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無限英雄2  作者: okami
11/12

第11話『突撃』

 警報が鳴り響く。


「何事だ!?」


 テグスが作戦司令室へと駆け込んでくる。


「ライオネット・シナバーとインフィニティがこの基地に潜入したようです」


 ネヒーテが厳しい表情で言った。


「馬鹿な、どうやってこの場所が…」


「おそらくですが、ネクスター反応をたどったものと思われます」


「奴らにそのような手段が…!?」


「お気づきになってなかったのですか…?」


 何度も鉢合わせしておいて、敵にネクスター反応を追う手段がないと思っていた事にネヒーテは驚いた。

 偶然だとでも思っていたのだろうか。

 その可能性があるからこそネヒーテは二手に分かれて能力者を襲う事を進言したのだ。


「くっ、スパル・ダーマ! 行くぞ!」


 テグスは焦りを見せると、スパル・ダーマを連れて司令室を後にした。

 テグスが間が抜けていたとしても。


(行動が早い)


 ネヒーテも昨日の今日で動きを見せるとは思っていなかった。

 もう少し戦力を整えてからだと、こちらから攻め入る余裕はあるものだと思っていた。


(無謀な特攻か…?)


「面白い」


 ネヒーテは妖艶な笑みを浮かべた。




 突入したアークス支部の地下基地内は、思ったほど敵はいなかった。

 戦闘員に混じってまばらにアントルが出てくる程度で、シナバーは元よりインフィニティでもそう苦労はしなかった。

 これは人員削減のために採用したアントルが、作戦時に数を作り、終了後には処分するという形式を取っていたためであった。

 襲ってくる戦闘員も戦闘員というより警備当番員という有様で、逃げ惑う内勤員や研究員がーの数の方が多めである。


『悪の組織も様変わりしたもんだ』


 シナバーは適当にブラスターを撃ち非戦闘員を混乱させて追い立てる。


「貴様ら!」


 怒りの形相のテグスと、その後ろからスパル・ダーマが現れる。


『おいでなすった』


「作戦開始!」


 言うが早いか、裏で待機していたハイスピードは加速してテグスたちの脇をすり抜けると、基地の奥に入っていった。


「くっ、スパル・ダーマ、追え!」


「ギッ」


 スパル・ダーマも超加速を開始し、ハイスピードの後を追った。


「貴様ら、なめた真似を!」


 テグスは怒りに任せて怪人体に変化した。

 デッド・テンタクル、白い烏賊の怪人である。


『ヤツの相手は俺に任せろ。インフィニティは露払いを頼む』


『はい!』


 インフィニティはショットガンとマシンガンを両手に持つと、近寄ってきたアントルに向けて引き金を引いた。




 地下基地において空気口の存在は特に必須である。

 そこからドロリしたゲルが壁をつたい、データ管理室内の地面に広がると、人型を取った。


「へへへ、進入成功と」


 無我は小声でつぶやくと、破壊データの入ったマイクロディスクをポケットから取り出した。

 央真が提案した作戦は、基地を混乱させて怪人の目を逸らし、その間にブルーパウダーのデータを破壊する事であった。

 無我が協力する気になってこそ成立する作戦であった。


「やはりな」


 声が響いた。無我はビクリとすると、ネヒーテが立っていた。


「うっ…」


「今回の作戦はこの部屋にある、ネクスターを探知するレーダーとそのデータの破壊…違うか?」


 違う。

 違うが、同じ部屋にそれがあったのが運が悪かった。

 しかしそれだけブルー・パウダーに対しての危機感の違いに差があるのだ。

 無我は再び液状化して逃げようとする。

 ネヒーテは用意しておいた火炎放射器を無我に向けて発射した。

 炎がゲルを炙る。


「あづぁ!?」


 思わず固体化してしまう。


「侵入作戦と分かれば、誰がここに来るかなんて事は、データを見れば明らかだ」


 壁にもたれて座り込んでいる無我に近づいていく。


「我々を少し、甘く見すぎだ」


 無我の首を掴む。


「へへへ…どう、かねぇ」


 無我は苦しそうに笑った。


「何…?」


 その笑みが理解できずネヒーテの表情が歪む。

 次にこの部屋のコンピューターが放電を始めた。

 ネヒーテが視線を移すと、いつの間にか瞳がデータディスクをはめ込んでいた。


「馬鹿な、いつの間に!?」


「模倣能力者が誰を模倣するのかなんて、そう読めないもんな!」


 無我はそういい残すとゲル化してネヒーテの腕をすり抜けると、空気口へと逃げた。

 瞳もいつの間にかいない。

 無我の能力をコピーした瞳が液体化して無我と混ざって侵入していたのである。


「…やられた!」


 ネヒーテはヒステリックに叫ぶと、放電しているコンピューターに向けて腕を凪ぐと、破壊した。


 ハイスピードは障害物を避けながら超スピードで基地内を失踪する。

 後ろをちらりと見ると、これまた超スピードで飛んで追ってくるスパル・ダーマ。

 ハイスピードとイージースカイの能力をあわせている。


「ギャイッ!」


