94話 忘年会にはご注意を
とりあえず、更新。
中身がないのに、無駄に長くなってしまいました…。
あとで読み直して編集必須、かな…。
「忘年会をしよう‼︎」
僕の部屋に入るなりそう言った宝来の、その一言が全ての始まりだった。
12月30日
昨日の夜は、バスケ部二連覇達成の祝勝会だった。
何故バスケ部でもない僕が祝わなくてはいけないのかという疑問はあるが、2年目ともなれば、仕方がないとすぐに諦めがついた。
"僕の家"での祝勝会は皆が寝落ちしてお開きとなった。
何故僕の家なのかというと、バスケ部での祝勝会をファミレスで終えてきた宝来達は、二次会と称して僕の家に勝手に集まった。着替え持参で…。
初めから泊まる気満々のデカブツ五人は、20時過ぎに僕の家に押しかけてきた。そして、一方的に料理を強請り、馬鹿騒ぎして、片付けをするでもなく、疲労で五人仲良く寝落ちしたのだ。ふざけるな。
そして僕はといえば、0時を超えた今も後片付けに追われている。
散らかしたゴミ、使った食器、そして、デカブツにブランケットを掛けるなどだ。
風呂にも入り、僕が就寝できたのが2時頃だ。
そして今日の朝。
「忘年会をしよう‼︎」
そう言い僕を叩き起こしてきた宝来の顔面に、寝ぼけ半分で拳を叩き込んだのは、悪いとは思わない。
「さて、で、忘年会ってなんだ?」
宝来が床に蹲っている間に着替えをすませ、ベットに胡座をかいて座り、宝来を見下ろしながらそう問う。
すると宝来は、目を丸くし、心底驚いた、といった表情で僕を見ながらこう言った。
「佐藤お前、忘年会も知らないのかよ⁉︎」
「ふんっ!」
「ふげっ」
本日二発目のストレートが、宝来の腹に入った。
言っておくが、僕は悪くない。
「僕が聞いてるのは、なんで忘年会なんてやろうと言い出したのか、だ。何を検討違いのことを言ってるんだお前は」
僕の前で正座する宝来を睨み付けると、今までしおらしくしていた宝来がパッと立ち上がり、嬉しそうに語り始めた。
「佐藤の家でパーティして、そば食べて、みんなで初詣に行って、おみくじ引いて、そんで帰ってきてからコタツで寝落ちしちゃったり、そんな忘年会をしたい‼︎」
「…それは去年の年末と何が違うんだ?」
「"忘年会"っていう響きがいいと思わないか?なんか、大人って感じで!」
「そう言ってる時点で子供だろう」
かくして、宝来彼方発案の"忘年会"が明日、開催されることとなった。
まぁ、やる事は去年と大差ないがな…。
そして、翌日の大晦日。
「さぁ佐藤!パーティを始めよう!」
「………」
僕の家のリビングは、飾り付けられていた。
入口の扉の両脇には、門松。テーブルの上には、大きめの鏡餅。四方の壁には、それぞれ注連飾りが飾られていた。
この罰当たりめ。
正月飾りは、パーティーの飾り付けのための道具ではないのだが。
まず門松は、年神サマをお迎えする目印です。玄関外か、門扉の外に飾ります。家の中の扉の横に、パーティー飾りとして置いてはいけません。
次に鏡餅。こちらは神様へのお供えです。家の中で一番格式の高いところ、床の間や神棚に飾りましょう。例え、その鏡餅の上に飾りのみかんが乗っていようと、決してリビングのテーブルの、みかんの横になど置いてはいけません。
そして最後に注連飾りですが、こちらは神様の領域を表す結界の意味があります。こちらは神様の居られる場所全てに飾りますが、基本は玄関に飾ります。
決して、パーティーのときに折り紙などで作る輪飾りの代わりにしてはいけません。
人様の家のリビングに固有結界でも張るつもりか?
