最高の貢物
「本屋によっていいか?」
そんな龍二のひと言で、俺たち3人は放課後に駅前の本屋で立ち読みをしていた。
それはまぁ、いい。
ただ、男子高校生3人が少女漫画コーナーに並ぶのはどうなのだろう。
龍二が素知らぬ顔で読み始めたので止める暇もなかった。
なんでこの子、こんなピンクな背表紙が並ぶコーナーにズンズン進んで行けるんだろう。そしてなんで俺も律儀に隣で読み始めちゃったんだろう…。
我ながらあほだと思う。
…もう1人のアホも同じ状況なのだが。宗吾、挙動不審になるな。
さて、今ちょっと困ったことが起こっている。読んでいる少女漫画は普通に面白い。なら、何が問題なのかというと…。
位置が悪い。俺の半身がBLコーナーに差し掛かっている。ちゃうねん。腐男子じゃないのよ。
やめて、店員のおばちゃん。「今は多様化の時代よねぇ〜。」みたいな目線を送ってこないで。最近、学校でもよく人の視線を感じやすくて、見られてるなぁと分かるようになってきたの。
あと、なんでBLの漫画って絵が綺麗なの多いの?普通に好みの絵柄で気になってチラチラ見てしまう。
ハッ!?これがおばちゃんに見られる原因なのか!?
「…純。気になるなら読んでいいんだぞ?」
「き、気になってねーよぉ!」
龍二の発言のせいで素直じゃない人みたいになってしまった…。
やめぃ、生暖かい目を送ってくるな。
話題を変えなければ!
「ち、ちなみになんで龍二は少女漫画を開いては戻しを繰り返してるんだ!?」
「…妹に頼まれた漫画を探してるんだが、どれか分からん。」
「龍二、妹いたのか。」
「弟もいる。」
「ほへ~、長男なのか。」
「ああ。」
言ったら悪いかもしれんが、意外だ。
「んで、何で分かんないだ。スマホで聞けばいいだろう。」
「…こないだからブロック、連絡拒否されてる。」
「何があった!?」
「…妹のパンツを履いたら怒られてな。」
「「本当に何があった!!?」」
妹のパンツ履くことある!?逆に何故怒られないと思ったし。
「いや、妹が俺のトランクスを楽だ。って勝手に履くんだ。だから、やり返して妹のパンツ履き返したら今まで見たことないくらい怒ってな。」
「「そりゃあそうだろうな。」」
パンツ履き返すって日本語初めて聞いたよ。あと、兄弟仲いいなぁ。
「…それで謝るのに手土産でもと思ってな。妹が読んでいた漫画の続きでもと。」
「なるほどな。で、分かんなくなったと。」
「うん。絵柄や展開はなんとなく分かってるんだが。」
「なんか特徴ないのか?そしたら3人で手分けとかできるんじゃね?」
宗吾が良いことを言った。手がかりがあるなら手伝えるかもしれん。
「主人公が彼氏に向かってパンツを履けって叫んでるシーンは覚えてる。」
「「ちょっと待て。」」
大丈夫?それ。年齢制限のあるジャンルだったりしない?少女漫画でホントにあってる?
「ホントに少女漫画なのか?」
よく言った。宗吾。そのままオトナな漫画なのかも聞いてくれ。
「…詳しくは覚えてないがちゃんと社会人男女の恋愛系な漫画だった気がする。」
「どんな漫画ならそんなシーンあるんだよ…。」
全くだな…。
「あ、具体的なエピソードが分かるなら店員さんに聞いてもいいんじゃね?」
「なるほど?聞いてみるか。」
ちょっと待て!。宗悟のアホな意見を鵜呑みにしてスタスタと歩いていくんじゃない、龍二。あの多様性寛容おばちゃん店員にどう聞く気だお前。
「すみません。主人公が彼氏にパンツを履けって叫んでるシーンがある漫画を探しているんですが。」
言ったー!?!あいつスゲェェェ゙ー!
もう龍二は天然とかそういうもんじゃない気がする。
「あらあら、それならここらへんの…。」
そして、おばちゃんもすぐに何か出せんのかよ。店員さんってやっぱスゲーな。
…ちょっとおばちゃん?BLコーナーは除外してええんだぜ?
その後、おばちゃんにその色々出してもらったがどれも違うようだった。
「うーん。他にあったかしら。」
「すみません。ご迷惑おかけして。」
「やっぱもうちょいエピソードないのか?」
「うーん。ちょっと待て。思い出す。」
「もはやどんな漫画だけ知りたいよな。」
「分かる。」
「あ、1個思い出した。主人公達のカップルが360°回転しながら巻き寿司食べてた。」
「ホントにどんな漫画なんだよ!?」
「分かった。」「分かりました。」
「嘘やろ!?」
「どこあります?」
「こっちですね。」
「待って待って。」
宗吾は分からんらしい。おばちゃんも分かったのに…。案内してもらって目当てのヲタ恋を見つけた。
その後、龍二はヲタ恋を貢ぐことで妹さんにしっかり許してもらったらしい。やっぱヲタ恋は名作だ。
ちなみに裏話。
勉強会のお話で龍二が持ってた文房具は妹弟のお下がりです。正確には「恥ずかしいから使わない。」と捨てられそうな所を龍二がもったいない精神で使っています。




