第13話 「落ちる花」
「総勢584名中9名が提供データと一致。他不明400」
「欠員を選別、補充しろ。検査はこれまで通り継続。中継局を更新しておけ。ブラゼン
との合流に備える――」
衝撃の事実を告げられ数分、艦内の空気は重々しく、まだ事実を受け入れきれていない
様子だった。当然だろう。公開された情報はミサと夏輝や民間人達が想定していた事態
を遥かに超えるものだったのだから。
海底深くを進む潜水艦という閉鎖環境の中に於いて、自由に情報を得られない今の状況がこの先も続けば、それが彼等に与える影響は日増しに大きくなるはずだ。
だが彼等の知らぬことろでは今も事態は動き続けている。告げられた事実が真に影響を
及ぼすよりも早く、事態はまた新たな局面を迎えるだろう。
悲しみに暮れる夜も待たぬまま、彼等を運ぶ船は進み続けた――。
「あの野郎!」
深青色の髪をした美少年「坂城 塔磨」は居室の簡易ベッドの上に座り、居室の壁に怒
りをぶつけた。
「来い。時間だ」
塔磨の居る居室の扉が開き、そこには黒色の髪をした美青年が。塔磨を連れに来たよう
だ。塔磨は無言で簡易ベッドを立ち、居室を出ると、黒色の髪をした美青年の後に続い
た。
「あまり物音を立てるな」
居室を後にして直ぐ、前をいく黒色の髪をした美青年は視線を変えずに、それとなく塔
磨に忠告する。
「わかってるよ」
前をいく黒色の髪をした美青年は一度、後ろに注意を向けたようではあったが、それ以
降二人の間に会話はなく。そしてしばらくすると、二人は目的の場所に着いたようで、
黒色の髪をした美青年はそこで止まり、やはり後ろを振り向くことなく、目的の場所に
到着したことを告げた。
「ここだ」
塔磨は、淡泊に告げるだけ、そして扉を開け中に入っていく黒色の髪をした美青年の後
に続いた。