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無限英雄2  作者: okami
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第3話『怪人・蜘蛛男の恐怖!』

 歩いている京介の横に高そうな車が止まる。

 驚いていると、後部座席の窓ガラスが開き、女性が顔を出した。


「お久しぶりね」

「…ええと?」




 京介は走る車の後部座席で、女性の横に座っていた。


「…高そうな車ですね?」


「ふふふ、高いわよ」


 高いらしい。

 前にあった時と印象が違うせいか最初は分からなかったが、この女性は千両範子。

 一年前の能力者の一人だ。

 小銭を扱う能力者だったが、最後にその能力で埋蔵金を掘り当てた。

 そう、今はお金持ちだ。

 最後に出会った時より身なりもメイクも金がかかっている。

 幸の薄い雰囲気も消えて、これで一年前と同じ人物と判別しろという方が難しいだろう。

 この車も運転手付きだ。


「千両さんも、能力が戻った事は気付いてます?」


「ええ」


 範子が答えると同時に金貨が宙に浮いた。

 これが範子の能力である。


「正直、今の私には必要のない能力ではあるのだけれど」


 金貨を手の平に納める。


「…まあ今回、俺たちもあまり動く気はないので。とりあえず能力者には気をつけてくださいね」


「そうね。

 気のせいかもしれないけれど、今回は能力者同士の引き合いが強くなっている気がするわ」


「どういう事です?」


「偶然なのよ」


「ん?」


「あなたを見かけたのは偶然なの。たまたま見かけたから声をかけたのよ

 同じ街にいてあの事件から一度も出くわさなかったのに、能力が戻った途端でしょう?勘繰ってしまうわ」


 確かにと京介は思った。

 自分など能力が戻った瞬間に横にいたワケであるから。


「何かあったら呼んでください、助けに行きますから」


 範子の能力なら必要ないだろうがと思いつつ。


「そうね。あなたも気をつけてね」



 

 範子と別れてしばし歩く。

 ふと思い達、京介はサイコ・ブレインに通信した。


『能力者の居所が知りたい?』


「ああ」


『余計な危険を招くだけだと思うのだが?』


「危険そうなヤツは遠くから覗くだけ、とかにするからさ」


 サイコ・ブレインは前の事件での居場所の分かっている能力者のデータを京介の持つ携帯端末に送る。

 範子と会った事で、今の能力者の事が気になったのだ。

 争うつもりはない。


「ここから一番近いのは…飛翔天馬(ひしょう てんま)イージースカイか」


 ガイオナースに属していた能力者で、飛行能力者だった。

 ガイオナースとの最終決戦で戦った事はあるが、特に個性を知るほどの接触はなかった。

 影の薄い能力者の一人という印象であった。

 カンカンカンとボロいアパートの鉄の階段を二階までのぼる。

 表札に色あせた紙で飛翔とある部屋を見つけ、深呼吸してノックする。

 鉄の扉が必要以上に大きな音を立てる。

 返事はない。

 ドアノブをまわしてみると、鍵はかかっていないことが分かった。


「…飛翔さん?」


 ドアを開けて薄暗い部屋を覗き込む。

 暗闇、静寂。そして血の匂いと気配。

 ずるりという音がして、暗闇が揺れた気がした。

 目を凝らすと、何か動いているる

 人の足。浮いている。いや天井に向かってゆっくりと引き上げられている。


「!?」


 京介は思わずドアを大きく開けて、部屋の中へ踏み込んだ。

 ボトリ。

 音がして、何かが落ちた。

 人だ。首のない人だ。


「……」


 しばしそれに意識を持っていかれ、ゆっくりと天井に目を移す。

 ズン。

 そこから何かが降りてきて、四つんばいの獣が警戒するような姿勢で、京介を見た。

 複数ある目のようなものが反射して光っている。

 コォォォ。

 低く唸るような音。

 京介は目を離さず、小声でサイコ・ブレインに通信した。


「サイコ…スーツを…たの、む」


 ぐわっ。

 何か、が凄まじい速さで向かってくると、手前で飛んで、ドロップキックを京介に放った。


「ぐっ!?」


 衝撃の瞬間、京介は後ろに飛ぶと、勢いを付けて開けてあった玄関から飛び出した。

 空中でスーツが転送されると、二階の高さからそのままコンクリート塀を抜けてアスファルトの地面に叩きつけられた。


『くうっ…!』


 かなりの衝撃が襲ったが、痛がっている余裕はない。

 すぐに立ち上がると視線をアパートに向けた。

 そしてアパートの屋根にいるものの姿を見つけた。


『…怪人』


高みからこちらを見ているソレは、そう表現するのが一番適当な外見であった。

 人間をベースの蜘蛛の特徴を加えた…怪人蜘蛛男といった感じか。

 口元からは血がしたたり落ちている。

 おそらく飛翔天馬のものであろう。


『能力者…じゃ、ない…ようだな…』


 インフィニティは構えを取る。

 蜘蛛男は軽く飛ぶと、インフィニティの前に降り立った。


「…ミツケタ…ネクスター」


(喋った!?)


 目の前の異形な生物の口から言葉が出た事に驚きつつ、警戒をしつつ間合いを図る。


「ギャ!」


 蜘蛛男が奇声を上げると、掴みかかってきた。

 肩を掴まれ、その怪人の腕をインフィニティが掴む。

 しかし強い力でビクともしない。

 そのまま手前に引きずられる。


『ぐううっ!』


 強化スーツごしに肩に痛みが走る。


「クラウゾ」


『…断る!』


 インフィニティは頭突きを食らわすと、捕縛を放れた。

 メットごしなのでこちらは平気だ。

 そして蜘蛛男の胸に拳を叩きつける。

 ダンプカーのタイヤを殴ったような感触。

 蜘蛛男は特にダメージもなくインフィニティを見た。


『はああっ!』


 インフィニティは数歩下がるとエネルギーを充填させ、ゼノ・インパクトを放つ体勢に入った。

 ゼノ・インパクトは自分の気を増幅させて相手の体に打ち込むインフィニティの最強の技だ。

 オーラが両手に走る。

 しかし蜘蛛男はたいした警戒もせず、近付いて来る。

 その口元が笑った気がした。


(勝てない…?)


 敵の余裕に京介はそう感じた。

 慢心ではない。絶対の余裕だ。 


「待てスパル・ダーマ!」


 声がして、蜘蛛男の後ろに一人の男が立っていた。

 スーツ姿の男。スーツといってもビジネスマンスーツだ。


(…いつの間に? 気がつかなかったぞ!?)


 男は驚愕するインフィニティを一瞥する。


「今回の目的は達成した。帰還せよ」


「ブブ…ワカッタ…」


 スパル・ダーマはその男の命令に素直に従うと、インフィニティに背を向けた。


『お、おい!』


 インフィニティの言葉に男は足を止める。


『何者だお前ら、何が目的だ?』


「我々はアークス…心配しなくてもまた狩りに来てやる、待っているのだな」


 男は口元に笑みを浮かべると、消えた。

 いつの間にか蜘蛛男も姿を消していた。


「うっ、うう…」


 スーツを解除して、京介はひざから崩れて地面に手を突いた。

 緊張の汗で服は濡れていた。


(何だ…あいつらは…)


 動きたくなかったが、近くから誰が通報したのか、パトカーのサイレンの音が聞こえてきたので、インフィニティは急いでその場を離れた。


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