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無限英雄2  作者: okami
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第4話『奈月円』

「よお」


 京介が地下基地へ戻ると、脱色した白い髪の目つきの悪い男がソファーの上にあぐらをかいてコンビニ弁当を広げていた。


奈月円(なつき まどか)!?」


 予想外の人物に京介が声をあげる。


『そうだ、奈月円だ』


 答えるサイコ・ブレイン。


「なんで奈月円がここにいるんだ?」


『奈月円はあの事件以来、度々ここに来ているんだ。迷惑な話だが』


「マジかよ」


「フルネームで呼ぶのやめろ、お前ら」


 コントのようなやり取りだ。

 機甲雷電ヴァーミリオンこと奈月円は銀河連邦により宇宙刑事に任命された、ヒーローだ。


「ちょうどいいや、奈月さんがいるなら今回の事件も解決だな」


 京介はホッとして円の向かいのソファーに腰をかける。


『どうやらそうも行かないらしい』


「なんでだよ?」


 二人の視線が向いたので、奈月円は箸を置く。


「今回のは俺は関係ねーしよ?」


「そんな、前と同じ状況ですよ?」


「同じか? お前は今しがた前と違う事に遭遇してきたんじゃないのか?」


 心当たりのある沈黙をした京介に奈月円はふっと鼻から息を吐く。


「話してみな」


 奈月円は両手を組んで椅子の背もたれに体を預けた。

 京介が能力を取り戻したところから飛翔天馬のアパートの出来事までを話す。


「アークスか」


「知ってるんですか?」


「ああ秘密結社アークス。ワールズ財団を母体とする悪の組織の一つだ」


「秘密結社に…あ、悪の組織?」 


 聞き覚えは多分にあるがリアルでは聞きなれない単語に京介はクラクラする。


「言っとくがガイオナースだって悪の組織って事になるんだからな?」


『秘密結社というワリには簡単に名乗っていったようだが?』


 サイコ・ブレインのツッコミに奈月円は苦い表情をする。


「この業界じゃあわりと有名どころだからな。公然の秘密結社ってところか。

 少なくとも40年前からあるらしいぜアークス。何回も叩き潰されてはいるようだがな」


 初代アークスからネオアークス→ゲルアークス→グランアークス→大アークス→スペース・アークスと潰されるたびに復活しているらしい。


「まあ母体のワールズが健在だからな」


 地球の悪の組織の6割はワールズが母体で、暗黒秘密結社ゼノン、グランダー帝国、ガッド機関、バラザー軍団、アークデモン、エコノミー…と指折り、名前を挙げたところでサイコ・ブレインがとめた。


『キリがない』


「ははは、まあ秘密結社アークスって名前での活動での再開は、ここ2年くらいのものらしい、枕詞が付かないのは、原点回帰ってところか」


 原点回帰はこの業界、よくある事らしい。


「さすが宇宙刑事、詳しいですね」


「まあ管轄が違うから、戦う事はあんましないんだけどな」


「助け合ったりしないんですか? ヒーロー同士」


 京介の問いに、奈月円はフッと遠い目をする。


「俺の場合、地球のヒーローってカテゴリーじゃねぇからな」


「だから今回も助けてくれないんですか?」


「そう」


 ハッキリと言った。


「前回は俺に責任があったから介入したが、本来は地球内の敵との戦いには非介入とされている」


 地球という星は将来的に銀河連邦に属する可能性のあるランクの星として侵略宇宙人や別次元生命体から保護されている状態なのだ。

 その為の宇宙刑事・奈月円なのである。

 惑星内の、特に地球のような発展途上の星の内情に、先進惑星人は介入してはいけない。

 銀河連邦の惑星不干渉条約である。

 何せ地球人からすると銀河連邦の科学力は神の奇跡にも等しい。

 解決は簡単だが、その惑星の歴史や未来さえも変えかねないからだ。

 偏った進化をさせてはいけない。宇宙では過去そういった事が多くあったのだ。


「奈月さんが個人的に助けてくれるというのは…?」


「非番のお巡りさんが拳銃使ったら減給じゃすまないでしょう? そういう事だ」


 ひらひらと手を振った。


「それに俺も、スーツがなけりゃただの人だしなあ」


 生身なら京介より弱いかもしれないと付け加える。

 確かに腕などは男性にしては細い。


『簡単に解決するだけの力があって何もしてくれないというのも、まさに神の如きだな』


「きついねぇ。

 まあ、問題ない程度の情報くらいは流してやるからよ」


 実はこの一年度々遊びに来ては、サイコ・ブレインに情報を提供したりしているのだ。

 たとえばスーツの転送精度などは奈月円の情報から解析してこの一年で大きく改善された。


『おかげで増設増設でいくら金があっても足りない』


「そのうちアカシック・レコードへの接続方法でも教えてやるよ」


 冗談なのか本気なのか。


「てことは…アレと戦わなくちゃダメって事か…」


 京介は先ほどの怪人の姿と強さを思い出す。


「よかったじゃねぇか、外見に敵が追いついて」


 確かにマスクヒーローの敵っぽくはあるが。


「しかしまあ、アークスが相手だと、お前らだとちょっと危険かもな…よし」


 奈月円は携帯を取り出すとアドレスを検索し始めた。


「手ごろな地球のヒーローを紹介してやるよ」


「知り合いにいるんですか?」


「あーちょっと前にオールヒーローなんとかって企画が何回かあってさ。そん時に何人かアドレス聞いておいた」


 ヒーロー同士がアドレス番号をやり取りしている光景はちょっと見たくない。


「…本当に特撮な戦いになってきたな」


『能力者はどちらかというとアメコミの敵に近かったからな』


 電話をしに場を離れた奈月円の背を見つつ会話する。


「あいつら俺を見てネクスターって呼んでた」


 ネクスターは一年前に戦ったガイオナースが能力者に付けた名称であった。


『確実に能力者を狙いに来ているわけか。これは何もせずというわけにもいかないようだな』


「とりあえず能力者の保護かな。出来るなら協力して迎え撃ちたい」


『何人が協力してくれるやら』


 何せ敵対していた相手も多い。いや敵対していた人数の方が多いくらいだ。


「無理でも警告くらいはな」


 脳裏に飛翔天馬の無残な死体が浮かぶ。


「とりあえず、俺は協力しよう」


 部屋を出て行った奈月円と入れ替わりで入ってきた堅辰葉が言った。


「堅さん…平気かい?」


「ああ頑丈なだけがとりえなんでな」


 ふっと笑う。


『しかし力が制御できないのでは、むしろ味方にいるのは危険だと思うが』


「手厳しいな。今回は不意だったが、ある程度制御できるようにはなっていたんだ」


 自分の意思で変化した場合はほぼ意識を保っていられると続けた。


「だがまあ、インフィニティで勝てない相手なら、大して力にはなれんかも知れないがな」


「いや、ありがたいです」


 戦力の話は置いておいても、信頼できる大人としての辰葉の存在は今の京介には大きな支えとなる。

 信頼できる大人、という面では先輩のヒーローである奈月円は年齢的にも信頼度的にも少し難がある。


「サイコ、円奈をここにしばらく泊めてやってくれ、それから…」


『ああ連絡がつく能力者には知らせておこう』


 奈月円が戻ってくる。


「連絡ついたぜ。

 ここに呼ぶのはマズいかと思ったから、屯公園で待ち合わせるように手配した。

 明日の10時で」


『どんな人物なんだ?』


「見ればわかるって感じかな。まあ待ち合わせには俺も立ち会うからよ」


 奈月円はニッと笑った。 

  

 


 

  

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