セッション
*
*
*
ちょっとセッションした後、彼女は予定があるらしかったので
そこで別れた。ちょっとザンネンだった。
僕等のキャンパス・ライブのチラシを渡して「良かったら見に来てください」って
シュウは言う。
ありがとう、と彼女は小さく会釈して、小走りに駆けて行く。
「いいねぇ」と、シュウ。
「うん....。」と僕。
「あの感じは、なんか、クリエート系だろね。
カクテルピアニストとか、そういうんじゃないかな?」とシュウ。
「うん...。」と、また、僕。
ウンばかりだねぇ、柳くん、と、深町はふざけて笑う。
なんだか、僕も笑いたくなった。
「リョーコさん、か...。」と、僕。
「苗字はなんだろね」とシュウ。
「田村じゃない?」と僕。いつものノリ。
「ヤワラちゃんかい」と、シュウも乗る。
「谷さんかな」
「おんなじじゃん」...
「じゃ、中野」
「......古過ぎないか、それ」
ワハハと、二人で笑い合った。
今日はいい日曜だった。
「リョーコちゃん、珊瑚模様のストラップ持ってた」と、深町。
「そう?なんか高そうだね」と、僕。
「15万円」
「どうして...あ、サン×ゴ=ジューゴか!ワハハ、古いな~それ」
僕等は、なんだかいつまでも笑っていたいような気持ちだった。
scene #4 cut #1
翌日は雨だった。
昨日、ライブした駅前も
今朝は、打って変わって無機的に人が流れていくだけだ。
どこかへ向かっていくのだろう。けれど、皆無表情に歩いている。
日曜日の華やかな、楽しそうな雰囲気と違っていて
これが同じ場所なのだろうかと僕は思った。
地下道へ下る、昨日より掛かったタイルの壁を見、ふと触れてみたくなる。
が、触れても今朝は、それすら無機的な冷たさ、と感じてしまう
モノ・クロオムの写真のようだ。
でも、僕の気持ちは昨日から、はしゃいでいる子供のようだ。
何かが変わった訳じゃない。見ている景色はいつもの月曜なのに
そんな、無機的な景色なのに、心の中だけは暖かい。




