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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
六章 高校二年、三学期
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99話 修学旅行に行こう そのよん

伏見稲荷編は終了。

次で修学旅行終わらせてられるかな…。


修学旅行2日目。

1箇所目の観光地にて、宝来彼方行方不明。




「あんの馬鹿はどこ行ったんだ‼︎」


僕は叫ばずにはいられなかった。京都に来てまでこれか、と。


「まあまあ佐藤くん、落ち着いて」


「そうそう、ほら携帯で連絡すればいいんだから」


僕の肩を叩き宥める水城と、ポケットから携帯を取り出し、宝来に電話をかける金見。


『お客様のおかけになった電話は、現在電波の届かないところにあるか、電源が入っていないためお繋ぎすることができません。』


「「「……」」」


周囲が静かな為聞こえた、金見の携帯からもれる、通話不可のアナウンス。静かに携帯をポケットにしまった金見は、


「さて、どうしてくれようか…?」


満面の笑みで、そう呟いた。


「おーーい!なんかあっちにそれらしき奴いたって‼︎」


「昼食で寄る予定だったところだ…」


道なりに戻って情報を探しに行っていた岬と新井山の二人が、走って戻ってくるなり、そう報告した。


「食べ物の匂いにつられてそっちに行ったか…?」


「匂いなんてそんなにしなかった気がするが…」


顎に手を当て考える金見の呟きにそう返すと、金見は苦笑する。水城も苦笑混じりに言った。


「とりあえず、そこまで戻ろうか」










たかだか数分の距離で、迷子(自覚なし)になった宝来彼方は、とあるお店の前にいた。


「………」


「………あの、」


ジッと一点を見つめる宝来と、それに困り顔で声をかける店員さん。


「す、雀を、食べるのか…?」


店先に「すずめ 600円」と書かれている紙をみて、呆然と呟く一人の学生に店員は、ヒクリと顔を引きつらせかけ、


「……一応、この店の名物に、なります」


困り顔のままその質問に答える。


「うっ、、」


俯いたかと思うと、肩を震わせる宝来に、泣いていると思った店員さんの方もうっ、と顔を歪ませる。


「うまいのかっ⁈」


「……………え?」


顔を上げた宝来は、興味津々といった顔で、そう言った。予想外の反応に、店員はポカンと口を開ける。


「だから!雀ってうまいのか⁈」


「……はぁ。見た目はあれですけど、美味しいと思いますよ。いかがですか?」


宝来に気づかれないよう小さくため息をついた店員さんは、にこやかに笑顔を作り、雀の丸焼きの宣伝を始めた。


「食う‼︎」


「ありがとうございます。お好きな席についてお待ち下さい」


裏に入っていく店員さんと、店に入り、奥の方のテーブル席に着く宝来。


「あっ、これも美味そう。いなり寿司もお願いしまーす‼︎」


追加でいなり寿司も注文し、寛ぐ気満々の宝来は、目先の事に興味がいって、修学旅行で来ていることや、今自分が一人であることや、迷子であるという自覚は全くなかった。








宝来はすぐに見つかった。


「…お前は、ここで、何をやってるんだ?」


「えっ?見てわかんないのか⁈飯食ってる‼︎」


ピキリと、僕達の額に青筋がたった。

その、昼食で寄る"予定"だったところに宝来はいた。一人で呑気に飯食って。そして、それをさも当然といった顔で、悪びれもせずにいる宝来に、僕達はグッと拳を握った。

そんな怒りの最中にいる僕達の中では一番優しい水城が、口を開いた。


「ここさ、昼食で寄る予定だったんだ」


「じゃあお前らも座れよ!いなり寿司とか美味いぞ‼︎」


「……稲荷大社を観光して、その後に寄ろうと思ってたんだよ」


「前でも後でも同じだろ‼︎食った後に観光行こうぜ‼︎」


「………」


水城と金見が色々考えて組んだ予定を、無神経に笑顔で崩していく宝来。


「……、はぁ」


何かを言おうとしたのか、一度口を開いた水城は、しかし言葉を口にすることはなく、代わりにため息をついた。そして、宝来の隣に静かに座った。それに僕達もため息をつき、無言で席についていく。

