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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
一章 高校一年、一学期
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10話 佐藤君は苦労人 4

謎解き終わりです!


やっと終わりました。説明下手で申し訳ない。

「ゴールじゃないって、どうゆーことだよ!」


同調するように、皆騒ぎ始める。


「この最後の看板の、”ヒントが役に立っていない”っていうのと、しおりに載ってる、あそこの建物で分かったんだ!」


右手にある建物を指差しながら、説明し始める水城。


「入口の”先頭に注意して進め”は、ヒント言葉の先頭を読めってこと。つまり、

❶は”か”❷は”し”❸は”ら”❹は”も”❺は”じ”、になる。それをつなげて読むと、」


『かしらもじ!』


全員が声を揃えて言った。

水城はそれに頷き、続ける。


「そして、問題文の頭文字を読むと、

”2かいがゴール”、になる」


「答えじゃなくて、問題文の方を読むのか⁈」


「”問題文を読んで、ゴールを目指せ” つまり、問題を解く事に意味はないんだよ」


「…佐藤らしいけど腹立つな」


ここにいる全員の声を代弁した宝来。

だが、まだ説明は終わっていなかった。


「あと、”時間厳守”の前に付いてる米印。他のとこにも、このマークが使われてるんだ」


皆一斉に問題用紙を見る。


「あっ、問題提供のとこ」


「そう。そして、先生達の名前の頭文字を読むと、”五分過ぎは死ね”って読めるんだよ…」


「最後は佐藤君だから、

”五分過ぎは死ね 佐藤”

ってことか」


水城が落ち込んで肩を落とす。

そして金見が補足する。


「でも2階がゴールって、なんであそこの建物だって分かるの?しおりに写真があるだけじゃない?」


理解力の低い女子に、さらに説明する。


「スタートする前、先生は、”森林公園の施設で昼食を取る”って言った。そして、しおりの昼食の欄に、あの建物の写真がある。しおりを忘れるなと佐藤が言った。そして、”ゴールにて着席せよ”だ」


そこでやっと全員が理解できたのか、慌て始めた。


「あの施設で昼食を取る、ゴールは2階。それで、佐藤に提出してゲームクリアだ!」


その声を合図に、皆が建物に向かって、走り始めた。


「時間は‼︎」


「13時ジャスト!多分5分までは大丈夫のはずだ!」


「1秒でも過ぎたら、佐藤は許してくれないぞ!」


「また走るのかよー‼︎」


「急げ‼︎」


バスケ部の宝来班が先頭を走り、少し遅れて他の班が続く。


バタバタと慌ただしく建物に入る一同。入ってすぐ左手の階段を見ると、2段飛ばしで駆け上がっていく。


そして、階段を上がったすぐ側にあったドアを、力任せに開けた。


バァァン‼︎ と戸が壁に叩きつけられる音に、中にいた人達が驚き、目を向けた。


「ハァハァ、あれ?佐藤は?」


中には、委員長の班や、他の班が数組。

しかし佐藤の姿がない。

中には進むと、”宝来班”と書かれたテーブルがあった。6席あるそのテーブルの1席には、飲みかけのジュースが置いてあった。


「ここに座ってたみたいだね」


「とりあえず、座るか?」


金見が席に着くと、他の4人も席に着いた。

その時、遅れてやってきた他の班が、やっと戸を潜った。そして、各々が自分の班のテーブルに着いた。

瞬間、ピピピピッと電子音が入口から聞こえてきた。入口に目をやると、携帯片手に佐藤が戸に寄りかかり立っていた。


「時間切れ。ゲーム終了。クリアおめでとう」


相変わらずの無表情で、そう述べた。


「おい、佐藤!提出しないとクリアじゃないんだろ」


宝来が立ち上がり、佐藤に問題用紙を突き出す。


「いや、席に着けばいい。回収は後だ。それと少し黙ってろ」


宝来が大人しく座ったのを見て、話し始めた。


「ここにいる16班は、謎解きゲームクリアだ。まぁ、最後に入ってきた4班20人は、水城、金見の説明でやっと分かった程度の、理解力の低い阿呆共だがな。とりあえずは、クリアオメデトウ。昼食は、先生方が看板と一緒に、残りの班の奴等を拾って来るのを待ってからだ」


言い終えると、席に着いた佐藤。

するとすぐに宝来が、佐藤に文句を言い始めた。


「あのヒントはヒデェじゃんよ!俺等何回往復したと思ってんだよ!」


「知らん。この謎解きのルールを理解していないお前等が悪い。あんなとこを何回も往復する馬鹿は、お前等ぐらいだろうな」


「どうゆーことだよ!」


テーブルを叩きながら、佐藤に抗議する佐藤。それに同意する4人。


「わざわざ最初に”他の班と協力してもいい”と言っただろう?

つまり、他の班と協力してやれ、と言っていることに何故気付かない?

道を戻っている時に、他の班と遭遇しなかったのか?」


途中、委員長の班と遭遇したのを思い出す。あの後、委員長とは遭遇していない、つまり、他の班と協力していた、ということになる。


「何のための携帯だ。ルールで”携帯電話の使用を禁ずる” とでも言ったか?頭の良い水城や金見が居ながら、気がつかなかった訳だ。バカが気づく訳がない。

ただ問題を解いて、コースを出るだけなら、謎解きとは言わない。少しは考えることだ。バスケットには、協力、チームワーク、連携といった言葉は必要ないのか?単独プレーで全国優勝できるのか?そうなのであれば謝ろう。だが違うだろう?他の班と協力しようともせず突っ走って、尚且つ最後は、問題を解けていない他の班を引き連れて騒がしく入ってくる。その上、僕に文句を言うのか?問題を解けなかった自分を棚に上げ、問題にケチをつけて、何様のつもりだ?どうせ問題を解いたのは、水城、金見、新井山の3人だろう?お前は何をした?ただ後ろをついて回るだけなら、誰にでもできる。金魚の糞よろしくついて回っていただけなら、僕に文句を言う前に、1問でも問題を解いてみろ。小学生レベルの問題もいれたが、どうせ解けないのだろう?」


淡々と紡がれる言葉に、萎縮し俯く宝来。他の4人も、返す言葉もないのか、佐藤から目を逸らす。


「協力せずに時間切れで、看板と一緒に教師に回収されているバカな班が7組もいる訳だが、お前等はいい方だろ。体力バカ、バスケバカだけの班で。走って時間ギリギリとはいえ、間に合ったのだから。普通あそこを往復してクリアできる班はない。まぁ走るとは思っていたがな。僕がいなくてホントよかったな。まぁ僕は忙しいから、最初から参加する気なんて欠片ほどもなかったがな。この問題を考えて、尚且つ調理、肝試しの企画、班長、バカの世話と、このオリエンテーションは苦痛でしかない訳だから、少しくらい楽しても許されると思うんだよ」


全兼任を相当根に持っているらしい。宝来から目を離さない。

その事については、同意してしまった宝来以外の4人にも責任はある為、何も言えない。


「それじゃあ、全員戻ってきたようだし、さっさと昼食を食べて旅館に行って休みたいと思うのだが、どうだろうか?」


その問いは、Yesかハイ以外の答えは許されないだろう。

話している間に戻って来た先生と、生徒で埋まったテーブル。

先生の話しもそこそこに、運ばれて来る食事を眺めながら、宝来班の5人は佐藤の言葉に頷いた。

次回は、肝試し に入る予定。


また読んで頂けると嬉しいです。

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