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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
六章 高校二年、三学期
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番外編 エイプリルフール とある馬鹿の場合

はい、4月1日間に合いませんでしたー!泣


ですがエイプリルフールの話をあげます!

今度から間に合うように頑張ります!


4月1日がなんの日かご存知だろうか?

そう、エイプリルフールだ。

今回は、馬鹿が騙されてくれる日の話……のはずだ。

昨年は母の所為で女装疑惑をかけられた僕だが、今年は……。







「センパーイ‼︎先輩先輩セ・ン・パーイ‼︎」


朝、まだ寝ていられると、布団の中で微睡んでいると、大凡朝には聞きたくない……、


「先輩先輩先輩‼︎寝坊ですよー‼︎学校遅刻しますよー‼︎可愛い可愛い後輩がお迎えに来てあげましたよー‼︎」


言い換えよう。朝じゃなくても聞きたくない声が、窓の外からする。

僕は布団に潜り込み、聞こえないフリをしようとするが、声が大きい為、寝惚けた頭にはよく響く。近所迷惑間違いなしな馬鹿の声に二度寝なんてできるはずもなく、僕はのろのろと起き上がり、カーテンの隙間から外の様子を伺ってみた。


「先輩‼︎いるのはわかってるんですよ‼︎出てきて下さい‼︎遅刻です!ちーこーく‼︎」


「うるっさい‼︎今何時だと思ってんだよ‼︎春休みだから学校はない‼︎ウチの前で騒ぐなっ‼︎」


「えっ…?ごめん、なさい……?」


僕が見たのは、仕事明けで休んでいた母(二徹)の怒鳴り声と、その勢いと形相にか困惑顔で思わず謝る幡木の姿だった。しかし、次の瞬間ハッとした様子で母を指差しこう叫ぶ。


「あなた誰ですか⁈」


「徹夜続きでやっと休めると思って布団に入った時に、こんな朝早くから騒がしい声に起こされて非常に迷惑しているこの家の住人ですが、あんたこそ誰よ」


「幡木掬と申します‼︎この家の住人……ハッ!」


「私は騙されませんよ!この家は佐藤先輩の家のはずです!私が呼んでたのは先輩。なのに出てきたのは、顔色の悪いおばさん!エイプリルフールで騙そうったってそうはいきません‼︎あなた、この家の住人じゃないですよね‼︎」


「あぁん?」


母は激怒した。

とある有名小説の冒頭部分を借りたが、これ以上に今の母の感情を表現したものはないだろう。"おばさん"の一言に眉がピクリと動いたのを僕は見逃さなかったぞ。そして、火の粉を蒔いている幡木はその様子に気がつかずに続ける。


