クリスマスの日に
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母さんが出て行ったのは俺が小学生のときだった。
六年生の秋だ。
今でもはっきりと覚えている。
あの日は友達とサッカーをした帰りで、軽い疲労感とともに家ドアを開けた。
外は暮れかけていて、タイル張りの玄関には俺の影が落ちていた。
二人に話したいことがたくさんあった。
朝は学校に走っていっている途中、猫とぶつかりそうになった。
授業中には先生にいきなり当てられたけどちゃんと答えられた。
でもその後お喋りしていたのがバレて怒られた。
昼休みは友達とドッジボールをした。
俺はそのとき三人にボールをぶつけたけどゲームには負けてしまった。
午後は、放課後は、帰る間は、たくさんたくさん。
何だって話したかった。
話そうと思っていた、リビングに入るまでは。
俺がただいまと言って廊下からの扉を開けた瞬間、突然、母さんのごめんねという声が聞こえた。
母さんはテレビの正面に据えてあるソファに座って、ただじっと膝の上の自分の指を見つめていた。
父さんはうつ向いて、ダイニングの椅子に腰かけていた。
白い紙が一枚テーブルに乗せてあった。
リビングは、やたらと寒く暗かったような気がする。
そう感じた理由は、部屋の電気が点けられていなかったせいか、それとも何も分からない子供では無くなりかけていた自分の勘のせいか、もしかしたらもっと他の理由かもしれない。
俺は漠然と、そのいつもどおりではない目の前の光景に不安を覚えていたのだ。
一歩でも身動きすれば、取り返しのつかない何かが起きてしまいそうで、怖かった。
実際全く動かなかったと思う。
ただ爪先に伝わる床の冷たさを靴下越しに感じていた。
取り返しのつかない何かなんて、もうとっくの昔に起きていて、しかも俺が目の当たりにしたそのときには終わってしまっていたというのに。
試しに呼んだ、母さん、という声に返事はなかった。
沈黙だけが流れた。
それで息苦しくなって、助けを求めるように父さんと呼ぶと、一言「すまん」と吐き出すのが聞こえた。
俺は父さんについて行くことになっていた。
詳しくは知らされなかったが大人の事情があったらしい。
母さんの出て行った家には、俺と父さんの二人だけが残り、二人だけの生活が始まった。
家事は当番制だ。
週に四回は俺が夕食を作る。
暇があれば父さんの弁当も。
父さんは残りの日の食事担当で、洗濯は大方父さんがやる。
でもその取り込みは、学校から帰った俺の仕事だ。
他にもいろいろとやることはあったが、それはそのときそのときで適当に分担した。
正直に言って、父さんとの生活はつまらなかった。
愉快なことなど何も無く、前にもまして口数の減った父さんはいつも疲れた様子で、自然と俺も口を開くことが無くなる。
ご飯だってコンビニ弁当や出来合のもので済ますことが少なくなかった。
昔は意味も分からずに笑えていたテレビ番組も、全く面白く感じられない。
友達と会うことのできる学校だって、楽しいはずなのに、どこか味気なかった。
まるで人生が色褪せてしまったのだ。
それも心の中で、ひっそりと。
けど、そんな生活でも楽しみにしていることがひとつだけあった。
母さんとの面会だ。
月に一回、多いときは二回、俺は母さんとどこかのレストランで食事をした。
話したいことはいくらでもあった。
父さんは聞いてくれないたくさんの話を、母さんは何でも聞いてくれた。
母さんとまた会えることも、以前のようにその顔を見ながら食事をできることも、何もかもが嬉しくて、俺は時が過ぎるのも忘れて喋り続けた。
だから店の前で母さんと別れるときはすごく寂しかったし、ときには駅まで送って行ったりしたこともある。
誕生日や記念日にはプレゼントもした。
初めて贈り物をしたのは、母さんが出て行って最初のクリスマスの日だ。
淡いピンクのマニキュアをあげた。
あれは確か友達と遊びに行ったとき、たまたま通りかかった店の店頭に飾られていたものだった。
白いシルクの敷物の上に、赤い薔薇とともに並べられた化粧品たち。
曇りひとつないガラス越しに、その中で小さな瓶に入ったマニキュアの桜色は、一瞬にして俺の目を奪った。
もし、この色が母さんの指先に塗られていたら、なんて素敵なんだろうと。
本気で、母さんの為に作られた色なんじゃないかと思ったくらいだ。
