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あいらぶぐらっしいず  作者: 岩戸 勇太
この事件のカラクリ
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この事件のカラクリ

「それなら辻褄が合うな」

 音院はそう言った。

「廿里君も、よく考えたね」

 初葉は感心した様子でそう言った。

 ここは風紀委員の部室である。廿里の推理を聞いて、百合香も二人に合わせて頷いていた。

「そうなると、全員に殺しをする理由が生まれます。正直、わかってしまうと、何でこんな事に気付かなかったのか? って思えてきますが……」

「コロンブスのタマゴの話を知っているか?」

 音院が愚痴った百合香に向けて言った。

「その通りです、最初に気づくのは難しいことですよね」

 『それはわかっています』とでも言いたげにして言った百合香。

「それで、問題は一体どうやってあいつらの殺人を実証するか? だけど……」

 そこが一番の問題だ。廿里達は、警官でもなんでもない。殺人を計画したり、もしくは犯そうとしているだけの人間を、いきなり逮捕するなんてできない。

「現行犯を捕まえるしかないんじゃ?」

 百合香が言う。なげやりな言い方で言ってきた。しかも、髪の枝毛を探しながら言った言葉である。

「だが、それしかないだろう……ちょっと調べたんだが、『逮捕』ってのは基本的に誰でも出来るらしい」

 現行犯に限り、犯人の事を逮捕拘束する権利は誰だって持っている。まあ、日にちが経っていたらダメだし。証拠が不十分なら当然いけない。

「オトリ捜査……しかないよね……きっと……」

 初葉が言い出す。

「危険だ……そんな事はさせられない……」

 音院も言う。

「俺だって反対だ」

 廿里も言う。だが、二人の言葉を聞いても初葉は首を横に振った。

「このまま何もしない方が危険だよ……この事件は解決をしないと……」

 それを言ってしまうと、廿里達は返事ができない。

 こうやって風紀委員長として会う前は、廿里は初葉の事を気弱で臆病な子だと思っていた。だが、彼女にはこんな強さもあるのだ。

 初葉は自分の身を危険にさらしてまで事件に立ち向かう勇気を持っているのだ。

「初葉……そういう事ならお前に任せる」

 そう廿里が言うと初葉はこくりと頷いた。

「危険になったら、また俺が助けてやる。安心していってこい……」

 廿里がそう言うと、初葉はキョトンとした顔そして廿里の事を見つめた。それから、「ぷっ……」と笑って言い出す。

「恥ずかしい事を言ったね。『また俺が助けてやる』なんて言われても、気持ち悪いだけだよ」

「おいおい……俺は本気で言ったのに……」

 クスクスと笑う初葉。それを見て、音院も一緒になって笑い出す。

「まったく、おまえにキザなセリフなんて似合わないんだよ」

 そう言い、音院も初葉と一緒になって廿里の事をバカにした。

「ありがとう……本当は不安だったんだけど、廿里君の言葉から勇気をもらえたよ」

 そう言う初葉。初葉は、廿里に向けて笑顔を見せる。

 その笑顔はキツい風紀委員長としての顔ではなく、また、気弱なメガネ少女のものでもなく、まるで闊達な少女のもののようであると、廿里は思った。


「今日もあいつは顔を出さないか……」

 初葉の事を見張っている音院はそう言った。

 初葉はいつもどおりに電車を待つためにドアの止まる位置に座った。

 ここに立っていれば、電車が目の前に止まった時、初葉のすぐ前がドアになり、一番に座る場所を見つけることができる。

 初葉は席に座って、持っている文庫本を読むのがいつもの行動だった。

「私達も行こう。電車のドアが閉まる前に、入らないと」

 音院がそう言い、廿里達は急いで電車に乗っていった。


「やっぱりそう簡単にやってくるものじゃないよな……」

 廿里は言う。今、廿里達は電車の中で作戦会議をしていた。廿里は今の状況を考えながら言う。

「そもそも、また同じ手で来るとは思えないし……もしかしたら諦めたのかも……?」

 そう廿里が言ったが、初葉は廿里の事を見ながら言う。

「あいつらを野放しにする気?」

 あの三人は、すでに時実という、何も罪のない野球少年を殺しているのだ。人を殺しているからには、放っておくことはできないし、奴らは初葉を殺すのを諦めたなんていう確証はない。

