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Elevator_Girl  作者: 深町珠
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セッション







ちょっとセッションした後、彼女は予定があるらしかったので

そこで別れた。ちょっとザンネンだった。


僕等のキャンパス・ライブのチラシを渡して「良かったら見に来てください」って

シュウは言う。


ありがとう、と彼女は小さく会釈して、小走りに駆けて行く。






「いいねぇ」と、シュウ。



「うん....。」と僕。




「あの感じは、なんか、クリエート系だろね。

カクテルピアニストとか、そういうんじゃないかな?」とシュウ。



「うん...。」と、また、僕。




ウンばかりだねぇ、柳くん、と、深町はふざけて笑う。


なんだか、僕も笑いたくなった。




「リョーコさん、か...。」と、僕。


「苗字はなんだろね」とシュウ。



「田村じゃない?」と僕。いつものノリ。



「ヤワラちゃんかい」と、シュウも乗る。



「谷さんかな」




「おんなじじゃん」...




「じゃ、中野」





「......古過ぎないか、それ」





ワハハと、二人で笑い合った。


今日はいい日曜だった。



「リョーコちゃん、珊瑚模様のストラップ持ってた」と、深町。




「そう?なんか高そうだね」と、僕。




「15万円」




「どうして...あ、サン×ゴ=ジューゴか!ワハハ、古いな~それ」




僕等は、なんだかいつまでも笑っていたいような気持ちだった。



 


scene #4 cut #1




翌日は雨だった。

昨日、ライブした駅前も

今朝は、打って変わって無機的に人が流れていくだけだ。

どこかへ向かっていくのだろう。けれど、皆無表情に歩いている。

日曜日の華やかな、楽しそうな雰囲気と違っていて

これが同じ場所なのだろうかと僕は思った。

地下道へ下る、昨日より掛かったタイルの壁を見、ふと触れてみたくなる。


が、触れても今朝は、それすら無機的な冷たさ、と感じてしまう

モノ・クロオムの写真のようだ。



でも、僕の気持ちは昨日から、はしゃいでいる子供のようだ。

何かが変わった訳じゃない。見ている景色はいつもの月曜なのに

そんな、無機的な景色なのに、心の中だけは暖かい。




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