入学式
晩乃葩第五作目。
仲のいい双子の男子中学生のお話。
俺達双子は、いつも一緒だ。食事をするときも、寝るときも。部屋は二人で一つだし、好きな食べ物や服の好みも、全て一緒。俺達が離れるのは、授業中くらいのものだろう。それだけ長い間一緒にいると、弟が考えていることは大体分かるし、弟の方も俺が考えていることを分かっている。だから、お互い言葉を発しなくても意思疎通ができている。所謂以心伝心というヤツだ。周りの友達も、よくそれを知っている。
「お前ら、ほんっと仲良いよな。俺も兄ちゃんがいるけど、いつも喧嘩ばっかりで仲悪いんだよな。羨ましいよ」
こんなことも、よく言われる。そういうとき、俺たちは決まって顔を見合わせ、いたずらっぽく笑うのだった。
今日は、中学校の入学式の日だ。新品の制服に袖を通し、少し誇らしい気分になる。ふと弟の方を見ると、弟も同じように背筋を伸ばし、誇らしげな顔だ。そんな俺の視線に気付いた弟も、こちらを見て笑う。俺も笑い返し、外で俺達を呼ぶ両親のもとへと向かった。
無事に入学式が終わった。俺たちは別々のクラスになってしまったが、クラスメートはほとんど小学校の頃からの友達だった。最初から特に心配はしていなかったが、この様子なら本当に心配なさそうだ。もし一つだけ不安な要素を挙げるならば、それは担任の先生だろう。聞くところによると、生活指導の先生らしい。大きな図体をしており、言葉遣いも荒っぽい。いかにも怖そうな先生だった。一年間あの先生のクラスで生活するのだと思うと、背筋が寒くなる。へまをしでかさないようにしよう、とそっと心にそっと誓った。
そして、帰り道。クラスメートや担任の話で盛り上がる中、部活の話があがった。以前から運動部に入ろうとは考えていたが、具体的にどの部に入るかは、今日まで決められずにいた。野球部やサッカー部、テニス部に卓球部、そして陸上部。その他にも様々な部活があるらしい。今日、学校で友達から聞いた。その友達は、テニス部に入るつもりらしい。友達の熱心な話を聞いているうちに、俺の心はテニス部に傾いていた。弟にも意見を求める。
「夏輝は何部がいいんだ」
「テニス部かな」
その答えを聞いて、俺は半分驚き、半分は当たり前か、と思った。俺達双子は、どこまでも気が合うらしい。弟が言うには、担任の先生がテニス部の顧問らしい。先生が自己紹介をしたとき、かなりの勢いでテニス部に勧誘されたという。そうして、偶然にも同じ部活に興味を示した俺たちは、いつものように二人揃って、テニス部への入部を決めた。
初の長編に挑戦です。
しかし長編と言っても、皆さんが想像しているものよりも短くなると思います。ご了承下さい。
投稿は恐らく不規則になりますが、温かく見守って下さると嬉しいです。
何とか完結まで頑張りますので。はい。