それくらい母さんに似合う色だった。
馬鹿な俺はすぐさまそのマニキュアを買おうと、嫌がる友達をひきつれて店に入った。
しかし、残念ながらそれは叶うことはなかった。
思い出すのも恥ずかしいのだが、お金が全く足りなかったのである。
そこはいわゆる大人のブランドの店で、そもそも当時の俺のようなただの小学生は、間違っても入って良い場所ではなかった。
友達が散々嫌がったのも頷ける。
おかげで店を出た後俺は延々と悪態をつかれまくった。
それが丁度クリスマスの一ヶ月のことだ。
次に母さんに会えるのは偶然にも十二月二十五日。
俺はお金を集めるべく、そこら中を駆け回った。
その月のおこづかいはもちろん、残していたお年玉、持っていた漫画もほとんど売った。
テレビの横のゲームソフトはすっからかんになった。
それでもわずかに金額が足りず、最後には友達に頼み込んで足りない分を埋め合わせた。
金のことに関してあんなに必死になったことは、あれが最初で最後だと思う。
そうしてクリスマスの前日、つまりイブに、俺は苦労して作ったその金を握り締め、再び店を訪れた。
初めて店に入ったときは、頭にはあのマニキュアのことしか無く、また値札を見た後も友達に急かされて逃げるように外へ出たためまともにその全容を見ていなかったが、こうして改めて見てみると何とも高級そうな佇まいだった。
自分のような小学生が行く店ではない。
やっぱり友達についてきてもらうべきだったかと後悔が胸中をよぎったが、今更引き返すつもりはなく、俺は思いきって入り口の扉を押し開けた。
最初のときと違って、ガラス製のその扉は重かった。
足を踏み入れた途端、磨かれた大理石の床が俺の安っぽい靴の下に現れ、同時にたくさんの視線が一斉に俺に突き刺さった。
その場に居たのは当然ながら上品な装いをした大人の女の人ばかりで、中にはサングラスをしている人もいた。
当時サングラスは男がかけるものだと思い込んでいた俺は、お洒落としてそれをつけていることにもまた、この店の格の違いを感じた。
なるべく大人っぽく見えるよう着てきた黒いズボンも白いYシャツも、ただの仮装のように思えて、俺は急に恥ずかしくなった。
ついさっき奮いあげた気持ちが一瞬にして萎えそうになる。
しかし、ここで逃げては話にならない。
作った金だって無駄になってしまう。
俺は出来るだけすました顔を取り繕うと、マニキュアの置かれている棚へまっすぐ足を向けた。
ただ店内を横切るだけだったにもかかわらず、道のりはひどく長かった。
その間も無遠慮に向けられる視線に顔が赤くなりそうになるのを必死に堪えて、ようやく俺は目的の場所にたどり着いた。
ここまで来れば後は飾ってあるマニキュアを持ってレジに行くだけだ。
明後日には母さんにクリスマスプレゼントとして渡すことが出来る。
そう思ってマニキュアに手を伸ばそうとしたとき、ふと気付いた。
ピンク色が、ない。
いくつもの色が並べてある中、どこを見てもあの色だけがないのだ。
隠れていて見付からないだけではと思って何個かどかしてみるけど、やはりない。
どうして。
指先が震える。
まさか、売り切れたのでは。
俺があれを見掛けたのはもう一ヶ月も前のことだ。
数に限りがあるのなら有り得ない話じゃない。
さっと頭から血の気が引いていくのを感じた。
じゃあ、あれを母さんにプレゼントすることは出来ないのか。
母さんにあの色を見せることは出来ないのか。
あんなに頑張ったのに、母さんの喜ぶ顔は見れないのか。
そんな絶望が頭の中を埋め尽して、あと一歩で泣きそうになっていたそのとき、誰かが俺の横に並んだ。
思わず視線をそちらに向けると、相手も俺を見返してきた。
店に入ったときからいた、あのサングラスの女性だ。
女性は俺の顔とマニキュアの山を見比べたあと、不意に口を開いた。
「シェルアの128番?」
唐突な言葉に、俺の思考は一瞬固まる。
言われた横文字も番号も、全く聞き覚えのないものだった。
わけが分からず呆然とする俺に、相手はああと頷いた。
「薄いピンクのマニキュアでしょ? あなたが探してるの」
そして赤い口紅に彩られた唇が柔らかく微笑んだのを見て、俺はようやくその女性の言った意味を理解した。
この人は俺が探しているあのマニキュアのことを言っているのだと。
慌てて、阿呆のようにこくこくと首を振ると、女性は一層軽やかに微笑んで近くの店員に声をかけた。
