第6話 「ポラン・オブ・グール」
瞳のその深くを見つめ、確かめて、そして夏輝は決断した。
「大通りは避けて、なるべく音を立てずに行くわよ」
その言葉を聞き、ミサの片手は裾を離れて、そして小さく頷いた。
――直後、コンビニエンスストア店内から物音と、それとくしゃみの音が聞こえ始め、
ミサと夏輝は首を横に振り店内に注意を向けた。すると夏輝は、
直ぐ様視線を道路の方に向け直し、そしてそこに蠢く人影の中にはちらほらと、
ミサと夏輝の存在に気づく者が。
夏輝は、先ほどまで自分の制服を掴んでいたミサの片手を握り、
そして夏輝に顔を向けるミサを、道路側に視線を向かせないように、一度強く引き、
「離れないでよ」
そう言って手を繋いだまま、とりあえずその場を直ぐに離れるため、コンビニエンスス
トアの角に周り、さらにそこから小道に入った。
その間、道路側に居た人影は二人に注目こそするものの、追いかけるわけでもなく。
――少なくともその一時の間は。
そうして夏輝とミサは辺りを警戒しながら小道を慎重に抜けて行き、しかしそんな小道
がどこまでも続いているわけではなく、夏輝とミサが目指す自宅は南側であり、
現在、東側を周りながら自宅を目指している。しかしその上で、南下するためには幅の
広い道路を横断しなければならず、その道路沿いには、
やはり無数の人影が蠢いており、くしゃみの音も、そこらじゅうから。
「どうするの?」
夏輝の後ろ、その背中を不安げに見つめ。
「渡るしかない……走るわよ」
夏輝は繋いだ手を強く握り、覚悟を決めているようだった。
とは言っても、二人は、夏輝はまだ15歳の美少女であり、一見すると夏輝は、二人が置
かれた状況に冷静に対応しているように見えるが、
そこに広がる光景も、この状況にも、当然のことながら、夏輝自信それらに対して不安
感を懐かないはずはなく。
しかし、次の瞬間には既に――二人は向かいの道路沿いを目指して。
強く繋がれた手は、それは夏輝のミサを思ってのことであり、そして、道路の中央に差
し掛かった所、その瞬間――激しい地響きに足を取られ、強く繋がれていたはずの手は
離れて。ミサは、その場に転倒してしまった。
コンビニエンスストア前と同様に、それまでは、二人に注目こそすれ、反応をみせ
るわけではなかった人影だが、しかし、その地響きなのか、それとも、突発的に発せら
れた悲鳴からなのか、道路沿いを蠢いていた人影の――その中から、二人に、ミサに向
かって――
夏輝の悲鳴が辺りに響く。