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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
五章 高校二年、二学期
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番外編 新年小ネタ集

あけましておめでとうございます。


新年一発目。小ネタ集になりました。

まぁ、楽しんで頂ければ幸いです。

・今年はなに年?



「なぁ、佐藤」


僕の部屋で宝来が、年賀状をジッと見ながら、真剣な声音で言う。


「……なんだ?」


嫌な予感がし、宝来に横目を向けつつ、続く言葉を待つ。


「なる年ってなんだ?」


嫌な予感的中だ。小学生ならまだしも、宝来は高校生。そんな読み間違えはなければいいと、そう思っていたのに…。


「……なる年なんてものは存在しない」


「じゃあ!カレンダーとか年賀状とかにさ!"なる"って書いてあんじゃんよ‼︎」


年賀状を僕の目の前に突きつけ、"戌"の文字を指差す。


「……携帯で調べるか、辞書をひけ」


成と戌。

間違えやすいから気をつけよう…と言いたいところだが、間違えるのは馬鹿だけだ。お馬鹿発言をしないよう、気をつける事だな。





・派閥争い



「あーー‼︎なんで今年は丸餅なんだ⁈」


「安かったから」


「俺、四角い切り餅が好きなのに‼︎」


「文句があるなら食うな」


僕が餅をオーブントースターに並べている横で、騒ぎ立てる宝来に、一言スッパリ言い放つ。


「そうだぞ、彼方。丸だろうと四角だろうと、形が違うだけで味は変わらない」


宝来の後ろからひょっこりと、岬が顔を出す。


「でもぉ…」


「男がそんな細かいことにこだわるなよ!」


シュンと肩を落とす宝来の背を、岬は笑いながらバシバシと叩く。


「うぅ、わかった‼︎俺、丸も好きだ‼︎」


見事な手のひら返しである。

これで少しは静かになるかと思った、その時、


「ん?なぁ佐藤。この餡子、つぶあんじゃないか…?」


「………それが、なにか?」


雲行きが怪しい。この先の言葉は簡単に予想ができる。


「俺、こしあんが好きなのに‼︎」


ほらきた。男ならそんな細かいこと気にするな、じゃなかったのか?

何故、こうなる?去年はこんな事はなかった。皆、文句なく食べていたはずだ。これは、遠慮がなくなったと喜ぶべきことなのか?

いや、こいつらには初めから、"遠慮"なんて謙虚な言葉は当てはまらなかった。


「それは、聞き捨てならないぞ!あんこはつぶあんだろ‼︎」


宝来は激怒した。つぶあんの袋を手に取り、岬に突きつける。


「いいや、こしあんだ‼︎あの滑らかな舌触りがいいんじゃないか‼︎」


「あずきの粒が残ってる感じがいいんじゃないか‼︎」


つぶあんVSこしあん論争が始まった。

ヒートアップする二人に、みたらしや砂糖醤油などを調理していた手を止め、


「文句があるなら自分で買って来い‼︎」


僕は二人をキッチンから蹴り出した。



二人がスーパーに買い出しに出かけた間に、金見と水城と新井山にも聞いてみた。


「え?餅が丸か四角か?」


「こしあんかつぶあんか?」


「…そんなの、別に」


「「「腹に入れば同じだろ」」」


奇遇だな。僕も同じ意見だ。






・お年玉


1月1日

昼近くに起きた僕達六人は、解散した。年越しは一緒にしたが、正月まで一緒に過ごすつもりはない。

が、そう上手くいくものではないと、僕は何度も思い知っている。



「佐藤君はいくらもらった?」


「何をだ?」


「お正月なんだから、お年玉に決まってるじゃない」


「…それを、なんでお前に教える必要がある?」


「俺に、じゃなくて、俺達に、でしょ」


今現在、なぜかまたしても僕の家に集まった。

僕の家のリビングにいる五人。この暇人共め。

皆一度家に帰り、そして長方形の小さな袋片手に、また押しかけてきた。

だから、何故僕の家に集まる?