そのときあの人が何を喋ったかはよく覚えていない。
だが、結果的に俺はマニキュアを手に入れることに成功した。
在庫が奥に残っていたらしい。
「これ、最後の一個なんですよ」という店員の言葉とともに渡されたそれは小綺麗な紙袋に入れられていて、片手に乗るほどの大きさしかなかった。
正直、この一ヶ月間の努力を思うと少し拍子抜けした。
別にどんなものを想像していたわけでもなかったが、思っていたよりずっと軽かったそれにあまり実感が湧いてこなかった。
しかし生憎、そんな状態はそう長くは続かなかった。
俺はすっかり薄くなった財布をポケットにようやく店の外へ出た。
随分と長い時間をこの中で過ごした気がした。
しかし外は店へ入ったときと何一つ変わらず、冷たい外気がシャツの襟から覗いた首を撫でていった。
息を吐くと、白い空気が目の前を横切った。
無性に体が熱い。
緊張していたのだ、と気付いた。
そうしてやっと母さんへのプレゼントを買うことが出来た。
ついに成し遂げたんだ、俺は。
ふと指先に重みを感じ、腕を目線まで持ち上げると、ついさっき手渡された紙袋がぶら下がっていた。
その袋は上質で分厚い真っ白い材質で出来ていて、触ると荒いながらも上等そうな感触がして、金色の文字で店の名前が書いてあった。
こうやってまた見直してみても、やっぱり小さいし、軽い。
けれど、誇らしい。
無性に俺はこれを行き交う人々へみせびらかしたい気分になった。
多分自慢したかったのだ。
さすがに分別の身についていた俺はその衝動をそっと胸の中にしまい込み、家の方向へ足を向けた。
仕事が終われば父さんがケーキとプレゼントを買って帰ってくるはずだ。
きっといつもよりは楽しい夜になる。
そして、明日になったら、母さんにこれを渡そう。
早く喜ぶ顔が見たい。
自然と、頬がゆるむのを感じた。
「………………で」
どさりと俺の目の前にいくつもの段ボールが重ねられた。
店のテーブルに肘を着いていた俺は思わず今までずっと動かしていた口を閉じてしまう。
「それがあの日の真実だったってわけね」
段ボールの山の向こうから顔を出したゆかりさんがそう言った。
もう三十路を越えて長いというのに、今だ若さを失っていないその顔はあの日のように軽やかな微笑みをたたえている。
「やっと合点がいったわー、あんな場所にあんたみたいなただのガキが来た理由。初め入ってきたときすっごい驚いたもの」
「ちょっ、ガキって言わないでくださいよ。俺だって必死だったのに」
「そうそう、その必死さもおかしかったのよねー。頑張って大人ぶろうとしててさ。思わず助け船出しちゃったくらいよ」
ゆかりさんはあのときのことを思い出しているのか、笑いを堪えるように口元を手で覆いながら「これ奥に運んでね」と段ボールを俺に押し出した。
車からここまで持って来れたなら倉庫にくらい自分で運べるだろうに。
一応この店の手伝いによって金を受け取っている俺は仕事を果たすべく椅子から腰を上げた。
積まれた段ボールの一番下に手を差しこんで腕に力を込める。
持ち上げたそれは思いの他重かった。
あのときとはまるで逆だな、と思考の隅でひっそり考える。
店の裏の倉庫に入ると、何故かゆかりさんも一緒についてきた。
指定された場所に荷物を下ろし、俺は軽く伸びをしてゆかりさんを振り返った。
ゆかりさんは壁に寄りかかってぼんやりこっちを見ていた。
あのとき見上げたこの人は、今ではもう俺より小さい。
当たり前だ、あれからもう五年も経っているのだから。
「大きくなったわね」
懐かしむようにゆかりさんが言った。
「ちゃんと成長してくれて嬉しいわ」
「ゆかりさん、何か母親みてぇ」
「あら、あたしは母親じゃなくて叔母さんよ。これぐらい言ってもおかしくはないでしょう」
ゆかりさんが自分で自分を『叔母さん』というのを久しぶりに聞いた気がする。
普段は俺にだって絶対そう呼ばせようとしないのに。
以前間違えて『叔母さん』と言ってしまったときは、理不尽にもその月のバイト代を無しにされた程だ。
「でもまさか、あんなところでまた会うとは思ってませんでしたよ、俺」
これは、五年前のあの日から一週間後の話になる。
父さんと無事正月を向かえた俺は、友達に誘われてゲームショップへ行った。
お年玉を貰った子供に買わせるためとしたか思えないように次々と発売されたソフトを眺めながら、そういえば今家には一本もゲームが無かったことを思い出した。
