想遥か
「…長生きなんて、するものじゃ無いな…。」
俺は一人、夕張遺跡の奥にあるオアシスの岩の上に座り、この安らかな景色を眺めていた。
ここは昔と変わらず、静かに時が止まっている。
常國建国から四十年。俺の大切な人達は皆、既にこの世を去っていた。その度に擦り切れて行った俺の心は、風に舞う糸くずの様に定まらず、行く当てもない。
俺は、ふらふらと立ち上がり、オアシスの奥の扉を目指して歩き出す。
「この扉には近付くなよ。」と宮川に言われていたのを思い出す。
「いいか?この先には、お前が失くしてきたものがあるだろう。だが、この扉を潜るという事は、お前がこの現し世を去るという事だ。」
宮川という男は本当に真っ直ぐで、気持ちの良い相棒だった。
「宮川…本当はな?俺は何度もこの扉を潜っていたんだぜ。お前なら多分、分かっていただろうがな…。」
宮川 龍二…俺の相棒に出会ったのは、3回目にこの扉を潜った時であった。
ロシア侵攻から家族や皆を護り切れず、失意のうちにここに辿り着き、この扉を潜った。
そして、俺はその度に女神様に代償を払い、タイムリープを繰り返して来たのだ。
一回目…再び、戦火に友人を失ない、家族を失った。
二回目…石黒が、常國を建国するが、後に中国とロシアの戦争の舞台となり焦土となった。
三回目…俺と宮川、石黒が揃った。しかし、咲夜を見逃したことで、俺の家族が咲夜に殺された。
四回目…やっと…やっと、ここまで来れたんだ。
俺は扉の前まで辿り着くと、そっと表面の埃を払ってみる。
「女神様…俺はちゃんと役目を果たせましたか?」
俺はそのまま扉に寄り掛かり、静かに目を閉じる。
皆、最後は笑って去って行った。俺は皆を看取れた事を誇りに思う。
柔らかな初夏の風が頬を撫で、森の香りを運んでいた。
穏やかな光に、抱擁されているかの様な安らぎを感じる。
閉じた瞼に、皆の笑顔が浮かんでくる。
大切な人達と共に過ごした、幸せに満ちたあの日々が…。




