第7話 「夕暮れの先に」
数分の間に景色は移り、開けた道には乗り捨てられた車が数台、さらに長い間隔で事
故車両が。頭上に走る首都高速からはサイレンの音が――それはそこで停止している
ようだった。
複数の高層ビル群が、首都高速や、商業施設の間から確認出来て、二人は、中心街の
もう直ぐそこにまで来ていた。
二人が初めに目にしたのは、前方ブティックに衝突し煙を上げたまま停止している車
両で、周囲には光源に照らされたガラス片が飛び散り、唸り声を上げて車両の下敷き
になっている――だが、一滴の流血さえ確認出来ない者が見えて。
夏輝はまた繋いだ手を引き、しかしミサは疲れきっていて、夏輝は一旦、ミサの体力
が回復するまで待とうかと、ミサを顧みるが、だが、その現状で足を止めるわけには
いかず。何故ならそれは、周囲にも――後ろにも、その場での休憩は許されないだろ
う。
息を切らして軽く屈みこむミサに、夏輝は手を当てて、励ましの言葉を投げかけた。
「無理……もう走れないよ……!」
くしゃみと共に人影は徐々に二人へ接近して、刻一刻と逃げ道は塞がっていき、繋が
れた手を震わせているのは夏輝の方だった。
じわじわと距離を詰めるそれを背にミサは力を振り絞り、
二人は再び走り出すものの、足の動きはついていかず、
夏輝に手を引かれながら必死に後を追うミサであったが――遂にはその場に躓いてし
まい、振り返れば、無数の影がそこに。
「――ミサ!」
荒い息遣いを手で抑え、地面に突かれた膝は赤く――夏輝はミサに駆け寄り、小さな
背中を抱きしめた。覚悟を決めるわけではなく、ただ、ミサの長い髪に顔を伏せて。
ミサの瞳に映るのは、前方より二人へと近づく――