あれらは全部金になった。
それも買ったときの半分以下の金額に。
世の中とは上手く出来てないものだと小学生とは思えないことを考えながら、ふと目についたソフトに手を伸ばしたとき、誰かが俺の隣に立った。
一瞬、異常なまでの既視感が俺を襲った。
つい最近、こんな状況が無かっただろうか。
いや、あった。イヴに行ったあの店で。
さっと顔を上げると、果たして見覚えのあるサングラスをかけた女性がこっちを見下ろしていた。
「ていうか、二度目のあれはさすがに偶然じゃなかったでしょ」
店に繋がるドアをくぐって話しかけると、後ろにいたゆかりさんはああと両手を打ち合わせる音が聞こえた。
「あれはね、お兄ちゃんに聞いたら和人なら近くのゲームショップに行ったって言ってたから」
お兄ちゃんとは俺の父さんのことだ。
「やっぱり……父さんも口が軽いんだよなぁ」
「まぁまがりなりにも身内だし、長年音信不通だった妹から電話がかかってくれば口も軽くなるんじゃないかしら」
普通、そんな妹がいきなり甥の居場所を聞いてきたら警戒するんじゃないだろうか。
そう思ったが、ゆかりさんだとまた違うのかもしれないと考え直した。
長年音信不通だったという話は決して冗談ではないからだ。
ゆかりさんは顔が広い。
どうやって知り合うのかは知らないが、ゆかりさんは日本中、果ては外国に友達を持っている。
そのためその友達を存分に頼ってこの人はしばらくふらふらと放浪生活を続けていたらしい。
俺に初めて会いに来たのも、俺が産まれて六年経ってからだったし、次に会ったのさらに六年後のクリスマスイヴ、つまりあの店での偶然の再会。
その後のゲームショップで教えてもいない名前を突然呼ばれたときは、相手が誰なのか全く気付かなかった。
「でもまぁ、おかげで小学生のときから良い金の稼ぎ場を見付けれたんだからいいじゃないの」
店の掃除を始めたゆかりさんが言う。
「確かに、バイトさせてくれてることは有難いですけど」
それにしても今日のゆかりさんはかなり饒舌だ。
俺に昔の話なんかさせたりして。
「でしょう? 和人の仕事は学校終わってからだし、プレゼントを買うのに十分な給料も貰えてる。あたしも気の置けない店員を雇えたことだし、ここに店を持つことにして正解だったわ」
俺はさっき座っていたテーブルの椅子に再び腰掛けて、ぐるりと店内を見渡した。
全体的にアイボリーな色合いで、並べてある商品はいかにも女子が好きそうなものばかりだ。
今俺が座っている、店の真ん中に据えられたこのテーブルと椅子も雰囲気を出すためのただのインテリアらしい。
つまりまともにこの椅子を使っているのは俺しかいない。
「……でも、高二の男子が雑貨屋の店員ていうのもちょっと恥ずかしいですよ」
初めて連れて来られたときは可愛らしいところだとは思ったが、まさかこんな年になるまで働くことになるとは夢にも思っていなかった。
実際、学校帰りにここへ寄った友達にバレたときは、死ぬほど恥ずかしい。
「そんな文句言わないの。バイト禁止の学校に通いながら、手伝いって形でこんな堂々とバイトできてるんだから」
「隠してやってる奴らなんてごろごろいますよー?」
「人間正直に生きるものよ。それに雇い主が親戚の方が和人も気が楽でしょう」
「ゆかりさんじゃ大して変わんないですよ」
軽口を叩いてみたら、即座に頭にゆかりさんの手刀が降ってきた。
それから三十分くらいの間、商品を並べ直したり、ゆかりさんと無駄話をしたりして過ごしたが、客は一人も来なかった。
今はもう六時前だ。
いつもならもう少し人が来ていてもおかしくはない。
それに思い返してみれば、今日俺が四時頃に店に来てから一人、二人しか客を見ていない気がする。
「なんか今日やたら客少ないっすね」
思わずそう口に出してゆかりさんの方を見ると、ゆかりさんはじっと時計を見つめているところだった。
はっとしたようにこっちに顔を向ける。
「あ……何か言った?」
「え、いや、あんまり客来ないですねって」
「ああ、そう、確かに少ないわね。若い子はみんなもっと街の方に行ってるんじゃないかしら。今日はクリスマスだし」
「普通はイヴに遊ぶものじゃないですか?」
「クリスマスだって遊びたい年頃なのよ」
ゆかりさんは話しながらもちらちらと時計に目をやる。
時計がどうかしたのかと俺も視線をやるが、別におかしい点はどこにもない。
