表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディアの子ども  作者: 梨香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/24

アルカディアに到着!

 ヨシは体力もない。オリビィエ師匠の背中で寝てしまった。


「ミク、何か布を持っていないか?」


 マジックバッグの中をまさぐって、細長い布を引っ張り出す。


「よく、そんな物を持っていたわね!」


 サリーに呆れられた。


「これは、この前、卵サンドイッチを売ったら、ヴィーガ師匠がくれたのよ」


 織物のヴィーガ師匠も、料理は苦手みたい。美味しかったと、この布をくれたのだ。


 細長い布で、うとうとしているヨシをオリビィエ師匠にくくりつける。日本昔ばなしの背負い紐みたい。


「さぁ、早くベッドに寝かせた方が良いだろう!」


 それに、(キラービー)火食い鳥(カセウェアリー)も、小屋に早く入れた方が良いからね。


 養蜂箱は、一つ空いている。女王蜂が何処かに飛んで行ったのだ。気まぐれだね!


火食い鳥(カセウェアリー)の小屋は、帰ったら大きくしないといけないかも」


「まぁ、それは頼んでやるけど……雄は潰して食べたら良いんじゃないのか? 冬は、餌にこまるのでは? 揚げたのが美味しかったぞ」


 オリビィエ師匠がそんな事を言うから、アリエル師匠も我儘を言う。


「そうね、唐揚げが食べたいわ! それに、小さな壺に火食い鳥(カセウェアリー)の肉を入れたのも! 雄は潰しましょう!」


 サリーは、私が飼っている火食い鳥(カセウェアリー)を潰したくないのを知っているから、無理にとは言わないけど、唐揚げ、凄く食べていたんだよね。


 私は、家畜だと言い聞かせているし、駄目だとはわかっているけど、情が移っている。

 卵から孵った雛鳥の雄の何匹かは、唐揚げにしたんだけどさ。


 確かに、オリビィア師匠の言う通り、餌の確保が難しくなる冬に、卵を産まない雄は潰した方が良いのかもしれない。


 そんなことを考えているうちに、アルカディアに戻った。


「わぁ! 本当に木の上に家があるのね!」


 ヨナが驚いている。ジミーも驚いているだろうけど、無反応だよ。


「ほら、あそこが物見の塔よ! スミナ山から見えていたでしょう!」


「ああ」とジミー。相変わらず、言葉が少ない。


「登れるのよ! 明日、登ってみましょう!」


 サリーの説明に、ヨナとジミーが頷いている。


「奥の大きな木が、木の家(アビエスビラ)なのよ」


 サリーがヨナに教えている。二人は、一緒に(キラービー)を探しに行ったりしてから、仲良く話している。


「あの木に住むのか?」


「ええ、そうよ!」


 ジミーは、大きいとはいえ、木の中に何人も住めるのか、首を捻っている。

 ふふふ、驚くだろうね! ちょっと楽しみ!


「ミク、扉を開けてくれ」


 先ずは、ヨシを居間のソファーに寝かせる。いつも、アリエル師匠が寝転んで本を読んでいる場所だ。


 すやすや寝ているヨシを見て、ヨナはホッとしたみたい。お姉ちゃんは、ヨシが心配で付いて来たんだ。


(キラービー)を養育箱に入れるわよ!」


 アリエル師匠とサリーは(キラービー)を養蜂箱に入れている。


 ヨナは囲いの外で、それを見学だ。


「サリー、怖くないのかしら? (キラービー)に刺されたら死ぬこともあるのよ」


「サリーは、光の魔法も上手いから! 守護魔法を掛けているから、刺されないわ」


「ふうん、やはり光の魔法を習わないといけないのね」


 ヨナは、ハチミツが好きみたいだけど、(キラービー)を飼うのは、風の魔法が使えないと無理だと思う。


 巣を空気のボールで包んで持って帰らなきゃいけないからね。


「なぜだ?」


 ジミーは、外から見た木の家(アビエスビラ)と、中の大きさが違うのが変だと首を捻っている。


 ドアを開けて、中に入ったり、外にでたりを繰り返している。


木の家(アビエスビラ)は、オリビィエ師匠が空間魔法で作られたのよ」


 ジミーがハッとした顔になる。


「マジックバッグとマジック壺!」


 その通りだけど、その説明は後にして、火食い鳥(カセウェアリー)を鶏小屋に放さなきゃ!


「ミク、先に(キラービー)の死骸を投げ入れた方が良いぞ。お腹いっぱい食べていたら、新しい火食い鳥(カセウェアリー)を攻撃しないだろう」

 

 それ、名案だね。


「手伝おうか?」ジミーが言ってくれたけど、まだ無理かも?


「うん、守護魔法を自分に掛けられるようになったら、餌やりを手伝ってもらうよ」


 ジミーは、自分にできるのかと首を捻る。


「ジミー、竜を討伐したいなら、守護魔法が絶対に必要だ! 少しずつ覚えていけば良い」


 (キラービー)の死骸を投げてやると火食い鳥(カセウェアリー)達は、争って啄む。


 その間に、ぐるぐる巻きになっている火食い鳥(カセウェアリー)を解放して、鶏小屋の中に入れる。


「おお、元気そうだ!」


 ぐるぐる巻きにされて、マジックバッグの中にいたのに、前からいる火食い鳥(カセウェアリー)に負けない勢いで(キラービー)を啄んでいる。魔物だから丈夫なのかな?


「後は、卵を集めて、掃除をして、水をいっぱいにしたら、火食い鳥(カセウェアリー)の世話はおしまいよ」


 ジミーは、それのどれもが守護魔法が使えないとできないと気づいて、深い溜息をついた。


「私も、最初は守護魔法が掛けられなかったの。師匠に掛けて貰ったり、サリーに掛けて貰ったのよ」


「俺に掛けてくれ!」


 あっ、そうかも? でも、私は自分に掛けたことしかないんだよね。


「ミク、やってごらん! 大丈夫、私が見ているから、ジミーの守護魔法が解けそうなら、掛け直してあげる」


 師匠がフォローしてくれるなら、やってみよう!


「ジミーに守護魔法よ掛かれ!」


 薄ぼんやりと緑色の守護魔法が掛かった。自分にも掛けて、鶏小屋に入る。


「この籠に卵を集めて!」


 ジミーが集めている間に、私は汚れた藁を外に出して、綺麗な藁と取り替える。


「ほら、ミク! ジミーの守護魔法が解けかけているよ」


 えっ、その時は師匠が掛けてくれるんじゃないの? 注意してくれるだけ?


「ジミーに守護魔法よ掛かれ!」


 水は、昨日は替えていないから、全部捨てて、新しいのに替える。

 

「これでお終いよ、外に出ましょう!」


 外に出た途端、守護魔法が切れた。


「もう少し、しっかりと守護魔法を掛けられるよう頑張りなさい」


 オリビィエ師匠の言う通りなんだけど、自分に掛けるより、難しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