 蜘蛛怪人本来の能力である口から糸を吐くもハイスピードはうまく避ける。


「まったく蜘蛛が空を飛ぶなよなー!」


 悪態を付きつつも注意は崩さない。


「おっ」


 ハイスピードは何かに気付くと、状態をかがめて腕を地面に滑らす。


「どうだ按配は?」


「成功しました!」


 今の動作は液体化した瞳を拾ったのだ。

 実体化した瞳はハイスピードにお姫様抱っこされた形になった。


「よし、じゃ、もう一働きだ」


 ハイスピードが瞳を放り投げると、瞳は着地し、超スピードで別方向に走り出した。

 ハイスピードの能力をコピーしたのだ。


「ギッ!?」


 スパル・ダーマは突如現れたこれまた超スピードで逃げる相手に、どちらを追うか迷った。

 そして考えて瞳の方を追う事にした。




『央真さん! 作戦成功です、ブルーパウダーのデータは破壊されました』


 インフィニティは通信を受けてそれをシナバーに伝える。


「何だと…それが目的だったというのか!?」


 テグスの変身したデッド・テンタクルが声をあげる。


『ゆくゆくは街全体にばら撒く予定だったんだろう? 残念だったな』


「貴様ら…!」


 その脇を瞳がすり抜け、インフィニティの横で止まる。

 そして追いかけてきたスパル・ダーマはデッド・テンタクルの横で止まった。


『あとはお前たちをここで倒せば、俺たちの勝ちだ』


 シナバーが前に出る。


「…確かに」


 デッド・テンタクルが静かに口を開く。


「確かにブルーパウダー計画はお前たちに阻止された…が…」


 デッド・テンタクルの瞳が光る。


「お前たちはここで死ぬ」


 デッド・テンタクルの背中の髪のように垂れている10本のテンタクルソードが蠢くと、横にいたスパル・ダーマを突き刺した。


「ギャッ!?」


 スパル・ダーマは驚きの声をあげる。

 その体から、テンタクルソードを通してスパル・ダーマの力はデッド・テンタクルへと吸収される。


『くっ、させるか!』


 シナバーが飛び掛ろうとすると、数本のテンタクルソードが邪魔をした。


「くはぁぁ…!」


 スパル・ダーマの全てを吸収すると、デッド・テンタクルの色が変色した。

 黒く。そしてパワーが満ちる。


「デビル・テンタクルス」


 そして名乗る。


『それがどうした、倒すヤツがまとまってくれた手間が省けただけだ』


 シナバーが逆鱗モードになる。


「ひひっ!」


 デビル・テンタクルスは奇声を発すると超スピードで加速した。


『ぐっ!?』


 シナバーの後ろに現れたデビル・テンタクルスはテンタクルソードの一本でシナバーをハタく。

 シナバーは弾き飛ばされ、空中で持ち直し、着地する。

 すでに超スピードで後ろに周っていたデビル・テンタクルスの肘打ちがシナバーの背中に決まった。


『げはっ!?』


 シナバーがうめく。

 スパル・ダーマに吸収させた能力まで取り込んでいる。

 出会ってからここまで苦戦を見せなかったシナバーがやられている。

 だがインフィニティは動けないでいた。

 超スピードが見切れないのもそうだが、あの状態からさらに強くなった怪人の一撃を受ければ、ばらばらにされてしまう。


『くっそ…!』


「任意君、今となっては無駄かもしれないけど…」


 瞳はインフィニティの手を握った。


『円奈…?』


「がんばって!」


 インフィニティの全身から光が発した。7色の光、虹色の光。


『この力は…!?』


 一年前、奈月円と殴りあった時の光。


「今まで黙っててごめん、虹色インフィニティだよ!」


 京介が増幅した力を、さらに模倣した瞳の増幅能力で増幅する。


『そうか…あの時の力、お前がくれたんだな…!』


 インフィニティは拳を握ると虹色の光がはじけた。



 

 超スピードとテンタクルソードで弄ばれているシナバー。


『ぐっあっ…!』


 痛みで動けないところに迫ったテンタクルソードを虹色インフィニティがはらった。


『…お前…!』


『ちょっとは戦えるみたいです、俺も』


 シナバーと虹色インフィニティは背中合わせになって構えた。

 これで少なくとも後ろは守れる。


「ほぉう…ここに来て妙なパワー見せたな、だが、無駄だ!」


 デビル・テンタクルスはそう叫んで加速し、消えた。

 辺りが静かになる。

 2人のヒーローは警戒する。足音もしない。


『……』


「ここだぁ!」


 声とともに頭上に現れたデビル・テンタクルスは、テンタクルソード10本を束ねて、そのまま真下に突っ込む。

 咄嗟に2人は散開するが、背中に大きくダメージ追い、地面に転がる。


「はははははは!」


 テンタクルソードを体後と回転させると、左右に転がったヒーロー2人を弾き飛ばす。 


「ああ…虹色インフィニティでも勝負にならない…!」


 瞳が泣きそうな声で言う。


『はあ、はぁ…一瞬、スキが一瞬出来れば…』


「スキが出来れば何とか出来んのか?」


 呻きながら言ったシナバーのつぶやきに、誰かが答えた。


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