新しくなっているわけでもないし、壊れているわけでもない。
ただ針が決まったリズムで円を描いているだけである。
意味が分からず、しばらく俺はぼんやりとゆかりさんと時計を見比べていたが、ふいにあることに思い当たった。
ゆかりさんは俺を気にしていたのだ。
「ねえゆかりさん、俺そろそろあがっていい?」
本当はもう少しここにいるつもりだったが、あえて先回りをして言った。
なんとなく、ゆかりさんに気を使わせたくなかった。
ゆかりさんは一度目を伏せがちにして「そうね……」と呟くと、少ししてまた視線を俺に戻した。
「そうね、今日は早めに帰りなさい。香苗さんとの食事に遅刻なんてさせられないわ」
母さんの名前が出てきたのを聞いて、俺は内心やっぱりかと思った。
今日に限ってゆかりさんがよく喋ったのはそのせいだったのかもしれない。
礼を言って服を着替えて、俺の店を出る準備が整うのに五分とかからなかった。
「食事は何時からなの?」
最後にタイムカードを機械に押し込んだとき、ゆかりさんが声をかけてきた。
「あ、七時半です」
俺は振り返って答える。
「そう。プレゼントは買った?」
「はいまあ。多分今までで一番高いやつですけど」
「あら、大切なのは値段じゃないでしょう」
「選ぶのにも一番時間かかりましたって。あんなに女物のアクセサリー見ることもう一生ありませんよ」
苦笑をもらす俺に対し、ゆかりさんは目を細めて僅かに眉間にしわを寄せた。
何か考えてる顔だ。
言い出しにくいこと、自分が言って口を出していいことなのか迷っている。
全ては俺の問題なのに、どうしてここまで深刻になってくれるのだろうか。
「ゆかりさん……」
「それでいいの?」
とうとう、ゆかりさんの思いきった目がまっすぐ俺を見据えた。
「和人は本当にそれでいいの? 本当に後悔しない?」
投げ掛けられた言葉に、俺はすっと頭が冷えるのを感じた。
どきりと波紋が胸の中心から広がる。
広がったそれが微かに指先を震えさせる。
とっさに、考えたくない、と思った。
こんなところまで来て、また悩んでどうするんだ。
今更俺の決意を揺らがせないでくれ。
「和人?」
急に俺が押し黙ったので、ゆかりさんが窺うように首を傾げた。
俺は俯きそうになる頭を必死に持ち上げる。
「……大丈夫ですよ」
声すら擦れさせたくなかった。
「もう決めたんです。そんなに心配しないでください。大丈夫ですから」
はっきりとした口調で見返すと、ゆかりさんは一度口を開いて何か言おうとしたが、結局無言でそのまま口を閉じた。
そして嘆息するわけでもなく息を吐き出すと、ふとそうそうと人指し指を天井に立てた。
「そういえば今日あんたの友達が来たわよ。八郎くんと、もう一人は宗介くんって言ったかしら」
「えっ? それいつですか?」
「和人が奥の整理してたときよ。宗介くんが女の子にプレゼント買いたかったらしくて。八郎くんは前にここに来たことあったでしょう。それで連れてきたみたい」
宗介くんってなかなかかっこいい子ね、とゆかりさんはいつもの楽しげな笑みを浮かべる。
その様子に俺は心の中で胸を撫で下ろしながら、外面ではさもむかついたように舌打ちを打った。
「なんだ八郎のやつ、それなら他の店に行けよな」
我ながらわざとらしいなと思った。
「でも宗介くんの方が来たがったみたいよ。あたしとしては和人の友達が見れて楽しかったけど」
「俺は楽しくないですよ。八郎がこの店知ってるだけで十分なのに。あ、それもしかしてもう一人いませんでした?」
「え? 二人だけだったけど、どうかしたの」
「いや、東内は来てなかったのかと思って」
「とうない? て友達? 名字それ?」
「や、名前です。まあ一応友達? なんですけど、あいつ基本付き合い悪いから。さすがに来なかったか」
「珍しい名前なのね。是非会ってみたいわ」
「嫌ですよ」
会話に区切りがついたところで俺は店を出た。
外は寒い。
すっかり薄暗くなった通りには冷たい風が吹きすさんでいる。
上唇を舐めると、そこからひやりと冷たさが滲む。
母さんとの食事にはまず家に帰ってから向かうつもりだった。
制服なんかで会いに行くわけがない。
俺が中学にあがってから何かと忙しくなり、会う回数は減ってしまったが、母さんの誕生日とクリスマスには必ず食事をした。
プレゼントも欠かすことはなかった。
首に巻いたマフラーに顔を埋めて、俺はゆかりさんの言葉を思い返す。
本当に後悔しない?