そして、店員を呼び、素早く人数分のいなり寿司と雀の丸焼きを注文した水城は、唐突に、ポケットに入れてあった、細かく予定の書かれたメモ帳を手にしたかと思うと、


「もうさ、伏見稲荷と清水寺だけ行ったら、観光終わりにしようか」


ビリッ、と横に二つに裂き水城は、頬杖をつきながら、ニッコリと笑顔でそう言った。

……相当ご立腹だったらしい。


「えっ?なんでだよ!もっと色々行こうぜ‼︎せっかく京都に来てるんだからさ!」


頼む宝来。空気を読んでくれ…。

元凶のお前が反論するのは、絶対やっちゃいけないことだ。

水城の肩をゆすり、なあなあ、としつこく笑顔の水城に声をかける宝来に、僕は水城の顔色を伺う。


「予定を組むのも馬鹿馬鹿しい」


聞いたことのない水城の低い声と、冷めきった瞳に、バッと勢いよく離れる宝来。


「ね!だから、清水寺見終わったら、そこら辺でお土産買って、観光終わりにしよう?」


さっきの冷めた目は何処へやら、いつも通りの優しげな面差しに戻った水城は、にこやかに宝来に、否と言わせる気もないだろうに、そう尋ねた。

それに、錆びついたロボットのようにゆっくりと頷いた宝来。


隣の人物に怯えている宝来に、いなり寿司と雀を頬張りながら、僕達が思ったことは、一つだ。


"いい加減学べ馬鹿"







「時間あるし、どうせなら一番上まで行かないか?」


店を出て、二度目の千本鳥居を目指して歩いていた僕等だが、その途中、金見がそんな提案を出した。


「上まで行くんじゃないのか?」


「予定では、"おもかる石"がある奥社奉拝所までだったんだ」


僕に小声で聞いてくる宝来に呆れながらも、面倒なので答えてやる。


「いいじゃんいいじゃん‼︎俺来んの二回目だけど、上までは行ったことないんだ!」


「中学ではクラス全員で来たからな」


金見の提案に喜ぶ岬と新井山。


「そうだね。"誰かさん"のせいで、僕と俊で組んだ予定はなくなったも同然だし、まぁ、そのおかげで時間も余ったことだし、上まで行こうか」


言うなり、先頭をズンズンと歩いて行く。


「…言葉の端々にトゲを感じる」


「…仕方ない」


「……あいつ、一番京都に来るの楽しみにしてたからな」


「…ああ見えて、実は内心めちゃくちゃはしゃいでるぞ」


離れていく水城の背を見て、次いで宝来に視線をずらす。


「「「「……」」」」


僕達4人の視線にギクリと肩を震わせ、


「なっなんだよ⁈そんな目で俺を見るな‼︎」


そう叫んだのだった。





伏見稲荷大社での観光は、興味のあるものを見つけては騒ぐのは変わらなかったが、宝来が"比較的"おとなしくしていたこともあり、無事に終わった。







オマケ



おもかる石の前にて



「そういや、この"おもかる石"ってなんだっけ?」


「あ、俺も知らない」


「石灯籠の前でお願いごとを念じて、石を持ち上げて、その石が自分が思っていたより軽かったら願いが叶い、重かったら叶い難い、ってする試し石だよ」


岬と宝来の言葉に、怒りが鎮まった水城が答える。


「へぇ〜。俺の願いは全国制覇一択‼︎うおりゃあぁ!」


それを聞いた宝来は、高らかに宣言し、叫びながら石を持ち上げた。


「ん?軽い。って、ことは、」


「全国制覇できるってことか‼︎」


石を置き、岬とハイタッチをしはしゃぐ宝来。


「じゃあ僕達はやらなくていいかな。願いは同じだし」


「佐藤くんもやってみなよ」


「…………」


水城、金見に言われ、石灯籠の前に立つ。僕は黙って念じ、石に手をかける。


「…………上がらん」


「非力だなぁ佐藤‼︎こんな軽いものが持ち上がらないなんて‼︎」


と、笑う宝来に拳を叩き込み、僕はため息を吐く。


「……因みに、何を願ったのかな?」


そう聞いてくる金見から視線を逸らしながら、


「………宝来のバカを治してくれ、って。無理みたいだがな」


蹲り地面に膝をつく宝来を冷めた目で見下ろし吐き捨てた。


「「「「…………」」」」


宝来以外の4人は、肩を落とし苦笑した。

相変わらず空気の読めない彼方くんのお話。

京都について調べてるけど、話が浮かばない…!

さてさて、次で修学旅行編終わるかどうか…。

次回は清水寺編になります。

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