104話 不愉快な花見
最近はふざけた話が書きたくて仕方ない…。
「それではみなさま!カンパーイ‼︎」
『カンパーイ‼︎』
幡木がグラスを掲げ、乾杯の音頭をとると、集まった僕達いつものメンバーも
さて、何故こんなことになっているかというと、答えは単純明快、とてつもなく簡単なことだ。
「花見しようぜ!」
「私も行きたいです!」
「こいこい!人数は多い方が楽しいからな!」
「ついでに卒業式での私の司会も褒めてください‼︎」
「その点に関しては、反省会の方が正しいんじゃないかな…」
はしゃぐ馬鹿二人に冷静につっこみを入れたのは、僕ではなく水城だった。
そんなこんなで、馬鹿二人の思いつきにより、花見兼幡木の反省会が行われることになった。
しかし、これは毎年行われる花見とは、別の物であると、ここに記しておこうか。
来週には家族でやる花見もあるのだ。
ふざけるな、と一言言っておこう。
さて、花見に必要な物は何かご存知だろうか?
そう、場所と料理だ。
場所は前回同様、とはいかず、近くの公園の桜の下にレジャーシートを敷いてやることになった。そして料理だが、これについては言うまでもないな。
僕が担当させられている。休みなのに、また睡眠時間を削ることとなった。
しかし、作る以上は完璧なものを、と多少は思っており、8段の重箱にこれでもかと詰め込んでやった。まぁ、完璧なものを、というより、不味いだの少ないだの文句を言われるのが不愉快なだけだがな。作り手側からしたら、あれ程腹の立つものはないからな。
小さい頃に一度言われた時のことは、今でも忘れてないからな。
僕が重い重箱を抱えて皆のいる場所へと行くと、もう花見は始まっていた。
「遅いぞ佐藤‼︎腹減った!」
「いつまで待たせる気ですか!早くお弁当下さい‼︎」
こういう文句も腹が立つ。しかし相手は頭がすっからかんの馬鹿二人。大人な僕は我慢してやろうじゃないか。
僕は安全そうな水城と金見に重箱を渡し、靴を脱いでシートの上に上がった。
そしてジュースの入った紙コップ渡され、冒頭に戻る。
「さあ先輩!卒業式での私の司会っぷりをちゃんと知っているのは先輩だけです!どれだけ素晴らしかったか、ほーらい先輩たちにも教えてあげてください‼︎」
乾杯が終わり、それぞれが料理をつつき始めたとき、幡木は前のめり気味に僕に詰め寄ると、宝来や水城等を箸で指し、仮にも先輩を箸で指し、そう言った。
「……そうだな。じゃあまず、一つ目」
「はい!ドンとこいです!先輩が褒めてくれるのなんて初めてですから、正座で聞いてあげましょう‼︎」
…さて、この時点で"幡木を褒める"という行為に拒絶反応がでた。まぁ初めから褒める気などないがな……。
「卒業生よりも目立つ格好をしたことについてだが、あれはただの愚行だ。馬鹿のすることだ。正しくお前は馬鹿なわけだから、それも仕方のないことであるとは言える。しかし、主役より目立つのはよろしくない。もう少し考えてから行動しろアホ」
その件に関しては、学校中の奴らが知っていることだったので、水城達だけでなく、馬鹿代表の宝来までもが苦笑しつつ頷いた。
「なっ‼︎あれのどこがいけないんですか⁈」
「卒業生より目立つな、と言っている。言葉を理解しろ。そして二つ目」
また文句を言おうとしてるのか、口を開こうとしている幡木に、こちらも箸を目の前に突きつけ、一瞬怯んだ内に僕が先に口を開く。
「全ての漢字にふりがなを振ったにも関わらず、噛んだり、読み間違えたことについては、放送委員としてどうかと思うが、自分ではどう思うんだ?落第もいいところだよな?」
「そんなことありません‼︎私は立派に役目を務めたと胸を張って言えます‼︎」
「立派とか自分で言うな」
反省の一つもなく、堂々と言葉の通り胸を張りそう叫ぶ幡木はやはり馬鹿だ。