そんなこと、分からない。
分からないから決めたのだ。
そうしようと。
誰にも左右されずに決めたのだ。
それなのに、俺は今揺らいでいる。
これでいいのか、また疑問が迷いが生じている。
表情を歪めてポケットに突っ込んでいた掌を握り締めた。
指は冷たくなっていた。
こんな気分で母さんに笑って会えるだろうかと、今度は違う理由で気落ちし始めたとき、丁度よく家が見えてくる。
母さんが出ていってからずっと父さんと暮らしている一軒家だ。
白い息を吐きながら門を押しあけ、玄関のドアの前に立つ。
合鍵を取り出してドアノブに差し込むと、何故か鍵は空いていた。
父さんは今日は家にいないはずである。
まさか、泥棒が。
一抹の不安がよぎるのを感じながら俺はそっとドアを開けたが、それはただの取り越し苦労に終わった。
玄関には散らばっていたいくつもの靴には全て見覚えがあった。
それらを足で玄関の隅に寄せて、自分も靴を脱ぎ部屋に向かう。
半開きになった自室の扉から笑い声がしているのを聞いて、思わず溜め息を吐いた。
やっぱり八郎たちか。
俺は容赦なく扉を押し開け部屋に入った。
「おい、何勝手に不法侵入してんだ」
「おーおかえり」
「お邪魔してるよー」
「……よっす」
人の部屋で好き放題にくつろいでいる三人がそれぞれ手をあげる。
ベッドに寝そべっていた八郎はお菓子まで食べていた。
見れば屑が布団に落ちている。
「死ねよお前ら」
「えっ、なにいきなり怖っ」
宗介が床に転がった状態で大袈裟に目を見開く。
「違げーよ和人、俺ら本当は家の前で待ってようとしたんだぜ。そしたら丁度おじちゃんが家出るとこでさ、寒いから入って待ってなって言ってくれたんだよ」
ベッドから八郎が身を起こして言った。
八郎は他人の親をおじちゃんおばちゃんと言う癖があって、俺はそれを聞く度に小学生かと突っ込みたくなる。
「だからって自由過ぎなんだよ。せっかくこないだ部屋の掃除したばっかだってのに」
二人を睨んでバッグを下ろすと、そこにも菓子屑が落ちていた。
多分こいつらは片付けて帰るなんて真似はしないんだろう。
俺はハンガーを手に取りながらうなだれる。
「おい東内、お前もいたんなら止めてくれよ」
はっとして俺はこの中の良心とも呼べるもう一人に顔を向けた。
東内は黙々とノートに走らせていたシャーペンを止め、俺は見る。
「ごめん、面倒臭かったんだ」
「それぐらい面倒臭がるなよな。ていうか、今日八郎たち店来たときお前いなかったんじゃなかったっけ? 帰ったんじゃないのか?」
「いや……」
「違う違う、東内はコンビニでお菓子買いに行ってただけ。しかも和人あのとき店いたんだ」
東内の台詞を補うように宗介が横で口をはさんだ。
「ああちょっと店の奥にな。ゆかりさんいないって言ったのか?」
「いないっていうか、今ちょっとここにはいないって。まあいないって言ったかな」
言ってんじゃん、と心の中で呟きつつ、着ていたブルゾンをハンガーに掛けてクローゼットにしまう。
「そういえば宗介今日女にやるプレゼント買いに来たんだろ。こんなところにいていいのかよ」
思い出して言うと、宗介も思い出したようにああと髪を掻き上げた。
ゆかりさんに格好良いと言われただけあって、宗介はかなりもてる。
本人もそれを分かっているのかそれなりに女の子と仲良くやっているようだが、彼女が出来たことはないらしい。
一度理由を聞いたところ「わざわざ僕なんかを本気にする相手はいない」とか。
よく意味が分からないが、クリスマスに遊んでくれる相手がいるだけましだ。
「別に街行くだけだしまだいいよ。それより和人どっか行くの?」
俺がいくつか服を取り出しているのを見て逆に宗介が聞き返してきた。
言ってなかったかなと思ってシャツをその場に脱ぎ捨てたとき、黙っていた八郎が急に口を開いた。
「おばちゃんとの食事だろ。和人毎年クリスマスには会ってるし」
「あれ、そうだったっけ?」
こっちを見た宗介に俺は頷きを返した。
「そこに置いてある箱もプレゼントかなんかだろ」
「へー偉いね。そのブランド結構高いやつでしょ」
「つーか俺買い行くの付き合わされたし。こいつ選ぶのにすっごい時間かけるんだぜ」
勝手に話す二人を尻目に、俺は最終的に選んだ服以外を全て元に戻しクローゼットを閉めた。
「……まあ、それも今年で終わりだけどな」
そう言うと、二人がえっという顔でこっちを見た。
遅れて東内も顔をあげる。
それに気付かないふりをして時計を確認すると、時間はまだ六時半だった。
食事は七時半からだから、あと一時間ある。
「再婚するんだよ、母さん」
何でもないような声で俺は言った。
「再婚って……まじかよ」
「まじ。この間連絡あった」
「え、それ、式とかは?」
「内輪だけでやるらしい。具体的なひにちは聞いてないけど、少なくとも年明けてからだな」