「あなた泥棒かなにかですね!先輩が眠っているこんな朝早くに、泥棒しようなんて、なんてこそくな‼︎今すぐ警察を呼びますから、電話をかして下さい‼︎」


そう言われて貸す馬鹿がどこにいる。それと、僕が寝ていると理解しているなら来ないでくれるか。


「…あんた、高校生にもなって携帯持ってないの?」


「一目で私が高校生だと見抜くとは、いい目をお持ちの泥棒さんです!褒めてあげます!しかーし!私の目の黒いうちは見逃してあげませんよ‼︎」


「…………」


相手にするのが面倒になったのか、玄関に寄りかかり、冷徹な眼差しで幡木を見る母。徹夜続きで目の下の隈がひどい為、怖さが増している。


「…私は携帯持ってないの、って聞いたの。理解できなかった?」


「なんだ、そんなことですか!簡単なことです。エイプリルフールの日はいたずらするといけないからと、両親に毎年没収されてます‼︎」


「あ、そう……」


「自分から聞いといてその態度はどうかと思います‼︎きちんと私の話に興味を持って下さい!ここはなんで携帯を没収されるか聞くところですよ!」


母の態度が気に入らなかったのか、理由を聞かれなかったことにも怒っているのか、だんだんと地団駄を踏む幡木。


「話したいなら話せば?」


母はまともに対応するのをやめたらしい。欠伸をしながら、軽く幡木を遇らう。


「そうですか!やはり気になりますか!いいでしょうお教えしましょう!それは私が中学一年のときです!」


よほど話したかったのか、胸を張り、声を高らかに、別に誰も興味を持っていない話しを始めた。


「4月1日のことです」


そりゃそうだろ。その日の話を聞いてるんだ。馬鹿じゃなきゃ言われなくてもわかる。母も呆れ混じりに無言で続きを待つ。


「中学生になるからと、両親から携帯をもらいました。そして私は気がついたのです‼︎今日はどんな嘘をついても許される日なのだと…!」


……嘘の内容にもよるぞ。

僕も母も、幡木はどんな嘘をついたのかと、少し興味を持った。


「そして私の手には新品の携帯が‼︎連絡先は両親の携帯、自宅、おばあちゃんの家のみ。私はその携帯を手に遊びに出かけました!」


最初のセリフで何かを企んでるのは伺える。


「そして2時間くらいした後、私は父と母の携帯にこうメールを入れました!

"いまえきまえにいます。まいごになったらおとこのひとにかこまれました。どうすればいいかたいおうほうほうをおしえてください!"

私の初メールです!」


色んな意味で最悪の初メールだな。漢字変換くらい覚えてから使え。


「私はエイプリルフールのお茶目な冗談のつもりだったのですが、父と母は駅まで飛んできたそうです」


そりゃそうだ。娘が漢字変換もせずに(できないことを知らない)不穏なメールを送ってくれば、慌てて家を飛び出すでしょうよ。


「近くのベンチで"ふらぺちーの"なるものを飲んでいた私はびっくりしました。父と母がおまわりさんと一緒に私を探していたのですから!」


おう……。警察沙汰ですかそうですか。


「父は私を見つけると抱きしめて、無事でよかったと言いました。私は首を傾げます。そして、母にはこう聞かれました。"男の人はどこにいるの?"と。そこで私は、ふらぺちーのの美味しさに忘れていたメールのことを思い出しました。そして母にこう言います」


…………もはやなにも言うまい。


「"今日はエイプリルフールだよ!娘のかわいい冗談です!"と。殴られました」


だろうね。僕が親でもそうする。


「……それで?そのお茶目ないたずらの所為で、エイプリルフールには携帯を没収されると、そういうことね」


「そうです‼︎わかったら私に電話を貸してください‼︎」


「断る帰れ」


母はそう口早に切り捨てると、玄関のドアを閉めた。


「なっ⁈中に閉じこもるとは卑怯な‼︎先輩!センパーイ‼︎泥棒です泥棒‼︎危険ですよ‼︎」


鍵のしまったドアをドンドン叩きながら、僕に向けて叫んでくる幡木。しかし次の瞬間、ドアが勢いよく開き、ドアの前にいた幡木の顔面にヒットする。


「うぎゃっ」


変なうめき声をあげ、顔を抑え蹲る幡木の前に、冷徹な眼差しのまま、見下ろすかたちで立つ母。


「これ以上騒ぐなら、騒音被害で警察呼ぶよ」


痛みに涙目になりながらも、母を見上げるが、冷めた声に冷めた瞳に怯み声もあげない。


「私は泥棒でもなんでもなくこの家の住人。あんたのいう先輩の母親です。分かったら静かに、速やかに、帰りなさい」


幡木の返事を聞く前に、母はドアを閉めた。呆然としている幡木は、立ち上がるとこう言った。


「たしかに、怖い目とあの言いかたは先輩にそっくりです‼︎顔は全然似てないのにっ‼︎」


大発見といった様子だった幡木だが、いつもの通り、少し声のボリュームが大きい。

徹夜で機嫌のよくない母が、注意しても煩い幡木に向けて、内側からドアをドンッと強く叩く。

それにビビったのか幡木は、慌てて僕の家から去っていった。


やっと嵐が去った……。

4月1日の午前6時の出来事である





しかし、嵐は二度やってきた。


昼食をとり終え、寛いでいたとき。


「センパーイ‼︎掬ちゃんですよー!かわいい後輩ちゃんですよー‼︎」


馬鹿は懲りていなかった。


その後、幡木の声で起きてしまった母に睨まれ(僕は悪くない)、幡木を追い返させられるのは、まあ余談としておこう……。

というわけで、当日には間に合いませんでしたが、エイプリルフール掬ちゃん編です。どうせなら彼方くんの方も描きたかったけど、間に合わなかったから仕方ない……。来年は頑張ります!


次回から新学期に入ります。

三年生になった佐藤君達をどうぞよろしくお願いします!

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