「じゃあパーティー始めようぜ‼︎もう俊達も近くまで来てるって!」
「………はぁ」
始まる前からパーティー気分ではしゃぐ宝来に、僕はため息を吐くしかなかった。
正午から始まったそのパーティーは、いつも通り騒がしく、僕はキッチンで忙しなく料理を作っていた。
「佐藤君。もうそろそろ料理もいいから、一緒に食べようよ」
ひょっこりとキッチンに顔を出した水城が、笑顔で僕を手招く。
「そうそう。それで作るのは最後にして、一緒に飲もうぜ☆」
「…飲むのはジュースだろう」
水城の後ろから、コーラの入ったグラスを揺らしながら笑う金見に、僕は呆れ混じりでそう言った。
「まあまあ、細かいことはいいから、佐藤君も早くおいでよ。彼方がうるさいからさ」
「…わかった」
最後の料理、唐揚げを皿に盛りつつ返事をし、後片付けを始める。
僕の返事に満足したのか、リビングに戻った二人を横目に、手早く鍋を洗い、唐揚げを片手にリビングへと向かう。
「おっ、来た来た!」
「ここ座れば」
部屋に入ったら、僕の手から唐揚げを取り去った岬(肉食)と、自分の横の席を勧めてくる新井山。宝来と向かい合わせにはなるが、仕方なくその席に座ると、コップが差し出された。
「何飲む?」
「…なんでもいい」
にこやかに尋ねてくる水城に、投げやりに答え、水城とは別方向から注がれるのを見て、その方向を見ると、
「これ飲め‼︎グレープ味って書いてあるから多分美味い‼︎」
「……僕は毒味役かなにかか?」
宝来の手により注がれる、炭酸の入った薄紫色のジュース。
僕はため息と共にグラスを持ち、半分くらいを一気に呷った。
その先の記憶が僕にはない。
少しの頭痛と共に目を覚まし、周りを見回すと、
「………なにしてんだ。お前ら」
座布団に顔を埋めしくしくと泣く宝来。過去に見たことないくらいに腹を抱え爆笑している金見。金見と同様笑っているのだろう、床に蹲り、プルプルと震えながら、弱く床を叩く水城。何故か抱き合い涙する岬と新井山。
時計を見ると、記憶にある時間から、3時間程経過していた。
「あれ?佐藤…?どうした佐藤!」
ジュースを飲んだ途端ににテーブルに突っ伏した佐藤君に、彼方は驚き、佐藤君の肩を揺らすが、顔を上げる気配はない。
「どうしたの佐藤君」
僕も佐藤君の側に行き肩を揺するが、反応がない。首を傾げていると、俊が、
「……彼方、コレ酒だぞ」
佐藤君のグラスの匂いを嗅ぎ、そう言った。
「「「「えっ?」」」」
「うっ、嘘⁈これ酒⁈だって"本絞り果汁10%"って書いてあるじゃんよ‼︎」
「馬鹿彼方‼︎それ酒だよ‼︎チューハイって、お酒ってちゃんと書いてあるだろうが‼︎どこから持ってきた⁈」
夏野が彼方から缶を取り上げ、お酒と表記してある部分を指し叫ぶ。それに彼方は動揺しながら言い訳を始める。
「ど、どこからって、普通に冷蔵庫から…。だって!オレンジジュースのとなりにあるから、普通のジュースだと思うじゃんかよ‼︎佐藤のだと思って持ってきたんだよ‼︎」
「どう考えても、おばさんのもんだろうが‼︎」
岬の正論にぐうの音も出ないのか、口を閉じる彼方。それに俊が援護射撃を加える。
「俺もさっき冷蔵庫見たけど、それの他にもお酒あったよ?同じパッケージのもあったし」
「だっ、だから!佐藤が今日の為に買ったんだって思うじゃんかよ‼︎」
尚も言い訳を続ける彼方に、僕も口を開く。
「佐藤君がそんなことする訳ないって、彼方より付き合いの短い僕だって分かるよ。佐藤君が僕等のパーティーの為になにか用意する訳ないじゃない」
「このジュースとかだって、俺達が買ってきたものだろう?今までだってそうだったろうが」
「で、でも…」
僕と俊の言葉に、俯き、眉を顰める彼方。そんな時、
「うっ、、」
佐藤君がゆっくりと顔を上げた。皆が注目する中、頭を抑え、ぼんやりと虚空を見る佐藤君に、晴汰が心配そうに声をかける。
「…大丈夫か?」
「………」
その声にも反応しない佐藤君に、彼方が空気を読まず佐藤君に近づき肩を組んだ。
「なんだよ佐藤、大丈夫そうじゃん!心配して損したぜ‼︎」
未だ意識がはっきりしていない佐藤君の背を笑いながら叩き始めた彼方を、僕等は止めた。
佐藤君に大丈夫かと、再度尋ねようとしたがら
「宝来…」
虚ろな目をした佐藤君が、彼方に声をかけた。それに笑顔で答えた彼方に、佐藤君は静かに一言、
「正座」
端的に、簡潔にそう言って自分の目の前に正座をしろと指示をだした。
「なんでだよ?なんで俺が正座しなきゃいけな「いいから正座しろ」
有無を言わさぬ佐藤君の声に、抗議しようとしていた彼方は、慌てて指示に従った。
そして、佐藤君は唐突に口を開いた。
「ふっ、忘年会、か。笑わせてくれるな。お前はこれ以上なにを忘れるんだ?あ?その中身がスッカスカの脳味噌に詰め込んだ今年一年の無いにも等しいその知識を、年末に全て忘れようって?馬鹿にしてんのか?お前に覚える事はあっても、忘れなきゃいけないことなんてなにもねぇよ」
始まったのは、説教だった。