事実だけを言う分には、思ったより落ち着いていられた。
前にもゆかりさんに同じことを話したし、考えないようにしているからだ。
深い部分の感情を。
「……終わりって、もう会わないってことか」
ふいに、そう言った声は東内のものだった。
静かな目が俺を見ている。
察しがいい。
「……ああ、会わない」
なるべく考えないように、返事をした。
「母親には言ったか?」
即座に次の質問が飛んでくる。
「いや、言ってない。ていうか言わない」
「ちょっ、言わないって和人、いいのそれ? お母さん会いたがらないの?」
「会いたがるだろうけど、断るし、母さんも忙しくなって会う時間なんて無くなるよ」
「そんな……」
強がってるつもりは無かった。
何もかも散々考えた結果だ。
母さんから再婚するという話を電話で聞いて、ショックを噛み殺しておめでとうと言ったときからずっと考えた。
途中うっかりゆかりさんにもらしてしまったりもしたが、それでも最後には自分で決めた。
こうするべきなんだと思った。
俺は服を着替え、プレゼントの箱をポケット入れた。
部屋にいる三人を見渡す。
「ほら、俺そろそろ行くからな、お前らも早く帰れよ。鍵は置いとくから、出るとき植木の下に隠しといてくれよ」
宗介が釈然としない顔で鈍く頷いたのを見て、部屋を出た。
玄関に座って靴を履いていると、後ろに人の気配を感じた。
振り返ると、俺を見下ろす八郎の姿があった。
「何だよ」
「別に。俺今から合コンあるから。合コン。羨ましいだろ」
八郎も隣で靴を履く。
「全然羨ましくねーよ。調子乗るなよ」
「相手の子まじでみんな可愛いんだぜ? 俺は今日やっと彼女を作るんだ」
「何かそれ……可哀想だな」
「はぁ? うるせーよマザコン」
靴紐を結び直し、立ち上がりざまに八郎の頭を一発殴っておいた。
こいつにマザコンとまで言われる筋合いはない。
ドアノブを回して扉を開けた瞬間、冷たい空気が吹き込んできた。
鼻先から体温が奪われていく。
それでも構わず冷気の中に足を踏み出すと、外は驚くほど静かだった。
今にも雪が降りだしそうな空を見上げて歩き始める。
なおも自慢を続ける八郎とは駅で別れ、電車に数十分揺られた後、俺はようやく目的地に到着した。
待ち合わせの時間前にも関わらず、母さんはもう先に着いていた。
「母さん!」
手を振り走って近付く。自然と顔が綻んでくる。
俺に気付いた母さんもぱっと笑顔を咲かせて数歩こっちに足を進めてきた。
「久しぶり、母さん」
「久しぶりね和人。元気だった?」
「もちろん、風邪ひとつ引いてないよ。母さんこそ大丈夫?体冷えてない?」
「ふふ、大丈夫よ。和人は相変わらず優しいのね」
母さんだからこんなに気にかけるのだ、とは言わないでおいた。
少し早いけど入りましょうという母さんの言葉に頷き、俺たちは店に入った。
今日の店はいつもより少し高いところらしい。
オープンな感じはするが、確かに言われてみればどことなく高級感が漂っているような気もする。
母さんは慣れた様子で案内された席に座り、俺もそれに続いた。
「ここね、ずっと来てみたかったの」
屈託のない美しい母さんの微笑みに、じゃあ結婚する人とは来なかったの、という意地の悪い感情が喉まで出かかった。
出だしからこれは危ない。
必死に表情を取り繕って「そうなんだ」と返事をする。
最悪だ、と思った。
それからは何とか滞りなく食事は進んだ。
前に会ったときから起きたことを何でも喋った。
母さんには八郎も宗介も東内の話もしているし、ゆかりさんのところでバイトしている話もしている。
だから一々細かい説明をしなくていいので話題は次から次へと出てきた。
そして一通りの話も終わり、料理の皿も空になったところで、ずっと聞き手に回ってくれていた母さんが嬉しそうに口を開いた。
「楽しそうね和人」
テーブルの上に細い指が乗せられる。
「楽しいっていうか、まあね。みんなが騒がしいんだよ」
「ふふ、そっちの方がいいわ。和人が優しい子だからみんなも集まってくるのよ」
あれは俺を上手い具合に利用しているだけなんだと思うが。
俺が苦笑すると、母さんの掌がそっと俺の手の甲に被さった。
「……ねえ、和人」
優しい声色に俺は唇を少しだけ噛み締める。
「………なに」
「お母さんが再婚するって話、前に電話でしたわよね?」
「うん、聞いた」
「それでね、式は来月になるんだけど……」
言わないでくれ、と思った。
「お母さんが結婚してからも、またこうして会ってくれない?」
息が、止まる思いがした。
多分母さんなら直接言ってくるだろうと思っていたが、根性のない俺はできるならこのままいつも通り別れて、それっきり会わないでいたかった。
本当に、世の中とは上手く出来ていない。
母さんに面と向かって尋ねられ、俺はいきなり答えに窮した。
