夜の訪問者
「誰だろう?」
普段は、ノックと同時に入ってくる。村の住人は、身内ばかりだから、遠慮が無いのだ。
「あのう、ヨナとヨシです。ここにアルカディアの森の人がいると聞いて……」
ママが、二人を招き入れる。ヨナは、もう若者小屋で暮らしているよね? ヨシは、どうしているのか知らない。
「私とヨシをアルカディアで教育して下さい」
えっ、それは良いのかな? ママとパパも難しい顔をしている。
「この二人は姉弟なんだね? 私達は、嬉しいが、何か問題があるのかい?」
ヨナがヨシを自分の背中に隠して、話す。
ヨシって、私やサリーが村から出ていく時は、少し遅れて森歩きを始めていたと思うけど? 何だか、前よりも赤ちゃんっぽい。
「私は弓のスキルを賜りましたが、弟のヨシは……神父さんは、教会の子になる運命だと言われたのです。でも、この子は、とても賢いし、勉強も好きです」
ああ、狩人の村でヨシは居る場所が無いのだ。それは理解できるよ!
「ふうん? ヨシも他の森の人よりは弱いが光の魔法で成長している。つまり、光の魔法を習得できるってことさ!」
ヨシは、他の狩人の村の森の人よりは、成長が遅かった。
でも、普通の人間なら二歳前にこんなにしっかりしていないよ。
「では! 受け入れてくれるのですね!」
ヨナは喜んでいるけど、アリエル師匠は「本人はどう思っているのかしら?」と質問する。
「僕は……この村では暮らせない。神父さんと人間の町で教会に入って修業するのだと思っていた。でも……本当は、他の人と同じように木と木の移動をしたい! それに、勉強もしたい!」
木と木の移動もできないんだ。そう言えば、神父さんも少し悔しそうな口調で話していた事があったね。
「ううむ、神父さんと話し合う必要があるな。教会の弟子を横取りするのは良くないからな。だが、もう少し大人になって、自分のやりたい事を決めたら良いと思うぞ!」
オリビィエ師匠がぱふぱふとヨシの頭を撫でた。
「私たちは、そろそろ失礼するよ」
酔ったおじさんを、おばさんが引っ張って帰る。
サリーの両親が帰ったので、二人を子どもベッドのソファーに座らせて、ピザとリンゴジュースを出す。
「美味しいわ! ミクの料理は、とても便利だわ」
うん、でもヨナの弓のスキルが賜っていたら、今もこの村に住んでいたかも。まだ心がチクンとする。
ああ、ここら辺がサリーより弱い点なんだよね。
洗礼式の時から、サリーは風の魔法を恵まれたのを喜んでいたんだ。
「二人をアルカディアで教育するかは、明日、ご両親と村長さんと話し合って決めよう」
ヨナは、ヨシを受け入れてくれそうなのに驚き、喜ぶ。
それだけで、どれほど狩人のムラがヨシにとって居ずらいのか分かるよ。
「本当にヨシは光の魔法を習得できると考えておられるのですね!」
ヨナが確認する。お姉ちゃんとして、ずっとヨシの事を心配していたんだ。
「ああ、少し時間が掛かりそうだけど、今でも光の魔法で成長しているから、大丈夫さ! ミクと一緒に学べば良い。それより、ヨナは良いのか? 若者小屋にいるのでは?」
ヨナは、若者小屋の生活でも困っていないと思う。
「私も年を取らずに長生きしたいから、ほかの村人に教わるよりは、直接アルカディアで習った方が良いと思っています」
ヨナ、良いお姉ちゃんだし、賢いね! 又聞きより、直接習う方が習得しやすそうだもの! 私も頑張ろう!
明日、他の村人にもアルカディアに行きたい人を聞いてみることになり、バンズ村で、師匠達は村長さんの家に泊まった。
私とサリーは、少し窮屈だけど、妹や弟と同じベッドで眠ったよ。
「お姉ちゃん、アルカディアの生活って楽しいの?」
ベッドでミラに色々と話す。
「師匠達は木の家に住んでいるの。大きな木の中に三階まであるのよ。それに、お風呂に毎日入るの! 石鹸も作っているんだ!」
ミラとママは「良いわね!」と少し羨ましそう。
それと、物見の塔についても話したし、木の上の家も驚かれた。
「さっき、二人には話したけど、サリーは風の魔法だけじゃなく、キラービーを飼育してハチミツを取っているの。私も火食い鳥を飼っているわ」
ママが「火食い鳥!」と驚いている。
「それは危険じゃないのか?」
パパも心配そうだ。
「餌を与えておけば、おとなしいわ。でも、卵を集める時は、自分に守護魔法を掛けないと駄目なの」
ミラとバリーが「お姉ちゃんは凄いんだ!」「火食い鳥を生け取りにしたんだよ!」と口々にママとパパに教えている。
なんだかくすぐったい。
「それと、サリーはガラス工芸も師匠について修業しているの。私は、薬瓶やガラスの容器ぐらいだけどね」
「ガラス瓶を作れたら、行商人から買わなくても良いのね!」
ママは、私がガラス瓶を買うのに苦労したのを覚えていた。
皆が、今日持ってきたガラス瓶を私が作ったと知って、褒めてくれた。
「アルカディアの子は、機織り、染色、畜産、木工細工、鍛治、錬金術などを、スキルとは関係なしに学んでいるわ」
「機織りができたら、布を買わなくて済むわ」
ミラは、機織りに興味がありそう。ここでも機織りをしていたお婆さんがいたけど、亡くなってからは行商人が来るまで、我慢するしかないのだ。
「俺は、鍛治かな? 斧も何回もぶつけたら、キレが悪くなるんだ。それに、ママとミラの鏃が作れたら便利だと思う」
パパは、木工細工に興味があるみたい。ママは、竜の討伐だね!
やはりアルカディアから、バンス村まで来たので、疲れていたみたい。いつの間にか眠っていた。




