先ずは、弟と妹から!
私が気まずいと感じたのを察したのか、それともミラが気が効く性格なのか、話題を変えてくれた。
「お姉ちゃん、アルカディアではどんな生活をしているの?」
そうだ! ラング村の全員を説得するのは無理でも、弟と妹ぐらいはやってみよう。
だって、家族には長生きして欲しいんだもの! ミラとバリーが光の魔法を習得したら、ママやパパもやる気になるんじゃない?
「ええっと、朝起きたら、食事の支度をするの。サリーは、掃除と洗濯だけど、朝一はキラービーの世話もしなくちゃいけないのよ!」
「「キラービー!!」」
二人が驚いて目がまん丸だ。バリーは私より背が高くなったけど、やはり可愛い弟だよ。ミラは、もちろん可愛い妹!
「ミクも火食い鳥を飼っているだろう!」
師匠が笑いながら言う。
「「火食い鳥!!」」
二人が驚く顔が可愛いから、私も笑顔になる。
「そう、火食い鳥を生け取りにして、飼っているんだ」
でも、いちいち「生け取り!」「どうやって!」と騒ぐから、話が先に進まない。
「火食い鳥がいるのを狩人に教えてもらって……頼んでおいたんだよ。狩人も卵を食べたいから協力してくれるんだ。集会所で使わない卵は売るんだよ!」
「狩人は火食い鳥をからないの?」と途中でミラが聞くので、それに答えながらの話になる。
「卵って美味しいの? 何に使うの?」
やはりバリーの方が料理に向いている気がする。ミラは食べるのは好きだけど、料理に興味が無いんだよね。
「卵は、湯がいただけでも美味しいけど、色々な料理になるんだ! あっ、ケーキにもなるよ! それと、調味料にも!」
しまった! マヨネーズを瓶に詰めて持ってくれば良かった。
「でも、火食い鳥って危険なんでしょう。鋭い爪で蹴られたら、怪我をして死ぬ場合もあるって聞くわ!」
ミラは、着々と狩人の知恵を学んでいるみたい。
「それは、生け取りにした時に、爪を切るんだよ!」
「「へぇ! すごい!」」
双子だからか、感嘆の声も同じ? わざとやっていない?
「卵を集めるのにミクは、光の魔法の守護魔法も使っているんだよ!」
おお、オリビィエ師匠はすかさず光の魔法の有益性を話す。
「守護魔法? それを掛けたら大丈夫なの? お姉ちゃん、怪我しない? 嘴で突かれても痛そう!」
ミラが心配してくれる。私が光の魔法はちょっとしか使えないと言ったからだね。
「火食い鳥は、綺麗な水と餌があれば、そちらに夢中だよ。餌を食べている間に、卵を集めるんだ」
ふうん、と二人が頷くタイミングも一緒だ。
「子どもは、午前中は学舎に行くんだよ」
ゲーッて顔をバリーがした。勉強が嫌いみたい。私が赤ちゃんの頃に、厳しくしすぎたのかな?
「学舎はいらないや! 文字も読めるし書ける! それに計算もできるからね!」
「うん、ママやパパより字が上手いんだ!」
困った! どう説明したら良いんだろう?
「二人もいずれは村の外に出るんだろう? 人間の国の事を知らないと困るんじゃ無いか?」
オリビィエ師匠が私の代わりに説明してくれる。
「村の外の人と結婚するかもしれないけど、人間の国には行かないわ!」
「ママとパパが戦争なんかする国には行かせないって言ったよ!」
ふう、それも一理あるんだけど……寿命が延びたら、そうも言っていられなくなるかも? あっ、ワンナ婆さんが言っていた問題だね。
「戦争をしていない国を知るのも、勉強だよ。それに、学舎では魔法や武術の訓練もするのさ」
魔法は、無理だって顔だったけど、武術には興味を持つ。
「へぇ、武術訓練は受けてみたい」
「うん、それは良いな!」
私の真逆な妹と弟だ。私は、魔法もだけど、特に武術訓練が苦手!
「メンター・マグスは武術の達人なのさ! その教えを受けたら、上達もはやいよ。竜も討伐できるようになる!」
「「竜!!」」
「アルカディアの狩人は、竜を討伐するって噂だったけど、本当なんだ!」
ミラの目がまん丸だ。
「でも、それは魔法を使うんじゃ無いんですか?」
斧使いのバリーは、竜との接近戦を考えたみたい。武者震いしている。
「そりゃ、守護魔法や攻撃魔法も使うけど、素材を活かしたいから、目を撃ち抜いたり、脚を斧で攻撃して止めたりするのさ」
「「凄い!!」」
かなりやる気になった二人! ここでも、私が武術の達人になっていたら、説得しやすかったのにね。
全く、竜を討伐できる自信がない。友だちの手助けがあったとしても、腰を抜かしそう!
外が騒ついてる! 狩人たちが帰ってきたんだ!
「ママ、パパが帰ってきた!」
私が一番に飛び出しちゃった。師匠は置いてきぼりだ。