「それでは、これよりお年玉金額発表会を始めます!」


おい水城、お前まで悪ノリするな。


『イェーイ‼︎』


騒ぐな、煩い。


「じゃあ、夏野から時計回りにいこうか」


…勝手に始まった。

時計回りだと、岬、新井山、金見、宝来、水城、僕の順番になる。

僕はやるなんて言ってないぞ。


「じゃあ俺から。ハイ!…どうだ?」


岬がポチ袋から勢いよく取り出したのは、三枚のお札。


「……中途半端だね」


「一万二千円か…」


「うぉぉ!今までの最高金額‼︎去年よか千円増えた‼︎」


毎年千円ずつ増やしてるんじゃないか?千円増えただけでこの喜びようだからな。多分五百円でも同じように喜ぶだろうな。


「次は俺。はい」


テンションの高い岬の隣で、スッと静かにお金を取り出した新井山。


「おお!二万!よかったな晴汰‼︎」


「うん。あれ?他にも何か入ってる」


そう言い新井山がポチ袋から取り出したのは、一枚のメモ。


「"二連覇おめでとう!三連覇目指して頑張れ‼︎ 母より"。……」


それを読んだ新井山は、フワリと小さく笑った。他の奴らも微笑ましそうに見ている。

…いいな。そんな人が母親で。僕のは"アレ"だからな。


「んじゃ次は俺な。どれどれ〜」


金見が取り出したお札は五千円札一枚。


「うん。これでも多いくらいだよ」


いつもではありえないくらい、優しく微笑んだ金見。


「よし!じゃあ次は俺‼︎」


待ちきれなかったのか、金見を押し退け、前のめりになる宝来。

少しは空気読もうな。


「じゃーん!」


バシンッ、とテーブルにお金を叩きつける宝来。


「おぉ!五万‼︎」


「さすが、甘やかされてるだけはあるね」


「そのせいで脳味噌が足りてないから、どうしようもないけどね」


「まだ、話の通じない宇宙人の方がマシだろうよ」


水城、金見、僕と続けて言うと、宝来は半泣きになりながら叫んだ。


「なんで俺にはそんなあたりが強いの⁈」


「自業自得…」


ポツリと呟いた新井山の言葉に、岬は頷き、宝来はいじけた。



「はい。じゃあ僕の番だね」


一つ手を打ち、流れを切った水城は、ポチ袋の中身を取り出した。


「うん。毎年かわらないな」


「一万か。まぁ無難だな」


金見が水城の手元を覗き込みながらそう言うと、


「バイトをしてない、高校生からしたら大金だよ」


水城は笑いながら正論を言う。

それには激しく同意だな。

最近は、"課金"なんてものも存在してるからな。もう少し金の有り難みというものを知ってほしいものだ。

僕みたいにな。


「じゃあ最後は、佐藤君」


「ほらほら、早く出せよ」


ニヤニヤと笑いながら促してくる宝来。


「悪いが、僕はもらってない」


「え?」


「ごめん。…もう一回、言ってもらってもいい?」


聞き返してくる宝来と、何故か丁寧語になった岬。

何度言っても結果は同じだ。


「だから、僕は、お年玉をもらっていない」


『…………』


シン、と静まり返る室内。

次の瞬間、


「うわぁぁぁ‼︎ごめんな!俺がこんなことやろうなんて言ったからぁ‼︎」


宝来が叫びながら顔を覆い、机に突っ伏した。

やっぱり、事の発端はお前か。


「…うん。なんか、ごめんね?」


水城、申し訳なさそうに謝るな。


「あー、、。うん」


金見、気まずそうに目をそらすな。


「……」


「…悪い」


新井山、岬、哀れんだ目で僕を見るな。


「……じゃあとりあえず、しまおうか」


水城がそう言い、皆申し訳なさそうにお金をしまった。


こうして、勝手に始まった、

【お年玉金額発表会】とやらは終わった。



更新遅くなりましてすみません。


なかなか話がまとまらず、結局は小ネタ集という形になりました。


今年もこんな作者ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。

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