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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
六章 高校二年、三学期
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98話 修学旅行に行こう そのさん

今回も短い!

書きたいところに中々行けない…



京都修学旅行 二日目

全日自由行動。



「よーしっ!行くか!」


旅館を出てバスの停留所に着いたところで、宝来が両手を天に伸ばし、テンション高く叫んだ。


「最初に行くところは覚えてるか?」


「どこでバス降りるか覚えてる?」


「その次の目的地は?」


「各所の滞在可能時間は?」


勢いだけの宝来に、金見と水城が畳み掛けるかのように問う。


「うっ、」


「はーい、じゃあ何もわからない彼方君は、迷子にならないよう真ん中を歩いて下さーい」


「決して前にでてはいけません」


言葉に詰まる宝来を、笑顔で子供に言い聞かせるようにし、静かに自分達の後ろに並ばせる二人。それに少し不満そうにしながらも、言い返せない為何も言わない宝来。

そうこうしているうちに、バスが到着した。


バス内でも、「トランプしようぜ!」と鞄からトランプを取り出した宝来を静かにさせた二人は、綿密に計画を立てている。


「ここは電車の方が早いよね」


「そうだな。ここは電車から徒歩の方が安いしいいかもな」


行きたい場所をまとめたしおりを手に、顔を突き合わせながら真剣にルートを検索する二人。今回は僕がやらなくていいのか、と心の中で二人に礼を言う。


「な、なぁ晴汰」


「…なんだ?」


そんな中、声を潜めキョロキョロと周りを伺いながら新井山に話しかける岬。


「あの、さ。昨日の朝のこと、なんだけど……」


「………」


その話題になった途端、新井山の顔から表情が消えた。


「えー、と、な…。あいつら、勘違いしてるだけだから!気にすんな!」


岬は一瞬言葉に詰まったが、覚悟を決めたかのような表情で、声を潜めつつ、力強くそう言った。


「かん、ちがい?」


「そう勘違い!えっと、その……」


勢いで言うのかと思えば、また言いづらそうに目を泳がせ、言葉を詰まらせる。それに新井山は首を傾げつつも、自分から聞きにいく。


「俺が、猫好きなのが意外だったか?」


「…違う」


「遅刻ギリギリまで猫と遊んでいたのがよくなかった、とかか?」


「……違う」


「猫のことを黙っていたのが、気に入らなかった…?」


「………ちがう」


新井山は考えつつも、猫から思考が離れない。その的外れな問いに、岬は肩を落とし項垂れていく。


「じゃあ、なんなんだ?」


もう思いつかなかったのか、コテンと首を傾げ、岬に問う新井山。それに困った表情を浮かべた岬だが、


「…聞いても驚くなよ。あのな…」


声を潜めているものの心配だったのか、新井山に耳打ちをする岬。そして、やっとどんな誤解されているかを理解した新井山は、目を見開き暫し固まった後、口元をおさえ、頬を染めた。


「お、俺に、かの、じょ…?」


それに申し訳なさそうな顔で頷く岬。


「だから、晴汰が言ったことも、誤解、されてたりして…」


新井山から目を逸らしながらそう教えた岬は、アハハと乾いた笑いをもらした。


「俺が、言ったこと………っ‼︎‼︎」


自分の発言を思い出したのだろう。新井山は可哀想なくらいに顔を真っ赤に染め、羞恥からか涙目になった。


「なっ⁈そ、それはちがっ⁈あれは、マロンがっ」


「わかってるわかってる!俺はわかってるから!だから落ち着け!」


動揺したのか立ち上がり、岬に弁明する新井山。突然立ち上がり声を上げた新井山にバスに乗車している客や水城達の視線が集まる。それに気づいた岬は、新井山の手を引き座らせると、背を撫で落ち着かせようと試みる。


「あっ、あれはマロンが!ノワールもっ‼︎だから、ちがっ、」


「わかってるわかってる。だから落ち着け。目立ってるぞ」


動揺し、キチンと言葉にできなくなっている新井山に、優しく声をかけ背を撫で続ける岬。


「どうした晴汰?急に立ち上がったりして」


新井山の様子を不思議に思った宝来は、椅子から通路に身を乗り出し、新井山に尋ねる。


「違うからなっ」


「…なにが?」


顔が真っ赤な新井山に突然怒鳴られ、宝来はただ首を傾げた。


きちんと誤解が解けないまま、稲荷大社前に到着した。



バスを降りた途端、新井山は誤解を解く為、自分の秘密を打ち明け始めた。

それを聞いた宝来達の反応は様々だった。


「なんだ。彼女じゃなくて猫か。よかった」


「意味深な言い方するから、びっくりしたよ」


ホッと胸をなでおろす水城と、ニヤニヤと揶揄い始める金見。また自分の発言を思い出したのか、戻った顔色をまた赤く染める新井山。忌々し気に金見を睨みつける。


「俺も猫屋敷行きたい‼︎」


「ダメだ」


「行きたい‼︎」


「絶対ダメだ」


キラキラと目を輝かせ、猫屋敷に行きたいと口にする宝来。しかし、新井山は即答でその申し入れをスッパリと拒むする。


「なんで⁈」


それに宝来は、新井山に詰め寄り理由を問いただす。それに対する新井山の返答は言うまでもなく、


「騒がしい奴をあそこに連れて行くわけないだろ」


大凡、友人に向ける目ではなかった、とここに報告しておこう。





新井山の誤解も解け、なんのしこりもなく京都観光ができると、伏見稲荷大社の千本鳥居の前で写真を撮ろうとした僕達だが、


「……彼方、どこ行った?」


振り向いてみると、新井山に冷めた目を向けられ、とぼとぼと"一番後ろ"を歩いていたはずの宝来の姿が、そこにはなかった。


「「「「「………」」」」」


皆が宝来がいたはずのところを見て固まる。


「…まだ、観光始まってないんだけど」


「一番の見どころの千本鳥居の前なんだけど…」


「京都に来てまで迷子か……?」


「俺達が、探すのか…?」


「はぁ……」


皆、現状を確認するかのように、呆然と状況を口にしていく。


数分後、ため息と共に宝来彼方の捜索が始まった。

というわけで、彼方君、京都で迷子です。

次回、大捜索(?)編になります。

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