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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私が俺となった日

闇さんが闇になる前、まだ人間の女の子だった頃のお話。かなりはしょってるのでつまらない…


母親を殺すという目的を持った瞬間

「父さん!!お父さああああああん!!!!!!」


何故、こんなことになったんだろう。


燃え盛る火、それを囲む人々、肉の焼ける匂い、火の中に居るのは…


「嫌!!!死んじゃ嫌ァ!!!やめて!焼かないで!いやぁぁぁぁあああ!!!!!」


座り込み、叫び泣きじゃくる私に降りかかる笑い声。次はお前だと言うように無数の目が嘲笑う。


…何故、殺されなきゃいけないの?




この騒動は、私の母親が招いた事だった。原因は私。一般の人間が見る事は出来ない「妖怪」というモノ、私はそれを見る力を持っていた。私が突然笑い出したり泣き出したりするたび、木の葉が不自然に舞う。母親は、「忌み子」を産んだと噂された。プライドの高かった母は、周りから邪険にされるのを嫌い全てを私に押し付けたのだった。


実に簡単な理由。「皆に嫌われるのが嫌だった」


それを片付けるのも簡単。「生贄」


そう、古き伝統行事、「生贄」それはこの七辻村にも存在した。


『-生贄は、村に不吉を呼び寄せる力を持つ忌み子であること-』


この伝統は私を片付けるには最適だった。母は私を生贄に推薦したのだ、自ら。その意見を止める事は皆無、唯一止めてくれた父でさえ罪人扱い、誰が止めてくれるのだろうか。

別に捨てられる事に関しては私も母から離れたかったため異論は無かった。捨てられた後も運よく、山犬に拾われ育ててもらったのだから、問題は父だった。


-罪人の裁き、火炙りの刑


それが、私に突きつけられた現実。いつでも味方で居てくれた父、その死刑。

それを目の当たりにして取り乱さない子供が居るだろうか。

山犬に拾われて数年、それを阻止しようと村へ向かった私と弟を待っていたのは既に灰になっていた父の無残な姿。…死刑執行予定時間を早めたのもまた、母だった。


ああ、そうか、そこまで貴女は


私が邪魔だったのか


ショックで立つ力も無い私を捕らえようとする人間達を相手に、人間にも見えるよう人型に化けた弟は私の盾になるかのように前に立ってくれた。

その何も映さない目で、私より小さな背で、人々を見下して一言


「……随分ありきたりな、悲劇だな」


と。悟ったと、この終わり方は既に解っていたと語るその目に、何故か私は惹かれてしまった。同時に理解した。


妖にとって、他人の悲劇の物語など、そこらへんに落ちている本の一冊でしかないのだと。


気付かぬうちに踏み潰し、捨ててしまうゴミの一つでしかないと。


…俺はその日、妖となった



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