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平凡少年佐藤君の人生傍観的記録  作者: 御神
五章 高校二年、二学期
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93話 最悪なクリスマスの過ごし方 後編

とりあえず、完成。

クリスマス後編になります。



これから、見直しは後でいいからとりあえずあげてしまえ方式でいきます……。

誤字とかあったら報告お願いします。

12月25日

本日、クリスマス。

昨日に引き続き、僕はクリスマスを呪った。

ああ、僕は別にキリスト教じゃないから、祝う必要なんてなかったか。










休日なのにも関わらず、僕は朝の6時に目を覚ました。二度寝しようにも、何故だか目が冴えてしまいそれも叶わない。

今日も母は不在。宝来達も大会の為不在。そう、完全なる休日だ。

朝食を作れと命令される訳でも、遊びに行こうと引っ張りだされる訳でもない。

昨日のような不測の事態が起きない限り、とても素晴らしい日であると言える。

昨日買った本はもう読み切ってしまったし、本屋か図書館に出かけようかとも考えたが、昨日の二の舞はごめんだ。

結論、引きこもることにした。



この時の選択を後悔したのは、数時間後だった。





朝食をとり、暇を持て余してしまった僕は、シリーズものの本を棚から引っ張り出し、ベッドに背をもたれかけ、黙々と読み始めた。

一冊目を読み終え、二冊目に入ってすぐのことだった。

ピンポーン。

と、インターホンが鳴った。

僕は運送屋か郵便だろうと、なんの疑問も持たずに玄関に向かった。

ピンポーン。

一階に降りてすぐ、またインターホンが鳴らされた。それに多少小走りで玄関に向かい、急いでドアを開けた。


「はい。どちらさま……、、」


開けたドアの先に立っていた人物を見て、僕は固まった。


「やあやあ昨日ぶりだな、少年」


「可愛い後輩が、一人で寂しい先輩の為に来ましたよ!一緒にクリスマスパーティーしましょう‼︎」


バタンッ、と、勢いよくドアを閉め、鍵をかけ、U字ロックもかける。そして、裏口に走り、鍵をかけ、一階のあらゆる部屋の窓に鍵をかけカーテンを閉める。

そして、二階に行き、一階と同様、窓の鍵を全てかけ、カーテンを閉める。

そしてやっと一息つく。


「これなら入ってこれないだろう……」


「おお、ご苦労ご苦労。防犯はしっかりしておるな。だが、私達がいるのに、玄関にまで鍵をかけるのはいただけないなぁ」


背後から声がして勢いよく振り返る。

そこには会長がいた。


「なんで…………」


「事情を説明し、宝来少年から合鍵を

借り受けた。快く貸してくれたぞ」


「あの野郎………。でも、U字ロックもかけたはずですが?」


「ああ、あんなもの簡単に開けられる。まず、長めの薄い紐を用意します。ドアを開け、U字ロックに引っ掛け、その紐をドアの上から出し、ドアを閉めます。そして紐を軽く引いてから、ドアを開けます。すると、あら不思議ロックが外れているではないですか」


ポケットから、ロックを外す為に使われたであろう紐を取り出しながら、説明する会長。


「犯罪ですよ。警察呼びましょうか」


「犯罪とは物騒な。警察は呼んでも構わんぞ。”引きこもりの後輩と話をするのに仕方なく開けた”と、そう説明すれば良い。なにせ、私は生徒会長だからな。説得力はあるだろう?」


これは部が悪い。僕は引きこもりじゃないが、生徒会長という肩書きが邪魔だ。しかも、合鍵を持っている為に、説得力が増してしまう。クソッ。


「そうかそうか、そんなに嬉しいか。そんなに眉を寄せて、泣くのを堪えておるのだろう?良い良い。この生徒会長の胸を貸してやろう。さあ、飛び込んで来い」


怒りと悔しさで眉を顰めていたが、腕を広げる会長に、スン、と表情を無くし右手で拳を握る。

しかし、仮にも先輩、仮にも女だと自分の理性に言い聞かせ、左手でグッと右手を抑える。

ふぅ、と一つ息を吐き、はたと気づく。

……幡木がいない。


「会長、幡木はどこに行きました?」


「ああ、後輩君なら、キッチンだ」


その時、タイミングよく、一階から何かをひっくり返したような音が響いた。






「……………何をしている?」


「えへへ。失敗しちゃいました」


慌ててキッチンに向かえば、ボウルが二つと泡立て器が床に転がっていた。

当然の疑問を投げれば、床に尻餅をついた幡木が謝りもせず、頭をかいた。


「大丈夫か?なんだこの家のキッチンには踏み台がないのか。少年が使っているというから、てっきりあるものだと思っていたのだが…。いやはや、後輩君を一人で行かせたのは誤りであったか」


