番外編 転んでもただじゃおきない
短いです。すみません…。
去年は宝来だったが、今年は僕、か……
そう呟かずにはいられない、新学期の朝だった。
朝、目を覚ますと、頭が重かった。不思議に思いつつ立ち上がったが、ふらついて思わず机に手をついた。
「…………」
ふらつく体を、壁に手をつき支えながらリビングに行き、救急箱を取り出す。その中から、体温計を取り出し、スイッチを入れる。
数分後、ピピッ、という電子音がし、数字が表示された。
「…38.7℃、か」
完全に風邪である。
僕は病院に向かう準備をした。
因みに、母は仕事で不在である。
病院での診察を終えた僕は、一先ずホッと息をついた。
「インフルじゃなかった…」
この時期に流行る、インフルエンザではなかったことに安堵し、帰路についていた。その途中、よく利用するスーパーが目に入り、足を止めた。
「ああ、そういえば、買い物しないといけないな」
体調が悪いことなど後回しに、僕はスーパーに足を踏み入れた。
僕は、買い物カゴとカートを手に、普通に買い物を始めた。
野菜、肉、魚、調味料など、一週間分の食料をカゴに放り込んでいく。そんな時、背後から驚いたような声があがる。
「はぁ⁈佐藤君、何してんの⁈」
「君、風邪ひいたんじゃなかったの?」
振り返ってみると、そこには金見と水城がいた。
「ああ、なんだお前らか。確かに僕は風邪をひいているが、何か問題があるのか?」
「大ありだよ。なに呑気に買い物してんのさ」
「今日が買い出しの日だったのを思い出してな。買わないと食事が作れないんだ」
「だからって、そんなに買い込んで、持って帰れるの?」
水城の言葉に、カゴに視線を落とす。カゴは一杯になりかけているが、まぁいつもと変わらない量だと、一つ頷く。
「問題ない。いつもとさして変わらない量だ。持って帰れるはずだ」
僕の言葉に、二人は顔を見合わせたあと、大きくため息をついた。なんだ?失礼な奴らだな。
「……君さ、自分が病人だっていう自覚、ないでしょ」
「今日、なんで学校休んだのか、言ってみて」
「なんでって、風邪をひいたからだが?」
僕の答えに、また二人はため息をつき、頭を抱えた。
「佐藤君…。言いたくないけど、君も大概バカだよね」
「失礼だな。君"も"っていうのは、宝来と一緒だと言いたいのか?今すぐ訂正しろ」
「無理だね。熱のせいかは分からないけど、君の思考は今、正常ではないと思うよ」
「お前らこそ何を言ってるんだ?僕は正常だし、バカでもない」
二人はダメだ、と言いたげに首を横に振ったあと、顔を見合わせ頷きあい、僕の手元のカートを奪った。
「おい。なにすんだ」
「せっかく煩い3人を置いてきてあげたんだからさ、大人しくしててほしい訳だよ。俺らとしては」
「そうそう。早く治してくれないと、彼方が煩いからさ。買い物、手伝ってあげるから、早く家帰って寝てくれる?」
有無を言わさぬ二人の表情に、僕は無言で頷いた。
そして、手伝ってくれるならと、遠慮なく食材をカゴに放り込んでいく僕に、
「……少しは遠慮したら?」
「せっかく荷物持ちをしてくれると言うんだ。遠慮なく買わせてもらう」
「…佐藤君、そういうとこあるよね」
「使えるものは使う。それの何が悪い?」
「「…………」」
僕の返答に、二人はため息をつき、苦笑した。
買い物を終え帰宅し、真っ先にキッチンに向かおうとした僕だが、二人に自室まで追いやられた。
「買ってきたものは僕達でしまっておくから、大人しく寝てて」
「お茶もなにもいらないから、とにかく寝てて」
先手を取られてしまった。何故僕がお茶を入れようとしているとわかった?
「使えるものは使え、なんでしょ?いいから病人は寝てなさい」
「そうそう。大人しくしててね」
ニコニコと笑顔な二人に、僕はポツリと思わず本音を漏らした。
「……お前ら二人が優しいとか、恐怖を感じるな」
「「いいから大人しく寝てろ‼︎」」
佐藤君が風邪をひく話でした。
というか、作者自身、風邪ひきました。短くてすみません…。
次は本編を書くので、どうぞよろしくお願い致します。