「お前についていくさ……」

 廿里はそう言った。初葉は気弱ではない。一度やると決めたら、それにまっすぐに取り組んでいく事のできる気持ちを持っている。

「明日も同じ事をするだけか?」

 廿里は言う。それにむっとした顔をした初葉。

「何が言いたいの?」

「相手が、またここで襲ってくるとは限らないだろう? もしかしたら、別の場所で狙ってくるかもしれない」

 本気であいつらを捕まえたいと思っているなら、もっと積極的になるべきだ。夜夜中に一人で出歩いたり、人気のないところに入っていったり、相手が襲いやすい状況を自分から作る事も必要であるとのだ。

「という事は、廿里君も夜夜中まで私に付き合ってくれるという事?」

 憮然とした表情で言う初葉。廿里はその反応の意味がわからないではない。登校中のついでにやれるような事ではない。

 廿里はそんな事にまでつきあうものか? 初葉はそう思っているのだ。

「危なくなったら、俺が助けてやるって言っただろう? もちろんついていくさ」

 廿里が言うと、初葉は顔を真っ赤にして俯いた。

「バカ……そんな事を言わないでよ」

 その反応を見て、廿里はさらに初葉をからかいたくなってくる。

「何言っているんだ?」

 廿里は初葉のすぐ隣に立った。

 廿里は右手を初葉の後ろにある本棚に突き立てた。いわゆる『壁ドン』の真似事をしてみたのだ。

「あう……廿里君……?」

 そうすると、唸るようにして言った初葉は顔を真っ赤にしだした。これは効果がてきめんのようだった。

「なんで言っちゃいけなんだ? 『俺はおまえを守る』何度だって言うぞ……」

 そうすると、背後から俺の左腕がひねり上げられた。

「おまえ……遊んでいるだろう? それに、今は重要な話をしている最中だ」

 不機嫌な感じの音院がそう言った。

「はい……そうでした……」

 俺はそれに答える。

「まあ、そう言うならしっかり守ってくれるよね? 廿里君?」

 なんか初葉も機嫌が悪そうにして言う。

「私も一緒に守ってやるぞ。廿里一人じゃ不安だからな」

 そう言い、わざとらしく廿里と肩を組む音院。音院と初葉は、二人で視線をぶつけ合った。

「話は聞かせてもらいましたわ!」

 そこに、声がかかってきた。

 俺達三人は、その声の方を向いた。

「六斗……美鈴……」

 廿里はその声の主を見てそう言った。

「貴様は美鈴様の名前を呼ぶな。そう言ったはずだ」

 美鈴の後ろから壮年の男が顔を出してきた。

「もう……あなたは帰るように行ったはずです」

 美鈴は面倒そうな顔をして言う。だが使用人の男は、全くそれに答えようとしない。百合香から聞いた事でもある。

 結局使用人達は美鈴から給料を貰っているわけではないため、美鈴の言うことなど聞かないのだ。

 鬱陶しそうにしている美鈴。

「美鈴……お前……」

 廿里がそこまで言ったところで、使用人は廿里の事を思いっきり睨んだ。

「六斗様……これは一体どういう状況ですか?」

 廿里は言う。いま美鈴はこの学校の制服を着ている。という事は、金の力にモノを言わせてこの学校に転校をしてきたとかいう話だろうか? そう考えた廿里。

 廿里が美鈴に話を聞いてみると、おおよそ廿里の予想どおりの事であった。

 美鈴は廿里の事を追って、この学校にやってきたらしい。

「なんで、お前、俺なんかを追ってきたんだ?」

 また美鈴の背後の使用人が廿里の事を睨むが、廿里はもうそんな事は気にしないで話す。

「まあ、あの件で借りを作られたのですからね。何か借りを返さないと六斗の家の人間として汚点を残してしまいそうですから」

 そう美鈴が言うと、使用人の男は、『忌々しい』とでも言いたげにして鼻を鳴らした。

「その件はすまなかったな。お前がお嬢様を連れ出したわけではなかったのだ」

「ああ……あの事か……」

「カッコつけたのは、完全に余計な事だったがな……」

「うるせぇ……無意識でそうするように体が動いたんだよ」

 使用人は廿里の言葉使いをもう指摘する気はないらしい。まるで人形のようにして、美鈴の後ろに立ったまま口すら動かなかった。

「とにかく、あの時の借りを返さない限り、オメオメと学校に戻ることはできませんの」

 美鈴なりに、『あの時のお礼がしたい』という感じなのだろうと解釈した廿里。

「ちょうどいい時に来たな……借りを返したいのなら、いい方法があるぞ」

 廿里は言う。六斗 美鈴の方から、協力をしてくれるというなら、好きな事を指示すればいい。

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