ビキリと、怒りで額に青筋が浮かぶ。


「本当ですよ‼︎なんでボウルとか上に入れてるんですか、もう‼︎」


「そうだぞ少年。上なんかにあったら、君も取れないだろう。キッチンは使いやすくしなくてはいけないぞ」


「もういいから帰ってくれっ‼︎」


好き放題言う二人に、我慢できず思わず怒鳴りつけた。







「さぁ先輩!クリスマスケーキ作り始めますよ‼︎」


「材料は買ってきたから、安心したまえ」


僕の一声で素直に帰ってくれるはずもなく、人様の家のキッチンを漁り、材料を広げ、ケーキ作りを始める二人。


しかし、問題発生。


「会長会長、この適量ってどれくらいなんですかね?」


「適量というのは、つまりは適当でいいのだよ。君が思う量を使うといい」


「じゃあじゃあ、この”もったりするまで”泡立てるって、どのくらいなんですかね?」


「君が思うままに泡立てるといい」


まともな物ができるとは思えない会話が飛び交う。

因みに、僕は計量を請け負った。手伝う気もやる気も全くなかったが、


「ふむ、15g多いがこれくらいなら、許容範囲というところだろう」


「あっ、砂糖が30gも多くなっちゃいました」


「それくらい問題なかろう。ケーキは甘いものだ。少なくて困ることはあっても、多くて困るということはない」


「そうですね‼︎」


という会話を聞き、仕方なく手伝うことになった。ケーキ作りは1gがものをいう繊細なものだ。

例えその際、


「なんだ先輩も仲間に入りたかったんじゃないですか‼︎素直じゃないんですから‼︎」


「ふっ、照れ屋なのも困りものだな。そう協力して作る事に意味があるのだ。例え不味くとも、一生懸命作ったという思い出は残る。それだけで美味しく感じるというものだ」


という、やる気を根こそぎ奪うような事を言われていようとも、自分の口にも入るものだ、と言い聞かせる。

宝来に鍛えられた鋼の理性をなめてもらっては困る。

この程度のことで僕は挫けない。


「先輩‼︎ケーキの”たね”ができました‼︎型ください!」


そう言いボウルを突き出す幡木に目を向けると、


「……………なにが、できたって?」


ボウルのなかのケーキの”たね”は液体のようだった。


「え?だからケーキのたねですよ‼︎あとは焼くだけです!」


「そんなもの焼いても膨らまないぞ」


”もったり”とするまで泡立てるとは、泡立て器を持ち上げた時に、生地がリボン状にゆっくりと落ちる状態のことをいう。こんな、ただ材料を混ぜ合わせました、な液体のままの状態のものを生地とは言わない。


「レシピ通りに作ってるんですから、そんなことないですよ‼︎いいから型ください」


「……わかったら。じゃあ膨らまなかったら僕は食べないし、責任を持ってお前が全部食えよ」


「いいですよ‼︎絶対おいしいケーキができますから‼︎」


「そうだぞ少年!これは後輩君が心を込めて作ったケーキだ!不味いはずがない‼︎」


「………そうですか」


どこからそんな自信がくるのかと問い質したいが、そんなことをするより先に、電子レンジを明け渡す方が楽だ。

僕はケーキ型を幡木に渡し、予熱しておいたレンジを開く。

さて、分かりきってはいるが、どうなるかな…。



二時間後



「なんで、なんでふくらまないんですか‼︎」


「おかしい、おかしいぞ⁈私の計量は間違っていなかったはず…!」


そうだな。おかしいな。計量したのは僕のはずなんだが…?


「いやでも!焼けてます!焼けてますよ‼︎」


「そうだな!膨らまないことなんで微々たる事だ‼︎重要なのは味だ‼︎」


膨らまなければケーキとは言えないと思うんだが?


パクリと、二人同時に千切ったスポンジ生地らしきものを口に含んだ。


「………先輩」


「ああ、後輩君…」


真剣な表情で顔を見合わせる二人。

ああ、見た目通り、予想通り不味かったのか、と思ったとき、


「「美味い‼︎」」


二人の味覚はもはや手遅れのようだ。


「さぁ先輩‼︎おいしかったですから食べて下さい‼︎」


「僕は、"膨らまなかったら食べない"と言った。味がどうこうという問題ではない」


「いいから黙って食べ給えよ‼︎」


「むぐっっ⁈」


会長がスポンジを僕の不意をつき、口に押し込んできた。仕方なく咀嚼し、飲み込むが、感想は一つだ。


「……甘すぎる」


「ケーキなのだから甘いのは当然であろう。なにを言っているのだ君は」


砂糖をどれだけ入れたのかと思う程に甘いのに、美味いと言った二人は、糖尿病真っしぐらであろう。むしろそのまま入院して病院からでてくるな。


「じゃあこれデコレーションしましょうか‼︎」


「ああ!完成したらパーティを始めよう!」


「もういいから帰ってくれ……」


生クリームを手にする二人に僕は肩を落とし、片手で顔を覆う。






完成したケーキを手にリビングに行くと、取り出したクラッカーを僕に向ける二人。

…危ないからやめて下さい。


「私達が最高のクリスマスにしてあげよう」


「貴方達が来たおかげで、最悪なクリスマスでしかないです」


「照れなくていいんですよ‼︎」


「そうだぞ。未だ嘗て体験したことのないような、そんな素晴らしいクリスマスになる。いや、私達がしてみせる。君はただこのパーティを楽しむといいさ」


最後までこの二人には、人間の言語が通じなかった。



結局、二人が帰ってくれたのは夜の7時過ぎだった。

と言うわけで、佐藤君のクリスマスでした。

因みに、この後その日の大会を終えて帰ってきた宝来君達と二度目のクリスマスパーティーをします(巻き込まれるとも言う)

その話は、書けたらまた後日、番外編としてアップします。まぁ短文にはなるでしょうが…。


それでは次回もどうぞよろしくお願い致します。

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