返事は「うん」しかないはずだった。
なのに、ここにきてまた迷いが生じたのだ。
嘘でいいのか。会いたくないのか。
本音を言えば、これからも会いたい。
話を聞いてほしい。
でも、それでは駄目だと思った。
母さんの新しい生活に、俺が割り込んでは駄目なのだ。
母さんを俺という存在から自由にしたい。
そう考えれば、答えなんて自ずと決まる。
「うん、母さん」
俺はポケットから箱を取り出して、最後のプレゼントを差し出した。
「幸せになってね」
精一杯の笑顔でそう告げた途端、さっと、母さんの表情から笑みが消えたのが分かった。
俺は震える手が箱を受け取ったのを確認すると、そのまま立ち上がって店を出た。
恐らく俺の真意に気付いただろう母さんの涙なんて見ていられなかった。
またねもさよならも言いたくなかった。
ただ、お幸せに、と。
それだけが願いだった。
「……泣くな、俺、泣くな!」
街中で回りを歩く人の目も気にせず俺は叫ぶ。
母さんの幸せを泣くなんてひどいじゃないか。
息子なら笑ってみせろ。
分かっているのに、目頭は熱くなっていく。
「泣くなよ、くそっ」
母さんの掌が俺の手に触れたとき、その指先には俺が五年前にあげたマニキュアが塗られていた。
大切なときにしか使わないからと、五年前のクリスマスに母さんはそう言った。
あんな少量のマニキュアが五年も持つのかは分からないが、俺と会う日は必ずつけてきてくれるのが、堪らなく嬉しかった。
母さんが俺を愛してくれていたのはちゃんと知っていたよ。
けれど、涙は流れようと溢れてくるのだ。
「あー…世の中もっと上手く出来てろよな……」
「出来てないから世の中なんだろ」
突然聞こえた声にばっと顔をあげると、目の前のベンチに見知った三人組が座っていた。
俺は呆然として立ち尽くす。
「和人、今すっごい阿呆面してるよ」
「ひどい顔だな」
宗介が寒そうに両手を擦り合わせる。
その横には珍しく愉快そうに笑う東内の姿があった。
こいつらはここで何をやっているんだろうか。
「おーい、せっかく俺が合コン抜けて来てやってんのに、何ぼけっとしてんだ。ここは感動で崩れ落ちろよ」
「そうそう。僕も女の子のとの約束ドタキャンしたし。インドアな東内だって寒い中待っててくれてたんだよ、ねえ?」
「インドアじゃないけどな……寒かった」
口々に並べられ、俺はようやく八郎たちがここにいた理由に気付いた。
「お前ら、俺を……待ってたのか?」
信じられずに思わず尋ねると、眉を潜めた八郎がおもむろに近寄ってきて、思いっ切り殴られた。
「そうだよどうせお前泣いてると思ってな。実際さっきそこでわめいてたし。俺らの全てに感謝しろよ」
あまりに尊大な態度に、俺はまた違う意味で呆然としてしまったが、心からは何やら暖かいものがわきだしていた。
和人が優しい子だからみんなも集まってくるのよ。
もしそれが本当だとしたら、それはなんて嬉しいことだろうか。
母さん、俺は嬉しいよ。
「じゃ、まじで寒いからどっか店入ろうよ。和人の奢りで」
「えっ、俺の奢り?」
「当たり前じゃん。僕金無いし」
「俺もねーなー」
「俺も無い」
いや、もしかしたら嬉しくないかもしれない。
数秒でもそう感じたことを後悔しそうになったとき、突然後ろから腕がのしかかってきた。
「青春してるわねぇ、若者よ」
「ゆ、ゆかりさんっ?」
ゆかりさんが軽やかに笑って肩から俺を見た。
「どうせ来るならうちの店に来なさいよ。どうせイヴは終わっててもそこへんの店なんてカップルでいっぱいでしょうし。ほら、肉も買ってあるわよ」
そう言って両手に下がった袋を持ち上げる。
そこからしてくるおいしそうな匂いに八郎が声をあげた。
「うわー、いいっすねゆかりさん。お邪魔していいんすか?」
「いいわよーどうせあたしも一人だし。若い子がいた方がいいわ」
「僕たち若い子ですか」
「若過ぎるってくらい若い子よ。てあら、もしかしてその子が東内くん?」
「はじめまして、こんばんは」
「ははっ、定型文なのね」
あれこれ話し出した四人を見て、俺はふっと息を吐いた。
笑顔が浮かんでくるのはどうしてだろうか。
それはやはり、嬉しいからだ。
たとえ一瞬でも後悔がよぎっても、嬉しいのだ。
俺は今、目の前のこの人たちにありがとうと言いたい。
変な顔をされてもいいから、ともかくありがとうと言いたい。
俺は目頭に、冷えた指先を押し付けた。
母さん、どうか絶対に、幸せになって。
お読みくださりありがとうございました。
ちんたら書いていたら、文字数も投稿日もギリギリになってしまってましたよ。
自分でもびっくりです。
あとこれだけ長い話を書いたのも初めてだったので、無事に書き終われて良かったです。
では、みなさんにも良いクリスマスが訪れますように。
ありがとうございました。