのに起こしちゃったし」


そこで佐藤の寝る席を覗いていた全員が、顔を見合わせる。


「お前達、佐藤君起こしたの何時…?」


「俺と夏野は2時頃、だったか?」


彼方に頷く岬。


「俺は、2時40分くらい」


「俺は、3時頃だ…」


3度違う時間に起こされた佐藤。朝も早くに起こした。


『…………』


5人全員、静かに席に着いた。この時ばかりは佐藤を寝かせてやろうと。


「あ、でもだからか!」


「何が?」


いきなり声をあげた宝来に視線が向く。


「俺が起こしたのに、佐藤が静かだった!いつもなら口撃がすごいのに。トイレに付き合ってもらう時も、”お化け怖い佐藤怖い!でも佐藤は人間!”ってビクビクしながらだったけど、夏野もいたから大丈夫だったし」


「お化けと佐藤は同等なのか?」


「そもそも幼馴染だろお前等」


呆れる金見と水城。しかし宝来は止まらない。


「朝も”怖いけど勢いでいけば大丈夫!”って思って起こしたんだけど、そういえばなんかボーっとしてて全然喋らなかったし、怖くなかった!あんな佐藤始めてだった!」


満面の笑みで、はじめてのことに感動する宝来。それを見て思わず、といった体でため息をつく4人。


「これからはあんまり寝てない佐藤を起こしたら、怖い思いしなくてすむな‼︎」


大発見と、キラキラした目で子供のように喜ぶ宝来に、「それは止めてやれ」と皆が静かに突っ込んだ。だが、宝来は聞く耳を持たなかった。

そんな宝来に「それ、あとが怖いぞ」と注意する奴はいなかった。

続きはなるべく早く、と思い、いつも書いてます…。毎回短めですが、少しでも楽しんで頂けると嬉しいです。


次でオリエンテーション終わりたい(願望)

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