「冒頭で噛み、漢字を読み間違えて笑いを誘い、挙句の果てには、どこまで読んだかわからないとかふざけたこと言って、僕に助けを求めてきた奴が立派か……。ハッ、笑わせてくれる」
あの時は、卒業生の生温かい視線が痛かった。いっそのこと責めてくれ。じゃなきゃこいつは学ばない。
悔しそうに僕を睨みつける幡木を冷めた目で見返し、
「そして最後三つ目。どこから持ってきたのかは知らないが、担任が読み上げるはずの三年生の生徒名簿を読み始めたときは、全員が焦ったよ」
幡木は、卒業証書授与、と言った後、何故か生徒名簿を取り出し読み上げ始めたのだ。それに目を見開いた僕は、慌てて生徒名簿を取り上げ、失礼しましたと一言謝り、幡木の頭も無理矢理下げさせ、文字通り体育館裏まで幡木を引きずって行ったのだ。
「なんでかあの後、先生たち全員に怒られました!私は控え室に名簿も用意されてたから、私が読むものだと思ったのに!」
「最初に流れは説明したよな?そこでお前に名前を読み上げろ、なんて僕は一言でも言ったか?」
「言いました‼︎」
「言ってねぇよアホ‼︎」
幡木の頭を叩き、僕はため息を吐いた。
「まあまあ落ち着いて。反省会はここまでにして、せっかくの花見なんだから楽しもうよ」
「そうそう。馬鹿な子と反省会なんてしたって意味ないって分かったし、今日はここまでにしようぜ」
「なんでそこで俺も見たんだ⁈」
水城は僕に料理の乗った紙皿を差し出しながら、金見は宝来と幡木に一瞥をくれながら、反省会を中断させた。
「……そうだな。こんな無意味なことをしても疲れるだけだもんな」
僕は素直に紙皿を受け取り、料理を口に運んだ。
「もうっ‼︎失礼な先輩たちですね‼︎来年は見ててくださいよ!先輩達の卒業式では完璧に司会を務めてみせますから‼︎」
「その前にお前に司会を頼む愚か者はもういねぇよ」
「先生達からもストップがかかるだろうな」
「普通の卒業式でいい……」
僕が吐き捨てるように言うと、同意するように岬と新井山もポツリとこぼす。
「じゃあ来年は俺がやってやんよ‼︎」
「「「「「お前もない」」」」」
「ハモんなよ‼︎」
宝来が自信満々に胸を張ったが、僕達五人揃って否定した。
というか、お前は卒業式に参加する側だからな。留年するなら別だが……。
「僕達も来年は受験生なんだから、ちゃんと進路決めないとね」
「うっ、言うなよ‼︎飯が不味くなる!」
「でも早めにちゃんと決めないと、後で困る」
「晴汰は分かってるな。まぁ、一番心配なのは……」
宝来に視線が集まる。
「な、なんだよ!」
「留年だけはしてくれるなよ」
僕が重く言った言葉に、宝来は吃りながらも
「だ、大丈夫だよ!俺、佐藤と同じ大学行くから‼︎」
「んー、彼方、大丈夫の意味がわからないんだけど」
「というか、佐藤君、大学決まってるんだ?」
金見の言葉に、今度は僕に視線が集まる。
「…ある程度は決まってるが、そこの馬鹿に言った覚えはない」
「言われてなくても、俺は同じ大学に行くからな‼︎」
そう僕に向かって叫ぶ宝来に、僕は現実を教えてやる。
「僕が目指してる大学は、お前の残念な頭じゃ到底入れないところで、僕が行こうとしてるのは文学部だ。日本語すら危ういお前に入れるわけないだろう」
「そんなの、やってみなくちゃ分からないだろ!」
「僕は大学でまでお前の世話をしたくないからな。意地でもお前が絶対に入れないところに行ってやるよ」
その後もキャンキャン喚く馬鹿を軽くあしらいながら、花見は進んだ。
四月から僕等は高校三年生になる。
地獄の受験シーズンの到来である。
「先輩‼︎私も先輩と同じ大学に「断言する。お前には無理だ」
今回は、花見の回です。
お馬鹿な二人の頭の中は年中お花満開なので、いつでもお花見は可能です 笑
来年の受験についてもちらほらと入れてみました。
次もなんか、おふざけ満載の話でも書こうかと検討中です。
次回もどうぞ、よろしくお願いします!