「いいか宝来。お前に、"忘年会"なんてものは、今後一生必要のないものだ。お前がしなきゃいけないのは、勉強会だ。これはお前に一生付きまとう課題だ。休む暇なんてないと思え。ひまさえあれば教科書を開き、わからなければ辞書をひけ。その使えない頭に年月をかけて一般的な知識を詰め込め。ぜったいに忘れるなよ。ばかなお前に休むひまなんてないと思え」
「ふっ、さ、佐藤君、、酔ってる?」
「ぼくは酔ってなんかない」
「絶対、酔ってるっ…、、」
僕と俊は肩を震わせ、笑いを堪える。
「俺、なんで説教されてるの…?」
目を丸くしながら言った彼方のその言葉で、僕と俊は限界だった。
「岬、新井山」
「ヒッ」
「なんだ…?」
突然矛先を向けられた夏野は思わず小さな悲鳴を上げ、晴汰は少し顔を青くしながら、返事をする。
「お前たち2人は二年生になってよく頑張った。宝来と同じ馬鹿だったのに、宝来という救いようのないバカを反面教師にして、成績を上げた。これは宝来という救いようのないバカがいたおかげかもしれないが、お前たちの努力の成果だ。誇っていいぞ。もし、お前らが宝来を見ながらもそのままの成績だったのなら、ぼくは容赦しなかっただろうな。今年は幡木なんてバカでバカな後輩。宝来2号とでも言おうか。そんなものができてしまって、僕はこの学校に入った後悔しかなかった。だから、今年、お前らが手のかからない子になってくれて、とても助かった」
「佐藤に褒められた…?」
「勉強、頑張って、よかった…!」
ヒシッと、泣きながら二人は抱き合った。その様子にも、僕と俊は笑えてきてしまい、言葉を発することも叶わず、ただ佐藤君の様子を見るしかできない。
「ほんと、馬鹿は滅びればいいんだ。バカなんて害悪でしかない。もういっそ死んだらいいんだ。なぁ、そうは思わないか?宝来」
「…それは俺に死ねと、言っているのですか?」
思わず敬語になっている彼方。それに対して、佐藤君の返しは辛辣なものだ。
「自覚があるならなおせと言っているんだ。僕の言葉すら理解できないのか?日本語を話しているはずだが?人間の言語が通じないやつは三人もいらないぞ。お前はせめて人間のままだと嬉しい。宇宙人はもういらない」
「ちゃんと理解してるよ!お前さっき俺に死刑宣告したよな⁈なぁ俊!橙里!俺なにかまちがってたのか⁈」
半泣きで僕達に聞いてくる彼方に、震えながら、答える。
「ま、、間違ってない、よ…。佐藤君、今、酔ってるから…、ふっ」
「そっ、そうそう、酔っ払いの言葉は、聞き流すのが、いいと、、思うよっ、、」
「お前らはなにがそんなにおかしいんだよ‼︎」
笑う僕達に、泣きながら怒る彼方。しかし、僕達の笑いは止まらない。
その後二時間、佐藤君が寝落ちするまで説教は続いた。
しかし、後半は何を言っているのか分からず、しかし反論することもできない彼方は、ジッと正座でその説教を受けていた。
何故だろうか。この三時間の記憶がない。
しかし、わんわん泣いている三人と、笑い転げている二人に聞くことは多分無理だろう。
そして、僕はテーブルの上に置いてあったグラスと空き缶を見て、ため息を吐いた。
「これ、全部酒じゃねぇかよ」
その後、僕は五人に水を飲ませ、酔いも覚めた頃に丁度いい時間になり、皆で頭痛を抱えながら初詣に向かった。
オマケ
はいではこれより、一人忘年会を始めたいと思いまーす。
思えば、今年一年、碌なことがなかったな……。
だが、忘れたい事といえば、今日のことだとはっきり言える。
本日の忘年会、飲み物を出したのは宝来らしい。それも、僕の家の冷蔵庫に入っている、母のチューハイを僕がパーティー用に用意したジュースだと勘違いし、"グラスに注いで"皆にだしたという。つまり確実に一杯は皆酒を飲んでいるのだ。そう。宝来の言っていた"オレンジジュース"も酒だったのだ。僕のグラスに入った酒は匂いで気づいたのに、自分が飲んだものには気づかなかった金見には、疑問しかないが、"酔っていた"で全て片付けておこうか。
僕が一番酒に弱かった。だから、一番に酔いが回った。ただそれだけの話なのだ。
他の奴らは、飲んだのは一杯だけではないだろう。なにせ、珍しく宝来が酌をしていたからな。空き缶も八本程あった。
他にも金見達が用意したであろう普通のジュースもあったが、然程減ってはいなかった。宝来がちょこちょこキッチンに現れては"ジュース"を注いで持って行っていたのも、今思えばおかしいのだ。
「冷たい方がうまいからな!」
などという戯言に耳を貸したのがいけなかった。
知らず知らずの内に、宝来に酒を盛られていた彼等の結末がアレだ。
泣き止まないのも、いつもの様子ではあり得ないくらい笑い転げていたのも、全て宝来のせいだ。
僕はコップ半分しか飲んでいないから、すぐに酔いが覚めたのだろう。
まぁ、言いたいことは一つだ。
【酒は飲んでも飲まれるな。】
よく聞く言葉だろう?
そういうことで、まぁ……来年もよろしくな。
というわけで、年末の忘年会の話でした。
結構支離滅裂な感じになった気はしますが、書きたいところは書けたと思うので、時間があれば編集します!
一つだけ言っておこう。
未成年の飲酒は法律で禁止されています。
次回、わかっているかとは思いますが、年始の話です。
今年も一年ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い致します。