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アルカディアの子ども  作者: 梨香


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懐かしいママとパパ

 久しぶりに見るママ、パパ! 家から走り出て、ママに抱きついちゃった。


「ミク、大きくなったわね」


 パパも私を抱っこして「元気そうだ!」と笑った。


 私がパパとママに抱きついたり、抱っこしてもらっている間に、サリーが師匠達を村長さんに紹介した。

 

 今度から気をつけよう! でも、今はママとパパに甘えたいんだ!


「今夜は泊まれるんでしょう?」


「うん!」と言ってママの腰に抱きついたまま小屋に戻る。


 村長さんと話している師匠達の事は気になるけど、久しぶりの我が家で料理をしよう!


「わぁ、ミク姉ちゃんの料理だ!」


 ミラは単純に喜んでいるけど、バリーは横で真剣に見ている。


「これは、ピザという食べ物なの!」


 パパが作ってくれたパン焼き窯が壊れずに残っていたので、今夜はピザにする。

 アルカディアで買ってきたチーズは早めに食べた方が良いからね。


「ピザ生地を休ませている間に、上に置く物を作りたいのだけど……」


 パントリーには、肉と芋しかなかった。


「トマトは少ししかできなかったんだ。それに、もう食べたから」


 やはり、私が出て行ってから、料理番はバリーになったみたい。


 ミラは美味しいものが好きだけど、どうやらママに似て、料理は苦手っぽいな。


 ふぅ、仕方ない。トマトソースは瓶詰めで持ってきている。


 あと、玉ねぎも何個かマジックバッグに入っている。


 芋と玉ねぎと肉を炒めて、それをトマトソースを塗ったピザ生地の上に飾っていく。


「これだけで美味しそうだよ!」


 バリーは、食べ盛りだからね。


「この上にチーズを乗せて焼くのよ!」


 パパはパン焼き窯に火を入れてくれていた。


 ママは、親戚にクッキーを配っている。村中、親戚だから、これはしないと駄目なんだ。


「師匠達は、きっと村長さんの家に泊まるのだろう」


 パパは、私は家に泊まって欲しいみたいだけど、寝る場所があるのかな?


「ミク姉ちゃん! 私と一緒に寝よう!」


 ミラと私、小さな子ども用ベッドに二人はギリギリだけど、一緒に眠りたい。


「うん! そうしよう!」


 ピザを焼いていると、師匠達が村長さんの家から出てきた。匂いでピザだと分かったのかな? まさかね!


「先ほどは失礼しました。ミクの師匠をしているオリビィエです。こちらは、サリーの師匠のアリエル」


 サリーと両親もやってきて、私の家でピザを食べながら話すことになった。


「これは美味しいな!」


 パパは、一口食べて、大絶賛だよ。


「ワンナ婆さんとヨハン爺さんのところにも持っていくね!」


 この二人は、私の祖父母みたいなものだからね。本当は違うけど、血縁なのも確かだ。


「うん? それは酒なのか?」


 パパは、お酒など飲まないと思っていたけど、実は好きみたい。コップに少し入れてあげる。


「私も一緒に持っていくわ!」


 サリーと一緒にピザ一枚とハチミツ酒の瓶を持ってワンナ婆さんの小屋にいく。



「おお、これは美味しそうだ!」

 二人に仲良く食べてね! と言って帰ろうとしたが、引き止められる。


「あんた達の師匠さん達と村長は、若者小屋の子をアルカディアに派遣しようと決めたみたいだよ」


 私とサリーは、手に手を取って、ぴょんぴょん飛んで喜ぶ。


「やったぁ! これで、バンズ村の森の人(エルフ)も長生きできるね!」


 でも、ワンナ婆さんとヨハン爺さんは、難しい顔をしている。


「そう上手くいくと良いのじゃが」


「ワンナ婆さん、若者小屋の子なら、一応は親から独立しているから、アルカディアに行っても良いんじゃないの?」


 ワンナ婆さんは答えず、ヨハン爺さんがハチミツ酒の栓を開けながらボソッと呟いた。


「彼奴らは、自分が一人前じゃと勘違いしているからな。それに、狩りに夢中だ……」


 ああ、それはわかる気がする。家に帰って、師匠達と話し合わなくては!




「えっ、若者小屋の子はアルカディアに来たがらないだろうと言われるのですか?」


 丁度、家に入ったら、アリエル師匠がサリーの両親に問いただしていた。


「ルミやキンダーも若者小屋にいた頃を思い出してくれ。自分の狩りで食べていける! 一人前だと考えていたんじゃないか?」


 サリーのパパの言葉に、ママとパパが気まずそうに頷く。今でも、ママは狩りが大好きだから、若者小屋の跳ねっ返り時期は、もっと狩り優先だったろうね。


「ああ、そうなのですか? では、村長さんとの話し合いは無駄になったかも……」


 ガッカリしているオリビィエ師匠、そんなことないよ! きっとね!


「ミラとバリーも初めは学舎とか、嫌がっていたけど、そこで武術や魔法、そして狩りの練習にもなると聞いて興味を持ったのです。それに、竜を退治するのは、狩人の村の森の人(エルフ)にとっては憧れだよ!」


 師匠達は、この辺には竜がこないのだと知って、驚いていた。


「そうか、竜で懐柔するのはありかもしれないな」


 ちょっと目的からずれているけど、アルカディアに行きたい気分になるのかもね。私的には御免だけどさ。

 一生、卒業できないかもしれない。竜討伐が、卒業試験だなんて、厳しすぎるよ!


 皆で意見を出し合いながら、ピザを食べ、師匠が持ってきたハチミツ酒、子供はりんごジュースを飲む。


「サリー! 家に帰ってこないか?」

 わっ、サリーのパパ、顔が真っ赤だよ。酔っているんだね。


「魔法使いになる修業をしているから、家には帰らないわ」


 サリーはキッパリと断っている。私より、心が強いね。私は、この村には居場所がないから、アルカディアで修業をすることにしたんだ。


 結果は一緒でも、少し違う気がする。私の方が親に甘えたい気持ちが大きい。


「あなた、もう酔っ払っているのね! お家に帰りましょう」

 

 サリーのママが酔ったパパを連れて帰ろうした時、ドアを誰かがノックした。

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